「外国と比べて日本の労働生産性は低い」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ニュースで見る機会も多いように思います。
今回の記事では、労働生産性の意味や計算式、日本の労働生産性が低い理由や改善ポイントについて解説します。是非参考にしてください。
「労働生産性」とはわかりやすく言うと、産出したものを労働量で割った数値で表す指標
労働生産性とは、産出したものを労働量で割った、従業員1人当たりの成果を表す指標です。
労働量に着目することで、従業員が効率的に成果を出せているかどうかを判断できます。労働量は、従業員1人当たりで把握したい場合は「従業員数」、1時間当たりで把握したい場合は「従業員数×労働時間」となります。
労働生産性を上げていくためには、従業員の業務効率化や、企業経営の改善が必要不可欠です。
ここからは、労働生産性の指標における2つの計算方法について見ていきましょう。
労働生産性には2つの計算方法がある
1.物的労働生産性|産出=「生産量または販売額」とした計算式を用いる
物的労働生産性とは、1人の従業員がどのくらい商品やサービスを、生産または販売しているのかを表す指標で、次の計算式で算出できます。
物的労働生産性 = 生産量または販売額 ÷ 労働量
生産量や販売額といった、目に見えるものが成果の対象となるので、比較的わかりやすい指標と言えます。
2.付加価値労働生産性|産出=「付加価値」とした計算式を用いる
付加価値労働生産性とは、1人の従業員がどのくらい付加価値を生み出したのかを表す指標で、次の計算式で算出できます。
付加価値労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働量
付加価値額の計算方法は次の2種類です。
控除法:売上高 - (原材料費 + 購入部品費 + 運送費 + 外注加工費等)
加算法:経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 減価償却費 + 租税公課
付加価値労働生産性は、利益に着目することで、労働の「質」を確認できます。
中小企業庁で用いる労働生産性の計算式は付加価値労働生産性
中小企業庁では、労働生産性の計算式には付加価値労働生産性を用いるとされています。ここでの付加価値は前述の控除法で求めた金額です。
企業は、これまで度重なる制度変更に対応してきました。例えば、残業時間に上限が設けられたことや、社会保険加入条件の拡大、最低賃金の引き上げ等が挙げられます。
これらに対応する中で、中小企業は大企業よりも「労働分配率」が高い水準にあることがわかりました。労働分配率とは、付加価値がどれだけ労働者に分配されているかを示す指標になります。言い換えれば、付加価値に対して人件費が占める割合です。つまり、人件費が企業経営を圧迫している可能性があるのです。
そのため、いかに付加価値を増大させて労働生産性を向上させていくかが重要と言えます。
労働生産性の見方|数値を評価する方法3つ
1.自社の過年度の数値と比較してみる
まずは、自社の過年度の数値と比較してみましょう。数年にわたる自社の指標値の推移を把握することで、労働生産性がアップしているかどうか、または問題点があるかどうかを確認できます。自社の状態をきちんと理解することが大切です。
2.競合他社の数値と比較してみる
次に、競合他社の数値と比較してみましょう。同じ業種の企業との比較は、参考になることが多いと言えます。また、事業規模にかかわらず、従業員1人当たりで数値を求められるので、比較しやすいでしょう。
しかし、労働生産性の数値は、同じ業種でも事業規模によって異なる場合があります。業種や景気によっても異なるので、目安を立てることは難しく、比較する際には注意が必要です。
3.業界の傾向と比較してみる
最後に、業界の傾向と比較してみましょう。
業界の傾向として、金融・保険業、電気・ガス・水道業、不動産業、物品賃貸業は労働生産性の平均が高い状態です。しかし、同業種間においての数値のばらつきも大きくなっています。
反対に、飲食サービス業、宿泊業、医療・福祉業は労働生産性の平均が低くなり、同業種間での数値にもあまり差がない傾向にあります。
サービス業の労働生産性が低くなる原因は、多くの労働力を必要とするからです。また、サービス業は計画的な生産が難しいので、製造業と比べると労働力が増加傾向にあります。従業員の数や労働時間を調整しづらい点も原因のひとつと言えます。日本社会で大きな割合を占めるサービス業において、労働生産性の向上は重要な課題となるでしょう。
労働生産性の低い企業に見られる傾向とは?
1.長時間労働や残業が常態化している
長時間労働や残業が常態化している場合は、労働生産性が低くなります。
「残業は偉い」という日本企業の風潮が未だに残っている会社も多いのではないでしょうか。定時になっても誰も帰らないから仕事が終わっていても帰れない……というケースもよく耳にします。または、残業時間をはじめから想定した業務量を割り振られることも、よくあるケースです。
長時間労働は従業員のモチベーションを著しく低下させてしまうので、労働生産性の低下に繋がります。
2.マルチタスクでの業務が多く、コア業務に集中できない
企業によっては、コア業務以外の仕事も担当しなければならず、マルチタスクでの業務が多くなってしまうことがあります。
例えば、特に中小企業で起こりがちな、営業担当者が請求書業務も担当するケースです。営業担当者が請求書作成に関わる事務作業を負担すると、本来の業務である「営業する時間」が十分に取れなくなります。
このように、コア業務に集中できない状態は、労働生産性の低下に繋がるのです。
3.長い会議・長い承認プロセス・押印の文化
長時間労働に繋がる長い会議も、労働生産性を低下させてしまいます。1日に何度も会議が入っていたり、定例会議が週に何回もあったりするケースも少なくありません。その中には、必要性を感じられない会議が含まれていることも考えられます。
また、長い承認プロセスも業務をスムーズに進める妨げになります。複数の承認を得なければならない場合は、どうしても時間がかかってしまうものです。その上、紙ベースでの押印の文化を踏襲している場合は、さらに承認までの時間を要してしまいます。
日本の労働生産性はOECD加盟諸国の中で低い|その理由は?
日本はOECD加盟38か国中23位、主要先進国7か国中最下位
日本の労働生産性は海外に比べて低いとされています。実際にOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の中でも、38か国中23位、主要先進国7か国の中では最下位という状態です。労働時間が長いことや、その割には多くの付加価値を生み出せていないことが原因として考えられます。
しかし、国際的に使われる労働生産性の計算式は、前述した日本で使われている計算式と違うので注意が必要です。具体的には「付加価値」の部分が「GDP(国内総生産)」で計算されます。一見すると、日本全体の労働生産性が低いように見えますが、GDPはすべての産業をまとめたものです。日本においては、サービス業の労働生産性が低い傾向にある等、業界によって水準は異なりますので、一律で低いわけではありません。
日本の労働生産性が低い原因として挙げられる理由
日本の労働生産性が低い原因として挙げられる理由は次の3つです。
残業が多い
日本の年間労働時間の長さは、国際比較ランキングにおいても指摘されています。残業を「頑張っている」と捉える日本社会の風習が影響していると言えます。
業務効率化に注力しすぎている
業務効率化に取り込むことは大切ですが、同時に付加価値を増やしていくことにも取り組まなければなりません。
間違った成果主義を進めている
従業員を数値的な実績だけで評価している場合は、間違った成果主義と言えます。目立った実績だけではなく、そこに至るまでの様々な業績を数値化して従業員を評価すると、正しい成果主義を推進できるでしょう。
残業が原因として挙げられる点等、前述した「労働生産性が低い企業に見られる傾向」ともリンクしていることがわかります。
自社の労働生産性を上げるには? 改善ポイント5つ
1.自社の風習・慣習が業務を非効率にしていないか振り返る
自社の風習や慣習が業務を非効率にする原因となっていないか確認しましょう。
例えば、残業しないといけない雰囲気になっていないか、無駄な定例会議をしていないか等があります。これらを改善することで労働生産性の向上が見込めるでしょう。
また、有給休暇を取得しづらい風習の会社も多いのではないでしょうか。有休の取得はモチベーションの向上にも繋がります。働き方改革により、年5日の有休取得が義務化されましたが、有休を取得しやすい環境を作ることは大切と言えます。
2.各部署の業務フローや関係部署との業務プロセスを整理して無駄を省く
各部署の業務フローや業務プロセスを整理して無駄を省きましょう。
それぞれの従業員の業務を見直すことで、今まで見落としていた不要な業務や、他部署と重複している業務等を発見できます。また、整理した業務をマニュアル化して従業員で共有することも、労働生産性の向上に繋がります。
3.各部署の働く時間を精査して見直しを行う
各部署の働く時間を精査して見直しを行いましょう。
残業は従業員のモチベーションが下がってしまうので、結果として、労働生産性の低下に繋がります。また、長時間労働における健康リスクも問題視されていますので、早めに取り組んでいくと良いでしょう。
各部署によっても残業時間は大きく異なります。人員が不足している部署は、業務分配の見直しや人員の補充等、調整が必要です。問題に対して適切な対応をしていくことが生産性の向上に繋がります。
4.従業員の育成の仕方や評価の方法が妥当であるか精査する
従業員の育成の仕方が妥当であるか精査しましょう。個人のスキルが向上すれば、業務のスピードがアップするので、生産性の向上が見込めます。そのため、資格取得の支援や定期的な社内研修等、従業員の育成の場が設けられていることが大切です。
また、従業員の評価方法についても妥当であるか確認しましょう。評価方法が不明確な場合は、従業員が評価に対して不満を抱く原因となります。
育成の充実や評価の透明性は、従業員のモチベーションアップに繋がりますので、適切に対応していくことが大切です。
5.自社のIT化の推進状況を確認・見直しを行う
自社のIT化が進んでいるかを確認して見直しを行いましょう。
システムを導入したり、クラウドサービスを利用したりすると、業務効率を大幅に改善できる可能性があります。また、システムを利用していても、手作業の負担が大きい場合はシステムの見直しが必要です。
ほかにも、紙への押印を廃止して電子署名に変えれば、承認フローにかかる時間も短縮できるでしょう。
このように、IT化が進めば、業務を効率化できるので、労働生産性の向上に繋がります。
oneplatは納品書・請求書受け取りを自動化でき、経理業務の労働生産性向上に寄与する
経理業務を効率化して、労働生産性の向上を図るなら「oneplat」がおすすめです。
oneplatは、受け取る納品書・請求書を電子化できる「受領側」へのサービスで、次の作業を効率化できます。
- oneplatを通して販売者(発行する側)から納品データや請求データを受け取るので、手入力作業が不要
- 受領側が承認した納品データをoneplatで変換して請求書を発行するので、請求書の突合作業が不要
- 請求書の承認作業(複数設定可)をoneplat上で行うので、承認フローの効率化が可能
- 総合振込データの作成や会計システムへの仕訳入力は、データ取り込みで自動化できるので、手入力作業が不要
【まとめ】 労働生産性を上げるためにシステムを導入しよう
今回の記事では、労働生産性の指標や計算・評価方法、そして労働生産性の低い企業に見られる傾向や改善ポイントについて解説しました。
改善ポイントについて5つ紹介しましたが、その中でも、システムを導入して自社のIT化が進めば、驚くほど業務効率を改善できるかもしれません。労働生産性を上げるために、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。