小売業の財務分析とは?小売業の特徴やビジネスモデルから分かりやすく解説

企業が安定した経営状態を保つために財務分析は重要です。また、財務分析は業種ごとの特徴を踏まえることが大切になります。

本記事では、小売業における財務分析について解説します。小売業の概要やその特徴を紹介した上で、財務分析に必要な指標までを解説します。

小売業ってどんな業種?

まずは小売業の概要を確認します。
小売業は「生産者や卸売業者から仕入れた商品を消費者に販売する仕事」を指します。
身近な例を挙げると、スーパーやドラッグストア、アパレルショップ等があります。

誰かが生産した商品を最終消費者に販売する業種すべてを「小売業」と呼びます。

特徴・ビジネスモデル

小売業は実店舗における接客・販売が特徴です。
財務や経理等の仕事はバックオフィス業務として、事務所で行われることが多い仕事です。しかし、小売業の多くは実店舗を持ち、顧客を相手に仕事が進みます。

具体例としては、スーパーが挙げられます。
スーパーでは、野菜や魚等を生産者や卸売から仕入れ、店舗で価格を設定して販売します。そして、最終的に消費者の手元へと渡ります。
上記のような「仕入」「価格設定」「販売」という流れが小売業の特徴です。

最近ではネット通販の普及により、実店舗を持たない小売業も増加しています。しかし、仕入から販売までの流れは同じです。

そもそも財務分析は何をする?

次に財務分析について確認します。
財務分析は小売業だけでなく、すべての企業に必要な作業です。ここではまず財務分析そのものについて解説をします。

財務三表の分析で経営改善に役立てる

財務分析は「企業の財政状態を把握すること」です。「資金が足りているか」「適切な場所に費用が分配されているか」を分析により把握し、経営の健全化を図ります。
また、分析により「資金が十分でない」「閑散状態の部署に費用を割きすぎている」等の問題に気が付きます。
決算時や半期ごと等、定期的に財務分析を実施することで、企業の経営悪化を未然に防ぐことができます。

小売業の財務分析とその特徴

次に小売業に範囲を絞って、財務分析を見ていきましょう。
一口に小売業と言っても、細かく分類ができます。今回は特に代表的な3つを紹介します。

各種商品小売業

まずは、百貨店や総合スーパー等、多様な商品を扱う小売業があります。
食品や衣服等に特化するのではなく、様々な顧客を一度に狙う特徴があります。
各種商品小売業における財務的特徴は以下の通りです。

・棚卸資産回転率が高い
・売上に対する売掛金の割合が低い

百貨店等は、商品を在庫として持たず、売上があった時に計上する方式を採用しています。そのため、在庫数が少なく資産の回転率が高い特徴があります。
また、販売は現金取引がまだまだ多い現状があるため、売掛金として計上される割合が低くなっています。

織物・衣服・身の回り品小売業

次に、衣服や雑貨等を扱う小売業です。主な特徴は以下の通りです。

・粗利率が高いが、営業利率は低い
・棚卸資産回転率が低い

衣料品はシーズンごとにニーズが異なる点や、顧客ごとの好みが大きく異なる点により、在庫を抱えがちな特徴があります。また、食品の場合は賞味期限の制限がありますが、衣料品では期限がないため長期間在庫として抱えてしまいます。
しかし、期限がないことで翌年も販売できるため、粗利率は高くなる傾向があります。

飲食料品小売業

最後に飲食料小売業です。最も身近なスーパーが挙げられます。
主な特徴は、棚卸資産回転率が高い点です。

スーパーの仕入は、賞味期限があるため入念な計画を元に行います。そのため、データを元に「必要と想定される分だけ発注」し、在庫を極力持たないようにします。
結果的に、衣料品よりも回転率が高くなります。

小売業で注目すべき指標

小売業の中でも細かく見ていくと、その財務的特徴が異なるとわかりました。さらにここからは、小売業の財務状況を読み解く際に必要な指標について解説します。これから紹介する7つの指標を用いて、分析を進めていきましょう。

客単価

客単価は「来店客一人あたりの売上」を指します。
具体例を出すと、とあるスーパーの1日における売上が60万円で、来客人数が100人だった場合の客単価は「60万円÷100=6,000円」となります。

メイン商品と一緒に使用頻度が高い商品を陳列し、ついで買いしてもらうことや、特設売り場を設置して売上単価を上げる工夫が小売業では実施されています。

時間当たり来店客数

来店客数を時間帯ごとに分析したものを指します。
特にスーパーやドラッグストアでは、開店時や帰宅ラッシュ時等の時間帯によってピークタイムが発生します。

事前に「ピークタイムは来店客がどれくらいか」「アイドルタイムはどれくらいか」を把握しておくことで、適切な人件費を充てることができます。また、ピークタイムの把握は、食料品の場合に「できたて」「新鮮」等をアピールでき、売上増加に役立ちます。

来店頻度

来店頻度は「特定の客が月単位で何回来店するか」を表します。「月に8回来店する客の来店頻度は8回」と判断できます。
来店頻度が高く、リピーターを多く獲得できると、客の購入頻度が高いと判断できます。

リピート率

リピート率は一定期間内における、同一客の来店割合を指します。
新規客が多いよりも、リピーターを多く獲得した方が低コストで利益を出せます。
さらに、リピーターは新規客よりも客単価が高い傾向にあるため、各企業はリピート率を注視します。

商品廃棄率

商品廃棄率は「ロス率」とも呼ばれます。仕入れた商品に対して、どれくらい廃棄したかを表します。廃棄率は「廃棄分÷仕入分×100」で計算できます。
廃棄率は来店客数の分析や、時間帯あたりの来店客数を把握することでコントロール可能な数値です。

商品原価率

商品原価率は単純に原価率とも呼ばれます。商品の売上に占める原価の割合で、「仕入価格÷売価×100」で計算できます。

この原価率は、各小売業種ごとにおおよそ決まっており、スーパーは約75%、百貨店や衣料関連は50~60%程度が適正とされています。

一坪売上

最後に一坪売上は「店舗の人坪当たりが占める割合」を指します。「月間売上÷坪数」で計算できます。スペースが限られる店舗内では、より売上を伸ばすための陳列が求められます。そのため、一坪売上を算出し、売れ筋商品を効率的に販売することが求められます。

まとめ:財務分析をして小売業の経営に活かそう

今回は、財務分析の中でも小売業に特化して、分析方法や指標を解説しました。一口に小売業と言っても、扱う商品によって数値の傾向が異なるため、特徴を踏まえた分析や販売戦略が求められます。

また、分析には客単価や原価、廃棄率等、考慮すべきポイントがいくつもあります。各項目を適切に分析し、資産の管理や売上向上に努めましょう。

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