「企業でお金を扱う業務」と聞くと、「会計業務」や「経理業務」「財務」を思い浮かべる方が多いでしょう。
では、「会計・経理・財務の違いは?」と聞かれたとき、どれくらいの方が正しく答えることができるでしょうか。
実際に会計業務に従事していても、いざ聞かれると分からない方も多いかもしれません。
この記事では、「企業における会計業務とはどのような業務を指すのか。」「今更だれにも聞けない…」というあなたのために、経理・財務等との違いを説明しながら会計業務の内容を明確にしていきます。
新入社員向けに「会計」の基礎を説明したいという方にもピッタリの記事ですので、是非ご活用ください。
「会計業務」とは企業のお金の出入りを記録・報告する業務
ずばり「会計業務」とは、企業内でのお金の流れを管理、記録することです。
では、具体的には一体どういうものなのかというと、下記の3点に分けられます。
- 日々企業内で発生する入出金の管理
- 取引により発生する税金の記録
- 記録内容の外部への申告、公表
この3点が企業における「会計業務」です。
1.日々企業内で発生する入出金の管理
例えば、会社では商品の売買により日々お金に関する取引が発生しています。
「会計業務」は企業活動により発生するお金のやり取り、入出金等を日々帳簿に記録していく「仕訳」を行う業務です。
2.取引により発生する税金の記録
お金のやり取りが発生すると必ず税金が関わってきます。
ここで発生した税金についても帳簿への記録が必要です。
そして最終的に「決算書」にまとめ税務署等へ報告します。
3.記録内容の外部への申告、公表
さらに企業の業績を「財務諸表」にまとめ、決算書として外部へ公表します。
このように、税金の申告や外部への報告も会計業務のひとつです。
会計業務と経理・簿記・財務との違いを確認しよう
企業でのお金に関わる業務は、「会計」以外にも下記のような言葉で表されることが多くあります。
- 「経理」
- 「簿記」
- 「財務」
ここでは、「会計」と「経理」「簿記」「財務」それぞれの言葉の違いを説明します。
会計と経理の違い:会計業務の一部が経理業務
「経理」とは、会社で日々発生するお金に関わる取引を帳簿に記録し、お金の流れを管理する業務です。
「会計業務」の中の「①日々企業内で発生する入出金の管理」にあたります。
要するに、経理業務は会計業務の一部なのです。
(経理業務の例)
- 売上、仕入が発生したら仕訳計上する
- 売掛金、買掛金、未払金を帳簿に計上し管理する
- 備品、交通費、等社内経費の精算と仕訳計上
- 給与や社会保険料の管理と支払い
- 入出金の管理、振込業務 等
細かく言えば切りがありませんが、会社は上記のようなお金の動きが伴う取引が発生するたびに帳簿へ計上していきます。これが「経理業務」です。
会計と簿記の違い:簿記は会計や経理の手段(方法)
会計や経理に関わる人なら必ず知っているであろう「簿記」という言葉。
簿記は「資格」というイメージをもっている人も多いかもしれません。
では、会計や経理と簿記はどう違うのでしょうか。
簿記とは、企業のお金に関する取引を帳簿に記録していくことを言います。
つまり、「簿記」という手法を使って、会計や経理業務を行っていくということになります。よって、経理、会計業務に携わる人にとって、簿記の知識は必要不可欠なのです。
3: 会計と財務の違い:お金の時間軸が違う・会計=現在 財務=未来
会計・経理は、過去に完了した取引を管理していく業務(実績の入力)であるのに対し、財務はこれから先(未来)の資金管理を行うことを言います。
経理、会計担当者が作成した実績データをもとに、資金繰りを検討します。
分析結果から先行きを予測し、銀行からの借入等の資金調達や予算の管理、資産運用を行っていきます。
このように、経営していくために必要な資金を管理するのが「財務」です。
会計や経理と比べ、より経営側に近い業務と言えるでしょう。
経理と財務の違いについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
会計業務は大きく2つに分けられる
ここまで、会計・経理・簿記の違いをご説明しました。
ここからは、会計業務についてもう少し詳しくお話します。
会計業務は大きく「管理会計」と「財務会計」の2つ種類に分けられます。
では、「管理会計」と「財務会計」はどう違うのでしょうか。
管理会計(内部会計):社内に今の経営状況を示すための会計業務
管理会計とは、自社の経営状況を分析し社内で報告することを言います。
主な目的、内容は以下の通りです。
目的:今の経営状況を把握・分析し今後を判断する資料を作ること
なぜ、企業内での経営報告が必要なのかというと、的確な経営方針の策定や経営判断を行うには、自社の状況を正確に把握する必要があるからです。
経営陣は提出された会計データをもとに、これからどう経営を進めていくべきか検討します。
また、何か問題が起こった場合にも、まず自社の置かれた状況を確認し、打開策を検討していく必要があるのです。
管理会計は、経営戦略を立てるために必要不可欠であり、経営にも関わる重要な業務であると言えます。
主な内容:原価計算から事業計画書用の資料作成まで広く担当
管理会計業務内容には、下記のようなものがあります。
- 予算管理
- 原価計算
- 資金繰り資料の作成
- 会計実績データ作成、見込み予測
- 事業計画用の資料作成 等
このように、原価計算から事業計画に関わるところまで、業務の幅が広いのも特徴です。
また、正確性や分析能力も求められる業務でもあります。
財務会計:自社の利害関係者に業績報告をするための会計業務
財務会計は、管理会計とは逆で、社外に自社の実績を報告することを指します。
報告先は「利害関係者」といって、例えば取引のある金融機関や株主、取引先等です。
財務会計は、様々な法律により規定された制度会計と呼ばれ、財務諸表により自社の業績を報告します。
目的:資金調達力と自社への信頼性を向上する
財務会計による外部への情報開示により、利害関係者との良好な関係性、信頼関係を維持することができます。
信頼関係の構築は、その後のスムーズな資金調達を可能とし、結果として安定した経営につながります。
主な内容:財務諸表・有価証券報告書・IR情報等の作成等を担当
財務会計担当者は主に下記の業務を行います。
- 財務諸表の作成(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)
- 有価証券報告書作成
- IR情報開示 等
財務会計は前述の通り、様々な法律に従って報告を行います。
利害関係者へ向けて、規定に従った内容で情報提供を行わなければならないのが特徴です。
会計業務の内容を時間軸別に把握しよう
1.日次で行う会計業務の内容
会計の主な日次業務は日々発生する取引を記録し、決算に向けて数値化していくことです。
会社では、毎日の営業活動の中で常にお金に関する取引や入出金が発生しています。
会計担当は、その都度発生した経費等を記録していきます。
(日々発生する取引)
- 仕入、売上の発生
- 手形の受け取り、支払い
- 現預金の入出金 等
このように、細々と支出や取引は発生するので、都度把握、記録して数値化し、最終的な年度末の決算に備えていく必要があります。
2.月次で行う会計業務の内容
会計担当が月次で行う会計業務は下記のものが挙げられます。
- 仕入、売上の計上
- 人件費の計上(給与等)
- 買掛金、売掛金の管理
- 月次決算業務
また、企業によっては月ごとに会計データを締め、月次決算を行い、月別の業績データを作成します。
締めた月次データをもとに、業績の進捗や今後の見通しを予測、分析を行うのも月次で行う会計業務の一つです。
経営は日々変化していきますので、月ごとに集計や、経営状況の整理・分析を行い、より正確なデータで経営者に報告していくことが重要です。
3.年次で行う会計業務の内容
年次で行う会計業務といえば、なんといっても決算です。
決算に関わるものが会計担当の年次業務と言えるでしょう。
決算にかかる年次業務としては下記のものがあります。
- 年度末までにかかった経費の確定
- 取引先への買掛金、売掛金残高の確認
- 未払金残高の確認
- 決算会計入力
- 確定消費税、法人税の計算・申告と仕訳入力
- 決算書の作成
このように、年間収益、費用等を確定させ、業績を決算書にまとめて、税務署へ報告を行うことが会計業務における年次業務です。一年で一番重要で大きな仕事と言えるでしょう。
会計業務におけるルール「企業会計原則」とは?
「公正妥当」を理念に大蔵省(現・財務省)が公表した会計の基準
会計には、それぞれの国でそれぞれのルールがあり、そのルールに則って業務を遂行していきます。
日本の会計は、「公正なる会計慣行」を規準とした「企業会計原則」に従った処理を行うこととなっています。
企業会計原則は4つの構成からなる
日本の会計ルールは「企業会計原則」に従うとお伝えしました。
そして、この原則は4つの構成で成り立っています。
ここでは4つの構成について説明します。
1.一般原則 :すべてに通じる原則を記したもの
企業会計原則のひとつめは「一般原則」です。
一般原則は、日本における会計処理の基盤となっているものです。
日々の仕訳計上から損益計算書、貸借対照表の作成等すべての会計・経理業務において守られるべき原則を記しています。
会計担当者はこの一般原則で示されている考え方に従って、業務を遂行する必要があります。よって、この一般原則が企業会計原則の中でも最も重要であり、会計・経理担当者は一読しておくべき原則と言えるでしょう。
2.損益計算書原則 :収益・費用の計上や表示の方法を記したもの
企業会計原則の2つ目は「損益計算書原則」です。
損益計算書は、会社が当該決算期間内でどれくらいの利益または損失が発生したかを示すもので、会社が得た収益やかかった費用を費目ごとに明らかにします。
この損益計算書を作成するための基本的なルール、原則を定めたもの、それが損益計算書原則です。
3.貸借対照表原則 :資産・負債・資本の計上や表示の方法を記したもの
企業会計原則の3つ目は「貸借対照表原則」です。
貸借対照表は、決算期末時点で、会社にどれだけの資産(現預金、固定資産等)があり、どれだけの負債(借入金等)を抱えているかを表す書類です。
要するに、企業の財政状態を確認できるものです。
この貸借対照表原則は、貸借対照表作成におけるルール、原則を示したもので、これに従い作成し、報告をしなければなりません。
4.企業会計原則注解:「重要性の原則」を含んだ文書
会計処理は正確に計算し、財務状況を報告することが基本とされていますが、簡易な方法による処理が認められる場合もあります。
これが「注解:重要性の原則」です。
消耗品の計上を例として説明します。
厳密にいうと、購入済であっても未使用の消耗品は費用ではなく棚卸資産に該当しますが、金額が少額であったり、損益に与える影響が少ないと判断できるものについては、購入時に費用計上が認められることになります。
そのほかにも、「未払金、前払金、前受収益、未収収益」についても、重要性が乏しいと判断できるものについては、経過勘定科目として計上しなくても良いとされています。
一般原則に記された会計にとって重要な7つの原則とは?
前述の一般原則は、下記の7原則から成り立ちます。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
ここでは、7つの原則の条文をご紹介します。
ここでは、7つの原則の条文をご紹介します。
一見難しそうに見えますが、会計・経理担当者なら納得できるような基礎的な内容です。
是非、目を通して正確な会計処理に努めましょう。
「企業会計原則一般原則」
1.真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。2.正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。3.資本取引・損益取引区分の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。4.明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。5.継続性の原則
企業会計は、その処理の原則および手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。6.保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合は、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。7.単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合は、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
「会計の一部」経理業務とは?時間軸別に内容を把握しよう
経理業務では主に日々のお金の管理と記帳を行う
会計業務の一部である経理業務は、会社内のお金に関わるより細かな作業まで行います。
1.経理の日次業務
経理の日次業務は、日々発生する経費の精算、会計帳簿への仕訳計上、口座の入出金確認、小口現金の管理、領収証の発行・管理等と、多岐に渡ります。
2.経理の月次業務
経理が月次で行う業務は、月ごとの仕入・売上の計上と管理、その他経費関係も含め月次データを確定させることが主な仕事です。
年度末の決算に向けて、月ごとにしっかりと数値を確定させ、年次決算に繋げていくことが大変重要です。
3.経理の年次業務
経理の一番の繁忙期である決算期。
決算に関する業務が経理の年次業務です。
決算時は、年度のデータを確定させて、固定資産や棚卸在庫を正確に把握する必要があります。
固定資産については、減価償却費を算出し仕訳を計上しましょう。
また、既に計上した仕訳に誤計上が見つかった場合は、修正仕訳を入力し会計データを整備します。
最終的に、申告すべき消費税・法人税の額を確定し納付の準備を行います。
【まとめ】会計業務の基本を押さえよう
ここまで「会計とは」という視点で基本的な考え方を説明してきました。
また、同じお金を扱う業務でも、会計、経理、財務にどのような違いがあるのかご理解いただけましたでしょうか。
それぞれの役割を理解して、各々がやるべきことを明確にし、スムーズな経営につなげていくことも会計の重要な役割です。
そして、たまには「企業会計原則」に立ち返ることで、より正確な会計処理に繋がっていくことでしょう。