RPAとは、人間が手作業で行っている定型業務を、ロボットで自動化することのできるツールです。
現在、労働人口の減少等を背景に、業務を自動化できるRPAに注目が集まっています。総務省の情報通信白書によれば、2020年度時点でRPAを導入している企業は12.1%です。決して少なくない企業がRPAを既に導入しています。
本記事では、RPAの概要や適している業務、経理業務で活用するメリットや具体例についてご紹介します。是非、最後までお付き合いください。
経理業務の自動化を可能にするRPAとは
RPAとはロボットを用いてプロセスを自動化する技術のこと
Robotic Process Automationの略称で、訳すと「ロボットによるプロセスの自動化」です。今まで人間が行ってきた作業やより高次の作業を、AI・ルールエンジン・認知技術等が代行・代替するツールのことを言います。
RPAの特徴は、導入までの時間が従来のシステム開発に比べて各段に短いことと、導入効果がすぐに発揮されることです。
RPAに適した業務は、以下のような作業となります。
- 規則的なプロセスで繰り返し行う定型作業
- 複数ソフトやアプリケーション間で行う同時処理作業
- データの収集・集計・加工
【補足】
ルールエンジン:
業務自動化のためのアプリケーション内において、業務遂行の判断を行うソフトウェアです。人が持つ経験・ノウハウ・勘といった判断に必要となる業務知識をルールベースに蓄積させ、そのデータベースの中から情報を取捨選択して判断を下します。定型業務の自動化をするRPAとは相性が良いのが特徴です。
RPAの導入が進む背景には、以下のことが考えられます。
- 労働力不足
- 働き方改革への対応
- 技術の進歩による利便性の向上
労働力不足:
日本では、少子高齢化により生産年齢人口の減少が深刻になっています。今後、募集をかけても思うようには労働力が確保できない可能性があるでしょう。
そのような場合にRPAを導入すれば、定型的な業務やノンコア業務の一部をロボットに委ねることができ、労働力不足を補うことが期待できます。また、その業務に充てていた人的リソースをコア業務に充てることも可能です。
働き方改革への対応:
日本では、一般的に長時間労働が慢性的なものとなっています。労働力不足が懸念される中で労働力を確保するためには、労働時間低減といった働き方改革に取り組み、労働環境を改善しなければなりません。
労働時間を低減するには、RPAにより自動化できる部分は自動化するのが合理的だと考えられます。
技術の進歩による利便性向上:
技術の進歩により、機械学習機能等を兼ね備えたものが開発されたことでRPAの対象となる業務領域が拡大したり、インターネット上や仮想環境でも操作可能なものが開発されシステムが多様化したりしました。利便性の向上は、RPAを導入するインセンティブになったと言えるでしょう。
RPAで自動化できるのは定型業務やデータ処理
自動化できる代表的な業務は、パソコン上で行う定型作業です。
RPAは、基本的に設定されたプロセスを設定通りの順番で設定通りに実行します。よって、都度なんらかの判断が必要であったり、手順が毎回異なったりするような業務には適していません。RPAの導入が高い効果を発揮するのは、単純な作業を定型的に繰り返し行うことです。
要するに、人による判断が必要になるような作業であれば、RPAで自動化することはできません。しかし、人の判断が必要ない定型の作業であれば、どれだけ長時間でも何度でも自動で作業ができます。ですからRPAの向き不向きを考慮して、人が行うべき作業とRPAで自動化するべき作業を見極めることが重要です。
再掲になりますが、RPAに適しているのは以下のような作業となります。
- 規則的なプロセスで繰り返し行う定型作業
- 複数ソフトやアプリケーション間で行う同時処理作業
- データの収集・集計・加工
上記のような単純作業は人が行うとヒューマンエラーが発生しやすいものです。しかし、RPAであれば迅速かつ正確に作業が可能ですので、積極的にRPAを活用したい作業となります。
RPAにはサーバー型・デスクトップ型・クラウド型がある
RPAには、サーバー型とデスクトップ型・クラウド型があります。
サーバー型
サーバ上にRPAを構築します。複数のシステムや業務を横断して大量のデータを一元管理がしやすいのが特徴です。
サーバー内で動作するタイプのRPAとなります。業務を代行するロボットがすべてサーバー内で動作するため、一元管理・共有することが可能です。サーバー型は、100体を越えるロボットをサーバ内で稼働でき、大量のデータを扱えます。組織が複数の部署に分かれていても、組織全体としてRPAを活用できるのも魅力です。
ただし、デスクトップ型・クラウド型よりも一般的に初期費用が数百万円からと高額となります。製品によるものの、維持費も月額数十万円と高額になることが多く、大規模に導入したい企業向けのRPAだと言えるでしょう。
デスクトップ型
個々のパソコン内にRPAを構築し、個々のデスクトップ上で動作させます。パソコン毎の作業単位で自動化するのが特徴です。どちらかと言えば、スモールスタート向けとなります。
各パソコンの範囲内であれば、自動化の対象となる複数の作業を連携することが可能です。組織的な活用ではなく、業務を行う担当者がRPAを利用したいようなケースに適しています。
パソコンの台数単位で導入ができるため部門や個人単位での導入がしやすく、サーバ型に対してデスクトップ型は比較的安価です。社員の少ない中小企業でも導入しやすいでしょう。
従業員それぞれのパソコンに導入できるという特性上、属人化しやすい傾向にあります。操作方法を共有する等の対策を講じておきましょう。
クラウド型
インターネット上のクラウドサービスにログインし、ブラウザ上で作業を自動化します。そのため、自動化の対象はブラウザ上での作業に限定されてしまい、クラウドサービス以外との連携は難しいという欠点があります。
しかし、自社にサーバーを設置することが不要であるため初期導入コストを抑えられるのがメリットです。さらに、インターネット環境さえあれば即座にRPAの活用を開始でき、導入もスムーズに行えます。ベンダー側が対処するため、運用・保守の手間もありません。
クラウド型は無料でお試しできる製品が多いため、使用感を確かめてから本格的な導入を検討できるのもメリットでしょう。
しかし、ベンダーのサーバーを活用するためセキュリティ面に気を付けましょう。ISO27001認証を取得しているか・PCI-DSS等の規格をクリアしているか・自社のセキュリティポリシーに合っているか等を確認しておくことをおすすめします。
RPAを経理業務で活用するメリット4つ
【経理においてRPAを活用しやすい業務の例】
- 売掛金・買掛金管理
- 経費精算
- 伝票入力
- 請求書作成 等
①事務作業を効率化できる
定型業務を自動化できれば、業務の効率化が実現できます。
一般的に、定型的な作業において人間の処理能力がロボットの処理能力を上回ることはありません。経理の業務は、データ入力・データチェック・データの集計というような定型業務が多いものです。ですから、その業務にRPAを活用すれば、人力で業務を行うよりも効率的かつ速やかに業務を遂行することができます。
加えて、人間であれば集中力・体力等に限りがあり休息を必要としますが、ロボットにはそれが必要ありません。長時間にわたって、自動的かつ均一のスピードで作業が進められます。よって、業務の量が多ければ多いほど、効率面で人間よりもRPAが優位です。
②作業ミスが減る
人間による作業は、集中力の低下や疲労によって処理速度が低下したり、ミスをしたりします。一方で、RPAであればロボットですので、そのような要因で処理速度が落ちることはなく、設定に間違いがなければ基本的にミスが発生しません。
経理業務は金銭に関係する業務ですので、小さなミスでも避けたいところです。ひとつのミスが大きな問題に繋がることもあるでしょう。
人が作業をする限り、ヒューマンエラーを完全になくすことは難しいものです。業務が莫大な量であれば、尚更困難でしょう。その点RPAであれば、長時間の作業でも設定さえ正しければ業務を正確に実行できます。ミスを減らすには有効な手段です。
③人材をコア業務に割り当てることができる
定型業務をRPAに任せることができれば、人的リソースをより付加価値の高い業務(コア業務)へ従事させることが可能です。コア業務に注力させることで、生産性向上も期待できます。
経理のコア業務は、利益計画等の策定・業績管理・予算管理・決算業務といった将来の売上・利益の拡大に繋がり企業競争力の源泉となる業務です。人的リソースは、できるだけ重要な業務に充てるのが望ましいでしょう。
④専門知識がなくても活用できる
RPAには、特別な専門知識がなくても利用できるものが数多くあります。
一般的にシステム開発をする場合は、プログラミングにおいてコーディングという作業が必要です。動作のひとつひとつに、緻密なコードを書きます。
一方で、RPAの開発ツールの多くは、予め動作が指定されたパーツがあるものが多いものです。それらを組み合わせれば、プログラミング等の専門的知識がなくても、自動化の設定を作成できます。また、利用するベンダーによって、自動化の設定を代行してくれることもあるでしょう。
社内にエンジニアが不足している場合は、操作性が良くメンテナンスが容易で、プログラミング等の専門知識がなくても利用しやすいRPAを選ぶことをおすすめします。
【RPA活用例】具体的にどのような場面で活かせるのか
伝票の入力作業
RPAは情報を基に売上伝票・支払伝票を自動作成・登録することが可能です。
例えば、指定したメールアドレスに届いたメールから、自動的に売上の情報を読み取って売上伝票を作成したり、会計システムに登録したりすることができます。また、購入実績からデータ化された支払情報を基に、支払伝票を作成したり会計システムに登録したりすることも可能です。
帳票を作成する作業
顧客情報・売掛金台帳等のデータを参照して、請求書等を自動作成しメールに添付して取引先に送付するといった作業もRPAで実現可能です。
請求書といった外部に渡す帳票は、宛先や内容を間違えてはなりません。しかしながら、雛形に必要な情報だけを入力するという作業は煩雑で、ヒューマンエラーが発生しやすい業務です。とは言え、定型化しやすい業務ですのでRPAによって自動化がしやすく、効率化の効果が大きいと言えます。
交通費の確認や経費精算の作業
RPAの導入によって、経費精算の確認作業の一部を自動化できます。
例えば、交通費を経費として計上するケースを考えてみましょう。RPAを活用すれば、インターネット上から経路や運賃の情報を検索・収集し、その情報と申請された使用経路や運賃等を突合する作業を自動化できます。
経理業務でRPAを活用するときのポイント5つ
①業務の洗い出しと作業手順の可視化を行い自動化する業務を決める
既にお話したように、RPAには適した業務と不適な業務があります。ですから、人が行うべき作業とRPAで自動化するべき作業を見極めることが重要です。
ですから、RPAを導入する前に、経理部門の業務を洗い出して整理しておく必要があります。また、業務フローを可視化しておくことも重要です。その上で、RPAを採用する業務やその範囲を選定します。
②スモールスタートで試してみる
失敗をしないためにも、小規模かつ比較的に業務プロセスが簡単な業務から導入しましょう。まずは一部の業務にRPAを導入し、使い勝手・運用体制等を確認します。
RPAの仕組みや特性を理解し、RPAが他の業務にも導入する価値のあるものだと判断するならば、段階的に他の業務にも適応していきます。そうすれば、手痛い失敗を防ぐことが可能です。
③RPAを扱えるよう人材を育成する
RPAは、現状のシステム・現状の業務プロセスに適用されるものです。社内システムや業務プロセスが変更されれば、RPAが上手く動作しなくなるでしょう。また、RPAには日々のメンテナンスも必要です。
それに備えて、RPAの扱いに長けたデジタル人材を育成しておくことが望ましいというのは言うまでもありません。しかし、社内にそのような人材が少ない場合はベンダーのサポートを活用しましょう。
専門知識に乏しい企業がRPAを導入する場合は、できるだけサポート体制が手厚いベンダーを選んでおくのが安心です。
④RPAの運用ルールを決めておく
RPAには、どうやって安全に運用していくかという視点も重要です。運用ルールを定めていなければトラブルが生じます。
運用のルールがなければ、RPAの役割範囲が重複したり不要なRPAを導入したりしてしまうかもしれません。また、意図せぬ状況下でRPAが稼働してしまう可能性もあります。
こうしたトラブルを回避するために、運用ルールの策定をしておきましょう。
⑤エラーの発生も想定しておく
RPAには、エラーが発生する可能性があります。エラーが発生することを想定して、事前に対処法を決めておきましょう。
前述したように、RPAは現状のシステム・現状の業務プロセスに適用されるものですから、
パソコンのアップデート・アプリケーションの仕様・業務フロー等が変化するとエラーが起こる可能性があります。
エラーが発生するパターンを想定して対処法を決め、対応手順等をマニュアルに記載して共有しておくとよいでしょう。社内担当者やベンダーの情報についても共有しておくと、エラーに迅速に対処しやすくなり、被害を最小化できます。
RPAサービスの成功事例を紹介
【某生命保険会社】様々な部署で導入し作業時間を削減
某生命保険会社では、顧客からの問い合わせに回答するチャットボットとRPAを組み合わせるなど、様々な業務の自動化を測りました。
その結果、2019年末時点で39部署で導入。年間15万時間の削減を実現しています。
今後も適応範囲を拡大し、2022年末には年間45万時間の削減を目指しているそうです。
【某ガス業者】明細書作成の工数を削減
某ガス業者では、サービス利用者に明細報告書を作成しています。今までは、社内の複数システムから個々に情報を取得して、その内容をまとめて明細報告書を作成していました。
RPAの導入により、情報の取得および明細報告書作成を自動化し、年間270時間の業務時間削減を実現しています。
経理の仕事がなくなることはない|oneplatで経理業務をさらに効率化しよう
RPAは優れた技術ですが、経理のすべての仕事がRPAに代替され、経理の仕事がなくなることはありません。
ロボットは定型業務しか対応できません。適宜判断が必要であったり、手順が毎回異なったりするような業務は、人間の方が適しています。RPAは補助的に活用し、経理担当者はコア業務や非定型作業に注力するのが良いでしょう。
また、RPAとは異なりますが、定型業務をシステムを用いて効率化する方法もあります。その一例としてご紹介するのが、「oneplat」の納品書・請求書クラウドサービスです。
このサービスは、取引先を登録することで、取引先から納品書・請求書をデータで受け取ることができます。また、取引先から受領した電子請求書は、会計システムと連携して自動取込みが可能で、手仕訳が不要です。納品書・請求書業務や仕訳の入力といった煩雑な業務を効率化することができます。
もし、貴社の経理担当者が納品書・請求書業務で忙殺されているなら、oneplatを活用して業務の効率化をしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
RPAはパソコン上の定型業務に適したツールです。上手く活用できれば、業務効率向上やミスの削減が可能で、自動化により節約した人的ソースをコア業務に充てることで企業の生産性・競争力を向上させることにも繋がります。
RPAにはサーバー型・デスクトップ型・クラウド型があり、デスクトップ型やクラウド型はサーバー型に比べて安価で導入できます。無料トライアルや小規模な導入から始めることも可能です。
人的リソースの多くが定型業務に割かれているのであれば、業務効率化の選択肢のひとつとしてRPAを検討してみてはいかがでしょうか。