【プラットフォーム×テクノロジー】泉卓真といずみホールディングスに迫る──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真にインタビュー

泉卓真氏へのインタビュー第3回。前回は、泉社長が創業の際に「水産業界」を選んだ理由や、当時掲げていたテーマ「流通業からサービス業へ」について語っていただきました。

今回は、その後社長が歩んでいった歴史を振り返りながら、いずみホールディングスの理念にも迫ります。

いずみホールディングスのビジネスモデル

泉 水産業界で会社を立ち上げると決めた際、僕にはふたつ考えていたことがありました。まずひとつ目は、ビジネスモデルは5年に一度、進化させるということです。

それは、ビジネスモデルに賞味期限があると考えたのと、重ね合わせられるモデルがある方が、事業に厚みが出ると考えたからです。ずっと同じやり方ではどんどん利益が出にくくなりますし、真似してくる人達も出てきた時に「真似できないかたち」にしたいと思いました。それがひとつです。

──言われてみればその通りな気がします。もうひとつはなんでしょうか。

泉 それは競合を変えるということです。

──競合を、「変える」……?

泉 水産卸売会社は当然、水産卸売会社として見られるのですが、私たちがより大きな目標を達成するには、私たちは水産卸売会社ではなくなってしまった方が良いと考えたということです。

このふたつを組み合わせた結果として、私たちは最初の5年間は水産卸売会社として成長しましたが、6年目から10年目までは「地域商社」と言われるように、魚だけでなく肉・野菜も展開して、全国、ひいては海外まで物流のインフラを構築することにしました。

11年目からは IT 会社になるということで、「日本卸売市場」といったコンテンツを作ってプロモーションをしたり、RPA や OCR、音声認識といった技術の導入をし、食品流通業界への横展開にチャレンジしたりと、自社の合理化と併せて他社へサービスの提供をはかるようになります。そして16年目からはテクノロジー会社として、金融をテーマにしました。

こうなるともう、僕たちの競合は「水産卸売業者」ではないと思いまして。こうして戦うステージを変えていくことで、ひとつ前の段階の競合との競争優位性を持つことも大事だと思ったのです。

──おっしゃっている意味と、いずみホールディングスの歴史がよくわかりました。その意識が前提にあったから、社長は高速での事業展開を可能にされたのですね。

泉 いえ、スピードはめちゃくちゃ遅いと思います、本当に悩んでいますが……。それらによってグループは構成されています。

izumi-holdings

泉 補足しますと、『株式会社いずみ』と『株式会社T-REX』『株式会社I-FARM』というのは、魚、肉、野菜をそれぞれ、全国の飲食店を専門に卸売している会社です。現在、全国で10,000を超える店舗様とのお取引があります。

そして『株式会社魚一』『株式会社テンドック』『道南青果株式会社』の方は、全国の卸売市場や、スーパー等の量販店とお取引をしていただいている会社です。

いずみホールディングスでは、事業会社やお客様とのお取り組みの内容によって仲買の権利を持って市場内流通を行ったり、最近トレンドと言われている「市場を介さない直接流通」、つまり、市場外流通も行ったりしています。そのふたつを取りまとめて、すべてのプロデュースを行っているということです。そのプロデュースを行う中に、『日本卸売市場』というプロモーションコンテンツにあたるものや、『oneplat』といった金融プラットフォームもあるということです。

泉卓真のプロモーション戦略

──ところで『日本卸売市場』はインターネット上の仮想市場だと認識していたのですが、今のお話では「プロモーションコンテンツ」であると。

泉 元々、日本卸売市場は、社内用の商品検索システムや商品カタログで、新卒等の未経験者を早期に戦力化するための仕組みとして構築したものです。それを徐々にお客様にも共有したりしているうちに、BtoB の ECサイトとして展開をしてみようとなりました。結果、社内用の仕組みとしてはとても優秀なシステムなので現在も使っていますが、その社内用のシステムをそのまま外部に開放をしているようなかたちなので、BtoB の ECサイトとしてというよりは、お客様も私たちと同じような主旨でご利用を頂いていると思います。

その中でも動画は面白かったですよね。コロナを機に中止しましたが、船の上や畑の真ん中等、数か所の産地から、漁師さんや農家さんのコメント込みで3分程度の動画を、毎日スタッフが生中継でお送りしていました。

例えば魚の水揚げのライブ動画でしたら、漁師さんにコメントをその場でいただきまして、それを聞きながらバイヤーは WEB で入札することができます。それを受付けて、早いところだと5時間後にはそのお魚をお届けする、ということをプロモーションとして行っていました。

──実際に拝見してみると迫力がものすごいですね。

泉 ありがとうございます。プラットフォームやネットービスを BtoB の食品流通領域で展開されている企業様は何社もありますが、弊社はあくまで「プロモーションコンテンツ」としての利用に留めました。

理由はいくつかありますが、まずはそれが一番、投資対効果が高いからです。私自身は BtoB の食品流通領域のサービスにはとても共感していますが、現実としてネットサービスでの対応だけだと、各飲食店様にはそのお店の中心となる仕入業者として扱ってもらいにくいとも考えました。

──確かに、仕入れの中心となるのは難しそうです。

泉 当時はそう思いましたし、私たちはもっと根本的な大きな課題へのチャレンジに、資金を活用するべきだと考えました。

いずみホールディングスの理念

泉 それから前回のお話で少し出ました通り、いずみホールディングスでは M&A も積極的に行っています。理由は、会社を大きくする上では大事な手法の一つであるから、そして私たちのグループ入りをしてくださった会社はすべて M&A 後に5倍ほど利益が伸びているので、お互いが豊かになれるからです。

くわえて、いくつかの会社に出資もしています。食品流通にかかわらず、アプリケーションサービス等分野は多岐にわたります。

泉卓真の狙いは「最適化」

泉 いずみホールディングスは「日本の食文化に一番貢献する企業になる」という理念のもと、「食品流通のOSを創る」等のミッションを掲げています。コーポレートサイトを見ていただければこういったことが書いてありますが、つまりは「食品流通を最適化する仕組みやシステムを提供し、生産者の所得も上げ、皆さんの食卓の食費を下げますということです。言い張っています(笑)。そのために、流通経路と収益構造の改革にチャレンジしようというわけです。

なかでも大きなテーマのひとつは「顧客のニーズに合わせて最適化する」ということなのですが、これはちょっと難しくて、一筋縄ではいかないんです。

──詳しく教えてください。

泉 たとえば毎年、夏にビアガーデンが開催されますね。そういったところでは、「どこの産地のどの船の誰々さんが養殖したホタテ」というように、明確なストーリーが重視されます。なので、その情報をつけて直接流通をします。つまり産地直送ですね。

ですが一方で、こちらも例えですが、全国に数百店舗ある飲食店様のグランドメニューになるとどうでしょう。仮に「白身の開き」の場合は、開いて干した状態で150gから180gにはまる重量レンジで、年間100トン必要です。こうなると漁師が100人いてもそのサイズだけ集めるのは難しいので、組合ですとか漁連、市場、商社等と協力することになります。

いずみホールディングスは、お客様の要望や状況、例えば店舗で調理をするシェフがいるか・いないかという状態等、そういったことに合わせて最適な流通を提供します。そのために、市場内流通と市場外流通、両方のルートを持つことが必要だと考えたわけです。

──どのお客様にも対応するための、万全の体制なのですね。

泉 それがまだ目指しているところにまで行ってはいないんです。ちなみに先ほどご説明をした『産直LIVE』は、あれは商品に事実、つまりストーリーをつけて、トレーサビリティを動画で明確にするということを目的としました。僕たちが本当に産地から直送できるというところを、まさに生中継でライブしてしまおうという考えです。

たとえば「美味しい魚」の定義っていくつかありますし、それぞれの方の主観によって違うと思います。ですが、「一昨日獲れた魚なんですけど、2日かけて熟成させました」というものと、「今日の朝一番に小樽で水揚げされたのを2時間で運んできた最高鮮度の魚です!」というものがあるとすると、人間って面白いもので、後者の方が美味しいと思う方が多い気がしています。

──確かに思ってしまいますね。

泉 私たちいずみホールディングスでは、そういうストーリーの提供ができることで、ただの物売りからサービス業に変わることができると思いました。それでこういうサービスを始めた次第です。

オンラインとオフラインの両翼で世界へ

泉 こうして新たなサービスを始めると取引先も増えていき、事業拡大の中で「テクノロジー」というキーワードが出てきて、それ以降はテクノロジーを駆使して色々な展開を迎えました。そのうちのひとつに oneplat がある、というのが大まかな流れです。

いずみホールディングスの事業をまとめますと、「食品流通」についてはオフラインのプラットフォームを構築し、その経済圏をどんどん大きくするということに注力しています。

一方「テクノロジー」のチームは、オンラインのプラットフォームを作って、より良い仕組みとより大きな価値を構築します。この掛け算の構図をより高い次元で成り立たせることで、我々はミッションを達成しようと考えています。

──説得力があります! 詳しいご説明をありがとうございました。オンラインとオフライン、両方をおさえているということが大きな強みですよね。

泉 ですが、まだまだ課題はたくさんあります。特にオフラインの方は、やっぱり距離ですとか物理的な問題が大きな壁になります。ですが今は、何かしらの解決法があると感じておりますので、乗り越えていきたいと考えております。


【次回】

「サービス業としての水産卸売業」という出発点から、食品流通業界全般へ広く展開を続け、現在はテクノロジーも駆使して顧客へ「最適な」サービスをすることを使命としてきた泉卓真社長。

次回は、そんな社長がこれまでに遭遇してきた困難とはどのようなものがあったのかを伺います。

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oneplus編集部

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  • 【流通業からサービス業へ】泉卓真といずみホールディングスに迫る──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真氏にインタビュー

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