ジョイントベンチャーとも言われる合弁会社ですが、聞いたことはあれど他の会社との違いを理解している方は少ないのではないでしょうか。今回の記事では、合弁会社について下記内容を紹介していきます。
- 合同会社等の他の法人形態との違いとは
- 設立によって生じるメリット&デメリット
- 設立時に押さえておきたい3つのポイント
- 設立までの流れ
本記事を参考に合弁会社について理解を深め、設立時の参考にしていきましょう。
合弁会社とは?読み方や意味、出資比率の基本について
合弁会社(ごうべんがいしゃ)とはいわゆる「共同出資会社」のこと
合弁会社とは、複数の企業が一緒にビジネスを行って社会に貢献していくことを目指し設立される会社のことです。契約等によって複数の企業が共同で新しい会社を興したり、既存企業の買収を行います。
目的としては、下記のようなケースが考えられます。
- 複数企業で共同のビジネスを行うことで、コストやリスクの分散をしたい
- 外資系企業の技術やノウハウ、知識等を得たい
なお合弁会社は、外資系企業の日本進出がきっかけで日本でも導入されるようになりました。それまでは外資が100%出資している会社の新規設立を認めていなかったからです。
よって、外資系企業は日本市場に進出するためには、日本の企業とタッグを組み、共同で出資をして合弁会社を設立する形を取らざるを得ませんでした。
合弁会社の基本的な出資比率は双方50%!ただし注意点も
もし2社で合弁会社を設立する場合の出資比率は、基本的には出資比率を半分ずつ均等にします。しかし、設立前に2社の内どちらかがメイン企業となり、もう一方の企業がサポートに回る場合もあるかもしれません。こうしたケースでは、メインとなる企業の出資割合が多くなることがあります。
また、下記のような要素を勘案して出資比率を定める場合もあるでしょう。
- 新会社に提供できる人員やノウハウ、取引先の有無等の貢献度
- 会社設立の目的や今後のビジネス展開
- 製造機械等の現物出資の有無
もし出資比率に差が出た場合でも、拒否権付株式を発行する等して、経営の意思決定に参加していくことは可能です。
合弁会社と、合同会社などの「会社法の規定に基づく法人形態」との違いとは
会社法で定められているのは、下記4つの会社です。
- 株式会社
株主は有限責任で、自分で出資した金額の範囲内で責任を取る。また、出資した割合によって議決権や利益配当を得ることができる - 合名会社
出資者全員が無限責任を負うことになる - 合同会社
出資者は有限責任で、かつ業務執行権を持つ - 合資会社
無限責任と有限責任の両方が存在している
実は「合弁会社」と言うものは存在せず、単に共同出資によって設立された会社を意味しています。合弁会社を設立した後、上記4つのどれかを選択していくことになるのです。
一般的には、出資者が有限責任である「株式会社」または「合同会社」を選択することが多いでしょう。
合弁会社との違いがわかりづらい「合併」「提携」「連携」「子会社」を解説
「合併」とは複数の会社を1つに合わせるM&Aの手法
合併とは、複数あった会社をひとつの会社に統合するM&Aの手法のことです。それぞれ独立した会社同士で行われる場合や、グループ内の会社同士で行われる場合があります。
なお、合併によるM&Aは、下記のような目的で行われるケースが多いでしょう。
- 既存の会社を取得するため
- グループ企業で組織の再編を行うため
- 業績不振に陥ってしまっている企業を助けるため
- 税務面でのメリットを享受するため
合併について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。
>>M&A手法のひとつ「合併」とは? 種類とメリットデメリットをおさえよう
「提携」とは独立した企業同士がある分野において協力体制を取る施策
「提携」とは、言葉の意味としては「お互いに手を取り合って助け合いながら物事を行う」や「一緒に何か行動を起こしていくこと」です。ビジネスでは「業務提携」「資本提携」という形で用いられることが多いのではないでしょうか。
お互い独立した存在である企業同士が、ある特定の分野において協力して事業を行っていくための協力体制を取る施策のことを「提携」と言います。似た言葉に「協業」がありますが、これは企業同士の協力関係を指します。「提携」はそこから一歩踏み出し、特定の分野での協力関係のことです。
「連携」とは「提携」よりも緩やかな結びつきで協力し合うこと
「連携」は「提携」と同様に、企業同士が協力して事業を行っていくことを表しているので、ほぼ同じ意味合いを持っています。異なる点は、結びつきの強さです。
「連携」は「提携」と比較すると緩やかな結びつきによる協力関係であり、目指すべき目的は共有していても、実際に事業を行う際には別々で行動することが多いでしょう。
「子会社」とは50%の議決権を親会社に委ねた、支配を受ける会社
「子会社」とは、他の会社によって50%を超える議決権を保有されている会社のことです。逆に「50%を超える議決権を保有している会社」のことを、親会社と言います。子会社は親会社によって、行っている事業の方向性だけではなく財務面等についても支配されている関係性です。
合弁会社設立によって得られるメリット4つ
1.出資した会社同士のシナジー効果が見込める
会社によって、持っている技術や特許、使える経営資源、過去に積み上げてきたノウハウやブランド力等が異なります。こうしたお互いが持っている強みを活かすことができますし、組み合わせて事業を行っていくことで、一社ではできない製品・サービスの開発が行える可能性を高めることができるでしょう。ビジネスにとって大切な、スピード感を高める効果も期待できます。
お互いの得意分野、そして強みをうまく活かしていくことで、シナジー効果を見込むことが可能です。
2.新規分野への参入や新規事業の始動の負担を軽減できる
合弁会社を設立することで、自社では保有していない経営資源やノウハウ等を活用することができます。それは即ち、新規分野への算入や新しい事業をスタートさせる際に、大きな力となるでしょう。
新規事業を行うためには資金だけではなく、人材の確保や技術・ノウハウの習得等に多くの時間やコストがかかります。他企業と力を合わせることで、お互いのビジネス上の強みを活かし合えるだけでなく、事業をスタートさせるまでの負担軽減にも繋がるはずです。
また、現代はビジネス上の変化が激しく、不確実性も高まっています。企業同士だけでなく国家間の関わりも強く、複雑性も増している状況です。合弁会社の設立は、リスクの分散にも役立つでしょう。
3.海外への進出のハードルを下げられる
諸外国の中には、外国企業の100%出資による会社設立を認めていない国も存在します。もしこうした国でビジネスを行いたい場合には、現地の企業と共同出資で会社設立を行うことができるでしょう。
また、該当国の企業が保有しているノウハウや経営資源の活用ができるのは大きなメリットです。国によって法律はもちろん、ビジネスルールも異なるため、現地企業との会社設立を行うことによって、海外進出のハードルを下げることができます。
4.会社設立のコストを抑えることができる
自社だけで会社設立を行う場合と比較して、複数の会社で行ったほうが設立時の費用負担を抑えることが可能です。また、共同で出資をするため、協力関係の解消も起こりにくいでしょう。
なぜなら、資金を提供し合って会社設立をしているので、リスク面も共有しているからです。協力関係の破綻はビジネスの失敗に直結してしまうため、そうした方向に向いてしまう意思決定はされにくくなります。
合弁会社設立によって生じ得るデメリット4つ
1.出資した他社の信用失墜が自社にも影響する
もし一緒に出資した企業が信用失墜させることを犯してしまった場合は、自社にも悪影響が及ぶ可能性があります。社会的信用の下落はもちろん、株価の暴落もあるかもしれません。
設立前に候補となる企業の調査を徹底的に行い、過去に不正やトラブルを起こした経験がないか等を確認しておきましょう。
2.経営資源が他社に流出するリスクがある
他社の経営資源を活用できるメリットがある反面、自社のノウハウや技術の提供も行うため、情報漏洩や盗用をされてしまうリスクは常にあるでしょう。場合によっては、人材が流出してしまうかもしれません。
こうした事態を起こさないためにも、機密保持契約の締結をするといった法的なリスクマネジメントは必須です。また、特許等の知的財産を守るための体制も整備しましょう。
3.各社の思惑があるので意思決定が難航することも
自社だけであればスムーズに行える意思決定も、企業が複数絡むことで難航する場合も出てくるでしょう。設立当初は同じ目的を持っていたとはいえ、お互いに抱えている利害も異なるはずです。その決断をどうするかによって自社に及ぼす影響も異なるので、意見調整の為のコミュニケーションは増えるでしょうし、意思決定までにかなりの時間を要するかもしれません。
合弁会社を設立するにあたっておさえておきたい3つのポイント
1.提携先となる企業を十分に調査する
どのような企業とパートナーシップを結ぶかによって、設立後のビジネス展開がうまくいくかどうかが決まると言っても過言ではありません。自社の経営に悪影響を及ぼすことがないように、事前に十分な調査を行いましょう。
チェックしておくべき項目を下記に挙げます。
- 経営理念、今後の経営方針
- 保有している技術・ノウハウの詳細や評判
- 過去の実績
- 業界での位置付けやシェア割合
- 自社の企業風土との相性
- お互いの業界についての理解度
2.提携する条件を明確に決める
条件面について、提携する前に明確に定めておく必要があるでしょう。
主な項目として、以下に例をいくつか挙げます。
- ビジネスを行う上での権限(権利)の設定
- 利益の分配方法、割合
- 事業の運営方針
- 意思決定の方法
例え対等な条件で設立しても、結局はお互いの企業同士で派閥を作ってしまうことが多いです。しっかりとお互いを尊重し、そして信頼関係を築くためにも、提携条件を明確化しておきましょう。事前にどれだけ不安を解消できるかが重要です。
3.出資比率や撤退する際の条件をあらかじめ決めておく
出資比率については、ビジネス上でのお互いの役割や責任を持つべき範囲等を踏まえた上で、慎重に話し合いを行いましょう。考えるべき事柄について、いくつか例を挙げます
- 技術面、営業面での力関係
- お互いの強み、そして課題
- 双方にどのようなメリットまたはデメリットが生じるか
また、予め撤退条件を決めておくことも重要です。
事業を行う際のリスクと対応策について、想定されるものを全て洗い出しておきましょう。その上で、撤退条件を定めておけば後々慌てずに対応していくことができます。撤退するべきタイミングがわからず、損失だけが増えていく事態は避けるべきです。
合弁会社の設立にいたるまでの流れを見てみよう
最後に、合弁会社を設立するまでの大まかな流れを確認していきましょう。
- パートナーとなる候補企業の調査
共に事業を行っていく企業のリサーチ、選定を行っていきます。もし既存の取引先であれば、関わる人たちから「自社と社風が合うか」「技術力」「財務状況」等について、生の声を集めることができるでしょう。上場企業であれば、四季報やIR情報を上手に活用していきます。 - 基本合意の締結
設立後に目指すべき目標、達成するための戦略、守るべきルール等について情報の共有を行いましょう。お互いにとって不利になる条件はないか、予想されるリスクと対処法等の確認後、基本合意の締結を行います。 - 締結条件の設定・確認
出資比率をどうするか、利益分配の方法、撤退条件、取締役や株式の譲渡について等、様々な条件のすりわせを行います。専門家からのセカンドオピニオンを聞いて判断することも重要です。 - 契約の締結
ここまでの内容について全て合意できたら、会社設立の契約締結を行います。 - 会社設立
設立完了後、実際に事業の運営をスタートさせます。業績を見つつ、追加出資や経営戦略の変更等を都度行っていきましょう。
まとめ
今回の記事では「合弁会社とは何か」から「設立までの流れ」について、幅広く紹介してきました。
- 合弁会社とは、複数の企業で共同出資を行って設立された会社のこと。
- 「お互いの経営資源や強みを活かせる」「時間や資金のコストを削減できる」「海外進出のハードルが下がる」等のメリットがある。
- 「自社の技術やノウハウの流出リスク」「相手企業が信用失墜をした場合に自社にも悪影響を及ぼす」等のデメリットがある。
- 「事前の企業調査」「提携条件」「出資割合」「撤退条件」を予めしっかり決めておくことが成功の鍵。
合弁会社の設立を考えている方や、そうした話を他社から持ちかけられているという場合は、しっかりと概要を理解したうえで慎重に進めるようにしましょう。