経理業務を行う方にとって、誰しもがミスしてしまったことがあり、かつミスしたくないのが二重計上ではないでしょうか。
今回の記事では、
「二重計上してしまうと、どのような影響があるのか?」
「二重計上をしてしまう原因には、どんなことがある?」
「二重計上を防止するための方法を知りたい!」
等の疑問について、お答えしていきます。
経理によくあるミスのひとつ「二重(重複)計上」とは?
二重計上とは、売上や経費で同じ項目を誤って2回計上してしまうことを意味します。
例えば、クレジットカードで決済すると「売上票」「領収書(レシート)」の2つを受け取ることが多いでしょう。その両方を経費として扱ってしまうと、まさに二重計上になります。
同じ対象を2回仕訳してしまうこと
繰り返しになりますが、同じ対象を2回仕訳してしまうのが二重計上です。
例えば、売上を二重で計上してしまった場合は、該当する取引の売上が2倍になってしまいます。逆に、同じ経費を2回計上してしまった場合も然りです。
どちらも利益の数字を狂わせてしまいますし、現金管理を行っていれば残高が合わないことも出てくるでしょう。
売上・経費ともにミスしがちなパターンがあるので、それを把握した上で気をつけることが大切です。
二重計上は税務調査で指摘されやすい理由
二重計上では、税務調査で指摘されやすいポイントが2つあります。
ひとつ目は、売上を増やして本来よりも利益を多く見せる、いわゆる「粉飾決算」を疑われてしまうこと。そしてもうひとつは、税金の支払いを少なくするため、本来よりも経費を多く計上しているのではないかと疑念を抱かれることです。
二重計上をしてしまうと何が起こるのか?
もし二重計上してしまうと以下のようなことが起きる可能性があります。
- 納税額が増える
- 水増しや脱税と判断され、修正申告や追徴課税の支払いが生じる
順番に見ていきましょう。
売上の二重計上をすると納税額が増える
売上を二重計上すると、当然ですが実際よりも売上が増えることになります。
仮に経費は変わらないとすると利益は増えることになるので、その結果税金の支払額が増えてしまうでしょう。
ちなみに、法人が決算時に行う納税は大きく「法人税」「消費税」の2つですが、どちらも納税額が増えてしまいます。ただし例外として非課税売上(住居用家賃や土地の販売)の場合は売上に消費税が付されないので、必ずしも消費税額が増えるわけではありません。
経費の二重計上は水増しや脱税と判断され、修正申告や追徴課税の支払いが必要に
利益を減らすことに直接的に繋がる経費の二重計上は、税務調査で狙われやすいです。悪質な場合は当然ですが、単なるミスだとしても脱税と判断される可能性が出てきてしまいます。
正しい納税額になるように修正申告を行い、追加で税金を支払うことになるでしょう。
結果的に正確に納税していた場合よりも多くの支払いが生じてしまいますし、時間も労力もかかってしまいます。
請求書や売上で多発! 二重計上を防止するために原因を把握しよう
原因1:仮作成を受けていた請求書を2枚とも計上
例えば建設業の会社で、現場ごとの利益を概算で把握しておきたい場合、仮の請求書を取引先にお願いして発行してもらうことがあるでしょう。受取り時に一度計上したにもかかわらず、正式な請求書が届いた時にも再度計上してしまうことがよくある原因のひとつです。
原因2:請求書を再発行してもらった後に元のものを発見
経理の仕事を行っていて、誤って請求書を紛失してしまうことがあるのではないでしょうか。そうした場合は、取引先に再発行のお願いをすることがあります。しかし再発行が完了した後に、なくしたと思っていた請求書が見つかることもあります。
このようなケースでも、同じ取引を重複して処理してしまう可能性が高いので注意が必要です。
一方で、取引先に二重請求してしまうケースも考えられます。
例えば、入金済みの請求内容を未入金と勘違いして、再度請求書を送ったとします。取引先は既に入金処理を済ませているにもかかわらず、再び請求書を受け取ったため入金処理を行ってしまうかもしれません。
のちに自社のミスで二重請求していたことが判明すれば信用を大きく損ない、最悪の場合は取引停止に追い込まれることもあります。
二重請求の対処法や防止策については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】請求書で二重請求等のミスが発覚した際の対処法は?対策も解説
原因3:そのほか、似た書類がたくさんあることによるミス
取引先とやり取りを行う書類として、名称は異なりますが内容は似ているものが存在します。代表的なものとして「見積書」「納品書」「請求書」等が思いつくのではないでしょうか。
本来であれば請求書を経理書類として用いますが、例えば見積書で処理を行ってしまうのは比較的起きやすいミスです。
原因4:事前に全額処理したローンや分割払いを支払い時にも計上
複合機や社用車等、ローンや分割で支払いを行う場合、その多くは契約した際に全額まとめて処理を行うのではないでしょうか。
しかしその後も毎月支払いが発生するので、都度、経費として計上してしまうケースがあります。
原因5:クレジットカード決済
クレジットカードで決済を行うと、その場で「売上票」と「領収書(レシート)」を受け取る場合が多いのではないでしょうか。一緒に保管しておけば問題ありませんが、バラバラに保管しておくと、両方とも処理を行ってしまう可能性があります。
またクレジットカードの決済の場合は、1か月分の取引をまとめた「ご利用明細書」が後日送付されてきます。領収書等で精算を行っているにもかかわらず、明細書でも処理してしまうのもよくあるパターンです。
原因6:売上や売掛金・仕入や買掛金の仕訳ミス
取引先との支払いを、取引時にすべて現金で行っている会社は少ないですよね。金額の大小はあれど、掛取引を行っている会社が多いのではないでしょうか。
その場合は、二重計上してしまう要因として仕訳ミスがあります。売上と売掛金を混同してしまうケース、そして仕入等の支払いが発生する取引と買掛金を混同してしまうケースの両方です。前者では売上が、そして後者では経費が増えてしまうので注意しましょう。
原因7:商品等の在庫の集計ミスによるもの
会社で保有している資産やビジネスとして取り扱っている商品数が多い場合は、在庫の数を間違えてしまうことが考えられます。要因としては「単純に数え間違ってしまう」「ほかにも在庫を保管している場所があることを失念していた」等が考えられるでしょう。
原因8:商品等が返品されたり未着だったりした件を失念
在庫数が関わってくるのは、倉庫や店舗等に保管されている商品だけではありません。
棚卸しを行うタイミングによっては「発注しているがまだ届いていない商品」「実は返品されたが手元に戻ってきていない商品」「取引先に預けている商品」等、本来はカウントするべきものを失念していることが考えられます。
請求書や売上で起きがちな二重計上を防止する方法
ここからは二重計上を防止する方法について説明していきます。しっかり押さえていきましょう。
帳票類はナンバリングして管理する
請求書等の会計処理に必要な資料は、ナンバリングして管理を行うようにしましょう。
「取引先ごと」「日ごと」「月ごと」と整理しながら保存するようにし、入力前に「既に資料は保管してあるか」「その取引について処理は行われているか」を確認していきます。
会計システムへ入力を行う際、書類に添付されたナンバーを入力することでチェックしやすくなるかもしれません。
手間はかかってしまいますが、まずは正確性を第一に処理を行っていきましょう。
売掛金や買掛金の定期的な確認をルール化する
売掛金や買掛金は、実際に入金や支払いが行われるまでに行うべき処理が少し複雑です。そのため、特に経理初心者にとってはミスしやすいかもしれません。
例えば「月初に前月の確認を行う」等をルール化し、二重計上を含めて誤った処理を行っていないか確認していきます。
売掛金や買掛金のミスは、社内だけではなく取引先も巻き込んでしまう可能性があるので細心の注意が必要です。信頼を失うことがないように、定期的にチェックしましょう。
クレジットカードは処理するタイミングをルール化する
クレジットカードの決済処理で行ってしまうミスで一番多いのが、同じ処理を異なった書類で2回行ってしまうことではないでしょうか。具体的には「売上票と領収書(レシート)」または「領収書(レシート)と利用明細書」です。
このミスを防ぐためには、処理をするタイミングを決めることをおすすめします。
例えば「領収書を受け取った時に処理する」「利用明細書が届いた時に処理する」等が考えられるでしょう。
重要なのは、ルール化したら社内でしっかり共有することです。そして慣れるまでは、お互いに確認しながら作業していくのが良いでしょう。
仮作成や再発行前の書類の処理をルール化・徹底する
クレジットカード決済の処理と同様に、ルール化していきましょう。
仮作成の書類の場合は「仮作成段階では処理しない=正式な書類が届いてから処理を行う」「処理したことが一目でわかるように、会計システム上でアラートを付けておく」等が考えられます。
また再発行前の書類については「既に処理が行われているかどうかチェックする」「本当に紛失してしまったのか再確認を行う」等が考えられるのではないでしょうか。
ルール間に優劣はないので、社内体制に合ったものを選択していきます。そしてルールが決まったら、正確に守られるように社内共有を徹底しましょう。
損益計算書の月次推移をチェックする
損益計算書の月次推移をチェックすることは、特に経費の入力ミスがないかを確認するための効果的な方法です。
イレギュラーな取引や多額のものを購入しない限り、基本的に毎月の支出に大きな変化は見られないのではないでしょうか。よって、各勘定科目ごとに月次推移をチェックしていくのが効果的です。
前月までの数字と比較して急に大きな増減があったら、その原因は何なのかを確認するようにしましょう。また前月までは計上されていたのに数字が入っていないことに気付くこともあるので、入力忘れを防ぐこともできます。
入力時・月次・棚卸時等のダブルチェックを徹底する
人が行う作業なので、ミスを100%なくすことは厳しいでしょう。しかし1人ではなく複数人でチェックを徹底して行っていくことで、ミスを限りなくゼロに近づけることはできるかもしれません。
今回の記事で紹介しているミスをしやすい処理を行う際は、ダブルチェックを「入力時に行う」「月初に前月の処理をまとめて行う」「棚卸し時に行う」といったように、1人で処理を完了することのない体制を整えていきましょう。
在庫の管理方法の周知徹底をする
小売業や製造業では、特に在庫管理は重要ですよね。
在庫の管理方法は、一般的に「定期発注方式」「定量発注方式」の2つがあります。自社の業界や需要の予測しやすさ等を鑑みて、合った管理方法を選択してください。
また決定後は、関係者への周知徹底が大切です。浸透するまでは、誰かが発注を行う際に一緒に確認する等、1人で対応することがないようにしましょう。
在庫の棚卸しの手順を見直して周知する
在庫の棚卸について、決算時にだけ行っている会社もあるかもしれません。しかし1年分をまとめて行うのではなく、四半期に一度等、定期的に行うことをおすすめします。
なぜなら、定期的に行うことで「紛失や横領を防ぐ」「自社に合った棚卸方法のノウハウが蓄積される」というメリットがあるからです。
棚卸方法は一度決めたら終わりではありません。実行していく中で都度見直しを行い、共有することを繰り返していきましょう。
請求書電子化サービスを導入する
紙で運用している請求書を電子化することで、人的ミスを大幅に減らすことができます。
電子化サービスによっては、納品書や請求書をデータとして受け取るだけでなく、販売管理システムや会計システムとの連携が可能なため、二重計上を防止するだけでなく経理業務の効率化にも期待できるでしょう。例えば、納品データと販売管理システムを連携させることで手作業によるミスを防ぎ、確認作業の手間も減らすことができます。
請求書を電子化することのメリットについて以下の記事で詳しく説明していますので、併せてご確認ください。
【関連記事】請求書を電子発行するメリットは大きい!効率的な運用方法と電子発行時の注意点
【関連記事】【紙ベース/アナログ管理企業向け】納品書・請求書電子発行サービスの選び方を基礎から解説
oneplatの導入で効率化することでも二重払いは減らせる
市場には数多くの電子化サービスが提供されており、どれを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。選定のポイントは「自社の課題を解決できるか」「法改正に対応しているか」「既存のシステムと連携可能か」といった点が重要です。
そこで、多くの企業に選ばれている「oneplat(ワンプラット)」をご紹介します。oneplatを導入することで、二重払いのリスクを減らしながら、業務全体の効率化を進めることができます。
請求書の受領から支払いまで一元化
oneplatは、請求書の受け取りから承認までの業務を、素早く簡単に一元管理できるシステムです。
流れとしては、まず取引先様が納品データを登録し、購入者様がデータを承認します。そして、システムが納品書データをもとに請求データを作成し、購入者様がデータを承認するという形です。
さらに取りまとめた請求書をもとにして支払いまで一括で行うことができるため、二重払いのリスクを大幅に減らせるでしょう。
請求書の照合作業を効率化
納品書と請求書の内容を照らし合わせる「請求書の照合」は、企業の会計処理において欠かせない重要な業務です。しかし、この作業は手間がかかるため、ミスが発生しやすい業務でもあります。
oneplatは、納品データを販売管理システムと連携可能なため、品名や数量、単価などの確認作業を自動化できます。手作業での確認は最小限となり、ミスのリスクも大幅に軽減されるでしょう。
月額33,000円とリーズナブル
oneplatは月額定額33,000円(税込)から利用でき、とてもリーズナブルです。初期費用やサポート料金も一切かからず、取引先や発行枚数が増えても追加費用は発生しません。
毎月、金額を気にせず使い続けることができる点は大きな魅力でしょう。
まとめ
人の手で行うことの多い経理業務なので、二重計上のようなミスをいかに減らすかが重要になってきます。ある程度は原因を絞ることはできますし、ミスしたまま申告を行ってしまい税務調査で指摘されないよう十分に注意していきましょう。
請求書受取側であればoneplatを導入することで、業務の効率化を図りつつ二重払いをなくすことも可能になります。会計ソフトとの連携も可能なので、導入を検討してみるのもいいかもしれません。