見積書は取引の条件を明確にし情報を共有する役割を持つ大切な証憑です。
見積書の内容を確認すると、取引を開始するかの判断も可能になり、認識の相違も発生しません。
ここでは、見積書の役割や書き方、そしてメリット等をお伝えします。
また、見積書を受け取る側でのメリットや受領後の流れ等もあわせてご紹介しています。
見積書とは
見積書とは顧客との取引の条件を、前もって記載した書類をいいます。
見積書には、金額や日付、納期、有効期限等、取引に必要な情報を記載してあるのが特徴で、個人事業主が仕事をする時になくてはならないものです。
実際の取引をすすめても可能なのか、顧客に判断できる情報を提供しています。
見積書なしで取引を開始すると、納期や金額に食い違いを生じ、後々のトラブルに繋がりかねません。
そのため、見積書の記載した内容に間違いがあってはならず、必ず見積書の条件で了承を得たのちに取引を開始する必要があります。
見積書を受け取る側も、記載した内容をよく確認し、認識に食い違いのないようにしましょう。
個人事業主の見積書の役割
個人事業主は、取引の条件を明らかにするために見積書を発行します。
見積書に記載された、取引の条件にもれや間違い等があると、事業を円滑に進めることができません。
個人事業主にとって見積書は条件を伝える大切な書類です。
ここでは見積書の具体的な内容を3つお伝えします。
個人事業主の見積書の役割①認識違いを防ぐ
顧客との取引を開始するとき、大切なことは認識の違いがないことです。
取引の条件を口頭や電話等で伝えると、記録が残らず認識の違いに繋がります。
認識の違いに気づかず取引を開始すると、後々大きなトラブルに発展しかねません。
特に個人事業主は、取引を組織で受注し分業により進める訳ではないので、途中で取引を中断し軌道修正するのは困難です。
見積書には取引の条件が記載されているため、取引の認識違いを防ぐ役割があります。
個人事業主の見積書の役割➁情報共有
見積書に取引に必要な作業の工数や工程、納期、納品場所等も顧客の要望に応じて記載しています。
見積金額に加えて金額以外の条件を明らかにすれば、顧客が発注するときの判断材料になり、場合によってはお互いの交渉もあるでしょう。
見積書により、取引以前の整理すべき点が明確となり、取引を開始するまでに十分な準備を可能にします。
相手方と金額および金銭以外の大切な情報を共有できるのが見積書の役割です。
個人事業主の見積書の役割③取引先への発注を促す
見積書には認識違いの防止や情報共有の役割があることを先にお伝えしました。
見積書のそれらの役割により、顧客から信頼を得ることができるでしょう。
取引の全体像がわかり、顧客との齟齬がなくなれば、取引の開始もスムーズです。
見積書の内容に修正がなく、交渉もない状態であれば、顧客は安心して取引できます。
このように、見積書は、取引先への発注を促す役割もあります。
個人事業主が発行する見積書の書き方
見積書には決まった書式がありません。
そのため、取引で必要な条件に記載漏れが起こりがちです。
見積書が取引において十分な役割をはたすため、ここでは、見積書を発行するときのツールや必要なこと、さらに、基本的な書き方や記入項目等をご紹介します。
見積書を書く時に必要なもの
見積書を書く時は、見積書を作成するツールと、プリンターと印刷用紙、そして切手と封筒等が必要です。
以下で詳しく見ていきましょう。
見積書作成ツール
表計算ソフトやクラウドのサービス等を使用します。
なかには無料でダウンロードできるツールもあるので、必要に応じて使い分けてください。
プリンターと印刷用紙
見積書を紙で印刷するには、A4コピー用紙が必要です。
また、プリンターは必需品ですが、スマホやSDカード等によりコンビニでも印刷できます。
切手と封筒
見積書を郵送するとき、切手と封筒が必要です。
宅急便や後納郵便を利用できれば、切手は必要ありません。
基本的な書き方、記入項目について
見積書には必要事項を漏れなく記載しなければなりません。
以下の書式で基本的な書き方や記入項目等をご紹介します。
なお、以下の番号は、図に記載した番号を参照してください。
①宛名
顧客の名前、住所等。
②作成者の名称、住所、連絡先
見積書の発行者の名称、郵便番号、住所、電話番号、FAX番号、窓口のメールアドレス等を記載します。
③見積書の番号と作成日
連番で重複のない番号と見積書の作成日、有効期限等を記載します。
④会社印
見積書に会社印の押印は必ずしも必要ではありません。しかし、会社印があると見積書の信頼が増すので、できれば角印を押印することをおすすめします。
⑤合計金額
商品やサービスの合計金額を記載します。大きな文字で記載すると見間違いがありません。
⑥内容
行単位で、商品名と単価、個数や金額等を記載します。
⑦備考欄
手数料の負担先や振込期日、振込口座等を記載します。売買契約書にそれらが明記してあれば、空欄の場合もあります。
個人事業主が見積書を書くときに気をつけること
見積書を発行し、顧客の確認と提示した条件に納得等をもらえれば、取引がスタートします。
このように、見積書は取引をスタートする前に情報を共有できる大切な証拠です。
ここでは見積書を発行するときの注意点をお伝えします。
相見積もりを確認し、条件を反映させる
見積書を作成するときは、他社と条件が比較されることを認識しましょう。
依頼先は条件のよい会社を、相見積もりにより探しています。
見積書を書くときは、依頼先の目的を十分に把握したうえで、依頼先のニーズに応える内容を漏れなく記載することが大切です。
依頼先から確認事項があれば、すぐに回答できるよう、連絡先を記載し案内文も添えておくとよいでしょう。
できれば、同業他社の相場や条件等を確認し、条件を反映させると受注につながりやすいです。
見積書はなるべく早く提出する
顧客が見積書を取得するときは、取引の内容をいちはやく知りたく、条件があえばすぐに取引を開始しようとしています。
見積書の提出が遅れると、他社に依頼する可能性があり、機会損失に繋がることでしょう。
見積書を提出することが遅れ、受注に繋がらないことは避けねばなりません。
そのため、見積書はなるべく早く提出しましょう。
また、見積書の提出期限が決まっていても、その期日よりも早めに提出することをおすすめします。
納期は安易に設定しない
見積書の納期は、取引に無理のない範囲で記載することが大切です。
無理な納期を見積書に記載し、納期に間に合わせることができなかったとき、信用を失うことになります。
納期を設定することは、相手との約束をとりかわすことになり、取引の約束は必ず守らなければなりません。
そのため、納期を設定するときは、事前にスケジュール調整を十分おこなうことが大切です。見積書の納期は安易に設定しないようにしましょう。
トラブル防止用に見積書のデータを保存しておく
実際にトラブルがあったとき、見積書はそれに対応できる証拠の1つです。
顧客とのトラブル防止用に見積書のデータを保存しておきましょう。
また、見積書は法律により保存期間が定められており、法人では7年間の保存義務があります。
個人事業主の保存期間は、消費税の課税対象事業者のとき7年間、課税対象事業者でなければ5年間保存しなければなりません。
取引が終了した後も、法律で定めのある期間は、バインダーに綴る等して保存する必要があります。
見積書の送付方法について
見積書を送付するときはマナーを守り、顧客に失礼のないようにする必要があります。
まず、封筒は長型3号のサイズを選びます。
このサイズの封筒には、3つ折りにしたA4の用紙を入れることができます。宛名ラベルを印刷しておくと発送にも時間がかかりません。
次に切手を準備しておきます。
切手はまとめて購入しておき、切手台帳を作成し枚数管理をするとよいでしょう。
また、請求書在中の添え書きがあると、得意先の担当に間違いなく届きます。請求書在中のスタンプを購入しておくと便利です。
個人事業主が見積書を発行するメリット
見積書には取引に必要な条件のほか、要望があれば、引き渡し場所を記載できる特徴があります。
顧客は見積書によって、取引を確認できますので、商談のときの大切な書類です。
ここでは見積書を発行するメリットをお伝えします。
クライアントと取引内容の情報の記録・共有ができる
見積書により取引内容が明確になるため、クライアントと情報を共有できるのがメリットです。
共通の情報があるので、無駄なやりとりも減り、コミニュケーションコストを削減できます。
見積書は書面でやりとりするため、双方での取引条件の確認も確実でスムーズです。
特に、口頭で取引の条件を決めた後、見積書を発行していないと、条件が曖昧なままでトラブルに発展しかねません。見積書は取引の情報の記録として大きな役割を果たします。
金額が明確になり、トラブル防止につながる
見積書の作成で大切なのは、取引にかかる金額を明確にすることです。
見積書の明細について、各項目を詳しく記載すると、金額の算出根拠が明確なため、クライアントの理解も得やすいです。
明細の項目を省略すると、金額が明確にならず、クライアントに不信感を与えます。
取引は、お互い納得したうえで開始するのが正しい流れです。
見積書に金額の算出基礎をわかりやすく記載することで、取引開始後のトラブル防止に繋がります。
条件交渉や案件獲得の確率が上がる
見積書には金額や納期、そして取引で必要となる内容を記載します。
クライアントが取引を開始するのに必要な証憑が見積書です。見積書に、取引に必要となる条件が漏れなく正確に記載してあれば、クライアントの理解も早く、商談につながりやすくなります。
見積書の内容を確認した後、クライアントは条件交渉を開始する可能性があり、案件獲得にも貢献します。
このように、営業のスタートとしての機能も持ち合わせているのが見積書の特徴です。
【受領側】見積書を受け取るメリット
取引を開始するときは、発注先と価格や納期等の条件を確認する必要があります。
もし、口頭で取引の条件の取り決めをし、記録のないまま取引を開始すると、トラブルにつながりかねません。
ここでは、見積書を受け取るメリットをお伝えします。
仕事内容が明確になる
取引を依頼するときは、仕事の内容が不明確な状態です。
不明確なまま仕事を開始することはできないため、見積書の発行を依頼しましょう。
見積書には、発注する仕事に必要な金額や期間が記載されています。
そのため、取引を依頼する側は、予算やスケジュール等の管理をしやすくなり、仕事をスムーズに進めることが可能です。
このように、見積書には取引を開始してから、仕事に必要な情報を明確にするメリットがあります。
案件を採用するかの判断がしやすくなる
案件を発注するときは、まずは金額が予算の枠に収まっているかを確認しなければなりません。
そのため、案件の相場を確認することが大切になります。
また、記載された納期は、仕事が一定の期限内で完了するかを判断する情報です。
見積書の内容により、発注するときは条件の確認をしやすくなります。
見積書に記載された条件に不足や不備がなければ、都度問い合わせをする必要もなく、案件を採用するかの判断がしやすくなるメリットがあります。
【受領側】見積書受領後の流れ
見積書を受領した後、案件の発注可否を決めなければなりません。
仕事を進めるのにスピードは大切な要素のため、見積書受領後に効率よく仕事をすすめることが必要です。
ここでは、見積書を受け取った後にすべきことをお伝えします。
見積書の対応方法を決め、連絡する
見積書を受領したときは、受領後の対応方法を決めることが必要です。
まず、金額や数量が条件を満たしているか、納期が想定の期日に間に合うか、さらに納品方法や納品場所も発注先が応じているか、等を確認するがあります。
見積書を取得したとき、確認すべき条件は決まっているため、定型業務にすることが可能です。
見積書の確認内容に不備がないかを調べ、リスト化しておくとよいでしょう。
見積書の確認ができたら、発行先に採用するかの連絡をします。
連絡は24時間以内を目安に
見積書を受け取った後は、早急に確認事項を済ませ、24時間以内を目安に連絡します。
見積書を受領後、連休等の長期の休日があると、設定された金額や納期に変更があるかもしれません。
また、受領後の連絡が遅くなると、見積書の発行元が他の案件を受注しスケジュールがうまってしまい、発注できなくなる可能性があります。
もし、受領後24時間以内に発注するか決まらないときは、その旨をまず伝え、改めて連絡を入れるようにします。
採用の場合は発注書を発行
見積書を受け取り、自社の条件を満たしたときは、取引開始の依頼を発注書により行います。もし、発注について齟齬があり、発注先が取引を開始すると、大きなトラブルにつながります。
特に工期が長く規模の大きな案件の場合は、損害も大きくなり、会社の信用問題になる可能性もあります。
発注書は、発注者で作成するものか、もしくは、受注者が書式を予め用意するものもあります。
発注のときは、見積発行元に指定の発注書があるか確認するとよいでしょう。
【まとめ】見積書は個人事業主にも企業にも欠かせない文書
今回は、見積書の書き方や、発行するメリット、そして保管方法等をお伝えしました。ここでお伝えした通り、見積書は発行者にも、受領者にも欠かせない文書です。
見積書には、取引について必要な情報が網羅されています。発注者は、見積書の内容を見て案件を依頼するかの検討が可能です。
また、受領者側は、見積書により仕事の内容が明確になるため、スケジュールを立てやすくなり、案件を獲得するかの判断にもつながるのがメリットです。
正しい知識を押さえて、失礼の無いよう発行・受領しましょう。