働き方改革による残業時間の上限規制とは?労働時間の是正に関して解説!

2019年、働き方改革と呼ばれる国の施策のもと、時間外労働時間に関して法改正が行われました。

法改正前と比較すると、法改正後は時間外労働時間を取り巻く状況にかなり大きな変化が生まれています。

本記事では、法改正によって何が変わったのかを解説していきます。

前提:働き方改革とは

「働き方改革」とは、厚生労働省が2019年から順次関連法案を施行して進められている国の施策のひとつです。

厚生労働省が発表した資料によると、働き方改革とは
・働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革
(出典:働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~)
とされています。

働き方改革は、働く手や場所が大きく変化している昨今の日本において、これまでの常識を見直し、現状に最も適した環境づくりを進めていくことを目的としています。

働き方改革:時間外労働時間の上限規制とは

2019年からはじまった働き方改革の中に、「時間外労働時間の上限規制」があります。

時間外労働時間の上限規制については、以前から具体的な数字を用いて労働時間上限が設けられていましたが、改正によってより細かい部分まで明文化されました。

勤怠管理や就労規則を扱うのであれば、必ず確認しておく必要がある内容になっています。

上限規制の目的

働き方改革で、時間外労働時間の上限規制を実施した目的は、強い規制を設けることで、労働時間内の生産性を向上させることです。

時間外労働時間を短縮するだけでは、すぐに生産性を向上させることは困難です。時間外労働に頼らずとも、効率的な生産能力を確保するための環境整備が必要になってきます。

長時間労働是正の背景

働き方改革において、長時間労働について取り上げられた背景には、長いといわれている日本人の労働時間があります。

また、日本人は長時間働いているにも関わらず、年次有給休暇の取得率は世界的にみても低水準です。

従業員に年次有給休暇を取得させることの義務化や、新型コロナウィルスの影響を受け、2021年の有給休暇取得率は過去最高の60%を記録しましたが、各国と比較するとまだ開きがあります。

そこで、他国と比較して労働時間が長く休むことの少ない、日本人の労働環境を改善するべく、働き方改革では長時間労働是正に向けての取り決めがなされました。

改正前と改正後の比較

働き方改革の一環で、時間外労働時間の上限規制が設けられたことにより変わったことを比較してみましょう。

改正前の時間外労働については、

・原則1カ月45時間、年間360時間

という上限規制が設けられていました。しかし、上限を超えた場合でも罰則等は発生しないため、上限はあってないようなものでした。

しかし、働き方改革によって上限規制が改正され、改正前の時間を基本としながら、以下の3点が追加されました。

・特別な理由がある場合でも年間720時間、月100時間未満、2〜6カ月平均80時間に収める
・1カ月45時間は6カ月までしか超えてはいけない
・上記の条件を違反した場合は、罰則が生じる

改正によって、より具体的な数字が示されると共に罰則についても明文化されました。

時間外労働時間の上限規制が猶予される業種

法改正によって、上限を超える時間外労働については罰則が課せられましたが、猶予期間が取り決められている業種があります。

時間外労働時間の上限規制について、猶予期間が設けられたのは以下の4つの業種です。

①建設事業
②自動車運転の業務
③医師
④鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業

①〜③の業種については、2024年3月31日まで上限規制が適応されません。また、2024年4月1日以降も各業種の実態にあった内容で規制が適応されていくことになります。

④の業種は、2024年3月31日までが猶予期間として扱われ、2024年4月1日からはほかの業種と同様の扱いとなります。

所定外労働時間と法定外労働時間の違い

上限規制が設けられた時間外労働時間は、所定外労働時間と法定外労働時間の2種類に分けられます。

大枠どちらも残業になるのですが、法改正で上限が定められたのは法定外労働時間になります。それぞれの違いを押さえておきましょう。

まず、上限規制の対象となった法定外労働時間とは、労働基準法で決められた範疇を超えた分の労働時間のことです。

一方、所定外労働時間とは、事業者が労働基準法から外れない範囲で定めた所定の労働時間を超えた労働時間のことです。

参照する労働時間が違うので、扱いには注意しましょう。

36協定とは

従業員に対して、労働基準法で定められている時間よりも長い時間働いてもらうためには、労働基準監督署に協定を提出する必要があります。

協定の名称は、「時間外労働・休日労働に関する協定」で、規定されているのが労働基準法第36条であることから通称「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

従業員と36協定を締結せず、あるいは36協定を労働基準監督署に提出せずに法定外労働を行っていた場合は、労働基準法違反となるので注意しましょう。

36協定の時間外労働時間

労働基準法で定められている労働時間は、1日8時間および1週間40時間までとなっています。また、最低限週1回の休日を設けることが義務付けられています。

しかし、36協定を結ぶことで、上記の原則を超えて従業員を時間外労働にあてることが可能です。

36協定を結んだ場合は、月45時間・年間360時間を上限として、時間外労働が認められることになります。

特別条項付き36協定の残業時間

やむを得ず、36協定の上限を超える労働時間が必要になる場合は、特別条項付き36協定を追加で結ぶことで、上限を超える時間外労働が認められます。

特別条項付き36協定は、急を要する特別な事情があると認められた場合のみ適応することが許されます。

実際に、特別条項付き36協定を結ぶことで、事業者は以下の範囲内で従業員に時間外労働を課すことが可能です。

・年間720時間以内の時間外労働
・1か月あたり合計で100時間未満の時間外労働と休日労働
・時間外労働と休日労働の合計が2〜6カ月すべて1月あたり80時間以内
・月45時間を超える時間外労働が認められるのは年6カ月まで

時間外労働時間の上限規制のリスクと対策方法

働き方改革を進めていく上で、時間外労働時間に上限を規定したのは、労働時間内での生産性を向上させるためです。

しかし、時間外労働時間に明確に上限が定められたことで生じるリスクも存在します。最後に、そのリスクと対策方法についてご紹介していくので、是非参考にしてみてください。

リスクと対策方法1:従業員のモチベーションが低下する可能性

ひとつ目のリスクは、従業員の労働に対するモチベーションが低下する可能性です。

時間外労働時間に上限が定められたことで予想される現象のひとつに、サービス残業が増えてしまうことが挙げられます。

事業者としては、なんとか規定の時間内で作業を終わらせてほしいところですが、場合によっては残業せざるを得ないケースもあるでしょう。

しかし、時間外労働の上限規制によって、上限を超えないよう調整を行った場合は、超過分の残業代を得ることはできなくなります。

サービス残業が増え、従業員のモチベーションが低下するのを防ぐため、仕事量の管理・整理を行う等して対策しましょう。

リスクと対策方法2:生活が苦しくなる従業員が出る可能性

2つ目のリスクは、時間外労働に制限がついたことで、生活が苦しくなってしまう従業員が出てくる可能性があることです。

法改正以前は、残業をすればするだけ残業代を得ることができていました。しかし、法改正によって上限が定められたことで、支払われる残業代にも上限がつきました。

残業代を加味して生活をやりくりしていた従業員からすると、単純に収入が減り大きな痛手になります。

対策としては、法改正前の残業代を含めた給与と金額が変わらないよう、事業者が待遇改善や福利厚生の充実等を進めていきましょう。

リスクと対策方法3:業務効率化がされず残業せざるを得ない可能性

3つ目のリスクは、時間外労働時間に規制だけが設けられ、業務の効率化はされず、結果として残業せざるを得ない状況に陥ってしまう可能性です。

時間外労働時間の上限だけを従業員に遵守させようとしても、そもそもの作業量に変化がなければ、サービス残業が増えるだけです。

作業の流れに無駄がないかや、1人当たりの作業量を見直し、組織全体として仕事の効率化を図っていきましょう。

リスクと対策方法4:紙ベースの勤怠管理で残業時間を超過する可能性

4つ目のリスクは、タイムカード等の紙媒体で勤怠管理を行っている業者に起こりうる、知らないうちに残業時間を超過してしまう可能性です。

タイムカード等で勤怠管理を行っていると、残業時間はまとめない限り明確な数字が出てきません。

「残業時間を計算してみたら上限規制を超えていた」ことが起こってしまっては、働き方改革導入の意味がありません。

勤怠状況をより見える化するために、勤怠管理システムの導入を検討してみてください。

まとめ:働き方改革!上限規制を理解し適切な労働時間を

働き方改革に関する法律が施行されるまで、時間外労働時間に関する規制は事実上あってないようなものでした。

しかし、法改正によって、36協定を結ばずに上限を超えることは明確に労働基準法違反となっています。

時間外労働時間の上限について正しく把握し、適切な労働時間管理を行っていきましょう。

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