領収書は身近な書類であるため、その記載方法や内容について曖昧な知識で接している場合があります。
発行する側が正しく作成しなければ、受け取る側にも手間を取らせ、不要なトラブルを発生させてしまいます。
領収書を受け取った後に、再発行依頼をするのは気が引けてしまうので、その場で正しい領収書であるかどうかを判断できるよう、知識を身に着けることも大切です。
本記事では領収書にまつわる基礎知識やよくある疑問をわかりやすくまとめています。
是非参考にしてください。
いまさら聞けない領収書の役割とは?
領収書とは単なる書類ではありません。自社と相手との商品、サービスのやり取りを行った際に費用を支払った(受け取った)証として発行されるのが領収書です。
領収書を発行する側は商品やサービスを提供したことの証として発行し、受け取る側は提供された商品やサービスを確認するために領収書を受け取ります。
また、領収書の内容によっては、会社の経費とすることができます。売上から経費を差し引くことで利益を少なくすることができます。
領収書をもらい経費として計上することで、最終的に支払う税金も少なくなります。
このように、領収書は会社が支払う税金に関わってくる大切な書類であり、正しい取り扱いをしなければ経費として認められなくなってしまいます。
領収書とレシートとの違いとは
皆さんもよく知る通り、レシートは基本的に発行を依頼しなくても渡されることが多いでしょう。レシートは売り手がどういう商品やサービスの提供をしたかの詳細を明確にするために発行されるものです。そのため、レシートに記載すべき内容は自由に決められます。
一方で領収書は必要記載項目が決まっています。支払先や発行日、金額や明細等が記載されていなければなりません。しかしながら、レシートであっても領収書として必要な内容が記載されていれば、領収書としての効力を持つため、そういった場合は個別に領収書を発行してもらう必要はありません。
領収書の保存期間
領収書の保存期間は法人と個人で異なり、個人の場合は、青色申告と白色申告で異なります。
青色申告は保存期間7年とされているのに対して、白色申告は保存期間5年とされています。
ただし、白色申告において保存期間が5年であっても事業の内容によってはそのほかの記帳書類の保存期間が7年であるため、領収書も7年間保存する方が良いと考えられます。
法人の場合は7年
法人の場合は、領収書の保存期間は法人税法で7年と定められています。
2004年までは大法人、中小法人で保存期間が異なっていましたが、これ以降はすべての法人が7年間保存する必要があるように変わりました。
注意点として、領収書が発行されてから7年間ではなく、申告をしてから7年間となるため、保存期間中に誤って捨ててしまわないようにしましょう。また欠損金(赤字)が出た場合は10年間の保存が必要となります。
【受け取る側】領収書管理で起こる問題点と解決法
領収書に記載すべき事項は同じでも、形や大きさは会社によって異なります。
領収書を管理する際、領収書同士が重ならないように1枚づつ台紙等に貼り付けをして保管する必要があります。
このとき、領収書の大きさや形は相手企業によって異なるため、数が多くなると管理が煩雑になってしまいます。
会社の規模によっては領収書を貼る作業だけで数時間かかる場合もあります。
この問題点を解決する方法としては、領収書の保存を電子化するという解決法があります。
「紙の領収書を紙で保管しなければいけない」という決まりはないため、データ化し保存することで事務量を軽減することができます。
領収書を受け取る側のよくある疑問
例えば領収書の代わりにレシートを受け取る際、宛名がないことがあります。通常、領収書としてみなすための要件として、宛名は必要ですので領収書を受け取る際「これで大丈夫なのか」と不安を感じることもあるかもしれません。しかし宛名については例外もあることをご存知でしょうか?
それは、小売業、飲食店業、タクシー業等、不特定多数の者に対して「資産の譲渡等を行う事業」については宛名の省略ができるということ。これは消費税法でも記載されています。ただし、余りにも高額な場合や明らかに不自然な領収書は、税務調査で否認される場合もあるため注意が必要です。
このように日常生活では気にしていなかったことでも、経理の仕事に就くと様々な疑問が生じます。他にも領収書にまつわるよくある疑問を見ていきましょう。
領収書を紛失してしまったらどうする?
領収書を紛失した場合は、まずは再発行が可能か確認をしてみましょう。問題なく引き受けていただけることもありますが、領収書を2枚発行するという事は架空計上と疑われる可能性もあるため、断られるケースも多いでしょう。
そのような場合は自社で出金伝票を作成し、購入日、金額、購入内容、購入先を明記し記録に残しておくとよいでしょう。
クレジット明細は領収書として使える?
クレジット明細は領収書として使用できます。ただし、明細の中に購入先の社名や日付、金額、商品名、サービス内容等が記載されていることが条件となります。
一般的なクレジット明細は上記の内容が記載されていることが多いので、そのまま紙で保管することが可能です。
クレジット明細を領収書として使用すれば経理業務の作業効率化へつながるため、クレジットカードの使用を積極的に推奨する企業も増えてきています。
交通機関の運賃も領収書が必要?
交通機関を利用する際は注意が必要です。交通機関によりますが、乗車券を買ったときに領収書を発行するケース等様々です。
基本的には領収書は必要ですが、交通機関を利用した際には例外措置が適応されます。条件は、支払金額が3万円未満であることです。消費税法上において3万円未満ならば領収書がなくても消費税を支払ったとものと見なされるためです。
また、3万円以上であってもやむを得ない場合は帳簿に記帳することで経費処理をすることが認められます。ただし回数が多い等不自然だと判断された場合は、税務調査において経費自体が否認される可能性もあります。
キャッシュレス決済の場合はどうする?
クレジットカードや電子マネー等の電子決済サービスを利用した際は、利用明細書が発行されます。
この中にどの区間、何の交通機関を利用したか記載されているため、領収書がなくても問題ないケースがあります。
カードリーダー等を用意することで、利用明細書をデータ化することも出来るため、経理処理がペーパーレス化し、管理がしやすくなるためおすすめです。
経費精算システムによってはキャッシュレス決済に対応したものもあるため、長い目で見た時にはシステム変更も視野に入れるとよいでしょう。
納品書は領収書がわりになるのか?
納品書は商品が納品されたことの証明として発行されます。料金を領収したことの証明として発行する領収書とは役割が異なります。
このため、納品書を領収書として代用することは出来ません。
ただし、納品書に「支払完了」や「クレジット支払」等、料金の支払が完了している旨の記載があれば代用することが可能です。
もちろん、日付や金額や請求先等、領収書として記載すべき事項があることが必須となります。
宛名を間違えられた場合の領収書は無効?有効?
宛名を間違えられた領収書が有効になるかどうかは税務署次第となります。税務署も領収書を確認するときに、1枚1枚宛先が正しい会社名か確認するわけではないため、聞き間違い等で誤表記されていても指摘されない場合もあります。
宛名を間違えられたからと言って勝手に修正テープ等で修正してしまう方が大きな問題となるため、注意が必要です。
もちろん間違えていないことに越したことはありません。受け取る際に、目視で確認するようにしましょう。
【発行側】領収書の正しい書き方
領収書の書き方として、注意すべき点が幾つかあります。普段何気なくやっている書き方にも問題があるケースがあります。
また、領収書に貼付する「収入印紙」については税金が関わってくるため取り扱いが重要となります。
タイトルの書き方
発行する証憑が領収書であることをわかるようにする必要があります。
タイトル文字を領収書に記載する内容の中で最も大きくし、中央寄せにすることでわかりやすい領収書になります。
わかりにくいものや、紛らわしい記載ではトラブルの原因となるので注意しましょう。
日付の書き方
領収書へ記載する日付は領収書を作成した日を記載します。
領収書を作成するのは、商品の販売日ではなく、実際に代金を受け取った日付です。インターネット上で商品を販売した場合も、代金を受領した日付となります。
銀行振込やネットバンキングを使用した場合は、代金の入金日が領収書の日付となります。
金額の書き方
金額は後から不正な加筆や訂正が出来ないようにしなければなりません。そのため、金額の先頭に「¥」を記載し、末尾に「※」や「-」といった記号を記載することが多いです。その他にも、漢数字で書くことで改ざんを防止する企業もあるでしょう。
また、桁数を間違えることを防ぐため、3桁ごとに「,」を記載する等、工夫をしましょう。
但し書きの書き方と注意点
但し書きが必ずしも必須というわけではありません。しかし、受け取り側のことを考えるとどのような商品、サービスの提供を受けたのかわかる方が親切です。
この時「お品代」とするとわかりにくいため、「書籍購入代金」「備品購入代金」等、詳しく記載する方が良いでしょう。
また、但し書きの書き方によって税務調査時に領収書が経費として認められないことがあります。不要なトラブルを避けるという意味でも「お品代」という記載方法は、なるべく避ける方が良いでしょう。
宛名の書き方
宛名は誰に対して発行されたものかはっきりとわかるように記載します。このため、宛先名を略称で書いたり、株式会社を(株)と略すことも避けるべきです。
また、前株、後株の誤表記にも注意しましょう。
収入印紙について
領収書は税金の支払いの対象となる、課税文書として扱われます。このため、5万円を超える商品代金に対しては、領収書へ収入印紙を貼らなければなりません。
もし、収入印紙の貼付を怠ればのちに、その約3倍の金額の税金を過怠税として徴収されることになります。
過怠税が徴収された場合は、会社の決算書にも記載されてしまうため、しっかりとした確認が必要です。
収入印紙を貼付するのは領収書を作成する側ですので、発行時に収入印紙がないという事態にならないよう事前に準備するようにしましょう。
収入印紙についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>収入印紙の必要知識を徹底解説:金額や割印、勘定科目等も解説
発行者の書き方
誰が発行したかわかるようにし、何か問い合わせがある際の連絡先も記載する必要があります。そのため、「住所」、「電話番号」、「メールアドレス」等を明記しましょう。
この時、印刷されたものを使用してもよいですし、社判を使用しても問題ありません。
領収書を発行するときによくある疑問
領収書を発行するとき、記載内容が違ったり、書き方で疑問に感じる場面があると思います。そんな時、正しい対応をしなければトラブルのもととなります。
税金についての問題にも発展してしまうため、注意が必要です。
発行した領収書に不備があった場合はどうする?
記載内容の不備が発覚した場合は、すみやかに再発行の対応を行いましょう。ただし既に発行した領収書を回収した上で、正しい内容の領収書を渡すようにしてください。これは不正利用の防止のためです。
宛名は空欄か上様でもよい?
商習慣として「上様」という宛名を使うことはよくあるため、問題ではありません。
しかし「消費税法上」では宛名がない領収書は無効であると解釈されています。
領収書は売り手と買い手の双方だけが理解できれば良いというわけではないため、なるべく宛名はきちんと書く必要があると認識しておきましょう。
クレジット払いでも領収書は必要?
クレジット払いのときは領収書がなくても問題ありません。
この理由は、クレジット払いをしたとき支払い自体が即時完了しないためです。このため、相手としては料金を徴収できていないため、領収書を作成してもらえない場合もあります。
このような場合は明細書等の支払いが確認できるもので代用しましょう。
クレジット払いとはあくまでもクレジットカード会社を通して料金を後払いする取引です。
このため、商品を購入した段階では現金の授受が行われず、販売者側は領収書の作成をする義務はありません。
そして注意したいのは、販売者側から領収書を発行してもらったとしても、税法上では領収書として扱うことができない場合もあります。
領収書をPDFで発行しても大丈夫?
領収書をPDFで作成しても問題はありませんが、紙の領収書と同じ記載内容を網羅しPDF化した領収書の内容が改ざんされていないことを証明するためのタイムスタンプを付与する必要があります。
また、PDFは文書ではないため、5万円以上の領収書であっても収入印紙を貼付する必要はありません。
再発行して欲しいと言われたら?
先述しましたが、再発行をする際は必ず元の領収書を回収した上で対応しましょう。万が一2枚とも領収書として渡してしまった場合は、1枚は商品の提供がない不正な領収書となり架空計上したことになります。
これは脱税に加担したことになりますので、元の領収書が回収できなければ再発行の対応は行わない方がよいでしょう。
回収できないにも関わらず、どうしても再発行しなければならない場合は、再発行であることがわかる印鑑をおしたり、その旨を記録として残したりする等してください。
2023年新制度のインボイス制度とは
インボイスとは「適格請求書」でインボイス制度とは「適格請求書保存方式」のことです。インボイスとして扱われるための所定の記載要件を満たすことで消費税で控除を受けることができます。
2023年からスタートしますが、売り手は買い手からインボイスを求められた場合は交付しなければなりません。
インボイスを導入することでどちらの税率が適応されるべきか明確化され正確な経理処理が出来るようになります。
本記事ではインボイス制度について簡単に触れておりますが、この制度は非常に複雑で難しいため、理解を深めたい方やさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>【2023年10月開始 インボイス制度とは?】を分かりやすく解説!フリーランスにとって何がやばい?
インボイス制度スタートによる注意点
インボイスへ適応するためには事前に国税庁へ適格請求書発行事業者の登録申請をし登録番号を取得しておくことが必要です。
インボイスへの登録番号の記載が必須であるため、事前に申請を受理されていない場合は、発行できません。
また、適応税率ごとに合計金額とその消費税額を記載する等記載内容へ沿ったインボイスの発行が必要です。
課税売上が1,000万円未満の会社や、設立が2年以内で資本金が1,000万円未満の会社であれば登録事業者の対象となりませんが「課税事業者」を選択することでインボイスの登録事業者になり、インボイスを発行することができます。
【まとめ】領収書は正しく取り扱おう
領収書は身近な書類であるため軽視しがちですが、正しく取り扱いを行わなければ犯罪に巻き込まれたり、過怠税を課されることになりかねません。
事業の規模によっては大きな損害になりかねないため、領収書のフォーマットを統一し、社員に運用方法を理解してもらうことが大切です。
また、今後はじまるインボイス制度は多くの会社が対象となります。対象となった会社は相手から求められたらインボイス制度への対応をする必要が出てきます。
このため、2023年までに準備を整えておくことが大切です。