今回の記事では見積書と請求書の違いや取引の関係性、書類の違い・役割について解説していきます。
そのほか、納品書・領収書についても触れていくので、それぞれの書類についての理解を深めましょう。
今後の法改正に伴う電子化のメリット・関係する法律もおさえていきます。是非最後まで確認してみてください。
見積書・納品書・請求書・領収書|4つは「取引を証明する書類」
見積書・納品書・請求書・領収書は取引を証明するのに必要な証憑書類のひとつです。
取引を証明する書類のため、外部取引だけでなく、内部取引の書類も含まれます。
今回扱う4つの書類は主に企業間での外部取引に関わる書類のひとつです。
これら4つは取引での主な証憑書類
はじめに、証憑書類とは何かを説明します。証憑書類とは取引・契約が正式に合意した時に発行する書類のことです。
なぜこれら書類を発行する必要があるのでしょうか? 証憑書類は決算期に税務の証拠書類として利用するからです。
取引を証明する書類のため以下4つの項目を明記しておく必要があります。
- 発注者・受注者の会社名の署名・捺印
- 書類の発行日
- 対象の商品・サービス内容
- 単価と合計金額
証憑書類のこれら4つは一定期間の保管が義務
証憑書類は長期の保管が義務付けられています。
税法では、起算日から最低7年間保管することが明記されています。
保管期間を守らずに処分すると、証拠書類がないため架空経費計上と見なされる可能性もあります。そこまで大事にならない場合も、経費として計上できなくなることもあり、必要以上の法人税を支払うことにつながるでしょう。
企業の場合の保管(保存)は10年間しておくと安心
企業の場合は10年間保管しておくといいでしょう。税法では7年間保管と先述しましたが、会社法では赤字等を踏まえ10年と記載があります。
証憑書類は決算に関連する書類です。決算に関する書類は税法ではなく、会社法のルールが優先して適用されるからです。
取引の流れからわかる4つの書類の発行タイミングの違い(見積書・納品書・請求書・領収書)
次に、見積書・納品書・請求書・領収書の書類の発行時期の違いを解説します。
企業間での取引の全体像を理解しておくといいでしょう。
取引ごとにどんな書類・手続きが必要かもあわせて説明します。
【購入者側 】 検討している発注先へ見積もりを依頼する
最初の取引は見積もりを依頼することです。見積もりの目的は以下の通りです。
- 購入する側が希望するサービスに必要な金額を概算してもらい、予算に合うか確認する
- 購入する側の条件・希望にあうサービス(商品)であるか、また取引先が信用できるのか等見定める
- 場合によっては複数社に見積りを依頼し比較する
予算内に収まるか否かの金額確認はもちろんですが依頼先を信用できるかどうかも、見積もりの時点で判断が必要です。電話やメールのやり取りで見える部分もあるでしょう。相手の対応をよく確認しましょう。
また見積りは複数企業へ同時に依頼することもあります。このように比較検討することを相見積もりといいます。相見積もりで金額面、サービス面を比較して最良のサービスや商品を決めることも大切です。
【受注者側 】お客様に見積書を発行する
サービスの購入者側から見積もりの依頼がきたら、受注者側は条件をもとに「見積書」を発行します。
見積書は取引で最初に交わす大事な証憑書類です。ここで両者認識の違いがあっては後々トラブルになりかねません。
金額やサービス内容をあやふやにせず、丁寧な見積書作成とコミュニケーションをとりましょう。
また見積書で提示した条件が、購入者側の予算や希望に合わない場合は、購入者側から様々な交渉をされる可能性もあるでしょう。
割引やサービス追加等の交渉条件を飲んで購入してもらうのか、提案された条件では受注が難しいのか再度検討しなければなりません。
【購入者側】 注文をする
見積書の条件が納得できた場合はサービス(商品)を注文・契約します。見積書をもとに発注者が注文書(発注書)を提出することもあります。
購入者側は見積書の内容と発注書の内容に相違がないように確認しましょう。
【受注者側】 納品をして「納品書」を発行する
準備できたら、購入者へ商品・サービスを納品します。
商品・サービス納品時に「納品書」を発行しましょう。納品書を発行する目的は次の2つです。
- サービス・商品を納品したことを証明する
- 見積書の条件に沿って、商品が納品されたことを確認する
【購入者側】 納品物を受領・検収する
注文した商品(納品物)を受け取ります。納品物に誤りがないかよく確認しましょう。
もし、受領書が同封されている場合は、受領書を返送することもあります。
受領書がない場合は、納品物を受領したことをメール・電話等で連絡すると良いでしょう。
【受注者側】 購入者へ「請求書」を発行して代金の請求をする
購入者が納品物を受領後、代金の請求を行います。「請求書」を発行する目的は次の2つです。
- 発注者の支払い漏れの防止
- 取引を証明する
【購入者側】 請求書の内容に沿って代金の支払いをする
請求書を受領後、購入者が代金を支払います。請求書に記載されている金額が、見積書の内容と相違がないかを必ず確認しましょう。万が一費用が高くなっていたり、身に覚えのない請求があったりした場合は、この時点で先方に連絡して適切な対処が必要です。
【受注者側】 支払われた代金を確認し「領収書」を発行する
代金の支払い確認後、【領収書】を発行します。
あらためて、取引と4つの書類の発行タイミングをまとめると下記のようになります。
- 購入者が見積もりを依頼する
- 受注側が【見積書】の発行をする
- 購入者が見積りを確認し同意できた場合は商品・サービスを注文する
- 受注側が商品・サービスを納品して【納品書】の送付をする
- 購入者が納品物を受領・連絡をする
- 受注側が請求書を発行する
- 購入者が代金をお支払い
- 受注側が代金入金確認後【領収書】を送付する
見積書・納品書・請求書・領収書|役割からわかる違い
流れが理解できたところで見積書・納品書・請求書等の証憑書類の役割を説明していきます。各書類において誰が何のために扱うのかを理解しておくと良いです。
取引の流れを把握することで、円滑な取引に繋がるでしょう。
見積書の役割:受注者側が提案できる内容を示し発注者側の検討材料となる
見積書の役割は大きく以下の2つです。
- 発注者の検討材料になる
- 発注者・受注者双方の認識のズレを防ぐ
発注者の検討材料になる
発注者は自社の希望する契約・条件に近いものを選択します。
そのため先述したように複数社と相見積もり(比較検討)することもあります。
受注者は発注者の検討材料として金額・納期・支払い時の条件やサービス内容等を細かく記載するといいでしょう。
発注者は予算や納期等様々な条件を踏まえて検討しやすくなります。
発注者・受注者双方の認識のズレを防ぐ
役割2つ目が発注者・受注者双方の認識のズレを防ぐことです。
見積書は発行することが義務づけられているわけではありません。そのため、口頭での契約で問題ないと考える人もいるでしょう。
しかし見積書に細かく書面で記載していくことで双方の認識のズレを防ぐことができます。お互いの希望条件をもとに契約できるので、受注者・発注者双方でトラブルを減らすことにもつながります。
納品書の役割:受注者側の納品した内容物を確認するための書類
納品書の役割は大きく以下の2点です。
- 納品物のサービス・商品を確認する
- 書面で残すことでスムーズに取引できる
納品物のサービス・商品を確認する
納品書を同封することで商品・サービスに誤りがないか確認できます。
書面で残すことでスムーズに取引できる
次に、請求書と同様に取引時のトラブルを防ぐこともできます。
納品書は以下の記事でより詳しく解説しているので、下記のリンクもご確認ください。
>>納品書の役割や発行側の注意点、受領後の流れをわかりやすく解説
請求書の役割:受注者側が発注者側に支払いを請求する書類
受注者が支払いを請求するための書類です。請求書は支払時の取引の証拠になります。
請求書は証憑書類の中で確実に残しておいた方がよい書類のひとつです。
支払期日も記載することになるため、受注者は発注者の支払い漏れを防ぐこともできるでしょう。
請求書は以下の記事でより詳しく解説しているので、こちらもご確認ください。
>>請求書受領後の経理作業を最大限効率化する方法!手続き等を簡略化しよう
領収書の役割:受注者側が代金を領収した旨を証明する書類
領収書は受注者が代金を受け取ったことを証明する書類です。
領収書は支払い終了を証明する書類です。そのため、領収書に限らず、支払ったことがわかる書類であれば代用可能です。
レシート等は分かりやすい例でしょう。
領収書は以下の記事でより詳しく解説しているので、こちらのリンクもご確認ください。
>>領収書には2種類ある?「但し書き」の書き方もシーン別に解説
見積書・納品書・請求書・領収書|それぞれの特性や関係を解説
見積書・納品書・請求書・領収書の特性・関係性を解説します。 特性・関係性も取引の流れを把握した上で確認するようにしましょう。
書類の発行目的によって、役割や特性も異なります。書類ごとの関係性をきちんと理解していきましょう。
見積書は何度も発行する可能性がありほかの書類と金額が違うことも
まず、見積書は何度も発行する可能性があることです。つまり納品書・請求書等とは金額が異なることもあります。
取引の流れで説明した通り、見積書は発注者の検討材料になる書類です。
発注者は複数の企業に相見積もりを依頼することもあります。
受注者は発注者の条件を踏まえて見積書を作成します。
見積書は複数回発行する可能性が高いため、ほかの書類と金額・条件が異なることもあるでしょう。
納品書は相手先によっては発行しないこともある
納品書は相手先によって発行しないこともあります。
なぜなら、取引の円滑化が目的であるため発行の義務はありません。
そのため、メール等でPDFの添付でも問題ありません。企業間での取引ごとに柔軟に対応するのが望ましいでしょう。
請求書は納品書を兼ねることもできる
請求書は納品書を兼ねることもできます。実際に、請求書兼納品書という両方を兼ねた書類を発行することもあります。
特に、商品のないサービスを提供する場合は、利用する機会が多いです。
書類を2枚送付する手間も省くことができるため経費削減にもつながります。
請求書と領収書の金額は同じでなければならない
請求書と領収書の金額は同じ でなければなりません。
領収書は受注者が料金の支払いを確認したことを証明する書類です。
対して、請求書は受注者が請求する金額を発注者に示す書類です。
取引の流れからも確実に金額が同じでなければいけません。
金額が合わない場合は、取引の証拠書類として機能しなくなってしまいます。間違いないようにしましょう。
領収書は通常取引に必須だが発行の必要のない特殊ケースもある
領収書は現金での支払いに限り発行が必須です。クレジットカードでの決済等、発行が必要ないケースもあります。
なぜ、クレジットカードでの決済は領収書の発行が必要ないのでしょうか?
クレジットカードで支払う場合は、カード会社が料金を立替えているからです。
領収書は発行数は1枚のみであり、二重発行はできません。
もし、クレジットカードで決済する場合、利用控えを確実に保管しておくといいでしょう。
見積書・納品書・請求書・領収書|データ化(電子化)にかかる法律
次に見積書・納品書等の証憑書類の電子化に関わる法律を紹介します。
下記2つの法律は今後対応が必須のものです。確実におさえておきましょう。
特に、インボイス制度は税務署に登録申請書を提出する必要があります。また本記事では要点をまとめて完結に説明をしていますが、インボイス制度は複雑かつ難しい制度と言えます。
内容を誤認しないためにも、インボイス制度について詳しく説明している以下の記事も是非ご確認ください。
>>インボイス制度についてはこちら
電子帳簿保存法:2022年1月から改正法スタート
2022年1月より電子帳簿保存法が改正されました。電子化により保存する書類の手続きが見直されています。
電子化の要件が緩和されますが、電子取引の保存・保管が義務づけられます。
2022年1月より施行予定でしたが、2年間の猶予が設けられることになりました。
ですが、企業が早急に取り組まなければいけないものでしょう。
インボイス制度:2023年10月からスタート
インボイス制度とは、適格請求書等保存方式のことです。
簡潔に説明すると、複数の消費税の税率に対応するための制度です。
8%・10%に消費税率が分かれたことで消費税の税率が売り手と買い手で分かりづらい仕組みになりました。
この仕組みを解決するためにインボイス制度が導入されました。
インボイス制度は以下の記事でより詳しく解説しているので、下記のリンクもご確認ください。
>>インボイス制度を分かりやすく知りたい!補助金から対象まで解説します!
4つの書類(見積書・納品書・請求書・領収書)を電子化するメリット
電子化するメリットは次の4点です。
- 書類の印刷・保存コスト等の経費削減
- 書類が検索しやすい
- 在宅での業務ができる
- 書類の劣化を防ぐことができる
一番費用対効果が高いメリットを紹介すると経費削減です。書類を保存・管理するには、様々な経費がかかります。
具体例をあげると、用紙・インク等の消耗品・プリンターの維持費等がかかるでしょう。
書類の電子化を進めることで経費の削減につながります。また、書類の保管するスペースを別の目的で利用することもできるようにもなります。
見積書・納品書・請求書・領収書についてのまとめ
外部取引で主に利用する請求書・納品書等の4つの証憑書類について以下のポイントを解説しました。
- 4つの証憑書類の定義・保管の必要性について
- 証憑書類の発行タイミングと取引の流れ
- 各書類の役割の違いと関係性
- 電子化に関わる法律と電子化によるメリット
皆様の電子化へのスタートに向けて、上記記事を参考にしてみてください。