財務戦略とは?経営戦略との違いや立案のポイントとプロセスを解説

各企業において、財務戦略は非常に重要な要素です。しかし、立案した財務戦略が適切ではない場合は、資金の調達や今後の経営状態を悪化させてしまう可能性もあります。

本記事では、財務戦略の基本的な用語解説はもちろん、混同されることが多い「経営戦略」との違いや立案までのプロセスについて解説します。ニュアンスだけでなく、本質を知ることで企業の発展に活用できます。

目次

財務戦略とは

はじめに財務戦略について確認しましょう。
財務戦略を端的に表すと「経営目的を達成するための戦略」となります。
企業の存続には、安定した経営が必要不可欠です。さらに経営には潤沢な資金が必要になります。この資金のやりくりについて、データや意見を元に道筋を立てたものが財務戦略となります。

資金の運用と調達の戦略

さらに掘り下げていきましょう。
財務戦略は「資金の運用と調達」がメインですが、どのような動きがあるのでしょうか。

具体的な例では「人件費の削減」が挙げられます。企業が資金難に陥っている場合は、今ある資金の中で、再分配してやりくりすることが必要です。この場合に、人手が余っている部署の人員を削減したり、残業を削減したりして人件費を押さえます。

そして、人件費で浮いた資金を別の部署や開発費用等に充てる。この方法が「財務戦略」に当てはまります。

また、今ある資金でやりくりするだけでなく、新たに融資や株式を発行して資金を増やすことも財務戦略に該当します。このように「中長期で会社を円滑に運営するための資金繰り」を財務戦略で行います。

財務戦略と経営戦略はどう違う?

財務戦略を考えていく上では、経営戦略との違いを把握することも大切です。

財務戦略は、企業が「資金の運用や調達」といったお金のことを策定します。一方で経営戦略は「企業が利益を出すこと」を目標に策定されます。
そのため、まずは「経営戦略」があり、次に「財務戦略」があります。
「企業が利益を出すために必要な目標や戦略を定め、そのあとに資金面で戦略を練る」と認識しておきましょう。

財務戦略を立てるときのポイント

ここからは、財務戦略を立案する際のポイントを3つに分けて解説します。
財務計画は、現状を確認した上で無理なく決定することが求められます。財務の専門的な視点も重要となるため、是非確認しておきましょう。

財務状況を把握する

最初に、現在の財務状況を把握します。「自社の財務状態が良いのか悪いのか」「どの程度改善が必要か」を知ることで、適切な戦略を練ることができます。

また、後半で詳しく解説しますが、財務状況の把握には下記5つの手法を用います。
・収益性分析
・活動性分析
・安全性分析
・生産性分析
・成長性分析
これらの手法を元に、財務状況を判断し、適切な戦略を立てていきます。

財務の視点から企業を取り巻く環境を見る

財務状況を内側から分析することはもちろん、自社を客観視することも重要です。日本国内だけでなく、世界規模での経済情勢や競合他社の状況等、自社に影響を与える様々な要素について把握することも大切です。

企業を経営する上で、外的要因は避けられない問題です。自社をとりまく環境に対して、財務目線でメリットやデメリットを把握することが重要です。

経営陣の意向を確認する

財務戦略には経営陣の意思が必要不可欠です。財務戦略は、経営陣が決定した経営戦略の一部分となるため、経営陣から賛同を得ることで始動します。

一口に経営陣と言っても、革新的なタイプと保守的なタイプに分かれます。そのため、経営陣がどのような戦略を求めているかを把握した上で、策定を進めましょう。

財務戦略を立てるプロセス

財務戦略の立案には、情報分析や経営陣の意思確認が欠かせないとわかりました。
さらにここからは、実際に財務戦略を立てていく際に知りたいプロセスを解説します。

スタートからすべての流れを把握することで、見通しを持って立案に尽力できます。

①財務諸表等の決算書から状況を把握する

まずは情報収集や分析からのスタートです。
一般的に財務諸表と呼ばれる書類から、自社の財務状況を把握しましょう。
「売上に対して費用は適切か」「資産の配分はバランスが取れているか」等を確認していきましょう。

また、分析によって把握できた課題や解決法も考えていきます。ここで注意したい点は「中長期のスパンでビジョンを描く」点です。今期だけ、来期だけではなく10年やそれ以上のスパンでどのように成長したいかを決めて、課題の解決法を組んでいきます。

参考までに、財務諸表や決算書と呼ばれる書類には「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」が当てはまります。

②財務戦略を立案する

分析の結果、課題や目標が見えてきたら、具体的な戦略を立案していきます。「何年後までにどのように成長したいか」を決定し、成長目標を軸に資金繰りを決めていきます。

例えば「5年後を目処に新企業を立ち上げる」と決めた場合は、それに必要な資金計画を策定します。「新機材の投入にいくら」「人材確保にいくら」と具体的な資産の分配を行います。

③金融機関と資金の借入と調達を交渉する

立案が済んだら、次は資金の調達に移ります。資金調達には、金融機関からの借入が多くなります。そのため、金融機関での交渉を行います。

交渉時には金利や担保、借入形態等、考慮すべきポイントが多くあります。事前に経営陣と入念に話し合いを済ませておきましょう。

財務分析を財務戦略に活かす

これまで紹介した財務戦略の立案には、初手の「財務分析」が欠かせません。ここでは財務分析における5つの手法について解説します。

先に触れましたが、財務分析には下記5つの手法があります。
・収益性分析
・活動性分析
・安全性分析
・生産性分析
・成長性分析
順に見ていきましょう。

5つの財務分析

5つの手法を一覧で解説します。

手法
特徴
収益性分析
企業が「儲かっているか」を判断する指標
活動性分析
「効率的に資産を使っているか」を判断する指標
安全性分析
企業が持つ資産が十分かを判断する指標
生産性分析
「効率的に付加価値を生み出しているか」を判断する指標
成長性分析
「前期よりも成長しているか」を判断する指標

これら5つの手法を用いて、様々な視点から財務状況を判断します。
「ただ利益が出ている」と判断するのではなく、多面的に分析することで今後の課題や強みが見えてきます。

補足:財務戦略の最高責任者CFOとは

最後に補足として、「CFO」について解説します。
CFOは「Chief Financial Officer」の略称で、財務の最高責任者を指します。欧米諸国におけるCFOは「CEO」に並び、重要度が高いポジションとして知られています。

近年はビジネスのグローバル化が進むため、欧米同様に日本国内でもCFOを重要視する傾向が高まっています。各企業の財務戦略はCFOがリーダーシップを取りながら立案、執行を進めていきます。

まとめ:正確な財務戦略で経営に役立てよう

今回は財務戦略について、概要から具体的なプロセスまでを解説しました。
おおまかに財務戦略と言っても、具体的な方法に迷う企業は多くあります。そのため、正しい目的や手順を把握することが大切になります。

当記事を参考に、財務戦略の本質を知り、専門性を活かして企業の成長における一翼を担いましょう。

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