紙の伝票を電子化するメリットとは?電子化する際の注意点や電子帳簿保存法との関係性も解説

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紙の伝票では転記作業などの手間がかかり、さらに保管スペースや用紙代といったコストも負担になります。こうした課題を解消するために注目されているのが「伝票の電子化」です。

本記事では、紙からデジタルに切り替えるメリットや具体的な方法、導入時の注意について詳しく解説します。

1. 伝票の電子化とは?

伝票(会計伝票)は、取引ごとに内容や金額、勘定科目などを記録した書類を指します。企業会計では、入金伝票、出金伝票、振替伝票などを基に仕訳帳を作成し、総勘定元帳へ転記するのが基本的な流れです。

一般的に伝票は紙で取り扱われることが多く、管理には手作業による処理・ファイリング作業が必要となり、膨大な手間がかかります。さらに、長期間保管するためのスペース確保も課題となります。

伝票の電子化とは、紙の伝票をデータに変換し、管理・処理を効率化する仕組みです。具体的な方法としては、紙の伝票をスキャンして画像データ化する方法や、専用システムを利用して直接データを入力する方法などがあります。

電子化された情報はクラウドやシステム上で一元管理できるようになり、データの検索や共有も容易です。さらには紙の紛失や劣化のリスクも防げることで、人的コストや管理コストの削減、業務効率化につながります。

伝票管理の負担が軽減され、業務全体の生産性向上に期待できるため、多くの企業で導入が進んでいるのです。

 2. 紙の伝票を取り扱う際の課題

紙の伝票を使い続けていると、以下のような課題が生じます。

  • 処理に時間がかかる
  • ミスが発生しやすい
  • コストがかかる

具体的に説明していきます。

処理に時間がかかる

紙の伝票を使用すると、会計システムへの入力や転記作業に多くの手間がかかります。さらに、記入済みの伝票を整理したり、過去の記録を探したりする際にも時間を取られることが少なくありません。

また、複数の担当者による承認プロセスが必要な場合は、紙を回覧しなければなりません。「担当者が外出中で確認が遅れる」「どこまで承認が進んでいるか把握しにくい」といった問題が発生し、プロセスが滞ることもしばしばです。

ミスが発生しやすい

紙の伝票では、手書き作業による誤字や脱字、記入漏れが起こりやすく、記録ミスやデータの不整合につながるリスクが高まります。誤差が発生するたびに確認や訂正が必要となり、業務の流れが中断されてしまいます。

確認作業が頻発する場合は業務効率が低下するだけでなく、取引先や顧客との信頼関係にも影響を与えてしまうでしょう。

コストがかかる

紙の伝票を利用していると、伝票用紙の購入費用や、店舗から本部へ郵送・配送するための費用、伝票管理を行うための人件費などが発生します。

また、伝票を保管する際には物理的なスペースの確保も必要になります。特に、大量の伝票を取り扱う企業では管理に伴う人的コストも増加するため、大きな負担となるでしょう。

3. 紙の伝票を電子化するメリット

紙の伝票を電子化することには多くのメリットがあります。以下では、具体的な効果を解説します。

業務効率化

紙の伝票を電子化することで、手書き作業に伴う誤字や入力漏れがなくなり、確認や修正作業に費やす時間も削減できます。また検索機能を活用することで、必要な情報を簡単に見つけられるでしょう。

さらに、クラウドやシステムを通してデータ共有が可能になるため、紙の伝票を受け渡す必要がなくなり、承認プロセスのスピードアップにも期待できます。

コスト削減

伝票をデジタル上で作成・保存できるため、伝票用紙代や印刷費が不要になります。これまで管理に費やしていた人件費も抑えられ、物理的な保管スペースを確保する必要もありません。

大量の伝票を扱う企業ほど、電子化によるコスト削減効果は大きいでしょう。

セキュリティの向上

紙の伝票では紛失や盗難、破損、改ざんといったリスクが常に伴いますが、電子化することでリスクを大幅に軽減できます。例えばアクセス権限の設定により、不正な閲覧や情報漏洩の防止につながります。

4. 紙の伝票を電子化する際の注意点

紙の伝票をデジタルに移行すると多くのメリットがもたらされますが、導入前に注意すべきポイントもあります。

システムの導入・運用にコストがかかる

オンプレミス型のシステムを導入する場合は、サーバーやネットワークといったインフラを自社で整備する必要があります。また、自社の業務環境に合わせたカスタマイズや開発が求められるため、導入コストが高額になってしまいます。

一方で、クラウド型は初期費用が比較的少なく、月額料金で利用できるサービスも多いため導入しやすいでしょう。しかし、サービスによっては従量課金制やオプション機能など追加料金が発生する場合もあります。

従業員への教育を行う必要がある

これまで紙の伝票を使用していた従業員にとっては、デジタル化への移行に抵抗感を覚えたり、慣れるまで混乱が生じたりするでしょう。

研修やトレーニングに時間を割くことで、通常業務に支障が出る可能性も考えられます。特に月末や決算期のように業務が集中するタイミングでは、経理部門の負担が大きくなり、企業全体に影響が及ぶ可能性もあります。

5. 伝票の電子化と電子帳簿保存法の関係性

伝票を電子化するにあたって、電子帳簿保存法(電帳法)を正しく理解する必要があります。電帳法は、税務申告に関連する帳簿や書類をデータとして保存することを認める法律です。

しかし、すべての伝票が電帳法の対象となるわけではありません。例えば、企業内での決裁や情報整理を目的として作成された伝票は、国税関係書類には該当しないため、電帳法の適用対象外です。

一方で、国税関係帳簿の記載内容を補足する目的で作成される伝票(補助簿)に関しては電帳法の適用対象となり、電子化が認められます。

具体的に電子化できる伝票として、以下が挙げられます。

  • 入金伝票
  • 出金伝票
  • 仕入伝票
  • 売上伝票
  • 振替伝票

電帳法に基づいてデータを保存するには、「訂正や削除の履歴が確認できること」「取引年月日、取引先、取引金額で検索できる機能が備わっていること」などの要件を満たさなければいけません。

もし電子取引の記録に不備があり、隠蔽や改ざんが発覚した場合には、重加算税が10%加重されることになります。

伝票を電子化する際には、保存方法や運用体制を法律に基づいて整えることが重要です。

【関連資料】令和5年度税制改正大綱に対応!電子取引における電子データ保存の概要と対応を一期におさらい

出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」|「電子帳簿保存法が改正されました」

   

6. 紙の伝票を電子化する方法

紙の伝票を電子化する主な方法として、4つご紹介します。

スキャナで読み込む

紙の伝票をデジタル化する方法として、最初に思いつくのはスキャナの利用ではないでしょうか。紙の伝票をスキャンし、PDFや画像形式で保存することで、簡単にデジタルデータ化が可能です。

社内にあるスキャナーやコピー機(複合機)を活用できる場合が多く、初期費用を抑えられるのもメリットです。また、従業員が使い慣れている機器であり、新たな操作を覚える負担が少ない点も魅力です。

しかし、スキャンされたデータは画像形式として保存されるため、文字情報の検索やデータ分析が難しいというデメリットがあります。実務に活用するには手作業で入力しなければならず、逆に手間が増えてしまうかもしれません。

OCRで変換する

OCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)は、スキャナで読み取った情報を文字コードに変換し、コンピューターが扱える形式にする技術です。

OCRを活用すれば、伝票の情報を手動で入力する必要がなくなり、大量の伝票も迅速に処理できるようになります。

しかし、OCRの読み取り精度は100%ではありません。特に手書きの文字や崩れた字体、印刷が不鮮明な場合には、誤認識が発生しやすくなります。そのため、変換後のデータを人の目で確認し、必要に応じて修正するという作業が発生してしまうでしょう。

電子データで作成する

伝票を最初から電子的に作成する方法です。例えばGoogleスプレッドシートやExcelを利用して、伝票を作成・保存します。日常的に使用している従業員も多いため、切り替えに対する抵抗感が少ないでしょう。

ただし、電子帳簿保存法を遵守するためには「真実性の確保」や「可視性の確保」といった要件を満たす必要があります。具体的には、規則性のあるファイル名でデータを保存したり、後で検索や参照しやすいように台帳(索引簿)を作成したりする作業が求められます。

電子化サービスを導入する

紙からデジタルに移行する方法として、特におすすめなのが電子化サービスです。専用のサービスを導入することで、請求書や納品書、領収書などをWeb上で作成・発行・受領・管理することが可能になります。

ただし、新しいシステムを導入すると、担当者が操作に戸惑ってしまうかもしれません。選定する際には、料金や機能だけでなく、サポートが充実しているかどうかも確認したほうがよいでしょう。

7. まとめ

紙の伝票を電子化することで、業務効率化やコスト削減、セキュリティ向上などのメリットが得られます。しかし、初期費用や保守費用、従業員の教育といったコストが発生するため、自社に適した方法を選ぶことが重要です。

また伝票を電子化するにあたり、併せて納品書や請求書の電子化もおすすめです。紙の納品書や請求書を電子化することで、伝票の電子化と同様、手書き作業による手間や時間の削減、帳票の一元管理による業務効率化やコスト削減を実現することができます。取引先から受け取る紙の納品書や請求書に課題を抱えているご担当者様は、この機会に納品書や請求書の電子化もご検討してみてはいかがでしょうか。

【関連記事】納品書の電子化とは?電子化のメリットと注意点、システムの選び方も解説
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oneplus編集部

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