デジタル技術を応用して人々の生活をより良いものに変革していくDX。近年、企業でこの取り組みが注目されてきています。しかし、現状なかなかDXが進められないという課題も抱えています。
本記事では、DXが進まない理由やそれによる影響、進めていくためのポイント等について紹介します。
なぜDXが進まないのか
業務改善からビジネスモデルの創出まで、企業の成長を大きく助けるであろうDXを推進していきたいと思っている企業は増えています。しかし、それと同時にDXの導入に苦戦している企業も多いのではないでしょうか。
ここでは、「DXが進まない」とはどのような状態を指しているのか、また進まないことによる影響について解説します。
DXが進んでいない状態とは
簡潔に説明すると、DXが進んでいない状態とは、「デジタル技術を応用した経営改革が行えていない」ことです。また、推進が滞っている状態とも言えます。なぜこのようなことが起こってしまうかというと、次のような理由が考えられます。
経営陣をはじめ、社内の人間がDXの定義を理解しておらず、目的が曖昧になってしまっているということです。DXは単なるIT化や古いシステムの刷新が目的ではありません。それらはあくまで手段であり、本来の目的は新しいビジネスモデルの創出や、顧客への新たな価値提供等です。
目的が明確になっていないままDXを推進してしまうと、途中で滞ってしまったり、取り組みが上手くいかなかったり、ということも起こってしまうと考えられます。
DXが進んでいないままだとどうなる?
今後、企業でDXを取り入れずにいることでどのような影響があるのでしょうか。まず挙げられるのは「2025年の崖」問題です。これは各企業が既存のITシステムの課題を解消せず、DXを推進しなかった場合に、2025年以降に発生すると予測されるリスクについて経済産業省が提示したレポートのことです。
このレポートによると、今後DX化が進まなければ業務効率や競争力の低下を招くだけではなく、年間最大12兆円の経済損失が生じると予測されています。また、システムの老朽化により情報漏洩や機密データの紛失の恐れがあるとも考えられています。
これらの問題は、企業だけではなく社会全体にも悪影響を及ぼす問題と言えるでしょう。そのため、DXを推進する動きが少しずつ広がり始めています。
DXが進まない主な理由は?
近年、重要視されてきているDXですが、企業によっては導入したくてもできないといった悩みを抱えているのではないでしょうか。ここでは、各企業がスムーズにDXを進められない理由について紹介します。
DXへの認識の甘さ
DXは業務プロセスや製品、サービス、ビジネスモデル等に大きな変革をもたらします。そのため、経営方針の判断を下す経営陣がDXに対する認識や知識を持っておく必要があります。経営陣の認識が甘いと、社内全体にDX化のメリットや変革に対する理解を共有することも難しくなるでしょう。
また、DX化を進めるためには各部署、チームまでもがDXに対する理解を深めることが大切です。業務プロセスの改善を目的としているならばシステムの運用や管理を行う社員の理解を得ることが必要です。
デジタル技術を利用して製品やサービスの質を向上させていくのであれば、製品開発を担当する社員とも連携が必要になると考えられます。このように、最終的には企業全体がDXに対する知識や理解を深めることが必要不可欠です。そのためにもまずは経営陣の認識を深め、共有していけると良いでしょう。
専任のDXマネージャーがいない
DX推進ではデジタル技術に関する知識が必要です。DX担当者や責任者は、既存事業とは異なる能力が求められるため、人材の育成や確保が難しいといった問題があります。単なるエンジニアとしての技術だけではなく、目標達成に向けて戦略や手法を考え、組織を整備できる責任者が必要です。
必要な知識を詳しく紹介すると、
・IT関連の基礎知識
・先進技術(AI、IoT等)の知識
・UI/UXへの理解
・データサイエンスの知識
・プロジェクトマネジメント能力
等があります。
社内浸透に時間と労力がかかる
先ほど説明したように、DX化を進めるためには社内全体の理解を得ることが必要です。しかし、企業規模が大きいほど社内浸透に時間と労力を要することになります。DX化を進める中で、業務プロセス・効率改善のために情報システムの一元化は欠かせません。
そうすると、デジタル化以前の業務フローは利用できなくなるため、全体を修正していくことが必要になります。既存システムのレガシー化により修正や最新技術の適用が難しくなっている場合もあり、コストもかかってしまうでしょう。このように社内調整が複雑になってしまうこともDXを進める上での課題と言えます。
エンジニア人材の不足
経営陣がDXに対する認識を深め、目的を明確にできたとしても、実際に実行できる人材がいなければ進めることはできません。現在の日本では少子高齢化が急速に進み、労働人口の不足が大きな社会問題となっています。
その中でも特に、IT人材の不足は深刻な状況です。経済産業省が提示する調査資料によると、エンジニア等のIT人材は2030年には約80万人が不足すると予測されています。このように技術者の不足から、既存のシステム管理で手一杯な状況になってしまい、DX化が進まないという問題があります。
DXを進めるための具体的な施策
これからのビジネスで生き残るためにもDXは欠かせない取り組みです。しかし、具体的に何から取り組めば良いかわからないという企業も多いかと思います。ここでは、DXを進めていくための具体的な施策について紹介します。
経営戦略としてDXを進める
DXの本来の目的は、デジタル技術の応用により人々の生活をより良いものにすることです。企業がこれを実現するためには、新しいビジネスモデルの創出により顧客の満足度を向上させることが必要と考えられます。
つまり、製品やサービスそのものの変革が必要になることもあるため、デジタル技術によりどのような価値提供ができるかを明確にして、最終的な目的を立てる必要があります。そして、それを実現するためにはコア業務に注力できる環境作りも必要となるでしょう。
その一歩としてまずは、業務環境改善のためのシステム導入から始めるという考え方ができます。このようにDXの目的や目標を経営戦略に組み込み進めることで、おのずと自社にとって何が必要か見えてくるのではないでしょうか。
人材の確保
DX推進のためにはデジタル技術の利用が欠かせません。つまり、これらの技術を扱える人材の育成や確保は必要不可欠です。しかし、労働人口の減少が起こる中で十分な人材を確保することは困難を極めるでしょう。場合によっては、アウトソーシングを利用する方法もあります。
しかし、将来的にデジタル技術による運用を定着させていくためには、社内でスキルや知識を蓄積させていくことも必要です。社内でITスキルを身に付けるための場を設けたり、外部エンジニアと直接契約したりする方法が一般的と言えるでしょう。
クラウドサービスの導入
DX化の推進にはクラウドサービスの導入が欠かせません。自社内にサーバーやネットワーク機器を設置してシステム構築・運用するオンプレミスでは、管理やメンテナンス、トラブル発生時の対応等のために自社に技術員をおいておく必要がありますが、その運用負荷は大きなものとなります。
特にDXでは全社規模でのデジタル変革を要するためさらに運用や管理が煩雑になることも考えられます。そのため、クラウドサービスを導入することで運用負荷やコストを削減し、業務効率の向上を図ることが大切です。
ITツールを積極的に活用する
DX化が注目されている中、デジタル技術の発展もめまぐるしいものです。これに伴い、ビジネス市場も大きく変化を遂げています。これらに取り残されないためにも、DX化は必須であり、それを進めるためにも積極的にITツールを取り入れていきましょう。
DXを進めるには成功事例をまねることも大事!
DX化では、企業が今まで取り組まなかったような大きな変革を起こす必要があります。つまり、今までの経験とは別の知識や技術が必要となることもあります。ですから、何から取り組めばいいのか迷ってしまうことはよくあることです。
その時に必要な行動は、「成功事例をまねる」ことです。海外では既にDX化の成功事例が多くあります。日本でも少しずつ導入が成功してきている企業も見受けられます。これらの成功事例から、自社の課題や目的に合った事例を探して参考にしてみるのも良いでしょう。
まとめ:DXが進まない理由と課題を把握してDXを進めよう
本記事では、DXが進まない理由やそれによる影響、進めていくためのポイント等について紹介しました。必要性を理解していても、実行できる人材が不足しているというのはもどかしい状況です。まずは、DX化の前に人材育成も大切となるでしょう。
そして、取り組み方はほかの企業の成功事例から学ぶことも大切です。スムーズにDX化を進めていくためにも、多くの企業を参考にすることをおすすめします。