BPRについてわかりやすく解説|メリットや進め方・効率を上げる手法

業務プロセス全体を根本から見直して大きな効果を得るのがBPRというフレームワークです。日本能率協会の調査によると、実に日本企業の7割が実施しています。しかし、このBPRとはどのようなものなのでしょうか。

本記事ではBPRがどのようなものかや業務改善との違い、フレームワークのプロセスや効率を上げる手法についてご紹介しています。

BPRは企業の競争力強化や労働環境の改善に役立ち、取り組む必要性の高まっている手法です。是非、本記事でBPRの内容についてマスターしましょう。

BPRとは、企業全体の見直しを図ること

BPRでは「企業の成功」を目指して組織・業務全体を最適化する

BPRとは、Business Process Reengineeringの略称です。業務本来の目的に向かって既にある業務プロセスを根本から見直し、組織・業務等を再構築し最適化を図ることを言います。

マサチューセッツ工科大学の元教授であるマイケル・ハマーと経営コンサルタントであるジェイムス・チャンピーが1993年に出版した『リエンジニアリング革命』で提唱されたフレームワークです。一般的に業務改革を表します。

同書によると、Reengineeringの定義は、「コスト・品質・サービス・スピード等の重大で現代的な成果基準を劇的に改善することを目的として、ビジネスプロセスを根本から再考し、抜本的にそれをリデザインすること」です。

要するに、業務全体を洗い出し、現代のニーズに沿って根元から業務全体を再構築するという意味になります。

BPRと業務改善の違い|業務改善は部分的な改善を目的にしている

BPRは、古いビジネスの構造を一から見直し、真っ新な状態から業務プロセス全体を根本的に再構築することや、業績を上げて顧客を得られる企業になることを目的としています。

言い換えれば、現存の業務プロセスを劇的・抜本的に見直し、全面的に改善するということです。一部の改革ではなく、総括的な再構築を行います。

似た言葉として業務改善がありますが、2つの目的の違いは以下の通りです。

  • BPR:業務プロセスを全部まとめて見直し、再構築します。
  • 業務改善:基本的に業務プロセス全体には変更を加えず、業務の一部の小さな無駄等をなくします。

全体を見直すのがBPRで、一部の業務の無駄を省くのが業務改善だと言えます。また、BPRでは情報技術を積極的に活用するのが特徴です。

BPRが今、注目を集める理由

日本能率協会が2014年に行った調査では、実に日本企業の7割がBPRを実施しています。なぜ、1993年に提唱されたフレームワークが再び注目を集めているのでしょうか。

背景として考えられるのが、少子高齢化による労働力の不足です。総務省統計局の国勢調査によると、15~64歳の生産年齢人口は、平成7年(8726万人)をピークに年々減少し、平成30年には7545万人となりました。また、総人口に占める割合も平成4年(69.8%)をピークに、平成30年には59.7%まで減り続けているのが現状です。

生産年齢人口が減少し労働力不足に陥る中、企業には労働力確保のために「働き方改革」への対応が求められています。要するに、働きやすい労働環境を整備し労働力を集めなければなりません。その取り組みの一環として、BPRにスポットライトがあたりました。

また、企業競争力向上の必要性も関係しています。総人口が減少し国内市場が縮小していくと予想される中で、今までと同じような手法でビジネスを展開して業績を維持していくことは難しいでしょう。

内需の開拓や外需獲得のためには、生産性・効率性等を高めて企業競争力を向上させることが必要です。その達成のためには、根底から業務を変革していくBPRの考え方が重要なのです。

IT技術・デジタル技術の進歩もBPRが市民権を得る後押しとなりました。IT化・デジタル化によって、イノベーションを起こしやすくなったのです。いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)により、既存の価値観や枠組みを越えた抜本的な課題解決が実現可能となり、その成功事例が広く知られ、益々BPRが注目されるようになりました。

BPRを推進する5つのメリット

1.抜本的な組織改革ができる

BPRは業務プロセスのすべてを可視化するため、処理能力等が低い部分(ボトルネック)や業務の重複といった組織としての課題を明確にすることができます。

そして、課題に対して組織や業務プロセス全体の構造を変えていくのかという抜本的な立案が可能です。最適化された組織では、企業競争力に重要な意思決定が迅速化されるでしょう。

2.全社的な業務の見直しで生産性が上がる

業務プロセスのすべてを鳥瞰的に把握して課題を洗い出すことは、今まで見えていなかった課題を発見するのに役立ちます。これまで業務の遂行には無関係だと考えられていた業務が、生産性・効率性等を低下させる原因であったということは珍しくありません。

課題の原因が明確になれば、それに対処することができます。そして課題を解決することで、生産性・効率性等の向上が可能です。

3.無駄な業務が明らかになりコストが削減できる

業務プロセス全体を見直す過程で、無駄・無理・ムラのある業務が明らかになるでしょう。そういった業務を減らすことができれば、人件費という固定費の削減が可能です。無駄・無理・ムラを解消して業務を効率化できれば、労働時間の短縮や人的資源の節約となります。

労働時間の短縮は労働環境の改善に繋がり、従業員の職場に対する満足度も上がるでしょう。また、節約できた人的資源をコア業務に充てられれば、企業競争力向上にも役立ちます。

システムの導入・刷新によっても、コスト削減が可能です。システムにより業務の効率化・自動化ができれば、益々労働時間の短縮や人的資源の節約が進み、人件費を圧縮できます。また、自社においてノンコア業務となるものをアウトソーシングするのもコスト削減の手段です。

4.従業員の意識が変わり満足度も上がる

BPRの実施によって、従業員の職務に対する姿勢・意識に変化が起こると言われています。

前述した内容と重複しますが、課題解決や業務の無駄等が解消されることで業務が効率化されれば、労働時間の短縮が短縮されます。労働時間の短縮により労働環境が改善されれば、従業員の職場に対する満足度が向上し、より意欲的に働けるでしょう。

また、業務目的が明確になることで、モチベーションが高まることも期待できます。

5.顧客の満足度も上がる

これまでお話してきたように、BPRは従業員の満足度や意欲を高め、企業の競争力向上やコストカットによる収益力向上を促すものです。

その結果、企業が提供する製品・サービスの質が高まることが予想されます。そうなれば、それに連動して顧客の満足度も上がるでしょう。

BPRの導入の流れ・5つのステップ

1.検討:BPRの目的・対象範囲の設定

BPRの目的や対象範囲の設定をするには、幾つかの工程を踏まなければなりません。なぜなら、BPRは目指す姿(目的・目標)と現状のギャップを埋めるための施策だからです。まずは現状把握を行う必要があります。

現状把握として、業務プロセス全体を可視化します。業務フローや業務一覧を作成すると良いでしょう。加えて、各階層の社員から改善すべき点を聴取し、上層部からは経営戦略を見据えた改善点を聴取します。

業務プロセスの可視化・ヒアリングによって把握した内容を基に、従業員・役員から代表者を選定して協議を実施。BPRの目的・目標(目指す姿)や肝となる業務プロセスを明確にします。

業務システムの導入を検討する際は、その再構築の単位であるBSU(Business System Unit)を明確に区分しておきましょう。

2.分析:現状の課題を浮き彫りにする

現在の業務プロセスが抱えている課題を分析し、改善する方法について検討します。QCD等の分析ツールを利用しても良いでしょう。

課題について一覧にまとめ、どの業務で問題が起こっているのかを確認します。前段階で作成した業務フロー・業務一覧にナンバリング(ID付け)をして、対応方針と共に表にまとめると内容を整理しやすいでしょう。

【例】

No.課題内容対象業務対応方針
 

3.設計:改善のための戦略や実施計画の決定

前段階で洗い出した課題一覧に対し、ひとつひとつ対応方針を決定します。後述するECRSというフレームワークを活用しても良いでしょう。

このステップでは、業務プロセスの標準化やノンコア業務等をアウトソーシングすることが可能かどうかについても検討します。

次に行うのが、対応方針の優先順位付けです。クイック・ヒット(短期で効果があがる施策)や効果の高さを考慮します。対応方針を練るときは、経営資源が枯渇しないかどうか配慮が必要です。

4.実施:変更の実施

社内でBPRの必要性や目的をシェアし、優先順位に応じて計画を実行に移します。

大規模な変更を実施する場合は、やっていることが目的とずれていないかの確認や進捗の管理を徹底しましょう。計画をスムーズに進めるためには、関係者全員の協力が必要です。適宜、意見交換や情報共有をすることを心がけます。

達成に時間がかかる計画に対するモチベーションを維持するためには、クイック・ヒットで課題を達成したという成功体験を積ませ、社員を前向きな気持ちにさせることも重要です。

5.モニタリング・評価:変更した業務の評価とそれを踏まえた対応

BPRは一度実施したら終わるものではありません。継続的に業務の状況をモニタリング・評価し、問題があれば修正をし、問題が解決に至らなければ適宜追加で改善策を講じます。

モニタリング・評価の際は、以下の点を確認すると良いでしょう。

  • 課題は解決したか
  • 変更の過程・進捗に問題はないか
  • 問題があった場合は、その原因は何か
  • 効果・成果はどの程度あったか
  • 目的・目標との差はあるのか

その後は、必要に応じて生産性をさらに向上させるための対応や業務改革後の状態を持続させるための対応を実施します。

BPR推進の効率を上げる手法

ERPで経営資源を適切に管理

ERPとは、Enterprise Resource Planningの略称です。企業の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用するシステムや手法のことを言います。基幹系情報システムのことを指す場合が多く、企業の情報戦略に欠かせないものです。

ERPの強みは、経営状態の把握するために必要な情報を一元管理できることです。情報を一箇所に集めることができれば、経営状態を適切かつ迅速に把握しやすくなります。それにより意志決定をするスピードが向上できるでしょう。

EPRには、様々な導入形態があります。

  • 全体最適型:すべての業務に対応
  • 業務ソフト型:単独業務のみを対象
  • コンポーネント型:一定の業務単位(会計・販売・生産等)で導入
  • クラウド型:インターネット経由でアプリケーションのみを使用

ERPについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>ERPシステムとは? 基幹システムとの違いやメリットデメリットをわかりやすく解説

BPOで業務プロセスをアウトソーシング

BPOとは、Business Process Outsourcingの略称です。業務プロセスの一部(特にノンコア業務)を一括してアウトソーシングすることを言います。

自社よりも優れたノウハウや専門性を有する外部企業の力を活用することで、より優れた業務品質を実現できるでしょう。また、経営資源のコア業務への集中やノンコア業務のコスト削減・固定費の変動費化も可能です。

フレームワークを活用する

シックスシグマ:ムダの洗い出しができる

品質管理のためのフレームワークで、製品の品質を損なうことなく安定して製造できる業務効率化を実現すると言われる手法です。主に製造業で使用されます。

  • Measurement:測定
  • Analysis:分析
  • Improvement :改善
  • Control:改善結果定着のための管理

上記の頭文字を取ったMAICというステップを経て、ミスやエラーを限りなくゼロにすることを目指します。

4C:顧客視点を重視して商品価値を高めることができる

顧客視点重視のマーケティング戦略を立案する際に重要となるのが4Cというフレームワークです。以下の4つの頭文字のCを取って、そう呼ばれます。

  • Customer Value:顧客価値
  • Customer Cost:顧客が負担する費用
  • Convenience:顧客にとっての利便性
  • Communication:顧客とのコミュニケーション

4Cは顧客にとって高い価値をどのようにして提供できるかにということに力点を置いています。新製品や既存サービス等の分析や競合他社の分析に役立つものです。

ECRS:PDCAサイクルの見直し業務改善できる

業務改善するためのフレームワークです。業務プロセスを分析して課題を洗い出したときに、どこから優先して改善に着手すべきかという方向性を判断しやすくなります。以下のステップの頭文字を取って、命名されたフレームワークです。

  • Eliminate:不要な業務を排除
  • Combine:類似した業務の一本化
  • Rearrange:業務の順序・場所の入れ替えや代替方法の検討
  • Simplify:業務の自動化・パターン化

ほかにもSWOT分析等があります。SWOT分析についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>SWOT分析とは? やり方・書き方やポイントを詳しく説明します

BPR導入による自治体の成功事例

【ケース①静岡県】
「行政の質をあげるためには、科学的な視点が必要」という考えから、BPRへの取り組みを開始しました。業務棚卸表(業務内容や手順等をまとめたもの)により業務を可視化し、業務のマニュアル化・認定審査の自動化等を実施。累計5,819事業を見直し、予算を322億円圧縮しています。

【ケース②佐賀市】
厳しい財政状況への対応としてBPRを実施しました。既存事業・計画の見直しや上下水道事業の共同化等の施策を実施。全体で約180億円のコスト削減を実現しました。

業務の見直しでバックオフィスを効率化!「oneplat」

「納品書・請求書クラウドサービス」である「oneplat」は、バックオフィスの業務効率化を図るサービスです。
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導入された企業の中には、これまで145.8時間かかっていた作業時間が3分に短縮したという企業もあります。
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まとめ

既存の業務プロセスの一部を見直す業務改善と異なり、BPRでは業務プロセスを全体的かつ抜本的に再検討を行います。課題を根本から解決することで、飛躍的に現状を改善したり企業競争力を向上したりすることが可能です。

企業全体を総括して改革することでボトルネックが生まれにくく、見直しが効率化・生産性向上等の成果に繋がりやすいという特徴があります。

もし企業の現状を良くしたいとお考えなら、方法のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

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