DX化には、ITツールの導入や抜本的なシステムの再構築等、多額のコストがかかることが想定されます。そのため、資金がないと実行に時間かかり世の中のビジネス環境の変化へ乗り遅れてしまう可能性も。また、資金をつぎ込んでも投資への十分なリターンが得られないリスクもあります。
しかし、補助金・助成金を活用することで、金銭的なバックアップを得ながらDX化をスムーズに推進することができます。
本記事では、DXを検討する企業向けに、補助金や助成金を紹介します。
補助金・助成金でDXを推進するメリットとは
補助金・助成金によりDXを推進するメリットとはなんでしょうか。それは「返還義務のない資金を得られる」ことです。
ここでは、「補助金」「助成金」の違いを把握した上で、それらのメリットを確認しておきましょう。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金の大きな違いに「受給の難易度や支給金額の幅」が挙げられます。補助金は金額の上限も多い反面、申請後に審査があることが多く、応募企業が多数の場合は競争になります。また募集期間が短いことが多く、支払われるまでの期間が長いこと等が挙げられます。一方で助成金は一定の条件を満たしていれば審査がなくても受給できたり、応募期間に定めがないこと等が特徴です。金額範囲は、補助金よりは低いことが多いです。
補助金・助成金を利用するメリット
補助金・助成金を利用するメリットは主に2つあります。
ひとつ目は金銭的補助を受けることで、DX推進の投資がしやすくなることです。DX推進には多額のコストがかかることが多く、資金力のない企業は計画を実行できない可能性があります。
また、2つ目は補助金・助成金の申請が通るということは、一定の社会的信用度があると判断されることです。これにより金融機関から融資を受ける際にもプラスに働きます。
DX推進に役立つ補助金とは
DX推進に役立つ補助金にはどのような種類があるのでしょうか。ここでは5つ紹介します。
1.IT導入補助金
中小企業や小規模事業者に向けた、ITツール導入の補助です。業務効率や生産性向上のためのITツールを導入することが目的です。この補助金では、対象となる企業規模やITツールの分類が定められています。
また、補助にはA類型とB類型があり、ITツールがそれぞれひとつ以上か4つ以上のプロセスを担うかどうかで区分されます。A類型は150万円未満、B類型は450万円以内が補助金額です。
2.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり補助金は、中小企業が生産性を向上したり革新的サービスを生み出し競争力を上げるための開発や設備投資のための補助金です。
設備投資や開発費用が対象の一般型と、海外拠点と連携し海外進出を目指すグローバル型があります。承認のポイントとしては、企業の成長見込みや財務基盤力・賃上げ計画等が重視されます。
補助金額は100万円から1000万円までです。補助率は、中小では1/2まで、小規模事業者では1/3までもらうことができます。
3.事業再構築補助金
事業再構築補助金は、コロナ禍で業績回復に苦しむ中小企業が、業種転換や新規事業を進めるための補助制度です。昨今、飲食・観光業界等を筆頭に多くの業界が売上低減に悩まされています。そうした中、今後のウィズコロナ・ポストコロナの時代の変化に対応していくための事業再構築を支援します。
通常枠では従業員数に応じて補助額が異なり、最低100万円から最大8000万円となります。ほかにも、中堅企業・大企業を目指す卒業枠等もあり補助額は最大1億円になります。
4.中小企業デジタル化応援隊事業
中小企業デジタル化応援隊事業とは、中小企業がITツール等を導入するためにIT専門家からサポートを受けるための補助制度です。DX化やデジタル化を推進したくとも知見が少ない中小企業では実行が難しい場合があります。
しかし、本制度を利用することで経験豊富な専門家とのマッチングができ、ツール選定や使用方法について助言をもらえます。補助額は専門家への委託費のうち、最大30万円までです。
5.戦略的基盤技術高度化支援事業
中小企業デジタル化応援隊事業とは、製造業における中小企業が、精密加工や立体造形等の基盤技術向上のために行う研究開発・販路開拓等への補助制度です。
企業単独では申請できず、大学や公共研究機関等と最低最低2者以上で共同体を組む必要があります。補助額上限は中小企業は単年度4500円までですが、3年間の合計で最大9750円まで受け取れます。
補助金・助成金を導入するプロセスとは
これまで紹介した補助金・助成金を受け取るには、いずれも申請が必要です。申請のプロセスや注意点等についてご紹介します。
1.補助金申請の条件を確認する
まず大前提として補助金申請のための条件を必ず確認しましょう。
条件に該当していないと、申請しても却下されるため注意しましょう。
また、人気の補助金は、応募多数で倍率が高くなったり、応募期間が短期間で終了してしまうこともあるためタイミングにも注意する必要があります。補助制度によっては、目標に達成できない場合に返金義務があるものもあるため、事前によく確認しておくことが必要です。
2.申請書を作成し、審査を受ける
条件を確認したあとは、申請書に必要事項を記入し審査を受けます。
補助金制度によっては申請書以外にも、事業計画書や賃上げ計画書等の提出が必要なものもあります。申請枠の関係で他応募企業との比較になった際には、自社の計画の実現性や成長見込み等を元に判断されることになります。そのため、計画書の作成は入念に行いましょう。
3.採択されたら事業を実施し、報告書を提出する
補助金制度に採択されたら、予定通り事業を実施します。
基本的に補助金は計画完了後に支払われることが多いです。そのため、計画終了時かあるいは年度ごと等に報告書を提出し、結果や進捗を報告します。また、制度や金額によっては、複数年度にわたって継続的な報告書の提出が必要な場合があります。
補助金利用時の注意点とは
補助金制度を利用する際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここではポイントを2つご紹介します。
1.申請期間を確認する
まずは必ず注意したいポイントとして、補助金制度の申請期間の確認が挙げられます。
これらの制度は申請期間が短いことが少なくありません。そのため、補助金を前提に計画を立てていても、いざ申請する際に募集が終了してしまっているケースも。また、申請しても必ず承認されるわけでもありません。毎年の募集期間や採択企業数等を確認しておき、現実的なプランを立てておきましょう。
2.補助金の獲得を目的にしない
補助金の獲得自体を目的にしないように注意しましょう。
補助金は、会社がDX化を推進し今後さらに成長するための手段にすぎません。手段が目的にすり替わってしまうと「補助金は受け取ったが業績や企業体制はあまり変化していない」ということになりかねません。補助金を元に何を行い、その結果どのような目標を達成したいのかというビジョンを常に認識しておくことが重要です。
まとめ:自社に合った補助金でDXを推進しよう
今回はDX推進のための補助金・助成金制度について、その代表的な種類と申請についてご紹介しました。全社で本格的にDX化を推進するには、多額のコストがかかります。
しかし、補助金・助成金を活用することで金銭的なリスクを減らし、新たな施策を行うことができます。
制度によって対象となる業種や補助金額も異なるため、自社に合った補助金を活用してDX化をスピーディーに達成しましょう。