NPO法人とは、「特定非営利活動法人」とも呼ばれている法人団体です。NPO法人は株式会社や合同会社と違い、利益を関係者に分配することを目的としていません。では、営利を目的としないNPO法人における会計にはどのような目的があるのでしょうか?
本記事では NPO 法人における会計の目的や営利法人との違い、また会計ソフトを利用するメリットについて紹介していきます。
NPO法人における会計の3つの目的
はじめに、NPO法人は営利を目的としていません。そのため、企業の経営状態や資産を投資家へ情報提供する目的ではなく、寄付してくれる市民への適切な情報提供を目的としています。NPO法人は活動の透明性や、寄付金が適切に使われているか、といったことを周囲に知ってもらうために会計を行います。
NPO法人の会計の目的は主に財務会計・税務会計・管理会計の3つです。それぞれの具体的な内容について紹介していきます。
1.財務会計
財務会計では、活動計算書や賃借対照表等の計算書類をNPO法に沿って作成します。活動計算書とは、営利法人における損益計算書のようなものです。NPO法人には、これらの書類をまとめて、会員や社会に情報提供する義務があります。
助成団体や会員、寄付者等は、これらの計算書類等を確認して、今後も助成すべきか、会員を継続すべきか、寄付すべきか、といった判断を行います。そのため財務会計は、NPO 法人の活動を継続する資金を集めるために欠かせません。NPO法人にとっても、社会にとっても、重要な役割があります。
2.税務会計
税務会計は、税金の額を計算し決定するための会計です。NPO法人には様々な納税義務が発生します。NPO法人にかかる主な税金には、法人税・法人住民税・消費税・印紙税・所得税・不動産所得税・固定資産税・都市計画税・自動車重量税・自動車税・自動車取得税・軽自動車税・事業所税等があります。
税務会計に不備があると、追徴課税等NPO法人にとっても弊害が生じるので要注意です。NPO法人を設立したら、正しく税金を納付するためにも、すみやかに税務会計を行い、手続きをしましょう。
3.管理会計
NPO法人は営利を目的とはしていませんが、企業活動には資金が必要です。そして活動を継続していくためには、費用を上回る利益を上げる必要があります。管理会計は、予算管理や資金繰り等を行い、法人内で共有される会計のことです。この管理会計をもとに、今後の活動計画を立てていくこともあります。
また、助成金や補助金を受けた際には、予算に従った支出義務が発生するため、定期的な管理が必要です。年度末にまとめて収支を合わせようとはせず、日頃から管理会計を行うようにしましょう。
NPO法人と営利法人の会計の違い
法人とは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利能力を認められたものをいいます。その中でも、利益の分配を目的としないNPO法人と、利益の分配を目的とする営利法人があります。
この目的の違いから、会計の役割や方法も異なってきます。ここではNPO法人と営利法人の会計の違いについて見ていきましょう。
情報開示を目的としている
営利法人における会計には、企業の経営状態や財務状況を把握し、株主に対する配当可能利益を確定し、投資家の判断に必要な情報を提供する目的があります。
一方でNPO法人は、営利法人における会計のような目的はありません。しかし、NPO法人には寄付してくれる人や、助成を申し出てくれる助成団体があります。これらの市民や助成団体に対して、今後も支援を継続するかどうかの判断材料として、情報の開示が必要となります。
損益計算書と活動計算書が異なる
上記で説明した目的の違いから、使用する書類も異なっています。営利法人では、「損益計算書」を使用しますが、NPO法人では「活動計算書」というものを使用します。
活動計算書とは、各事業年度におけるNPO法人の活動状況を表す計算書です。活動計算書では、収益から費用と損失を引いて、「当期正味財産増減額」を計算しています。
NPO法人会計基準を利用する
NPO法人では、営利法人とは異なり「NPO法人会計基準」を利用します。このNPO 法人会計基準を利用する理由は、以下の目的を達成するためです。
1.NPO法人の会計報告の質を高め、NPO法人の健全な運営に資すること
2.財務の視点からNPO法人の活動を適正に把握し、NPO法人の継続可能性を示すこと
3.NPO法人を運営する者が、受託した責任を適切に果たしたか否かを明らかにすること
4.NPO法人の財務諸表等の信頼性を高め、比較可能にし、理解を容易にすること
5.NPO法人の財務諸表等の作成責任者に会計の指針を提供すること
NPO法人会計基準とは?
NPO法人会計基準とは、NPO法人が外部の社会に向けて作成する会計報告書の作成指針です。NPO法人は活動の透明性や、寄付金が適切に使われているかといった情報提供を外部に向けて積極的に行う必要があります。
正確で比較可能な会計報告書を作成できるよう定めたルールが「NPO法人会計基準」です。企業会計基準に近い内容となっていますが、特徴的な会計処理もあります。
法律で定められた基準ではない
実はこの「NPO法人会計基準」ですが、法律で定められたものではありません。民間団体の力を合わせて作成されたものです。そのため、NPO法人会計基準の利用は任意であり、強制はされていません。
このNPO法人会計基準が普及することで、多くのNPO法人がはじめて自社の情報を提供することになります。それがNPO法人にとっても、社会にとってもプラスになることを期待しています。
NPO法人会計基準協議会が策定
NPO法の施行当初は、NPO法人の会計について定められた基準がありませんでした。そのため各法人が独自に会計処理を行い、収支計算書を作成していました。そのため公開された NPO法人の会計報告はわかりづらく統一性がないため、比較が困難という問題点がありました。
このような状況を改善するために、全国各地のNPO支援センターからなるNPO法人会計基準協議会を中心に、専門家や助成財団、金融機関等の民間の力を合わせて、NPO 法人会計基準の策定が進められました。そして2010年7月20日に基準が公表されました。
会計ソフトを利用するメリット
NPO法人の会計には独特な勘定科目があります。また、月末にまとめて会計していると、現時点での今月の収支を把握することが難しくなるため、毎日行いたいという法人もあると思います。そのため、正確に効率よく業務を進めるためにもNPO法人向け会計ソフトの利用がおすすめです。
業務が効率的に進む
NPO法人は、市民が行う自由な社会貢献活動の健全な発展を促進することを目的としています。そのため、なるべく活動そのものに時間を注ぎたいものです。会計ソフトを活用すれば、会計業務に必要な書類のテンプレートが利用できるので、書類作成の時間を短縮することができます。
会計業務を効率的に終わらせることができれば、メインの活動に力を入れやすくなりますので、NPO法人では、NPO法人向けの会計ソフトを利用することがおすすめです。
業務の正確性が上がる
NPO法人は活動の透明性が非常に求められます。そのため正確な会計情報を提供する必要があります。しかし、NPO法人の会計には営利法人にはない書類や項目が存在するため、一般企業で利用されている会計ソフトでは機能が不十分の場合も……。
そのため、「NPO法人会計基準」に準拠しているNPO法人向けの会計ソフトを利用すると良いでしょう。今後の活動において、外部から支援を受けるためにも正確な書類作成が求められます。
まとめ:NPO法人における会計の特徴を理解しよう
本記事では、NPO法人における会計の目的や内容、営利法人の会計との違いについて解説しました。NPO法人は、市民や助成団体の信頼を得るためにも、正確な会計業務を行い適切な情報提供が必要となります。
NPO法人の会計には独自の勘定項目があるため、会計ソフトを活用する際はNPO法人向けソフトの利用がおすすめです。NPO法人会計の特徴を理解し、業務に役立てていきましょう。
会計業務の自動化・効率化なら、oneplatがおすすめです。以下のURLから製品詳細をご確認いただけます。 https://www.oneplat.co.jp/