目まぐるしい変化が起こる現代において、MQ会計という会計の仕組みが注目されています。しかし、会計や経理担当者の中には「詳しく知らない」という方も多くいるでしょう。
本記事では、これからの企業運営において重要性が高まるMQ会計について、わかりやすく解説します。
MQ会計とは?
まず、MQ会計の概要について確認しましょう。MQ会計を端的に表すと「戦略的かつ合理的で儲けを出すための会計」と言えます。
会計そのものは、企業におけるお金の出入りを管理する仕事です。しかし、MQ会計はただ管理するだけでなく、利益を出せるよう戦略的に会計を行う特徴を持ちます。
また、会計でデータ分析を行う際は「率」で分析することがほとんどです。しかし、MQ会計においては「〇〇円」という金額単位で分析し、戦略を練る特徴があります。
MQ会計で出来ること
MQ会計は実際の価格を元に分析するため、見せかけの利益ではなく、実際の利益がわかります。普段は計上しきれていない固定費も要素に含めるため、正確な数値で分析を進められます。
また、MQ会計で用いる手法は非常に簡単で、経営陣以外の社員にも浸透させることが可能です。視覚的に簡単に理解できるので社内の共通言語としても活用できます。
さらに、MQ会計では後述する「損益分岐点」を把握できます。この損益分岐点では「赤字になるライン」がわかるため「企業が経営継続のためにどの程度の売上を必要とするか」を判断できます。また、売上の最低ラインを知ることで、新たな戦略を練ることも可能です。
MQ会計を考えるための4つの要素と手法
MQ会計は通常の会計と異なり4つの要素を元に分析を進めます。
ここでは、MQ会計に必要な「PVQF」という4つの用語について解説します。
これらの要素は関連しており、以下のような構成になります。
P(価格)
VQ(原価×数量)
MQ(粗利×数量)
F(固定費)
G(利益)
この構成図を元に、要素の概要を確認していきましょう。
① P プライス(価格)
様々なシーンで使用するプライスですが、ここでは「販売価格」を指します。
小売店等では「販売時にいくらで売り出すのか」がこのプライスに該当します。
プライスは「原価」「数量」「固定費や経費」で構成されており、これらを差し引いたものが「利益」として計上されます。
② V バリアブル・コスト(原価)
バリアブルは「可変」を意味し、バリアブルコストは変動費を指します。また、一般的には「原価」とも呼ばれています。
変動費は、商品の生産量や販売量等の操業度に比例して変動する費用を指します。
③ Q クォンティティー(数量)
クォンティティーは「販売数量」を指します。
商品を販売する際は「どれくらいの数量を売るか」が重要なポイントになります。
参考までに「プライス(P)」「バリアブル・コスト(V)」は、このQと同時に用いられる機会が多いと認識しておきましょう。数量と販売価格、数量と原価は切っても切り離せない関係にあるためです。
④ F フィックスド・コスト(期間費用・会社経営費)
最後に、販売数量や価格に左右されず発生する要素にフィックスド・コストがあります。フィックスドは「固定」を意味し、販売に関わる経費を指します。
具体的には、店舗の家賃や固定資産税、福利厚生に必要な保険料等が挙げられます。
これらの費用は、売上の変化によって頻繁に大きく左右されることはありません。そのため、固定という認識で使用されます。
4つの要素からG ゲイン(利益)が決まる
ゲインは「獲得する」という意味を持ち、会計では「利益」として扱われます。
これまで紹介した「PVQF」の要素を組み合わせることでGを決めることができます。
つまり、G(利益)を得るためには、P(販売価格)やV(原価)、Q(経費)をうまくコントロールすることが必要です。
そのため、PVQFを用いたMQ会計は「戦略的な会計」と呼ばれるのです。
MQ会計の「M」
これまでアルファベットを使った4つの要素を解説しましたが、「MQ会計の名称におけるMは何?」「Mもなにかの要素?」と疑問を感じる方もいますよね。
結論から言うと、Mは要素に当てはまりません。
しかし、MQ会計のMは「マージン(粗利単価)」という意味を持っています。
粗利単価は「売上価格から原価を引いた価格」です。飲食店で例えるならば、お客さんに提供した料理の価格が1,000円(売上価格)で、原価が300円だった場合を想定します。この場合の粗利は「700円」となります。
この例を4つの要素を用いて表現するならば「PQ(販売価格×数量)からVQ(原価×数量)を引いた価格」と言えます。
このように、M自体には粗利単価という意味はありますが、分析においては使用しません。
MQ会計からわかる4つの損益分岐点
基本的な用語を確認したことで、だんだんMQ会計のイメージが掴めるようになりました。
ここからは、MQ会計を用いることでわかる、損益分岐点について解説します。
そもそも「損益分岐点」とは、利益がゼロの状態になるポイントを指します。しかし、なぜゼロになるポイントを見つけるのかと疑問を持ちますよね。
結論から言うと、損益分岐点の把握は「赤字になるラインを見極める」ために活用できます。赤字のラインが分かれば、必要売上高の算出も可能になります。
「利益をゼロ」にするためには、PVQFにおいて4つのアプローチ法があるため、下記で解説します。
①P(価格)を上げる
原価や固定費が変わらず、価格を上げると利益は出ません。
具体的には、原価が30円の商品を100円で売った場合は利益は「70円」となります。
しかし、同じく原価30円の商品を50円で売った場合は利益が「20円」と下がります。
このように、P(販売価格)を下げることで、利益をゼロに近づけられます。
②V(原価)を下げる
売上価格をそのままにして、原価を下げると利益が増加します。
原価が高く、売上が出ていない場合は、原価を下げて売上を維持します。
③Q(数量)を増やす
販売数量の増加でも利益をコントロールできます。
売上を増やすには「販売価格を上げる(P) 」だけではなく、「販売数量を増やす」の方法があります。
しかし、実際の企業経営においては「薄利多売」になっては将来性が見込めないため、注意が必要です。
④F(期間費用・会社経営費)を下げる
営業に関わる固定費を下げると、必然的に求められる売上高も低下します。具体的には人員の適正化を図り、人件費を抑えることが挙げられます。
少々乱暴ですが「必要経費を減らせば、売上もその分少なくて済む」という方法です。
これまでは「売上を上げる」ことに着目していましたが、Fを基準にする際は「売上を下げる」ことに着目します。
まとめ:MQ会計を理解してG(利益)を最大化しよう
今回はMQ会計について、その概要や必要となる4つの要素を紹介しました。
PVQFはそれぞれ独立した意味を持っていますが、企業の経営を判断するには関連させて分析する必要があります。
しかし、どのような関連があるかを把握しない場合は、正確な分析ができず「企業の安全ライン」を把握できない状態になります。そのため、自社でMQ会計が難しいと感じた場合は、専門家に依頼したり、会計システムの導入をおすすめします。