決算を迎えた法人は、決算日の翌日から2か月以内に管轄の税務署に対して法人税の申告を行わなければなりません。
法人税の申告は、法人税申告書を提出することで行います。
今回は、法人税申告時に提出する勘定科目内訳明細書の作成の方法や経理作業の手間を削減するおすすめのサービスをご紹介します。
勘定科目内訳明細書とは? その目的と提出期限について
まずは、勘定科目内訳明細書の基本的な知識から解説いたします。
勘定科目内訳明細書とは?
勘定科目内訳明細書は、法人税確定申告の際に税務署へ提出します。
法人は決算日の翌日から2か月以内に管轄の税務署に対して法人税の確定申告を行わなければなりません。
書類の内容としては、各勘定科目ごとの期末時点での残高等が明記されており、企業の経営・財政状況を判断することができます。
また、税務署のほかにも利害関係のある金融機関等からも提出を求められることがあります。
勘定科目内訳明細書を提出する目的
勘定科目内訳明細書は、税務署が法人の取引状況や財産、財政状況を把握するための書類です。内容に不審な点が無いか、正しく処理されているかがチェックされます。
また、その取引状況の内容が税務監査先選定基準のひとつになっているとも言われています。
勘定科目内訳明細書の提出期限は?
勘定科目内訳明細書は、会計年度の最終日である「決算日の翌日」から2か月以内が提出期限とされています。
例えば、会計年度が4月1日から3月31日の場合は、決算日は3月31日となります。
よって、決算日の翌日の4月1日から2か月後の5月31日が提出期限です。
勘定科目内訳明細書が簡素化・その内容は?
2020年4月1日より大法人のe-Tax利用が義務化されたことと同時に、法人税等の申告に関する手続き内容が見直され一部簡素化されました。
内容は下記の通りです。
- 記載内容見直し
売掛金や買掛金等記載件数が100件を超える場合は、上から100件のみでよいとされた。
- 記載単位柔軟化
取引先単位で記載している勘定科目については、その取引先の事業所や支店ごとの合計額の記載でよいとされた。
- 除外された記載事項
- 貸付金および受取利息の内訳書の貸付理由
- 借入金・支払利子の内訳の借入理由
- 雑役、雑損失等の内訳書の固定資産売却損益
勘定科目内訳明細書の全16種類・その書き方は?
勘定科目内訳明細書各項目の概要と書き方、注意点を解説します。
①預貯金等の内訳書
自社が持つ預金口座についての情報を記載します。
(記載する内容)
- 取引金融機関名
- 支店名
- 口座種別
- 口座番号
- 期末時点での残高
(記載時の注意点)
- 口座名義人の名称が企業の代表者名となっているかを確認
- 口座の名義と代表者名が異なる場合は「名義人:~」と記載する
②受取手形の内訳書
受取手形の内訳は下記の内容を記入します。
(記載する内容)
- 振出人
- 振出日
- 支払期日
- 支払銀行名
- 受け取った手形の合計額
- 割引手形の場合:割引銀行名
- 裏書譲渡した場合:譲渡先
(記載時の注意事項)
- 手形割引は個別に記載する必要あり
③売掛金の内訳書
売掛金については下記の情報を記入します。
(記載する内容)
- 科目名:売掛金・未収入金
- 取引先名:名称、所在地
- 期末の残高
- 未収入金の取引内容
(記載時の注意事項)
- 個別に記載する取引先は5件まで
④仮払金、貸付金および受取利息の内訳書
仮払金・前渡金・貸付金・受取利息についての記載方法は下記の通りです。
(記載する情報)
- 勘定科目:仮払金または前渡金
- 取引先情報:取引先名、住所、自社の代表者との関係
- 期末残高
- 取引内容
(記載時の注意事項)
- 個別に記載する取引先は5件まで
⑤棚卸資産の内訳書
勘定科目ごとに記入します。
(記載する情報)
- 勘定科目(商品、仕掛品、原材料、貯蔵品等)
- 品目の詳細
- 数量
- 商品等の単価
- 評価額増減額(評価替えを行った場合)
(記載時の注意事項)
- 品目が多くなりすぎる場合はグループ分けを行う等し、記載する項目が多くなりすぎないよう工夫する
⑥有価証券の内訳書
有価証券は「売買目的有価証券」「満期保有目的等有価証券」「そのほか有価証券」ごとに各情報を記載します。
(記載する情報)
- 区分
売買目的有価証券:「売買」と記載
満期保有目的等有価証券:「満期」と記載
そのほか有価証券:「そのほか」と記載 - 期末残高
売買目的有価証券:時価評価前帳簿価格・時価評価後の額を記載
満期保有目的等有価証券・そのほか有価証券:下段に帳簿価格を記入
合計欄:下段の合計額
(記載時の注意事項)
- 期中に売却を行い、期末時点での残高がゼロの場合でも記載が必要
- 証券会社経由の有価証券の取得、売却については「期中増(減)の明細」への記入が必要
⑦固定資産の内訳書
土地、土地の上に存在する権利、建物については下記の内容を記載します。
(記載する情報)
- 種類・構造、用途、面積、所在地
- 期末残高
- 期中取得(処分)の明細(移動事由欄)
(記載時の注意事項)
- 期中に売却してしまった場合でも記入すること
⑧支払手形の内訳書
支払手形は取引先ごとに下記の項目を記載します。
(記載する項目)
- 支払先名
- 期末残高
- 提出年月日、支払期日
- 支払銀行名
(記載時の注意事項)
- 融通手形は個別に記載し概要に「融通手形」と記入する
⑨買掛金の内訳書
買掛金、未払金、未払費用については下記項目を記載します。
(記載する項目)
- 勘定科目:買掛金、未払金、未払費用
- 相手先名
- 相手先の住所
- 期末残高
- 取引内容(未払金の場合)
- 未払配当金(残高がある場合のみ)
- 未払役員賞与(残高がある場合のみ)
(記載時の注意事項)
- 期末時点で50万円以上の残高がある場合は個別に記載する
- 未払役員賞与:使用人兼役員の使用人賞与は対象外
⑩仮受金(前受金・預り金)の内訳書、源泉所得税預り金の内訳書
仮払金、前受金、預り金(所得税預り金)は下記の項目を記載します
(記載する事項)
- 勘定科目:仮払金、前受金、預り金
- 相手先情報:相手名称、住所、自社(自社の代表者)との関係性
- 期末残高
- 報酬の支払年月(源泉所得税預り金の場合)
- 取引内容(所得税の場合は所得の種類を記載)
(記載時の注意事項)
- 相手先が役員、株主、関係会社の場合は、個別記載が必要
⑪借入金および支払利子の内訳書
借入金・支払利子については下記を記載します。
(記載する事項)
- 借入先の名称
- 自社(自社の代表者)との関係性
- 借入先の住所
- 期中の支払利息合計額
- 借入利率
- 借入が必要であった理由
- 担保(ある場合のみ)
(記載時の注意事項)
- 借入先が役員、株主、関係会社のときは50万円に満たなくても個別で記載しなければならない
⑫土地の売上高等の内訳書
土地を売却、または仲介した場合は、下記の通り記載します。
(記載する事項)
- 売上、仲介手数料のいずれかを記載
- 住所、地目、面積
- 売上げたの年月
- 売上先名称および住所
- 売上の対象となった土地の面積
- 売上金額または仲介手数料額
- 売上げた土地を取得した年
(記載時の注意事項)
- 土地の売却件数が多い法人については、内訳書の枚数を3枚程度にまとめるのが望ましいとされている
⑬売上高等の事業所別内訳書
売上高については下記の内容を記載します。
(記載する事項)
- 事業所名および住所
- 事業所の責任者氏名および自社の代表者との関係
- 事業内容
- 売上高
- 期末棚卸高
- 期末従業員数
- 事業所の建物の総面積
- 源泉所得税を納付する税務署名
(記載時の注意事項)
- 期中の事業所開設または廃止があった場合はその旨と開設または廃止の年月日を記載すること
⑭役員給与等の内訳書
人件費や役員報酬手当については下記の内容を記載します。
(記載する事項)
- 役職名および担当業務(役員報酬の場合)
- 役員の氏名、住所および代表者との関係
- 常勤役員か否か
- 役員給与の額
(記載時の注意事項)
- 役員報酬は「使用人職務分」「定期同額給与」「事前確定届出給与」等の区分に分けられるため、その区分に適した欄へ記載し区分ごとの内訳を明確にすること。
⑮地代家賃等の内訳書
地代家賃、利権金等の期中支払い、工業所有権等の使用料は下記の内容を記載します。
(記載する事項)
- 地代なのか家賃なのかを(地代家賃の場合)
- 物件の用途と所在地
- 貸主名および所在地
- 支払金額
- 支払対象期間
- 利権金当の詳細(利権金等の期中支払い)
- 契約期間(工業所有権等の支払料の内訳書)
(記載時の注意事項)
- 権利金等を複数回に分けて支払いを行った場合は、支払日別に記載が必要
⑯雑益、雑損失等の内訳書
雑益、雑損失、雑収入、固定資産売却益(損)、還付金、貸倒損失等については下記の事項を記載します。
(記載する事項)
- 勘定科目
- 取引の詳細
- 取引先名
- 取引先の住所、所在地
- 金額
(記載時の注意事項)
- 税金の還付金の場合はすべて記載が必要
ミスがあるとどうなる? 勘定科目内訳明細書作成時のポイント
もしも、勘定科目内訳明細書の作成ミスが起こった場合どうなるのでしょうか。
ここではミス発生時について解説します。
ミスがあると税務調査で指摘を受ける可能性も
勘定科目内訳明細書にミスがあった場合でも、決算書および法人税確定申告書の内容に誤りがなければ、大きな問題はないと言えます。
納税額等の申告は決算書や法人税確定申告書をもって行うため、その2点に誤りがなければ勘定科目内訳明細書に誤りがあったとしても、納税額や申告の内容に大きな影響はないと言えるからです。
一方、決算書や法人税確定申告書の内容に誤りがあったことで、勘定科目内訳明細書も誤記入が発生した場合は、税務署からの指導等がある可能性が高いでしょう。
なぜなら、決算書・法人税確定申告書の作成ミスは、納税額の誤計算へ繋がるからです。
よって、納税額の修正が必要と判断された場合は、税務署からの指摘、指導等が入る可能性が高いと言えるでしょう。
しかし、勘定科目内訳明細書も経営や取引状況の判断に利用される重要な申告書類のひとつですので、作成は慎重かつ正確に行うよう心掛けましょう。
期末残高を貸借対照表・損益計算書と一致させる
勘定科目内訳明細書を作成にあたっては、決算書の貸借対照表および損益計算書と残高を照合し一致させることがポイントです。
貸借対照表と損益計算書の各勘定科目の残高と一致させながら勘定科目内訳明細書を作成すると、数値的な大きな誤りはまず発生しないでしょう。
照合しながらの作業は大変で手間のかかることですが、重要な決算書類の一部であることを念頭に置き丁寧な作成を行うことが重要です。
会計ソフトを使用した勘定科目内訳明細書の作成方法
ここまで、勘定科目内訳明細書の作成方法や注意点等を解説してきましたが、やはり16種類の書類を作成していくことは、手間のかかる作業です。
そこで、おすすめしたいのが、会計ソフトを使用して勘定科目内訳明細書を作成する方法です。
会計ソフトを使用することで、日々計上する会計データをもとに、自動的に勘定科目内訳明細書を作成することができます。
そして、会計ソフトによる自動作成の機能を利用することには下記のメリットがあります。
(会計ソフトを利用した場合のメリット)
- 経理担当者の負担削減
- 作業効率のアップ
- 転記ミス等の人為的ミスの削減
少しでも担当者の負担を軽減するためにも、会計ソフトを利用した勘定科目内訳明細書の作成がおすすめです。
会計ソフトと連携して請求書まわりを効率化する「oneplat」
さらに作業の簡略化や経理担当者の作業のスマート化に向けておすすめしたいのが「oneplat」というサービスの利用です。
「oneplat」は会計ソフトと連携させて、請求書等の支払データをとりまとめ、自動的に支払管理を行ってくれるサービスです。
「oneplat」のサービスは下記の流れで行われます。
企業は受け取った請求書等の内容をoneplatへ取り込む
↓
oneplatは1か月分の支払データを取りまとめる
↓
oneplatは企業に替わり各取引先へ支払を行う(立替え払い)
↓
企業はoneplatに対し後払いで立替え金額を一括支払する
上記の様にこれまで毎月各取引先へ個別に行っていた支払作業が、oneplatへのまとめて一括支払いになるのです。
一括支払いにすることで、振込先ごとに掛かる支払手数料や、振込データ作成の手間を削減することが可能になります。
また、様々な会計ソフトとの連携も可能なので、oneplatで請求書等のデータを取り込むと、自動で仕訳入力等を行ってくれます。
これにより、日々の経理作業もはるかに楽になり計上ミスも減らすことが可能です。
まとめ
勘定科目内訳明細書の作成方法について解説しました。
作成項目は多くありますが、決算書とも照合をしながら作成していくと、間違いも減らすことができます。
また、ご紹介したように、経理に関する様々なシステムやサービスも販売されています。
働き方改革も進む状況下、是非便利なシステムを積極的に取り入れ、業務効率化をめざしていきましょう。