減価償却の償却方法「定額法・定率法」の計算例とメリット

機械や建物を購入した際に、どのように処理するか迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

処理の仕方は複数あり、どちらを選ぶかで会社の利益額や税額も変わってくるため、事前によく理解して最適な方を選ぶことが大切です。

今回それぞれの詳細・ポイントや注意点をご説明しますので、参考にしていただけたら幸いです。

目次

減価償却の方法「定額法」「定率法」を知る上での基礎知識

固定資産を減価償却する条件は「使用可能期間」と「取得価格」

条件のひとつが「使用可能期間」です。

使用可能期間は耐用年数とも呼ばれ、資産の種類によって異なります。年数に応じて、その間に渡って償却します。
耐用年数についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>耐用年数とは? 法定耐用年数や減価償却について解説

もうひとつの条件が「取得価格」です。
取得価格にはその資産自体の価格に加え、取引に関わる運送費・設置費・関税等も含まれます。

減価償却の金額は、取得価格と使用可能期間を基に計算します。

法人税法上償却方法の選び方に決まりがある|会計上はない

減価償却の方法には、「定率法」と「定額法」の大きく2つがあります。
税務上は原則定率法を使いますが、会計上では定額法を選ぶことも許可されています。方法によっては届出が必要な場合があるので注意が必要です。

対象となる資産によって、税務上選べる方法が異なります。どちらを選ぶかで納税額や決算数字も異なってくるため、事前に確認をしてどちらにするか決めておくと良いでしょう。

減価償却をする対象別の償却方法の決まりを一覧表で紹介

資産の種類によって償却の方法が異なります。

資産の種類法定償却方法選択可能な償却方法
機械定率法定額法あるいは定率法
工具器具定率法定額法あるいは定率法
無形固定資産定率法定額法
建物・建物付属設備定額法定額法
構築物定額法定額法

建物や構築物では定額法しか認められていないため注意が必要です。
また、法律の変更により、取得した日によっても償却方法が異なるため、詳しくは後述します。

法人は規定のないものは「定率法」|定額法等を選ぶ場合は変更の届け出を

法人では、上記の表のとおり資産によって選べる方法が異なります。
税法上では原則定率法の利用が求められますが、場合によっては定額法が使用できます。また、建物や構築物では定額法しか選べないため、注意が必要です。

定率法以外を選ぶ場合は、「減価償却資産の償却方法の届出書」という書類を税務署に提出しなければなりません。提出期限は、資産を取得した年度の確定申告書の提出期限、中間申告をする場合にはその提出期限までです。

もし届出を提出しない場合は、定率法を選んだものとみなされるため、注意が必要です。

「定額法」の概要と計算方法、計算例を解説

定額法は減価償却期間中、毎年一定額を償却する

取得価格を償却期間中、毎年一定額ずつ償却します。

計算式:減価償却=取得価格×償却率

償却率は年数によって均等に償却していくため、あらかじめ定められています。例えば2年の場合は1÷2=0.5、5年の場合は1÷5=0.2、10年の場合は1÷10=0.1、50年の場合は1÷50=0.02です。償却額ははじめの取得価額を元に計算され、毎年同じ数字です。

もし年度の途中で資産を取得した際には、その年は月割りで計算し、その月分の金額のみ償却額を計上します。

定額法を用いた減価償却費の計算例を見てみよう

償却額は取得価格に償却率をかけて計算します。

償却率の一部は次のとおりです。

耐用年数平成19年3月31日以前に取得平成19年4月1日以降に取得
30.3330.334
50.2000.200
100.1000.100
300.0340.034
500.0200.020

例えば100万円の機械を令和3年に購入し、その機械の耐用年数が3年だったとします。
上記の表を確認すると、償却率は0.334と言うことがわかります。

この時、償却額は下記のようになります。

1年目・2年目…100万円×0.334=334,000円
3年目…100万円-33.4万円×2-1円=331,999円  (最後に簿価1円を残す)

このように、毎年同額の費用を支払い、最終年度のみ残存簿価が1円になるまで償却します。

「定率法」の概要と計算方法、計算例を解説

定率法は減価償却期間中、減価償却費を毎年一定率で償却する

末償却残高に一定の割合の償却率を掛け算して償却額を求めます。

計算式:減価償却費=末償却残高×償却率

年度が経つにつれ資産の残存簿価が小さくなるため、年数が経つにつれて償却費が小さくなるのが特徴です。初年度の利益は小さく、節税の効果は大きくなります。

ただし、定率法では償却保証額が定められており、その数字を下回った場合には、償却額は取得価格に改定償却率を掛け算して算出します。
償却保証額は、取得原価に保証率を掛け算することで算出され、保証率は税法によって定められています。

定額法は毎年一定の金額で償却する方法ですが、定率法は初年度の償却費が大きく、それ以降は償却費の金額が徐々に減っていくという方法です。

定率法を用いた減価償却費の計算例を見てみよう

償却額は末償却残高に償却率をかけることで求められます。

償却率の一部を確認してみましょう。

耐用年数平成19年3月31日以前に取得平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得平成24年4月1日以降に取得
30.5360.8330.667
50.3690.5000.400
100.2060.2500.200

例えば100万円の機械を令和3年に購入し、その機械の耐用年数が3年で、償却率が0.667・保証率が0.11089(保証額110,890円)・改定償却率が1.000とします。

この場合の償却額を確認してみましょう。

年数金額残存簿価
11,000,000×0.667=667,000333,000
2333,000×0.667=222,111110,889
3110,8881

3年目は、償却率0.667で計算をすると保証額を下回るため、残存簿価に改定償却率をかけた110,889×1.000=110,889円が計算上の金額となります。ただし、簿価1円を残し、110,888円が3年目の実際の金額です。

定額法・定率法の違いやメリットをチェックしよう

償却方法メリットデメリット
定額計算が容易初年度の節税効果が小さい
定率初年度の節税効果が大きい計算が複雑

大きな違いは毎年の減価償却費が一定額か減少するかであり、節税効果が異なる

両者の計算方法の一番の大きな違いは償却費の金額です。
定額では償却額が一定なのに対して、定率では最初の年度が一番大きく徐々に小さくなっていきます。

償却額が異なることで、節税できる金額も異なります。
定率の方が定額と比べて初年度の償却が大きいため、定率の場合の方が初年度の節税効果が大きいです。一方で、定率の場合は年度が進むにつれて節税額が小さくなります。

定額法のメリットは計算のしやすさ

当初の取得価格に一定の割合をかけた金額を毎年償却するため、金額の計算が容易です。
一定の額を計上するため、帳簿の作成が簡単で年度が経っても金額を間違えにくいでしょう。

また、定率法と比べて初年度の償却が小さいため、資産を取得した年の利益の数字を大きく見せられるのも特徴です。利益を残しておくことで、取引先や株主からの評価も受けやすくなる可能性もあるでしょう。

計算を簡単にしておきたい場合や、初年度の利益を大きく残したい場合は、定額法を選ぶと良いでしょう。

定率法のメリットは初期の節税効果が大きいこと

都度の残存簿価に対して償却率をかけて償却額を求めるため、初期の数字が大きいです。そのため、初期には定額法よりも利益が小さくなる傾向にあり、結果節税効果が大きくなります。

定率法を選択することで初年度の税額を抑えやすくなり、早期に購入費用の回収が可能となるでしょう。ただし、後期には償却額が小さくなり、節税効果が小さくなっていく点には注意が必要です。

どちらがメリットがあるかは会社の状況による

どちらを選ぶと有利かは会社の状況によって異なります。

定額法の場合は、初期の償却額は相対的に小さいため、利益を大きく残しておけます。また、計算も簡単です。初年度の利益を大きくしたい場合や、経理の計算を複雑にしたくない場合は定額法を選ぶと良いでしょう。

定率法の場合は、初期の償却が相対的に大きいため、利益が小さくなり、初期の税金を低く抑えることができます。初期の資金繰りを良くしておきたい企業は定率法を選ぶと良いでしょう。

注意|定額法・定率法はそれぞれ、過去の税改正により取得日で計算方法が異なる

定額法における過去の税改正前後にある計算方法の違い

償却方法対象資産償却額
旧定額法平成19年3月31日以前に取得(取得価額ー残存簿価)×償却率
定額法平成19年4月1日以降に取得取得価額×償却率

例えば500万円・耐用年数5年(償却率0.2)の資産を保有していたとします。

旧定額法では、取得価格の95%相当を償却するまでは、償却額は(取得価額ー残存簿価)×償却率にて求めます。その後は、取得簿価から1円をのぞいた金額を5で割った金額となります。残存簿価は10%にあたる50万円です。

年数償却額
1~5年目(5,000,000-500,000)×0.2=900,000円
6年目(5,000,000-900,000×5)–5,000,000×5%=250,000円
7~10年目(250,000-1)÷5=50,000円
11年目49,999円

改正後の定額法では最初の償却額の計算で残存簿価を引き算はせず、次のとおりです。

年数償却額
1~4年目5,000,000×0.2=1,000,000円
5年目999,999円

定率法における過去の税改正前後にある計算方法の違い

方法対象資産償却額 (償却保証額まで)
250%定率法平成19年4月1日から平成24年3月31日までに取得末残高×定額法の償却率×250%
200%定率法平成24年4月1日以降に取得末残高×定額法の償却率×200%

両方ともに、償却保証額を過ぎたら定額法にて償却します。

例えば500万円・耐用年数5年(定額法の償却率0.2)の資産を保有していたとします。
この時、250%定率法の時の償却率は0.2×250%=0.5で、計算は次のとおりです。

年数償却額
1年目5,000,000×0.5=2,500,000円
2年目(5,000,000-2,500,000)×0.5=1,250,000円

※保証額を過ぎたら定額法にて計算

この時、200%定率法の時の償却率は0.2×200%=0.4で、計算は次のとおりです。

年数償却額
1年目5,000,000×0.4=2,000,000円
2年目(5,000,000-2,000,000)×0.4=1,200,000円

※保証額を過ぎたら定額法にて計算

まとめ

今回は固定資産の償却方法について詳しくご説明しました。
どの償却方法を選ぶのかにより、利益や税額が異なるため、事前に計算方法を理解して適切なものを選ぶことが大切です。

定額法を選ぶことで計算はより簡単になりますが、初年度の税額が定率法よりも大きくなります。一方で、定率法を選べば初年度の税金を小さくできますが、計算が複雑なためよく理解して計算するようにしましょう。

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oneplus編集部

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