ステークホルダーとは?使い方の例を交えながら簡単に解説

新聞やニュース、取引先との会話の中で「ステークホルダー」という言葉を見たり、聞いたりしたことはありませんか。しかし、言葉の意味を正確に説明できるかどうか問われたら、自信を持って「説明できます」と答えられる方は少ないと思います。

言葉の意味をわかっているかどうかは、相手には意外と伝わってしまうものです。ビジネス用語を知っているか知っていないかだけで、相手のあなたに対する信用度が変わってくることもあるでしょう。

この記事では「ステークホルダー」という言葉の意味や語源、使い方等を例文を交えながら解説していきます。しっかりと理解して、信頼されるビジネスパーソンになれるよう学んでいきましょう。

「ステークホルダー」とは簡単にいうと? 意味や言い換えを解説

まず「ステークホルダー」の意味と由来を解説します。そして、「ストックホルダー」「シェアホルダー」という似通った言葉の違いを紹介していきます。

ステークホルダーとは簡単に言うと企業に関する利害関係者のこと

ステークホルダーとは簡単に言うと「企業が利益を上げたり、損失を出したりすることで影響を受ける人」のことです。

まず思い浮かべるのは以下のような方ではないでしょうか。

  • 株主
  • 経営者
  • 従業員
  • 取引先
  • 金融機関

そのほかに以下のような方もステークホルダーの範疇です。

  • 競合他社
  • 行政機関
  • NGO、NPO
  • 地域社会
  • 自分の家族

企業が利益を上げれば、株主、経営者、従業員は直接的な金銭の影響を受けますし、取引先や銀行への支払いも円滑に行えますよね。

それにともなって競合他社の売上が減少したり、行政が受け取る税金が増えたり、地域社会の雇用が活発になったり、自分の家族がゆとりのある生活を送れるようになったりといったことも考えられます。

このようにステークホルダーは、企業の活動によって影響を受けるすべての相手に対して使われる言葉となります。

ステークホルダーの語源や言い換え例は?

ステークホルダー(stakeholder)は、英語の「stake(掛け金・出資金)」と「holder(保有する)」を合成した言葉です。

ちなみに日本語でもよく使われるお肉のステーキは「steak」と綴りが似ているのでご注意を。

ステークホルダーの由来は、R・エドワード・フリーマンという哲学者が本に書いたことかが始まりと言われています。(1984年の著書『Strategic Management : A Stakeholder Approach』において)

「ステークホルダー」を日本語で言い換えると「利害関係者」となります。場合によっては以下のように言い換えることもできます

  • 「ステークホルダー」が一部の株主を指す場合 → 一部の株主が
  • 「ステークホルダー」が一部の役員を指す場合 → 一部の役員が
  • 「ステークホルダー」が重役の親族を指す場合 → ある重役の親族が

類似語「ストックホルダー」はステークホルダーの一部

ステークホルダーと似ている言葉で、「ストックホルダー(stockholder)」と「シェアホルダー(shareholder)」があります。

3者の違いを以下の表と図で確認しましょう。

用語意味
ステークホルダー企業の活動によって影響を受ける利害関係者。
ストックホルダー単に株を持っている株主。ステークホルダーの一部。
シェアホルダー議決権を持つ大株主。ストックホルダーの一部。

ステークホルダーには2種類ある!具体例を紹介

先ほど説明したようにステークホルダーという用語は企業に関する利害関係者のことであり、その言葉の意味は広範囲に及ぶことがわかったかと思います。

なお、ステークホルダーは「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」の二つに分けられます。

直接的ステークホルダー:従業員や取引相手等

ひとつ目は直接的ステークホルダーです。以下の表をご覧ください。

【直接的ステークホルダー】

概要具体例
企業の活動に直接影響を与えたり、影響を受けたりするステークホルダー・株主    ・取引先
・経営者   ・消費者
・従業員   ・金融機関等

間接的ステークホルダー:地域社会や行政等  

二つ目は間接的ステークホルダーです。

【間接的ステークホルダー】

概要具体例
企業の活動に間接的な相互作用をもたらすステークホルダー・地域社会
・行政
・従業員の家族等

ステークホルダーの使い方を例文から理解しよう

近年、ステークホルダーという用語を目にする機会が増えているかと思います。大手企業のホームページ上に載っていたり、企業パンフレットで紹介されていたり、本や雑誌で取り上げられていたり。

ここではステークホルダーという言葉の使い方を、例文を交えながら理解を深めていきましょう。

経営戦略についての会話で使われることが多い

一般的にステークホルダーという用語が仕事において使われるときには、経営戦略に関

する話題であることが多いです。

例えば「ステークホルダーに配慮した経営戦略を立てる」「ステークホルダーから理解を得られるような経営方針を打ち出す」といった場合は、株主や経営者、従業員、顧客がステークホルダーに該当します。

内容的には、ステークホルダーの利潤を向上させるといった意味合いで使われます。

SDGsの活動報告としてHP上に記載する企業も

近年よく見かけるようになったのが、大手企業が自社のホームページ上でSDGs(注1)への取り組みを報告するというものです。

これは明らかにステークホルダーの目を意識したものであり、企業の利潤だけを追求するのではなく、地域や社会にも貢献しようという企業姿勢の表れでもあります。

注1:SDGsとは
「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」と訳されます。国際連合が2015年に採択した2016年から2030年までの国際目標となります。目的は持続可能な社会を実現することです。

ステークホルダーの例文を紹介

以下では例文を紹介しながら、ステークホルダーの意味を考えていきます。

【例文1】
「今季の株主総会では、ステークホルダーの合意を得ることを第一とします」
  ↓
この場合は、ステークホルダーが指しているのは株主全員です。ストックホルダーと言い換えても意味は通じます。

【例文2】
「これからの経営で重要な視点は、ステークホルダーを意識した経営にシフトしていくことである」
  ↓
この場合のステークホルダーが表す意味は、ひとつとは限りません。文脈や状況によっていくつかの受け取り方ができます。

例えば会議等で経営戦略について議論をしているのであれば、「顧客やユーザー」のことを意図している可能性が高いと言えます。また、融資に関する話で使われたのであれば、「金融機関」を意味していることも考えられます。

このように使われる場面や文脈によって、ステークホルダーの指し示す範囲が変わってくるので気を付けるようにしましょう。

ステークホルダーの範囲は企業によって様々

ステークホルダーが意図するところは、企業によって様々です。

「株主、顧客、社員」等直接的な利害関係者をステークホルダーと考え、「地域社会や行政」等の間接的な利害関係者はステークホルダーには含めないといった考えを持つ企業も少なからずあります。

それゆえステークホルダーが示す意味を固定せずに、言葉の表す意味をその都度想像しながら適切に解釈していくのが良いでしょう。

ステークホルダーを意識した取り組みやそのメリット

企業経営では、短期的な利益を追い求めてしまいがちですが、これからの企業が行うべきことは地域や社会、行政等にも目を向けた長期的視野をもった経営です。

なぜなら企業が発展し持続していくためには、地域や社会の発展と持続も必要になってくるからです。

ステークホルダーを意識した取り組みが重要な理由

企業は従業員がいれば成り立つわけではありません。商品の売り先となる顧客や消費者、融資をしてくれる金融機関、納税先となる行政機関、雇用を生み出してくれる地域社会等。

そうしたステークホルダーがいるからこそ企業は成立し、存続することができるのです。

利益だけを追い求める経営では、経済的格差や環境問題等を生み出してしまう側面があることは事実です。そうした企業はこれからの社会では持続していくことが難しくなってくるでしょう。

企業の利益だけでなくステークホルダーを意識した社会貢献を行っていくことで、結果的に

企業だけでなく地域や社会も発展し、持続可能な社会へと繋がっていくことになるのです。

具体的な取り組み内容の例を紹介

ステークホルダーを意識した具体的な取り組みを3つ紹介します。

  1. ステークホルダーマネジメント
  2. ステークホルダーエンゲージメント
  3. ステークホルダー分析

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

ステークホルダーマネジメント

ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトに関わるステークホルダー全員を管理することです。

ここでいうステークホルダーとは「プロジェクトに関わるすべての関係者」であり、従業員だけでなく経営者、顧客、協力会社等社内社外は問いません。このように多数のステークホルダーがいるということは、それぞれの利害も同一ではありませんし、それぞれの考え方や性格も異なってきます。

それゆえ、ステークホルダー各々の個性や考えを尊重した上で良好な関係を築き、プロジェクトを管理していくことが求められます。

ステークホルダーエンゲージメント

ステークホルダーエンゲージメントとは簡単に言うと「ステークホルダーの関心ごとを把握して、関係性を作るために行う取り組み」のことです。

企業側からの情報提供やコミュニケーションの場を設けて相互理解を深めたり、企業の意思決定にステークホルダーの意見を反映させたりする等して、企業の価値や業績を高めていくことが重要となります。

ステークホルダーエンゲージメントの例としては、以下のようなものがあります。

  • Webサイト、パンフレット、講演会、説明会、SNS等による外部への情報開示・対話
  • 従業員やお客様へのアンケートの実施
  • 問い合わせや相談窓口の設置
  • ボランティア活動や地域貢献活動の実施

ステークホルダー分析

ステークホルダー分析とは、プロジェクトに関わるすべての人を分析して、どのような戦略でプロジェクトを進めていけばうまくいくのかを検討する分析手法のことです。

ステークホルダー分析は、以下のような手順を経て実施されます。

  1. ステークホルダーが誰なのか明確にする
    まずはプロジェクトによって影響を受ける人をすべて明らかにしていきます。その際、直接的ステークホルダーと間接的ステークホルダーの両方に目を向けるようにしましょう。
  2. 影響力と関心度の点からステークホルダーに優先順位を付ける
    次に、それぞれのステークホルダーの影響力と関心度を考えていきます。プロジェクトの決定権を誰が持っているのか、また、誰がどのくらい自分たちのプロジェクトに興味関心を持っているのか等。そうした観点からステークホルダーに優先順を付けていきましょう。
  3. 障壁を明らかにして、適切な戦略を検討する
    最後に、今後プロジェクトを進めるにあたってどのような問題が想定されるのかを考慮した上で、ステークホルダーにどのような働きかけをしていくのが効果的なのかを検討します。

ステークホルダーと良好な関係を作るためのポイント

ここまでくれば、ステークホルダーの意義やステークホルダーと信頼関係を築くことの重要性がだいぶ理解できたかと思います。

この記事の締めくくりとして、ステークホルダーと良好な関係を作るための3つのポイントをお伝えします。

すべてのステークホルダーを意識した企業経営を行う

先に説明したように、ステークホルダーは社内社外問わず多種多様な人が関係しています。そのため、ある特定のステークホルダーに目を向けたり時間を充ててばかりいることは、そのほかの関係者をないがしろにしてしまうことを意味します。

そうした態度はステークホルダーの企業への信頼を損なう行為であり、結果として企業の成長の足かせにもなってしまうでしょう。

株主、従業員、顧客、行政、地域住民等あらゆる関係者を意識して企業経営を行うことが求められます。

自分自身もステークホルダーだということを理解する

意外と忘れがちなのが、「あなた自身」がステークホルダーだということです。株主のために、従業員のために、地域住民のために、と他者を第一として物事を考えたり進めたりすることも重要ですが、何より大切なあなた自身を犠牲にしてしまっては元も子もありません。

どうか自分自身もかけがえのないステークホルダーの一員だということを忘れないでください。そして、自分の意見や考えを尊重しながら、ステークホルダーと良好な関係を築いていきましょう。

企業のステークホルダーをしっかりと確認する

ステークホルダーに対する企業の認識と自己の認識がズレてしまっていては、円滑にことを運ぶことはできません。

したがって、企業の考えるステークホルダーは誰なのか、誰に重きを置いているのか、どのようなアプローチをしていこうとしているのか。そうした企業の考えや動向をつかむことは、ステークホルダーとの関係性を築く上で重要になってきます。

まとめ

ここまでステークホルダーの意味や用語の使い方、ステークホルダーを意識した取り組みや関係を築くことの重要性について紹介しました。

ステークホルダーとは「企業活動によって影響を受けるすべての人」の総称です。それゆえ多種多様な人がいて考え方があるために、必ずしも全員の利害が一致するわけではないことを念頭に置きましょう。

あらゆるステークホルダーに目を向けて信頼関係を築いていくことや、企業の成長だけでなく社会への還元に向けて努力を続けることが、これからの企業経営ではますます重要となってくるでしょう。

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oneplus編集部

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