領収書には2種類あることをご存知でしょうか?本記事は「単票式領収書」と「複写式領収書」の違いや特徴を解説すると共に、メリット・デメリットも説明いたします。
また購入者側は、どのようなシーンで領収書の発行を依頼するべきなのか、適切な但し書きとは何かといった基本的な知識も解説いたします。
領収書についての知識を深めたい方は、是非最後までご覧ください。
領収書の正しい書き方とは
そもそも領収書の発行目的は、商品やサービスの対価として金銭を支払ったことを証明することです。
万が一領収書に不備があった場合は、購入の証明が正しく行えません。そのため本来経費として扱うことができるはずのものが経費にできない・・・という事態にもなりかねません。
「正しく領収書を発行する」ということは、サービス提供をする上で信頼を維持するためにも大切なことです。以下でしっかり確認しましょう。
領収書に記載が必要な項目
領収書に記載が必要な項目は以下です。
- 購入した日付
- 金額
- 但し書き
- 宛名
まず商品やサービスを提供した「日付」や「金額」、どういった内容であったかの「但し書き」を記載しましょう。また、誰に対して発行した領収書かわかるように「宛名」を記載します。
そして領収書を発行した企業の情報も記載する必要があるため「発行者側の住所、氏名」も記載しましょう。発行者の情報については毎回手書きするのは時間と手間がかかるため、予め印鑑等を押しておく企業が多いです。
購入金額に応じて、収入印紙を添付する必要がありますのでご注意ください。
領収書だけでなく見積書・請求書・納品書についてもまとめて知りたいという方は、以下の記事も確認いただくと理解が深まるため、あわせてご覧ください。
>>見積書・請求書・納品書・領収書の違いをわかりやすく解説|違いは取引での役割
【発行側】2種類の領収書について知っておこう
普段何気なく目にしている領収書にも種類があることをご存知でしょうか。機能的な違いとしては、発行側に領収書の控えを残しておけるかどうかの違いです。
発行する場面の違いに応じて、使い分けをしている企業もありますが、それぞれに特徴を理解した上で選ぶようにしてください。
領収書には単票タイプと複写タイプがある
まず領収書には「単票式領収書」と「複写式領収書」の2種類があります。
単票式領収書はコンビニやスーパー等で販売されており、比較的どこでも手に入りやすい領収書です。領収書に先述した記載すべき項目を明記し、作成した領収書を切り離し相手に渡すというシンプルな領収書です。単票式領収書のデメリットとしては、発行側に控えが残らない点です。
控えがあることで売上管理の際に証拠となりますので、管理をする上では大切になります。
この問題点を解決出来るのが複写タイプの「複写式領収書」です。複写式領収書は記入する領収書の下にカーボンを敷くことで、控えを作成することができます。
このため発行側、受け取る側の双方に同じ内容の領収書が残るため認識の齟齬が生まれず、不要なトラブルを避けることができます。
可能な限り、複写領収書を使用する方がよいと考えられます。
領収書と領収証の違い
領収書と領収証に大きな差はないと言えるでしょう。領収証は「領収書の一部」と考えましょう。そして実務としても、同じ扱いをすれば問題ありません。
仮に違いを説明するケースに遭遇した場合は、領収書は相手から受けた商品等がわかる書類であり、領収証は金銭を受け取ったことの証明書という説明になります。
【受領側】領収書の但し書きについて種類やシーン別に解説
領収書を受け取る際の注意すべき点として「但し書き」の記載方法があります。
記載内容によっては領収書が経費として認められないケースも出てきます。
可能な限り「お品代」と記載するのではなく「事務所用備品」等ある程度具体的な内容で記載していただくように依頼した方がよいです。
複数の商品を一度に購入した場合
ホームセンター等で、事務用品や現場作業で使用する工具を一緒に購入する等、複数の商品を一度に購入する場面はよくあります。
こういったケースの場合は、領収書は可能であれば分けたいところですが、種類が多いと相手から断られることがあります。
そのような場合は、金額の大きい商品を代表商品とし、「代表商品+他」といった但し書きを記載していただくように依頼します。
また、この際に購入したレシートを取っておくことで経理業務で行う仕訳処理の際に役に立ちます。
飲食店を利用した場合
飲食店で食事をした際の但し書きとしてよく目にするのが「お食事代」といった書き方です。
この書き方で問題ありませんが、食事をした相手によって経理処理が異なります。
社員同士で行った飲食については、福利厚生費や会議費になりますが、接待を目的とした取引先との食事の場合は交際費となります。
特に社員同士の食事では金額に応じて処理が異なります。この違いは重要であり、飲食をする際は注意しなければなりません。
飲食代での領収書には「誰と」「何のために」飲食をしたのかのメモ書きを残すようにすると、税務調査が行われてもスムーズな対応が可能となります。
セミナーや研修への参加費
さらなるスキル・知識を身に着けるため、セミナーや研修等に参加することもあるでしょう。そうした場合の但し書きは「セミナー参加費」や「研修会」等で問題ありません。
また、事業に関係のあるセミナーや研修であれば経費に計上できるため、領収書の裏面等にどういった内容のセミナーであったかを簡単に記載することも大切です。
出張に関わる費用
地方へ出張した際には様々な場面で領収書をもらうことが考えられるため、項目に関しても一概には言えませんが、多くの場合「宿泊代」「飲食代」等になるでしょう。会計処理としては、出張に伴う移動費や宿泊費は同じ勘定科目で仕訳されるため問題ありません。
そして出張費の精算を後日会社へ行う場合は、領収書の宛先は個人ではなく会社名にしておきましょう。
取引先への贈り物を購入した場合
取引先へお中元、お歳暮として何か物を送るような場面の際は、但し書きでもどのような目的で送ったのかわかるようにします。
お中元、お歳暮等を送った際の但し書きは「お中元代」「ギフト代」等と記載します。
また、冠婚葬祭で送る引き出物も「ギフト代」とし、誰に対するものかも余白に補記することで分かりやすくなります。
取引先へ新店舗開店等のお祝いとして送った場合は「品物名」を記載し、相手の個人名や企業名がわかるようにしておくと税務調査の際にスムーズな対応ができるようになります。
その他よく使われる但し書き
取引先との間で双方で債権債務が発生している場合は、「相殺」をすることがあります。相殺とは支払うべき金額を、お互いが持っている掛け取引にて支払う行為のことです。
このような場合は双方で領収書を作成する必要があり、但し書きには「相殺金」と記載します。
相殺により発行された領収書への収入印紙の貼付は不要であるため、経費の節約につながります。
この相殺は立替金や協力金等を相殺した場合も同様であり、思いのほか使用頻度が高くなる但し書きです。
【受領側】経費として計上できる費用
領収書を受け取った際に、会社の経費として処理できるものは数多くあります。そのため、ひとまず領収書をもらっておくというのは経費を増やす行為としては正しいといえます。
ただし、内容によっては経費として認められないものもあり、どのようなものが経費として計上できるか理解をしておくことが大切です。
経費として計上できる費用の例
会社で使用するものや取引先との関係を良好にする目的で購入するものは経費にできます。
例えば、事務所内で使用する備品であれば「事務所用消耗品」であり、収入印紙を買ってきた場合は「租税公課」として経費にできます。
このほかにも、社員が読むことのできる新聞や雑誌も「新聞図書費」として経費にできます。
新聞や雑誌は社内環境の整備としての意味合いもあるため経費として処理することは会社にとって大きな意味のあることです。
1年に1度行う健康診断や社員旅行の旅費も「福利厚生費」として経費にできます。
自分のためだけではなく、周りや社員全員が関係する費用はほとんど経費にできますが、処理をする際に一度確認をしてみた方がよいでしょう。
経費として計上できない費用の例
経費として計上できない費用の多くは自分個人の費用であったり、会社のみならず、個人でも使用することが考えられるような物を購入したときは経費として認められないケースが多いです。
例えば、スーツやネクタイを購入した際の費用です。スーツやネクタイは会社以外の場面でも使用することが考えられるため、会社の経費として処理することはできません。
ただし、制服や作業着といった会社内でのみ使用すると考えられる服については経費として認められます。
また、会社が支払う法人税等も経費にできません。これは会社が稼いだ金額に応じてかけられる税であるため、経費として扱うことができません。
【受領側】中国の領収書の種類
近年、中国へ出張し、出張先で領収書をもらう必要が出てくるケースが増えてきております。
はじめての海外出張の場合は、地理が分からないため、移動にタクシーを使用することも多いでしょう。
そのような場合は、タクシー運転手へ領収書を作成してもらいます。日本でも領収書に種類があるように、海外でも、領収書には種類があります。
例えば、最近出張先として多い中国の領収書は、国が認めた領収書と個人間で使用される領収書があるため、はじめての場合は戸惑うこともありますが、その意味合いを理解しておくことが大切です。
发票(発票):ファピャオ
「发票(ファピャオ)」という領収書は中国の税務当局が認めている領収書です。日本でいう国税庁が認めているという意味合いとなります。
「発票」は正式名称は「増値税発票」と呼ばれ「増値税普通伝票」と「増値税専用伝票」に分かれます。この2つの違いは税額控除や還付が受けられるかの違いであり、領収書としての役割に違いはありません。
このため、どちらを国内に持って帰っても経理処理としては差し支えはありません。
発票を発行できるのは中国で正式に登記されている企業のみです。
もし個人の方から商品を購入し、この領収書をもらった場合は代理店を通して領収書を仕入れているということです。
また、発票は在庫がなくなりそうになった場合に事前に補充ということができません。このため、タイミングによっては領収書の発行は後日になるというケースがあります。
領収書を手に入れるためには領収書がなくなってから地元の国税局へ取りに行くというルールになっているため、こういったことが発生することがあります。
発票は当局指定の紙を使用し指定された端末と印刷機で作成され、指定の印鑑が押印されています。指定外のものを使用した発票は領収書として認められません。
收据(収拠):シォゥ ヂィー
「收据(シォゥ ヂィー)」は法人の登録をしていない会社が作成する領収書です。発票のように指定された内容はないため、それぞれの会社独自の内容となり、手書きで作成されることが多いです。
中国国内では正式な領収書として認められておらず、経費とすることができません。
しかし日本国内では領収書としてみなされるため、問題なく経費処理が行えます。
小票(レシート):シィアォ ピィアォ
「小票(シィアォ ピィアォ)」とは日本ではレシートと同じ意味合いのものです。
中国国内でも同様の意味合いであるため、経費処理をする際には使用することができません。
日本でも小票を使って経費精算をした場合は、経費として対応してもらえるかは会社次第となります。
発票も収拠も発行出来ないといわれた場合はどうすればよいか、事前に会社へ確認をしておく方が良いでしょう。
領収書に貼る収入印紙の基礎知識
収入印紙を貼るということは、国に対して税金を払うということです。
このため、正しく収入印紙を貼っていなければ脱税したということになってしまい、後に過怠税として3倍の金額を納付することになります。
また、5万円を超えた総額については収入印紙を貼りますが、このとき収入印紙を貼る対象の金額に消費税は含みません。
消費税を含んでしまうと二重課税となってしまうため、収入印紙を貼るかどうかの基準金額は本体金額のみを対象とします。
このため、基本的に税込み5万円以下の商品は収入印紙の貼り付けは不要と考えて良いでしょう。
ただし、5万円以下の場合でも領収書内に消費税額が明示されていなければ印紙は必要となるので注意が必要です。
誤って消費税込みの総額に対して貼っても問題はありませんが、会社にとっては不要な経費となるため経理担当者がしっかりとした知識を身に付けておくことが大切です。
収入印紙は身近なところで購入でき、郵便局をはじめ、コンビニや金券ショップ等でも販売されています。
収入印紙についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>収入印紙の必要知識を徹底解説:金額や割印、勘定科目等も解説
受け取り金額と印紙の金額一覧
領収書の受け取り金額(消費税を含まない) | 収入印紙の金額 |
5万円未満 | 貼付不要(非課税扱い) |
5万円~100万円以下 | 200円分の収入印紙 |
100万円超~200万円以下 | 400円分の収入印紙 |
200万円超~300万円以下 | 600円分の収入印紙 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円分の収入印紙 |
500万円超~1,000万円以下 | 2,000円分の収入印紙 |
【まとめ】領収書の種類別に注意点や特徴を抑えておこう
身近な書類である領収書について、なんとなく接していることが多いかと思いますが、手続きを怠ると会社にとって大きな損失を被ることにつながってしまいます。
適切な記載方法、特に但し書きについては税務調査等の際にすぐに領収書の詳細が回答できるようにしておくことで不要な追及を避けることができます。
また、中国の領収書は日本と種類が異なり、出張する方へ適切に説明をしなければ経費として処理することができなくなってしまいますので注意が必要です。