【事例あり】ダイバーシティマネジメントをわかりやすく解説

近年多様化する働き方に伴い「ダイバーシティマネジメント」が注目されています。顧客の複雑化するニーズに応えるため重要になってくる経営方法です。しかし、日本ではあまり浸透していないため聞きなれないという人も多いでしょう。

この記事では「ダイバーシティマネジメント」についてわかりやすく解説していきます。

ダイバーシティマネジメントとは「人」の多様性を活かして組織力を高めること

個々の多様性を受け入れ、組織力向上に繋げる経営方法をダイバーシティマネジメントと言います。

昔の日本は同じ国籍・性別の人がメインで企業を運営してきました。しかし昨今、ビジネスもグローバル化してきており、さらに女性の活躍により発展してきた企業もあります。
そして人材不足からITを使った業務の自動化が進み、リモートワークや在宅ワークも増えてきました。結果、働き方や人材が多様化し企業にとってもメリットが多く生まれたのです。

ダイバーシティマネジメントが日本で浸透しない理由

日本ではダイバーシティマネジメントは“メリットがある”という認識が低く、まだまだ浸透しているとは言えません。
「男性と女性では社会における立場は均等ではないという意識」「男女ともに子育て制度の不十分さ」「英語への苦手意識から外国人とのコミュニケーションが上手くとれない」「日本では外国人雇用はまだ特別なこと」等の理由が原因です。

男女均等法や男性の育児算入・夫婦共働きが増える等、以前に比べて労働条件も変わってきています。しかし、昔ながらの考え方がまだ強く根付いているため、新しい働き方がなかなか浸透していかないのです。

ダイバーシティマネジメントが求められるようになった背景

少子高齢化により人材を確保するのが難しい

日本企業において人材不足は大きな課題です。
2016年には人口の約6割の労働力率があるのに対して、2065年には約5割まで下がると言われています。その原因のひとつとして挙げられるのが少子高齢化です。

日本は世界的にみても高齢化がかなり深刻であり、年々労働力率が下がる一方です。労働力人口が減れば、企業はもちろん今までと同じビジネスプランを続けていけません。
そのため企業規模を縮小するか、今までよりも“人の手がいらない事業”にプランを変更せざるをえなくなるでしょう。

それほど日本では人材確保が難しくなっており、このままでは企業の存続自体も危ぶまれる状態なのです。そういった事態を避けるためにも多様な人材を採用し、人手不足の課題に真摯に向き合っていく必要があります。

多様なニーズに対応した商品・サービスが求められるようになった

多様な人材を採用することで、今までにない発想が生まれる可能性が高くなります。
日々変化していく市場競争に打ち勝ち、幅広いニーズに応えていくためには企業の競争力や生産性を向上していかなくてはいけません。

ダイバーシティマネジメントを取り入れることで、異なる考え方や才能が企業に新しいアイデアをもたらし、よりお客様のニーズにあった商品やサービスが生まれることに繋がるのです。

ライフワークバランスに重点を置く労働者が増えた

過重労働問題や働き方改革推進によって日本の働き方は変化してきました。

残業や休日出勤が美化された昔に比べ、個人のやりがいや充実感を大切にすることで「仕事」と「仕事以外の時間」の調和をとり、両方を充実させるワークライフバランスが重要視されています。しかし残業をしない、休日出勤をさせない等、企業が一方的に働き方を決めてしまっては、個々の成長の機会を奪うことになりかねません。

そのため、社員ひとりひとりの個性や価値を高める働き方を尊重して行く必要があるのです。

ダイバーシティマネジメントを推進するメリットとは?

人材不足が解消に向かう

ダイバーシティマネジメントを行うことで、人材確保に繋がります。
子育てや介護、障害によるハンデや年齢制限等、働きたいのに働く場がないと悩んでいる人は多いです。そういった人材に対して企業側が時短勤務やリモートワーク・フレックスタイムの制度、個々の能力に適した人事を取り入れることで、雇用が生まれ人材不足が解消します。

また、企業離れを防ぐためには、育休・介護制度、年休取得の推進等を積極的に行っていくことも重要です。さらに、今まで働き方が合わず採用を見送ってきた優秀な人材を採用することも可能になります。
ダイバーシティマネジメントは人材解消に合わせて優秀な人材確保にも繋がるのです。

時代の変化に柔軟に対応できる

多様な人材がいれば、多様なアイデアやスキルが生まれます。

新しく生まれたアイデアをビジネスに活かすことで、変化を続ける顧客のニーズや嗜好、要求にもいち早く対応できるようになるでしょう。ダイバーシティマネジメントを取り入れることで、企業自身が多様化し「企画が得意な人材」「営業が好きな人」「他国の言語を話せる社員」等、それぞれの才能を生かせる環境が作られます。

それによって企業は時代の変化に取り残されることなく、発展へと繋がっていくのです。

社会的評価が高まる

ダイバーシティマネジメントを取り入れれば、多様な人材が多様な働き方で会社に在籍します。
そうなるとこれまで働いてきた社員も働き方を見直すきっかけになり、満足度が向上するでしょう。社員のモチベーションが上がれば生産性も増し、働きやすい企業として評価も高まっていきます。

好評価の企業には、社員が辞めないだけでなく、より優秀な人材が集まるようになるといった好循環が生まれます。

ダイバーシティマネジメントの推進で生じ得るデメリットもある

従業員同士の対立や摩擦が起こり得る

ダイバーシティマネジメントを取り入れることで、個性ある考え方を持つ従業員が増えます。お互いの考えを共有することで相乗効果が生まれ、企業の視野が広がる可能性も。
一方で価値観の合わない人同士の対立や摩擦も起こり得ます。企業は多様な人材を確保すると共に、従業員同士のコミュニケーション問題への取り組みも必要になってくるでしょう。

生産性の低下が生じる可能性も

企業内の働き方が多様化すれば、必ずしも従業員全員が毎日オフィスに出勤する訳ではありません。

リモートワークやフレックスタイム制の働き方を取り入れることで、従業員の自由度は増しますが、従業員同士のコミュニケーションの場が少なくなるといった面もあります。
それぞれ好きな場所で仕事することによってコミュニケーション不足が起こり、上手く連携がとれず生産性が下がってしまうといったデメリットが生じる可能性もあるのです。

制度の変更から既存従業員からの不満が生じ得る

多様な人材を受け入れるということは、これまでの従業員への評価方法を変える必要があります。
従来のままの評価方法では、高評価になる人材と評価されにくい人材に分かれてしまうからです。

しかし評価方法の変更は、これまで評価されてきた人にとってマイナスになり得るため、不満に思う人もでてくるでしょう。そして新制度を受け入れがたい従業員の離職に繋がってしまうかもしれません。
そのため企業では、評価方法の変更は慎重に行う必要があります。

ダイバーシティマネジメントを導入するポイントは3つある

1.コミュニケーションできる場所を提供する

多様な人材を確保するということは、今までよりも密にコミュニケーションを図る必要があります。
これまで通りのコミュニケーションでは意思疎通が難しかったり、考えや意見の食い違いで業務に支障をきたしかねません。

一般的な企業でも「人と人」の問題は難しく、トラブルが起こりやすいです。ダイバーシティマネジメントを取り入れた企業であれば、より「人と人」のコミュニケーションが場は大切であり、場や頻度を多く提供する必要があるでしょう。

コミュニケーションの場を増やすことで、密な関係を築けたり今まで以上の意見交換が可能になったりします。それによって組織力が高められ成長へと繋がっていくのです。

2.明確な評価基準を設ける

ダイバーシティマネジメントを取り入れる上で「評価基準の明確化」は重要です。

多様な人材を受け入れるということは、様々な考え方や才能・スキルも受け入れるということ。
就業場所や働く時間も異なるため、従来通りの評価基準では不公平が生じ、従業員に不満が生じやすくなります。そのため、多様化する人材や働き方に合わせた「新しい評価基準の明確化」が必要であり、従業員への周知徹底や理解を図っていかなければいけません。

また評価基準は一度作ったら終わりではなく、アンケートや面談等の機会を設けてヒアリングを実施し定期的に改善を行っていきましょう。

3.企業理念等の価値観の共有と浸透を図る

多様な人材を受け入れ、組織として成長するためには企業の求める未来像を従業員全員で共有していく必要があります。経営陣のみが“企業の指針”を知っていても、従業員がほかの方向を向いていては企業の成長はあり得ません。

そのため、企業が求める「組織が目指す目的」「組織の価値基準」「目指す理想の企業像」等の将来のビジョンを従業員に浸透させることで、組織がひとつにまとまり同じ方向を向いて業務に取り組むことができます。

経営陣が率先して企業の指針に沿って行動することが、従業員への浸透に繋がっていくでしょう。

国内企業のダイバーシティマネジメント事例から学ぼう

某ITサービス業

とあるITサービス業では現在のビジネスを守りつつ、新しい考え方や視野を取り入れられるようにとダイバーシティマネジメントを重要視しています。

具体的には「育児と介護の両立」「育児休暇後のスムーズな職場復帰」「育児休暇中の通信教育におけるキャリア開発」「仕事と家庭の両立を支援する制度」等、様々な取り組みがされているのです。
女性の社会進出や共働きが増える中、女性社員にもっと活躍して欲しいという思いから「育成プログラム」を実施し、女性社員からは好評のようです。

某飲料メーカー

とある飲料メーカーでは現在の市場が縮小している現状を踏まえて市場新規開拓にあたり、ダイバーシティマネジメントを取り入れています。

新規市場を開拓するにあたりターゲットを「主婦と働く女性」とし、新商品の開発にあたりました。商品開発の企画案はターゲットである“女性目線”のものが含まれたアイデアが求められることに。
この企画をきっかけに今まで力を入れてこなかった女性社員の採用や育成等による、男性との均等化に取り組みました。結果、女性の役職者が増え、さらに女性の活躍を後押しするような支援も進められました。

某運輸業

人材不足が深刻化している運送業では「女性・外国人・LGBT」等、これまで運送業ではあまり活躍してこなかった人材が働きやすい環境を整えたことで、人材確保に繋がり人手不足問題を解決しました。

特に力を入れたのが「外国人雇用」。
これは海外への事業展開を視野にいれた取り組みであり、海外事業部のリーダーに外国人を抜擢し、現地の取引を任せたのでした。
さらに外国人雇用者が異国の地で働くことにストレスを感じないよう「里帰りの旅費を負担」「面談を行う」「通訳者も同席させる」等の配慮をすることで、外国人社員にとっても働きやすい環境を目指しています。

まとめ

人の多様性を活かして、企業の成長を図るダイバーシティマネジメント。
個々の才能やスキルを柔軟に受け入れることで、これまでなかったアイデアや意見が生まれます。また、新しい働き方の環境を整え、従業員の仕事への満足度が上がれば離職率も下がり、企業の評判アップに繋がることも。企業の組織力向上を考えている人は、ダイバーシティマネジメントを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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oneplus編集部

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