「ネッティングってなに?」
「ネッティングについて詳しく知りたい!」
このようなお悩みを抱えていませんか?
ネッティングとは、取引先とのやり取りの中で、支払うべきお金と受け取るべきお金の差額を計算して決済する方法のことです。送金手数料や事務コストの削減等、活用できればメリットの多いネッティングですが、分類と種類がいくつかあり、ビジネスをする上では知っておきたい用語と言えます。
今回の記事では、「ネッティングってなに?」「ネッティングについて詳しく知りたい!」という方に向けて、ネッティングの基礎知識について解説していきます。是非参考にしてみてください。
ネッティングとは
ネッティング(netting)とは、決済方法のひとつです。対当する取引(債権・債務)の差額を計算し、一定の期日にまとめて決済を行います。
ネッティングにより実際の決済額が小さくなり、送金手数料・事務コスト・決済資金・為替リスク削減等の効果が得られます。海外に子会社や支店を保有する大手企業では広く活用される決済方法です。
日本では、1988年4月に外国為替及び外国貿易法が施行され解禁されました。外国為替が自由化されている諸外国ではネッティングが普及しています。しかし、ネッティングが禁止もしくは規制されている国もあるため、活用する際には確認が必要です。
【ネッティングの分類と種類】
ネッティングの分類と種類について、簡単にまとめると以下の通りです。
分類 | バイラテラル・ネッティング | 2者間で行われる |
マルチラテラル・ネッティング | 多者(3者以上)で行われる | |
種類 | ペイメント・ネッティング | 債権・債務を残したまま、実際には差額のみ決済する |
オブリゲーション・ネッティング | 債権・債務を差し引き、新しい債権・債務に置き換えて決済する | |
クローズアウト・ネッティング | ※決済不能となった場合に1度だけ適用 債権・債務を差し引き、新しい債権・債務に置き換えて決済する(決済日や通貨の種類は問わない) |
ネッティングの分類
ネッティングの分類は以下の2種類です。
- バイラテラル・ネッティング
- マルチラテラル・ネッティング
ひとつずつ、解説します。
バイラテラル・ネッティング
バイラテラルネッティングは、2者間のやり取りにおける決済のことです。一定期間の取引を集計して、債権と債務の差額決済を行います。
例えばA社とB社の取引で、A社がB社に100ドルの債権があり、B社がA社に120ドルの債権がある場合は、相殺処理により支払額の多いB社が20ドル支払うことで決済が完了となります。
一定期間内の取引集計を行うことで、何度も取引があった場合の送金手数料や為替リスクが軽減でき、決済資金の削減にも繋がります。
マルチラテラル・ネッティング
マルチラテラル・ネッティングとは、多者(3者以上)で行われるネッティングです。当事者とは別に清算機関を置くことでネッティング効果が高まります。
【清算機関とは】
清算機関とは、各取引当事者の相手方として決済を行うことから、セントラル・カウンターパーティ(CCP)と称されます。複数の取引当事者同士の売買関係を、すべてCCPを相手方とするバイラテラル・ネッティングに置き換えることで決済履行を保証します。
CCPが当事者間に入ることで、複雑な金銭の動きが簡素化されます。その会社の総支払額と総受取額とを差し引くことで、CCPへの送金もしくはCCPからの入金という形で決済が完了します。
清算機関(CCP)を利用したマルチラテラル・ネッティングとは、本来の取引先との金銭の授受が省略されるため、「どこへの支払か、どこからの受取か」を問わない仕組みになります。つまり「どこに対する」債権・債務かは特定できなくなります。
ネッティングの種類
ネッティングの種類は、以下の3種類です。
- オブリゲーション・ネッティング
- ペイメント・ネッティング
- クローズアウト・ネッティング
ひとつずつ、解説します。
オブリゲーション・ネッティング(ノベーション・ネッティング)
オブリゲーション・ネッティングとは、債権と債務をお金のやり取りなしで解消する方法です。例えば、B社に5万円の支払をする債務があり、同じくB社から3万円を受け取る債権があるとします。この債権と債務を差し引きして、新たに2万円の債務を作ることをオブリゲーション・ネッティングと言います。
オブリゲーション・ネッティングされる取引は、すべて同じ決済日をもつことが必要です。取引が複数あってもすべての債権・債務は解消され、それらの差額に相当する新たなひとつの債権・債務に置き換えられるのです。
このように、元々の債権・債務の打ち消し合いをして、新しい債権・債務に置き換えることから、ノベーション(=novation、更新)という言葉を使い、ノベーション・ネッティングと言われることもあります。
ペイメント・ネッティング
ペイメント・ネッティングとは、オブリゲーション・ネッティングと同様に、同じ決済日の債権と債務の差額決済をするのですが、債権と債務は残したままとします。「差し引き額を決済できたら、もともとの債権・債務を決済できたことにする」というやり方です。
実際に支払う額は差し引きした金額となるため、決済資金の削減を図ることができます。しかし、取引先の倒産等で決済が予定通り行われなかった場合は、もともとの債権・債務の決済が必要となるため、確実に決済をするための安全対策を講じておきましょう。
クローズアウト・ネッティング
クローズアウトとは取引関係の清算という意味です。クローズアウト・ネッティングとは、一方が倒産等で決済不能な状態となった場合は、取引関係を終了・清算させるために1度だけ行う作業を言います。
予め両社間で結んでいた契約を元に、両社間に残った債権・債務を打ち消し合い、ひとつの債権・債務に整理します。クローズアウト・ネッティングの合図である「決済不能な状態」については、トラブルを避けるため、判定条件等を事前に当事者間で決めておく必要があります。
もともとの債権・債務を打消し合いにより解消し、新しい債権・債務に置き換える点は、オブリゲーション・ネッティングと同様です。
しかし、オブリゲーション・ネッティングとペイメント・ネッティングが、「決済日や通貨の種類が同じであり、同じ種類の取引(例えばお金とお金の取引)」について行われるのに対し、クローズアウト・ネッティングでは、決済日や通貨の種類に関わらず差し引きして清算されます。
ネッティングの種類 | 債権・債務 | ネッティング後 |
オブリゲーション・ネッティング | 解消される | 新たにひとつの債権・債務に置き換わる |
クローズアウト・ネッティング(倒産時に適用) | 解消される | 新たにひとつの債権・債務に置き換わる |
ペイメント・ネッティング | そのまま残る | 実際の決済金額は小さくなる |
ネッティングの効果
ネッティングの効果は以下の通りです。
- 送金手数料の削減
- 事務コストの削減
- 外国為替手数料の削減
- 決済資金の削減
ひとつずつ、解説します。
送金手数料の削減
国内であれば一件数百円かもしれませんが、海外の会社とのやり取りでは数百円から数十万円の送金手数料がかかります。ネッティングを導入することで、送金件数を減らせるため、送金手数料の削減を図ることができます。
事務コストの削減
海外へ送金する場合は、支払先の情報や入力、外国為替の手配、資金の手配、銀行での送金手続き、支払先への連絡・確認等、事務負担や事務コストは少なくありません。ネッティングすることで、送金件数が減るため、送金に関する事務コストを大幅に削減できます。
決済資金の削減
ネッティングすることで実際の決済額が小さくなるため、決済資金が削減でき、経営の効率化を図ることができます。
外国為替手数料の削減
海外の会社とのやり取りでは、多くの場合は送金人または送金受取人が、送金通貨と自国の通貨の両替を銀行を通して行います。この際、銀行に対して為替手数料を支払うことになります。送金するたびに手数料が発生するため、送金件数が減れば外国為替手数料も大幅に削減できるのです。
ネッティングのまとめ
最後に、ネッティングについてまとめます。
- ネッティングとは差額決済のこと
- 2者間のネッティングをバイラテラル・ネッティング、多者(3者以上)でのネッティングをマルチラテラル・ネッティングと言う
- ネッティングにより、送金手数料・事務コスト・決済資金・外国為替手数料の削減効果あり
特に複数の取引先がある場合に、コスト削減効果の大きいネッティング。国によっては、禁止や規制があるため、活用する際には注意が必要です。