経費帳と総勘定元帳の違いは大きく3つ|経理の基礎知識

経理業務で使用することの多い経費帳と総勘定元帳は、一見すると同じに見えるかもしれません。

しかし、この2つの帳簿には、実は大きな違いが3つあります。

帳簿の区分け・記入の仕方・対象の勘定科目です。

この記事では、経費帳と総勘定元帳の違いを解説します。

また、悩みがちな保存の期間・方法について疑問を解消していていますので、経理業務を行う時の参考にしてください。

勘定科目毎に記載する帳簿の「経費帳」と「総勘定元帳」・大きな違い3つ

違い1:帳簿の区分けと義務が違う

経費帳と総勘定元帳は、帳簿の区分けと義務が違います。

区分けとは、主要簿か補助簿かという分類です。

義務とは作成の義務を指し、法人は主要簿を必ず作成します。

総勘定元帳は主要簿です。

一方、経費帳は補助簿なので、必要に応じて作成します。

とは言え、会社の経費について記載するものなので、作成した方が把握しやすいでしょう。

総勘定元帳が含まれる「主要簿」は必ず必要な書類

次の3種類が主要簿です。

主要簿は、会社法ですべての法人が作成するものと定められています。

日記帳日々の取引を記録必須ではないがミスを防ぐために記帳することが望ましい
仕訳帳日記帳をもとに勘定科目を記載して仕訳していくはじめから仕訳帳をつけることもある記帳漏れに気が付きやすい
総勘定元 帳仕訳帳をもとに転記勘定科目ごとに取引の流れが見えるある時点での残高が一目でわかり便利間違いに気が付きやすい

日記帳以外の記録は必須で、正確に作成しないと罰金の可能性があり注意が必要です。

経費帳が含まれる「補助簿」は作成しなくても問題はない

補助簿は、主要簿を補うための帳簿で「補助記入帳」と「補助元帳」に分類できます。

補助簿の分類記録補助する主要簿
補助記入帳特定の取引の明細仕訳帳
補助元帳特定の勘定科目総勘定元帳

いずれも作成が必須ではありませんが、記帳しておくことで経営状態を正確に把握できるのがメリットです。

主な補助簿を紹介します。

現金出納帳現金での取引のみを記録
預金出納帳金融機関ごとの取引を記録
経費帳経費を勘定科目別に記録(仕入以外)
仕入帳仕入れた商品に関する記録
売上帳販売した商品に関する記録
支払手形記入帳手形の支払い状況を記録

補助元帳

得意先元帳得意先ごとの取引を記録売掛金を記載するため、売掛金元帳とも呼ばれる
仕入先元帳仕入先ごとの取引を記録買掛金を記載するため、買掛金元帳とも呼ばれる
固定資産台帳固定資産の価格や減価償却を記録建物や車等の固定資産を持っている会社が作成する

違い2:記入の仕方や項目が違う

帳簿の記入の仕方は単式簿記・複式簿記の2つがあります。

経費帳 :単式簿記
総勘定元帳 :複式簿記

単式簿記は、収支のみを記載します。

シンプルなので誰でも簡単に記帳できるのが特徴です。

複式簿記は、複雑で記帳には知識が必要になります。

財政状態を正確に把握できるのは、複式簿記です。

単式簿記と複式簿記では、項目も異なりますので、詳しく見ていきましょう。

経費帳の記入方法「単式簿記(簡易簿記)」とは?

経費帳は単式簿記です。

シンプルな入力なので、家計簿をつけたことがあれば簡単に行えます。

入力対象は仕入以外の経費で、例えば税金や交通費、水道光熱費等は経費帳に記載する科目です。

予め、どのような科目が必要か洗い出しておくと良いでしょう。

単式簿記は、日付・摘要・金額を記載します。

例えば6月に電気代を20,000円・水道料金を10,000円、現金で払った場合の記載は次の通りです。

経費帳(水道光熱費)

日付摘要金額
6月20日電気代(支出)20,000
6月30日水道料金(支出)10,000
6月合計30,000

金額の合計を計算すれば、水道光熱費の合計金額が分かります。

しかし、これだけでは現金残高はわかりません。

単式簿記は、シンプルで簡単に記帳できるのが特徴です。

特別な知識は必要なく、家計簿を付けたことがあれば、苦にならないでしょう。

一方で、財政状態が分かりにくいというデメリットがあります。

例えば、先の例では6月の水道光熱費の合計30,000円を現金で支払ったことは分かりますが、結果として現金がいくら残っているのかをこの帳簿だけで把握することはできません。

総勘定元帳の記入方法「複式簿記」とは?

総勘定元帳は複式簿記です。

入力は少し複雑で、簿記の知識があると理解しやすいでしょう。

日々の業務で入力を行っている方なら簿記の本を読んでみると理解が深まります。

元になるのは、仕訳帳です。

すべての勘定科目・取引が対象になります。

ひとつでも記載漏れがあると、帳簿の金額が合わなくなってしまうため慎重に記帳することが重要です。

ここでは残高式を例に取り記帳方法を説明しましょう。

複式簿記では日付・相手勘定科目・仕丁・金額・借/貸・残高の情報を記載します。

次の取引を例に、ある銀行口座の取引を記入してみましょう。

7月1日  前月からの繰り越し100,000円・小口現金を補充するために10,000円引き出し
7月10日 売掛金200,000円の回収
7月20日 水道光熱費5,000円を支払い

総勘定元帳(普通預金)

日付相手勘定科目仕丁借方貸方借/貸残高
7/1繰り越し100,000
小口現金110,00090,000
7/10売掛金3200,000290,000
7/20水道光熱費45,000285,000

違い3:記入する勘定科目が違う

経費帳と総勘定元帳では、勘定科目の種類が違います。

総勘定元帳 :すべての取引を記録

経費帳 :仕入れ以外の経費のみ

どちらも日付順に記録するので、共通する科目であれば似たような帳簿になります。

ただし、先述した通り記録の仕方が異なるので、用途に応じた使い分けが必要です。

経費帳は「仕入以外の事業に使った経費」を記入する

経費帳に記録するのは、仕入れ以外の事業に使った経費です。

家計簿をつけるとき、食費だけ・生活用品だけ・服飾費だけとページを分けて記入した経験はありませんか?

経費帳は、そのイメージに近いです。

会社として使用した費用をすべて経費帳に記載できるわけではありません。

経費として計上できる費用を記載します。

「それは経費で落ちません」という台詞は聞いたことがある人もいるでしょう。

会社の経費になるかどうか、よく確認して記帳するようにしてください。

曖昧な記憶で記帳せず、悩んだらきちんと調べるか税理士に確認しましょう。

法人税等の所得にかかる税金は経費として計上できないので注意が必要です。

総勘定元帳は「すべての取引」を記入する

総勘定元帳に記入するのは、すべての取引です。

同じく主要簿である仕訳帳から転記する形で、勘定科目別の取引を把握しやすくなります。

取引の発生日・理由・残高を把握し、会社の財務状態がわかるのも特徴のひとつです。

会社として重要な現金はいくらあるのか、借入金の残高はいくらかが一目でわかります。

また、売掛金や買掛金、未払金や預り金を見れば、今後のお金の動きを予想できるでしょう。

総勘定元帳は、税務調査が入った時や銀行融資の際、提出を求められることがあります。

日頃から正確に記帳しておくことが大切です。

「経費帳」と「総勘定元帳」の共通点は?

勘定科目ごとに記録する帳簿であること

経費帳と総勘定元帳の共通点は、勘定科目ごとに日付順で記録する帳簿であることです。

一見同じ内容をフォーマットを変えて記帳しているだけにも見えますが、前述した通り違いがあります。

総勘定元帳はすべての科目を記帳するのに対して、経費帳は経費に関するものだけです。

総勘定元帳は作成が必須で、複式簿記のため知識がないと記帳が難しいものですが、経費帳は単式簿記でシンプルだから誰でも簡単に記帳ができます。

さらに、日々の取引を経費帳にこまめに記入しておくことで、記載漏れを防げるでしょう。

会社で経費削減の取り組みがあった時等は、どの経費に削減の余地があるか、簿記の知識がないスタッフでも考えるきっかけを作れます。

日次業務で記載する帳簿であること

経費帳も総勘定元帳も、できるだけ日次業務で記載しておきたい帳簿です。

経費帳に記載する経費は、日々の業務で記帳しておかなければ何のために使った費用なのか、領収書から思い出せないことがあります。

どうしても時間がなくて記帳できない場合でも、領収書の裏に詳細をメモしておくと良いでしょう。

例えばタクシーの領収書なら、行先(取引先名)や同乗者・何のプロジェクトのためにタクシーを利用したか等を書いておくと記帳するときに便利です。

総勘定元帳は、仕訳帳から転記して作成するので、月末にまとめて作成する会社もあります。

とは言え、転記する内容が多くなればなるほどミスが増えてしまいます。

できるだけ日々記帳しておくことをお勧めします。

会計ソフトを利用している場合は、仕訳帳を記入することで総勘定元帳への転記が行われているものが多いです。

「経費帳」と「総勘定元帳」によくある質問

Q.「経費帳」と「総勘定元帳」の保存期間は?

帳簿類の保存期間は、会社法では原則10年・法人税法では原則7年です。

会社法では、明確に「経費帳」「総勘定元帳」とは記載されていません。

しかし、法人税法では名称も記載されて7年と明記されています。

そのため、会社法で保存を定められている帳簿に「経費帳」「総勘定元帳」が含まれると考えるのが妥当でしょう。

いずれにしても、10年間は保存しておきたい書類です。

帳簿は原則として紙で保存します。

パソコンで作成した書類であっても、印刷し紙で保存が基本です。

10年間分紙で保存するのは大変で、一定の要件を満たせば電子保存も可能になりました。

電子保存に関しては後述します。

Q.「経費帳」と「総勘定元帳」それぞれの月次の締め方は?

経費帳では、月次で合計金額を計算し、記入します。

各勘定科目ごとの合計が計算できたら、月別総括集計表に移しておくと推移が把握しやすいでしょう。

経費を使い過ぎた月があれば明確になります。

また、過去の記録を辿れば経費が多く必要な月が確認できるので、予算が立てやすく便利です。

総勘定元帳は月次で区切り、借方・貸方の合計が一致しているかを3種類の試算表を用いて確認します。

総勘定元帳より勘定科目ごとに貸方・借方の合計を映した試算表が合計試算表です。

合計が合わない場合は、転記ミスや記載漏れがないか確認しましょう。

毎月、月末に行っておくと決算時の作業が楽になります。

合計試算表の貸借の差額をまとめたものが、残高試算表です。

資産・売上・利益等が明確にできます。

合計試算表と残高試算表を合わせたものが合計残高試算表です。

Q.「経費帳」と「総勘定元帳」はデータで作成・保管してもいい?

電子帳簿保存法により、書類等の電子保存が認められています。

電子保存が認められる書類には、総勘定元帳が含まれており、経費帳は任意です。

つまり、経費帳と総勘定元帳はデータで作成し保管できます。

電子帳簿保存法とは、国税関係で必要な「帳簿」や「書類」をデータで保存することを認めている法律です。

経費帳・総勘定元帳は「帳簿」のため、電子帳簿保存法の対象になります。

2022年に法改正され、電子化しやすくなりました。

データで保管するようになると、社内のペーパーレス化が進み管理業務の効率化が期待できるでしょう。

また、保管スペースが不要になるためコストの削減が図れること、テレワークが進むこと等経理にとってメリットが多いです。

今後、データ保存をする会社はますます増えていくでしょう。

詳しくは以下をご覧ください。
>>ペーパーレス化の成功事例をご紹介!メリットや推進時のポイントも解説

まとめ

経費帳と総勘定元帳は、会社の経営状態や経費の使用状況を確認するために、なくてはならない存在です。

会計ソフトを使えば、詳しい知識がなくても入力できますが、帳簿の違いは理解しておくと良いでしょう。

データで保存ができるようになれば、過去10年以上に遡っての管理も容易になり、経理担当者の負担も軽減されます。

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oneplus編集部

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