近年、多くの企業で言われている「働き方改革」。大企業の成功例をよく耳にしますが、中小企業にとっては難しい課題とされています。しかし、問題点を把握して工夫することで、働き方改革の推進は可能になります。
本記事では、本当の意味での働き方改革を進めるために問題点を把握して、適切な対処法を確認していきましょう。
そもそも働き方改革とは?
働き方改革を簡単に言うと「柔軟な働き方を求める人たちが、明るい将来のビジョンを描けるような働き方ができる仕組みづくり」です。
しかし、「働き方改革を進めなさい」と言っても、企業が主体的に進めていくことは難しいでしょう。そのため、厚生労働省をはじめとした政府が労働に関する法の整備を積極的に進め、企業に浸透させていこうという動きになっています。
上記で解説した考え方や、実際の法整備とアクションまでを含めて「働き方改革」と一般的に呼ばれています。
働き方改革のゴールは何か
「働き方改革は何をもって達成したと言えるのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。
結論から言うと、働き方改革のゴールは「多様な働き方に対応できる社会や労働環境の整備」です。
しかし、働き方改革は始まったばかりで、これからも法改正や政府の工夫が進むでしょう。
介護をする人、育児をする人、ライフワークバランスを向上させたい人等、多様な環境に身をおきながらも「自由な働き方の実現」がゴールと言えるでしょう。
また、企業が従業員の働きやすい環境を適切に整えることで、生産性の向上や従業員満足度の上昇による優秀な人材確保に成功するメリットが期待できます。
働き方改革が抱える問題点とは
従業員と企業の双方にメリットをもたらす働き方改革ですが、実現には多くの課題があります。ここでは、企業が働き方改革を推進する際の問題点を5つ紹介します。
働き方改革には「コスト」「制度の悪用」「従業員のモチベーション低下」「不適切な改革による生産性の低下」が懸念事項として挙げられます。
ツールの導入に多額のコストがかかる
働き方改革と同時に注目される項目が「IT化」「自動化」です。これまで人間が担当していた業務を一部システムに委託することで、人件費の削減や労働時間の短縮に役立ちます。
しかし、ツールの導入には初期費用が必要です。のちのち費用分を回収できるとは言え、未知のシステムに多額のお金を費やすには覚悟が必要です。特に中小企業の場合は「本当に自社にツールは必要なんだろうか」「今なんとか回っているからいらないんじゃないか」と、導入を渋る傾向にあります。
しかし、経営陣が「回っている」と思っていても、実際に現場の従業員は手一杯で大きな負担を感じている可能性もあります。さらに、従業員数が少ない企業の場合は業務が属人化して「この業務はあの人がいないと誰もできない」という状況も多くあります。
ツールの導入は、初期設定を済ませてしまえば業務の自動化が可能です。そのため、これまで属人化されていた仕事を非属人化させられたり、完全にシステムに委ねることも可能になります。
しかし、それでもなおツール導入の費用を捻出できない企業は、働き方改革の推進に後れをとる特徴があります。
高度プロフェッショナル制度の乱用
2019年4月の法改正で導入された高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識をもっておりかつ一定水準以上の年収を得る労働者は「労働基準法に定める労働時間規制の対象から除外」できる仕組みを指します。
この制度は高度な専門知識を持つ人を優遇できる利点がありますが、一方で労働基準法に当てはまらないため、長時間労働や残業代を支払わないという問題も発生します。
従業員のモチベーションの維持
残業の削減は従業員の肉体的な負担を軽減しますが、これまで「残業ありき」で働いていた従業員にとってはモチベーション低下の原因になります。
具体的には「月に残業代で10万円あったから生活がなりたっていたけど、残業がなくなったら生活できない」という従業員が出る可能性もあります。そのため、残業の削減は形式的なものだけでなく従業員目線での削減を意識しましょう。
生産性低下の可能性
働き方改革は生産性向上に効果的ですが、方法を間違えると生産性の低下に繋がります。例えば「主婦が働きやすい環境にするために、従業員を増やして対応しよう」と対策した場合、人件費が増加するだけで生産性は向上しません。
そのため、これまでの業務のあり方を見直した上で、人員配置することが重要になります。
サービス残業の発生や管理職の負担増加
働き方改革の中で最も着手しやすい「残業時間の削減」は、従業員の持ち帰り仕事やサービス残業の原因になり得ます。
表面上の働き方改革だけで「仕事量が減らず作業効率も変化しないけれど、残業だけを禁止される」という企業が増加しており、かえって仕事の負担やストレスが増えたということもよく聞かれます。
また、残業時間の削減に伴って一般社員の業務量を減らした結果「管理職の業務量が増加した」という失敗例もあります。残業時間の削減は、業務の見直しやツールの導入と並行で進めることが最適です。
働き方改革問題の解決策
働き方改革の実践には多くの課題が付きまといます。しかし、適切な対処法でうまく推進していくことが可能になります。ここでは企業ができる、働き方改革に伴う業務改善方法を解説します。
現状分析と問題点の洗い出し
ひとつめは業務の現状把握と問題点の洗い出しです。
「自社ではどんな業務を行っており、効率化には何が課題となっているのか」を明確にすると、解決方法の模索に繋がります。まずは現状把握と問題点の洗い出しに注力しましょう。
ここで大切なポイントは「従業員すべてを巻き込んで業務の洗い出しや問題点の列挙を行う」点です。
役職者が上っ面だけで現状分析を行なっていては、本当の意味での働き方改革に繋がりません。現場で実際に業務を担当している従業員にヒアリングを行い、あくまで現場目線で進めていきましょう。現場を巻き込んだ働き方改革は、企業にとっても従業員にとっても効果的な方法です。
ワークフローの見直し
問題点や課題を把握できたら、次は業務の流れ(ワークフロー)を見直しましょう。流れの中でシステムを導入すると人を減らせる点や、仕事の優先度を考えて業務を進めるなど、効率化や生産性向上を意識したワークフローを作成します。
効率化ツールの導入
ワークフローの見直しの中でシステムを使って自動化できる項目は、自動化を検討しましょう。初期費用こそ必要ですが、費用対効果が大きく見込めます。
具体的な効率化ツールとしては、自動検品システムや自動受発注システム等が挙げられます。また、経理や人事等バックオフィス業務に関しては、自動でデータ入力できるシステムや手書き文字を認識するOCRというツールもあります。
バックオフィス業務は特にシステム導入で自動化できる項目が多いため、是非積極的に取り組みましょう。
まとめ:問題点を洗い出し、改善策を講じて、働き方改革を進めよう
今回は、働き方改革に伴って懸念される問題点について解説しました。じょじょに広がりを見せる働き方改革ですが、中小企業にとっては問題が山積みで思うように進められないと悩むこともあるでしょう。
しかし、自社にできることからスモールステップで進めていくと、だんだん社内に考え方が浸透したり、理解を得られるようになります。最初は困難を極める働き方改革ですが、自社の規模やペースにうまくあわせて推進していきましょう。