請求書の発行における法的なルールは存在しません。しかし、請求書は自社だけではなく取引先の企業も取り扱う書類ですので、お互いの認識が合うようわかりやすい内容で作成することが求められます。また、発行のタイミングも両社にとって都合の良いように決める必要があります。
本記事では、請求書を発行する必要性やタイミング、作成方法、注意するポイント等について紹介します。
そもそも請求書とは?
請求書とは、サービスや品物を提供した取引企業へ対価の支払いを請求するための書類のことで、納品側から発注側に送付します。この書類の発行に法律的な義務付けはありません。しかし、取引をスムーズに行うために発行することが一般的になっています。
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請求書発行におけるルール
法的に定められているわけではないため、必須となる記載項目や書式等はありません。基本的には自社のルールに則って作成されます。主に以下の8つの項目を記載しておくと良いでしょう。
・請求先の企業名
・発行者の情報
・発行日
・取引内容
・取引金額
・請求番号
・振込先
・振込期限
請求書は企業同士のやり取りに使われます。従って、納品側・発注側双方にとって確認しやすい内容であることも大切です。一般的な形式でない場合は、確認漏れや認識の食い違いを起こしかねません。誰が見てもわかりやすいよう、シンプルで見やすい形式で作成すると良いでしょう。
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請求書の必要性
認識の食い違いによる企業同士のトラブルを避けるためにも、請求書の発行は必要です。記録として残しておくことは、取引を行った証拠になります。これにより、売掛債権の回収遅延や未回収リスクを防ぐことができます。
納品者側も発注者側も手元に請求書があれば支払い忘れを防ぐことができるため、取引をスムーズに進めるためにも欠かせない書類です。
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発行日の記載が必要な理由
一般的に、請求書には発行日が記載されます。なぜなら発行日の記載がないと、いつの依頼に対する請求かわかりにくいからです。複数のサービスや品物を取り扱っていたり、発注頻度が高かったりするとなおさら把握が困難になります。これは納品者側と発注者側どちらにも言えることです。
また、税務調査にも関わっており、発行日の記載がないと架空の取引を行っているとして不正を疑われる恐れもあります。両社がトラブルを避けるためにも発行日は忘れずに記載しましょう。
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発行日の設定方法
原則として、発行日は請求書を発行した日付を記載します。しかし、実際は取引企業の締め日の記載であることが多いようです。月末締め翌月末払いといった言葉をよく見かけるのではないでしょうか。このように企業では、発注を区切るための日付が設定されているため、その日付に合わせて発行日を設定することが一般的になっています。
厳格なルールはないものの、取引企業に合わせて柔軟に対応することで、取引がスムーズに進みますので覚えておくと良いでしょう。
再発行時の日付の記載方法
発注のたびに発行される請求書は、取引の数が増えるほど発行が増えるため管理も難しくなります。時には、発注側が請求書を紛失してしまい、再発行を依頼されることもあるでしょう。
再発行の際に気を付けたいのが発行日です。基本的には再発行書類であることを明記し、前回発行した請求書と同じ日付にすると良いでしょう。もし、再発行日を記載する場合は、備考欄に前回発行時の日付を記載しておくと親切です。
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請求書の発行タイミングは2パターン
請求書の発行タイミングは主に2つの方式に分かれます。基本的にサービスや品物の提供前に発行することはありません。取引の規模や頻度、取引企業の意向等によって使い分けると良いでしょう。
1パターン目:都度方式
都度方式とは、サービスや品物の取引が行われるたびに請求書を発行する方式です。取引ごとに請求するため売掛債権の回収が早く、資金繰りがしやすいというメリットがあります。しかし、取引の回数が多いとその分発行数も多くなるため手間がかかり、管理も大変になるというデメリットもあります。
2パターン目:掛売方式
掛売方式とは、一定の期間内で行われた取引に対してまとめて請求書を発行する方式です。企業によっては頻繁に取引を行う相手先もいることでしょう。そのような場合は、手間の削減や管理のしやすさから、月ごとにまとめて請求する方法がよく行われています。
毎月一定量の取引がある企業や、支払面での信用が高い企業にはこの方式が向いていると言えるでしょう。
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請求書を作成する際のポイント5選
請求書の作成には法律で定められた厳格なルールが存在しません。だからといって、各社が自由にカスタマイズして書類を作成してしまっては、大切な情報を把握しにくくなってしまう可能性もあります。ここでは、請求書を適切に作成するためのポイントを5つ紹介します。
①角印の押印を忘れない
法的に定められているわけではありませんが、角印は書類が正式なものであると証明する役割があります。受け取る側にとっても角印があることで文書の信頼度が高まり、スムーズな取引を可能にします。
そしてもう一つの役割は、請求書の偽造や改ざんを防ぐことです。角印があると文書のみより複製が難しくなります。また、角印のある書類の偽造や改ざんは罪が重くなるため、犯罪の未然防止にも役立ちます。
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②請求書在中の記載を忘れない
請求書を内封した封筒には「請求書在中」と記載しておくと親切です。多くの書類を取り扱う企業では、封筒に記載がないとほかの書類と混ざって確認が遅れることも起きてしまうかもしれません。封筒に内容を記載しておけば、中にどのような書類が入っているか一目で把握できるため、取引企業が管理しやすくなります。
③消費税の端数表記の確認
取引金額によっては消費税に端数が発生します。原則、端数処理は四捨五入、切り捨て、切り上げのどれを選択しても問題ありません。ただし取引企業とのトラブルを避けるためにも、どの処理方法を利用するか確認した上で発行しましょう。
認識のズレをなくすためにも、取引企業ごとに端数処理の方法を決めておくことをおすすめします。
④請求書は一定期間保存する
請求書は、法人税法や所得税法、消費税法などの法律によって、一定期間保存することが義務付けられています。請求書は原本を保存する必要があり、控えを作成した場合は、その控えも同様に保管しなければなりません。
保存期間は法人か個人事業主かによって異なります。
法人の場合は7年(欠損金の繰越控除適用時は10年)で、個人事業主は5年(消費税課税事業者は7年)です。
保存期間の年数は、請求書の発行日からではなく、その事業年度の確定申告書の「提出期限の翌日」から数えますのでご注意ください。
詳細は帳簿書類等の保存期間|国税庁にてご確認ください。
また、メールでPDF添付などの電子的に請求書をやり取りする場合には、電子帳簿保存法に従って保存する必要があります。保存期間や方法について正しく理解し、適切に運用しましょう。
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⑤インボイス制度に従って発行する
2023年10月1日からインボイス制度が開始されました。
この制度により、適格請求書発行事業者は、取引先(課税事業者)の要求に応じて、インボイス制度に対応した適格請求書(インボイス)を発行・保存しなければなりません。
適格請求書を発行しないと、取引先は仕入税額控除ができなくなってしまうため、トラブルの原因となります。なお、「適格請求書」には、以下の事項を記載しなければいけません。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
また、適格請求書を交付する際には、その控えを作成し、7年間保存する義務があります。保存期間は、適格請求書を交付した日(または受け取った日)が属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から数えます。
詳しい情報については、国税庁のウェブサイトをご確認ください。
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請求書作成に用いられる方法3選
請求書は市販されているものもあれば、パソコンでテンプレートが配布されているもの、自社でオリジナルに作成されているもの等、様々あります。ここでは、主に利用されている請求書の作成方法を3つ紹介します。
①紙の請求書用紙で作成
紙製の請求書は、文房具屋や100円ショップ等で販売されています。市販の書類はシンプルな作りになっているため、取り扱いやすいと言えるでしょう。ただし、手書きでの作成になるため、手間や時間がかかってしまいます。取引数が多い場合は、あまりおすすめしません。
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②ExcelやWordでフォーマットを作成
ネット上にはExcelやWordで作成された請求書のテンプレートが無料で配布されています。また、自社で使いやすいようカスタマイズすることも可能です。ただし、取引企業へ送付する場合は、必ずPDFや画像ファイル等の保存形式に変換した上で送りましょう。ExcelやWordデータのままでは編集により改ざんできてしまうため注意が必要です。
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③請求書発行システムの利用
請求書発行システムを利用すれば、必要な項目を入力していくだけで簡単に請求書の作成が可能です。毎回入力する内容を登録しておくこともできたり、必要な項目を適宜追加できたりと取引企業に合わせて作成・管理することが可能です。
また、システム内で各請求書の管理ができるため、自社内での情報共有もしやすいと言えるでしょう。例えば、請求書の履歴やステータスを一目で確認できるので、経理担当者が取引先や担当者に確認する作業が大幅に軽減されます。
さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているシステムもあります。最新の法律を遵守しているシステムを利用することで、法的要件に対応した請求書を簡単に作成でき、細かい要件に合わせて請求書を作り直す手間も省けます。
業務の効率化と法的コンプライアンスを両立するために、請求書作成システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
納品書・請求書発行の電子化サービス「oneplat(ワンプラット)」であれば、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しつつ、これまで紙で発行していた納品書・請求書をワンクリックで作成可能です。最短一週間で導入できるため、印刷・封入・封かん等の業務工数やコスト削減を、手間なくスピーディに実現することができるでしょう。
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まとめ:請求書発行のタイミングは取引の方式に従いましょう
本記事では、請求書を発行する必要性やタイミング、作成方法、注意するポイント等について紹介しました。請求書の作成に法的な義務付けはありませんが、企業同士がスムーズにやり取りを行うためにも作成することをおすすめします。また、発行のタイミングも両社が取引しやすいよう使い分けていくと良いでしょう。