勘定科目・雑収入の内容とは?法人でよくある仕訳例や売上との違いも解説

「雑収入」は法人の会計処理で使われる勘定科目です。「営業活動以外の収益」を計上できるため、便利な勘定科目です。一方「雑所得」といった似た言葉や様々な基準があり、曖昧に理解していると納税額に影響してしまいます。また、雑収入の取り扱いを間違えると、金融機関から融資を受けにくくなる等デメリットもあります。

雑収入の特徴や仕訳方法、注意すべきポイント等を詳しく解説していきます。

目次

雑収入は法人に特有の勘定科目|その内容とは?

雑収入とは簡単に言うと「本業の活動に付随して得られた収入を管理する」勘定科目で、金銭的にも質的にも重要度の低い収入を計上します。雑収入は、法人特有の勘定科目です。

個人事業主が本業の活動に付随して得られた収入を管理する場合は、「事業主借」という勘定科目を使用します。

例えば、雑収入に計上できるものは以下のようなものがあります。

  • 地代収入
  • 家賃収入
  • 駐車場の賃貸収入
  • アフィリエイト収入
  • 受け取った損害保険金
  • 自動販売機設置収入
  • 代理店手数料の収入
  • 開店祝い等の祝儀
  • 作業屑・スクラップの売却収入
  • リサイクルの収入
  • 受け取った損害賠償金
  • 給付金・助成金
  • 消費税等税金の還付金・還付加算金

雑収入との違いがわかりにくい雑所得と事業所得 

雑収入は「勘定科目」雑所得は「所得の一区分」   

「雑収入」と「雑所得」は名称はよく似ており「本業以外で得る収益」という点では似ていますが、まったく別物です。

雑収入雑所得
区分法人の会計の勘定科目個人の所得の一区分
概要本業の活動に付随して得られた収入を管理する勘定科目以下の9種類のいずれにも該当しない所得
(利子所得、事業所得、配当所得、不動産所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得)
一時所得
具体例地代収入
家賃収入
駐車場賃貸収入
保険金の受取
自動販売機設置収入 等
国民年金等公的年金
原稿料、講演料
副業による所得
FX取引による所得
仮想通貨の売却益 等

雑収入は売上になるのか? 売上との違いを解説

前提として本業での収入が「売上」で、本業の活動以外で得られた収入が「雑収入」です。損益計算書では、「売上」ではなく「営業外収益」に区分され、その中に「雑収入」という項目があります。

例えば、商品を製造して販売したときに得られる代金は「売上」です。また製品を製造したときに発生した作業屑を売却した代金は「雑収入」なので、別々の帳簿で管理します。ほかにも、固定資産である備品を売却した際に得られた収入も雑収入に該当します。

ほかの勘定科目に含まれない収益に使われる項目ですが、頻繁に発生する場合は勘定科目を設定すると良いでしょう。

雑収入の中には消費税の課税売上に含まれないものもあるので、税金の計算をするときは注意が必要です。

雑収入の範囲は各法人によって異なる|主な例を紹介

帳簿と実際の現金の差額が発生した場合

帳簿上の金額と実際の金額を確認して不一致が起きた時、差額をいったん「現金過不足」として計上し、原因が判明したら正しい勘定科目に振替えます。

もし現金過不足の原因が判明せず、帳簿より実際の現金が多いまま決算日を迎えてしまった場合は、現金過不足を「雑収入」に振替えなければいけません。

【例】レジ締めをしたら500円多いことがわかった。

借方貸方
現金500現金過不足500

その後、原因が判明しないまま決算日が到来したので、雑収入に振替えた。

借方貸方
現金過不足500雑収入500

消費税や法人税等の税金還付金、還付加算金

多く払い過ぎていた税金の戻り金(還付金)も雑収入として処理されます。特に注意したいのが消費税の還付金です。消費税は決算時に納付額の計算を行いますが、消費税を多く払いすぎていた場合は、その差額を雑収入として処理します。

【例】消費税の計算を行い、20万円の還付金が発生した場合の雑収入は以下のようになります。

借方貸方
未収消費税等200,000雑収入200,000

消費税を多く払っていたため、還付される「20万円」が雑収入になります。

通常の業務以外で支払いを受けた家賃・地代収入 

本業の活動以外で得た家賃・地代収入は雑収入で処理されます。ただし金額が大きい場合は「受取賃貸料」等、ほかの独立した科目で計上する必要があります。

金額の目安勘定科目
本業の活動以外で得た収入営業外収益の10%以下雑収入
本業の活動以外で得た収入営業外収益の10%超受取賃貸料・受取家賃等
本業の活動で得た収入金額は関係ない売上

家賃や地代の収入が本業の活動以外で得た収入だとしても、営業外収益の金額によってはほかの科目を用いるケースがあるので注意しましょう。

振込みを受けた、収益に当たる保険金の処理

保険金は大きく「生命保険金」と「損害保険金」に分けられ、さらに生命保険金には以下のような種類があります。

【生命保険金】

  • 死亡保険金
  • 生存保険金(満期返戻金・解約返戻金・払済保険金)

【例】保険会社から損害保険金500万円が振込まれた

借方貸方
普通預金5,000,000雑収入5,000,000

なお「保険料」という勘定科目は、保険料の支払いに使われる勘定科目で収益に当たる保険金の処理には使われないので気を付けましょう。

商品の製造によってたまたま発生した作業屑の売却収入

作業屑とは商品を製造する過程で発生する原材料の残り屑のことです。作業屑のうち売却できるものや利用価値のあるものは収益として計上しなくてはいけません。

【例】作業屑を5万円で売却し、全額現金で受け取った。

借方貸方
現金50,000雑収入50,000

ただし資産価値が一定以上になる作業屑や、製造過程において常に発生する作業屑の場合は「売上」に計上しなければいけません。つまり資産価値が小さいものや商品の製造時にたまたま発生した作業屑に限り、雑収入で処理することができます。

事業として取り組んでいないアフィリエイトの少額収入

アフィリエイトとはウェブサイトやブログを使って収入を得る「成果報酬型」の広告プログラムのことです。自社で開設したウェブサイトにアフィリエイト広告を掲載することで、ホームページの運営元である会社には、そのクリック数に応じて報酬が入ります。収入を得られる可能性があるのです。

【例】アフィリエイトの報酬3万円が振込まれた

借方貸方
普通預金30,000雑収入30,000

しかしアフィリエイトによる収入が高額の場合や、アフィリエイトを本業として行っている場合は「売上」として計上しなくてはいけません。

法人でよくある雑収入の仕訳を紹介|例題から解説 

例題1. 作業屑を売却し、現金で受け取った

【例】作業屑を5万円で売却し、全額現金で受け取った。

借方貸方
現金50,000雑収入50,000

ただしこの作業屑が毎月等恒常的に発生する場合や、高額になる場合は「売上」で処理しなくてはいけません。

【例】毎月発生する作業屑を30万円で売却し、全額売掛金とした。

借方貸方
売掛金300,000売上300,000

例題2. 還付加算金が普通預金に振込まれた

還付加算金は簡単に言うと「還付金の利息」です。税金の支払いが遅れたときに延滞金がつくように、税金を戻すときも時期によっては利息がついて戻ってきます。

【例】消費税の還付金20万円と還付加算金1,000円が普通預金に振込まれた

借方貸方
普通預金201,000未収消費税等200,000
雑収入1000

例題3. 駐車場の賃貸による収入を現金で受け取った

会社の土地を駐車場として貸し出している場合の収入も、「雑収入」で処理することができます。

【例】会社の駐車スペースの1台分を5,000円/月で貸し出し、賃貸料を現金で受け取った

借方貸方
現金5,000雑収入5,000

ただし、会社の所有している土地を大々的にコインパーキングにしているような場合は、雑収入ではなく「売上」で計上する必要があります。

例題4. アフィリエイト収入が普通預金に振込まれた

【例】アフィリエイト収入が3万円普通預金に振込まれた

借方貸方
普通預金30,000雑収入30,000

アフィリエイトの収入が高額な場合や事業として取り組んでいる場合は「売上」として以下のように仕訳します。

①アフィリエイトの報酬金額が確定したとき

借方貸方
売掛金30,000売上30,000

②報酬金額が振込まれたとき

借方貸方
普通預金30,000売掛金30,000

雑収入はいくらまで?法律によって割合が定められている

雑収入には税法上「年間いくらまで」といった規定は特にありません。

ただし金融証券取引法の「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」には、営業外収益の表示方法について下記のように明示されています。

「金額が営業外収益の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該収益を一括して示す名称を付した科目をもつて掲記することができる。」

引用元:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則

わかりやすく言うと雑収入と処理していても営業外収益全体の10%を超えるものは個別に科目を設定し、表示する必要があるということです。営業外収益の10%以下に雑収入が収まっていないと、金融機関から融資を受ける際に指摘を受ける可能性があります。

雑収入の金額に税法上の規定はありませんが、「営業外収益の10%以下まで」を意識しておくとよいでしょう。

雑収入は消費税・計上時期・雑収入の額に注意が必要

①ほとんどの取引に対価があるため、消費税の課税対象となることが多い

雑収入が消費税の課税対象かどうかは取引に対価があるかどうかで判断しなくてはいけません。

「対価=自分の所有している財産や労力を他人に提供して受ける報酬等の利益」です。以下に「課税」「課税対象外」の具体例をまとめてみました。

課税取引駐車場賃貸収入
自動販売機設置収入
代理店手数料の収入
作業屑の売却収入
スクラップの売却収入
廃材処分の収入
リサイクルの収入
非課税取引地代収入
家賃収入(居住用)
不課税取引消費税の差益
還付加算金の受取
保険金の受取
祝儀
損害賠償金の受取
給付金

地代収入と家賃収入に関しては対価があるようですが、原則として「非課税取引」として扱われます。ただし貸している期間が1か月よりも短い場合は、「課税取引」とみなされるので注意が必要です。

②雑収入を計上すべき時期は当期なのか翌期なのか

雑収入を計上する時期は注意が必要です。特に給付が翌期にまたぐ給付金や助成金、家賃等は実際に入金されていなくても未収金で計上する必要があります。

【例】30万円の助成金が受けられることになった

借方貸方
未収金300,000雑収入300,000

また実際の入金があったら、新たに雑収入で処理してしまわないように気を付けましょう。

【例】前期に確定していた助成金が30万円振込まれた

借方貸方
普通預金300,000未収金300,000

③雑収入が多すぎることで税務署から指導が入る場合も

そもそも決算は、決算日時点での財務状況を明らかにするものです。また、損益や負債等を明らかにし、納税額を確定させるという面でも決算を行わなければいけません。

売上のなかで雑収入が多すぎると、会社がどのようにして収入を得ているのかがわからなくなってしまいます。「雑収入=本業の活動に付随して得られた収入」なので、本業以上に本業以外のところで大きな収入があるのは奇妙ですし、税務署に「脱税をしているのでは?」と疑われる可能性も十分にあります。

また、雑収入が多く売上の実態が掴みにくいと、銀行等金融機関から融資が受けにくくなることも考えられるでしょう。

リスクを回避するためにも、雑収入は「営業外収益の10%」を目安にすると良いでしょう。

まとめ

「雑収入」の特徴や「雑所得」「事業所得」との違いについて説明してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?

雑収入は勘定科目のひとつである一方で、「雑所得」「事業所得」は所得税の区分なので混同しないよう注意が必要です。雑収入として計上可能な物であっても、金額の大きさや発生の頻度によっては売上に計上しなくてはいけないことも理解しておく必要があります。

また雑収入は基本的には「課税対象」です。しかし例外的に「課税対象外」のものも存在します。正しく理解することで、適正な会計処理を行うようにしましょう。

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oneplus編集部

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