「働き方改革」は、規模関係なくすべての企業において重要な経営課題のひとつとして認知されてきています。また、新型コロナウイルスの影響も相まって、これまでの働き方が大きく見直されているタイミングに直面しています。
この記事では、「働き方の概要」や「企業はどのような対策をとっていけばいいのか」をご紹介します。是非、今後の経営方針を考える上でお役立てください。
働き方改革とは
2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行されました。現在知れ渡っている「働き方改革」はここからきており、大企業から中小企業にとって重要な経営活動のひとつとなりました。
また、新型コロナウイルスの影響も相まって、働き方は今や大きく見直されています。
働き方改革とは一億総活躍社会実現のための取り組み
働き方改革は、「一億総活躍社会を実現するための改革」であると表現できます。一億総活躍社会とは、少子高齢化問題が進行する中「50年後人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰もが活躍可能な社会」を指します。
改革の背景は労働力人口の減少
働き方改革が行われた背景には、日本の企業が課題としている「少子高齢化」「雇用形態による格差」「長時間労働」が挙げられます。この課題について、下記でご紹介します。
課題①:少子高齢化に伴い減っていく労働力人口
なぜ、政府は一億総活躍社会を目標として掲げているのでしょうか。目標と掲げる背景には、「生産年齢人口が総人口をいつか上回ってしまうペースで減少していること」が考えられます。
事実、15〜64歳の生産年齢人口が、想定されていた以上のペースで減少しているのです。現在の人口増加ペース、および減少率が続いてしまうと、2050年には総人口が約9000万人、2105年には4500万人にまで減少すると予測されています。
次に、「労働力人口」に注目してみましょう。
労働人口のピークは、第二次ベビーブームに生まれた団塊世代だと言われています。しかし、労働力人口は2060年までに、団塊世代の半分の約5000万人になると予測されているのです。
この状況に対策を打たないままだと、日本全体の生産力低下・国力の低下が考えられるとされ、「働き方改革」が打ち出されたのです。
課題②:雇用形態の違いによる格差
日本の非正規社員の待遇は、正社員の時給で換算すると賃金が約6割です。欧州が8割であることと比較しても、賃金格差が激しいことが分かります。
非正規社員としての働き方を選択する人には、育児や介護と並行して働く女性や高齢者が多いとされています。
正社員の「待遇に制限なし」な働き方を選択することが困難な人たちは、自身の生産性を発揮することが難しい状況です。
課題③:長時間労働・過労死問題
日本の長時間労働問題は、国連から是正勧告されたことをご存知でしょうか。
勧告内容は、
①多くの労働者が長時間労働に従事しており
②過労死や精神的負荷となるハラスメントによる自殺が発生し続けていることを懸念する
という内容でした。
つまり、国際的にも日本の長時間労働問題は重要視されているのです。また、これらの問題は「出生率」にも影響するとされています。
なぜ働き方改革を実施するのか
働き方改革の大きな目的は、労働者にとって働きやすい一億総活躍社会を実現することです。
労働力人口を増加させ、生産性を上げるために、政府が主導となって様々な取り組みが進められています。
政府が主導している働き方改革の背景には、大きく分けて3つの目的があります。
目的①:柔軟な働き方で労働力人口減に対応
目的のひとつ目は、労働者各々の事情に合わせた柔軟な働き方が選択できる社会にすることです。
育児や介護といった、ライフプランに寄り添った働き方を選べる社会を作ることで、労働力人口の減少に対応することが目的です。
特に、出産・育児によってキャリアが途切れてしまう労働者を減らすことは少子高齢化の改善にも繫がるでしょう。
目的②:常態化する長時間労働を解消する
目的の2つ目は、時間外労働の長さや有休消化率の低さを改善することです。
日本の長時間労働や過労死問題は、世界で問題視されています。事態は深刻化しており、労働者が体調を崩してしまえば、社会にとっても大きな損失となるのです。
長時間労働の対策として、残業時間の上限を規制することや、残業が60時間を超えた際の割増賃金率を上げたりしています。
目的③:正社員・非正規社員の不合理な格差を埋める
目的の3つ目は、非正規社員を選択した労働者にも納得できる待遇で働ける社会をつくることです。
非正規社員は、多様で柔軟な働き方の実現が容易ですが、今の日本では正社員との間に格差が生じていることは事実です。
同じ企業で同じ仕事をしているのにも関わらず、正社員よりも低い賃金で働いている不合理な格差が生じている状況です。
こういった格差を解消するために、「同一労働同一賃金」を基本とする法改正が行われました。
働き方改革による企業と従業員のメリットとは
働き方改革に取り組むメリットは、労働者側だけではなく企業側にもあります。具体的には、2つのメリットが考えられます。
メリット①:(企業)生産性の向上や人材の定着
企業側が労働者の状況に合った働き方を提供することにより、労働者自身の能力が発揮されやすくなり業務の効率化が実現できます。
また、長時間労働が解消されて労働時間が短くなるため、労働者は集中力を向上させて成果を出せるようになり、結果として生産性が向上するでしょう。
さらに、働きやすい環境の企業は労働者にとって魅力的にうつります。自身にあった働き方が選べる場合は、ライフスタイルによって辞めざるを得なかった労働者の離職を防ぐことに繋がり人材定着率を上げることができるのです。
メリット②:(従業員)ライフスタイルの変化に対応
ライフスタイルに変化があることは、従業員の誰にとってもあり得る事象です。
そんな中、多様な働き方が選べれば、退職という選択をせず働き続けやすくなるでしょう。「働きたくても働けない」と諦めていた労働者は、新しい選択肢を獲得できるのです。
働き方改革で企業がすべき取り組みとは
ここまでご紹介した取り組みは、働き方改革においては「最低限守るべき」ラインのお話です。
この最低限のラインを設けた上で、各企業が労働者や企業に合わせた「プラスα」の取り組みを実現することで、働き方改革は完成されるでしょう。
取り組み①:業務効率化
AI化や電子化、自動化が進化したことにより、多くの分野にて効率化が図られました。
機器の導入で省力化が実現すれば、労働時間の短縮や残業時間の改善、人件費削減にも繋がります。
依然としてコスト等の課題はあるものの、補助金や助成金の活用もあるため、導入を検討する余地はあるでしょう。
取り組み②:ジョブ型雇用、成果主義の導入
日本の評価制度は職能制度が適用されており、能力に応じて昇格するようになっています。
労働者の能力が向上するにつれ、相応の役職に就くことになり、席がなければ新たにその役職を用意することになります。その結果、役職者が増えて人件費が膨らんでいってしまいます。
このような制度には、見直しが必要です。事実、昨今では同じ職務であれば同じ待遇であり、ポストの数と職務内容を定めて当てはめるジョブ型雇用を採用する企業は増えています。
取り組み③:テレワークの導入
テレワーク勤務は、新型コロナウイルスの影響により導入が加速されました。
中小企業では、設備や環境面の整備にコストがかかってしまうと、テレワーク導入に前向きではないケースがあるものの、単純な事務作業等は必ずしも出社しなければいけない訳ではありません。
工夫次第でテレワークを実現できるケースが多いのも事実ですので、テレワークの導入を段階的に進めてみてはいかがでしょうか。
まとめ:目的を見失わずに推進しよう
日本では、少子高齢化の加速が他国よりも顕著であり、重大な問題と認識されています。
このような現状で「労働市場の外にいる人材を労働力にする」という目的の働き方改革は、労働力人口の減少を抑制する施策であると言えます。
ルールに対応すべく社内体制を見直し、各社にマッチしたプラスαの取り組みを実現することで、自社の働き方改革は成功するでしょう。