企業にとって欠かせない経理・納品書・会計や財務システムを任されている部門であるバックオフィス業務。
今この「バックオフィス業務」のデジタル化が進んでおり、大きく業務効率化が向上し、生産性が上がった企業が相次いでいます。
この背景には、現在経済産業省により早期対策を提起されている「2025年の崖」と言われているレガシーシステム(既存のシステムの老朽化・複雑化)という問題があります。
古いシステムから新しいシステムに変えず、レガシーシステムの刷新に乗り遅れた企業の事業機会の損失が危惧されている問題で、2025年に最大12兆円に及ぶ経済損失が生じる可能性が出てきています。
そのため、経済産業省は企業に早期対策としてレガシーシステムを抜けて、業務の効率化を図るデジタル化への移行を提起しています。
その中でもレガシーシステムが目立つ部門と言えば、バックオフィス業務ではないでしょうか。企業の中でも所謂「アナログ感」は未だ定着しており、「バックオフィス業務は効率化を改善できる余白が十分ある」と思っていいでしょう。
営業と違い利益には直結しませんが、縁の下の力持ちと言われている「バックオフィス業務」、そして企業にメリットのある業務効率化について、掘り下げていきます。
バックオフィス業務とは?言い換えると企業の後方支援隊!
企業の事務処理は、バックオフィス業務の担当者が担っています。
利益には直結しない部門ですが、顧客からの売上処理等を営業がそのまま担当すれば、大変な負担が伴います。
それを裏で担当することにより、営業の生産性が向上します。
バックオフィス業務は細やかな対応が必要とされるため、「顧客の満足度が左右される業務」と言われています。
バックオフィス業務 | 業務内容 |
一般事務 | 電話内容・データ入力・ファイリング・メールチェック来客対応 |
経理 | 企業のお金の流れを管理全般(給与計算、買掛金、売掛金、経費精算、帳簿管理) |
財務 | 資金、予算管理、資金調達、運用全般 |
人事 | 従業員採用、研修、部署異動等人材に関わる業務 |
法務 | 企業の法律に関わる業務全般 |
営業事務 | 営業の補佐(主に見積もり作成、プレゼン作成、資料作成) |
総務 | 備品、消耗品管理、年末調整、就業規則管理、健康診断管理 |
事務処理だけではなく財務状況や人事、法律関係に関わる等、企業にとって重要度が高いので、事業継続していくためには重要な部門です。
ただバックオフィス業務の仕事内容は常に繁忙であり、ミスが許されず、確認・修正が常に必要な業務のため、従業員の負担の軽減やモチベーション維持が企業にとって課題となってきます。
バックオフィス業務が抱える課題・問題点とは?
バックオフィス業務は企業にとって重要だと伝えましたが、課題や問題が多く残っている部門でもあります。確認していきましょう。
バックオフィス業務は企業の中でも最もアナログ業務と言われている
バックオフィス業務は、社内・社外の紙の書類を多く取り扱います。
請求書や納品書、見積書を大量に扱うため、ファイルで膨大な書類の管理をしています。
顧客や監査機関の要望でいざ書類が必要とされた場合は、ファイルの保存場所を探す手間が発生したりと、決して要領が良いとは言えません。
また紙媒体だと、提案から承認、決済まですべてに印鑑が必須となり、書類の戻り先はバックオフィスの部門だったりと、効率的とはほど遠く、ナンセンスです。
上記のように、紙ベースのアナログ管理は非効率的で、BCP(Business Continuity Planning:災害等の緊急事態における企業や団体の事業継続計画)に対するリスクも余計に背負ってしまいます。
コロナ禍でリモートワークが増え、働き方が大きく変わりましたが、これからますます業務のデジタル化が重要とも言えるでしょう。
バックオフィス業務はブラックボックス問題が目立つ業務
ブラックボックスとは、手が出せない状態を指します。例えば担当者ごとに分別されている
PCで、その担当が設定したExcel等のマクロや数式でオフィス業務を行っていたとします。
その担当が離職や部署移動で外れてしまった場合は、後任の方は一からその業務をこなしていかなければなりません。
引き継ぎがうまくされていれば問題ないですが、特に属人性が強いケースだとブラックボックス化が起きやすくなるでしょう。
「この業務はあの人しか出来ない」
「最初に設定した方が辞めたので詳しいことが分からない」
「その人しか詳しい内容や事情を知らない」
後任者の業務の負担が増えてしまい、前任者の設定から見直し、手順や処理を確認をする等の、後任者の業務の負担を増やしてしまう不必要な無駄が生じます。
本来のバックオフィス業務に注力出来ていない状態なので、後任者のモチベーションが低下するケースも生じます。
これはバックオフィス業務では特に生じやすい課題・問題であり、特定の人に頼っている状態は、企業や顧客にとって決して望ましいとは言えません。
「うちの企業は手順や処理自体は簡単だし、電子化も進んでるから大丈夫」
そういう企業の方もいらっしゃるでしょう。
だからと言って担当者が不在なだけで事務処理が進まないようであれば、同じく「属人化」で解決されていません。
繁忙な業務のリスク
バックオフィス業務の繁忙期はあるのでしょうか?
全体的に言えば、年に5回繁忙期があると言われています。
採用活動・新入社員の入社時期、昇給の時期、社会保険算定の時期、年末調整の時期等ありますが、国や地方自治体の制度等が変わるたびに社内規定を変更し、常に更新していく必要があります。
さらにクローズアップすると、経理・会計部門は月末から月初にかけて大変忙しくなります。
給与計算は月に1回あり、販売先・顧客との請求書・納品書を月末から月初にかけて処理を行っていくので、残業も発生してきます。
バックオフィス業務の多くは手作業がほとんどで、反復性は高いですが手間のかかる作業が頻繁に発生します。
時間やコストを多く背負っている部署にもかかわらず、ミスは絶対許されません。
すべてを人に任せてきた業務プロセスを見直していく必要があるでしょう。
企業ごとにその内容は変わってきますが、中小企業は特にバックオフィス業務のデメリットが浮き彫りしやすい環境です。
効率化を図るためには、人間が必要とされる業務プロセスと、自動化へ移行・クラウドサービスの利用やアウトソーシング(外注化)を取り入れる部分を、うまく見極めていくことが解決への一歩とも言えます。
バックオフィス業務の効率化を狙うと有益になる3つの理由とは?
では、業務の無駄・ムラが目立つバックオフィス業務の効率化のメリットをご紹介いたします。
人的ミス(ヒューマンエラー)の防止で効率化UP
上記でも説明いたしましたが、バックオフィス業務は細やかな事務手続き・法的処理・請求書・見積書・数値や金額入力等さまざまな作業が伴います。
常に人的ミスのリスクと隣り合わせと言ってもいいでしょう。
さまざまな部門の事務処理が一気に集まる業務になるため、どんなに確認修正を行っていても手作業のためミスが生じる場合もあります。
大きなインシデントになる可能性もあるので、一人一人の業務負担を軽減する必要があります。
企業はクラウドサービスの利用・RPA等の自動化や、アウトソーシングを利用してバックオフィス業務の効率化を図ることで、一人一人の負担が軽減され、人的ミスがなくなり重大なインシデントを防ぐことができます。
それにより本来の業務に注力でき、一人一人の作業効率がUPするというメリットが生まれるのです。
コスト削減
バックオフィス業務のシステムの自動化やデジタル化により、人件費やコスト削減に繋がると言えます。
ペーパーレス化を実施している会社と、紙の書類をメインにしている会社では業務でかなりの差が出てきます。
書類印刷代や、保管費用等の固定費が発生しますし、書類の受け渡し、押印までのフローでかなりの工程もかかっています。
ペーパーレス化=電子化を実現することにより、固定費の削減と、担当者の業務負担を軽減することができます。
また企業の電子化への移行は、政府から積極的に推奨されています。
ペーパーレスに関しては、デジタル上で作成・保管する仕組みの電子帳簿保存法の法改正により、事前の承認なしで決算関係書類(貸借対照法や損益計算書)や取引関係書類(見積書や契約書、請求書)を電子保存できるようになりました。
これを実現することにより、書類作成に使用していた紙や印刷にかかるコスト削減(プリンタのリース費等)も大きく変わってきます。
稟議承認の簡略化に繋がって、業務効率化を図ることができるでしょう。
自動化による企業全体の生産性UP
バックオフィス業務の効率化は、実は企業全体の生産性向上に大きく貢献することができます。
定型作業である経費等の計算のデータ入力作業を、システムが遂行してくれるとしたらどうなるでしょうか?
約1時間かかっていた工程をわずか10分で完成させることができます。
このような自動化のシステムをRPAと言います。
このRPAはロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略で、処理手順を学んだソフトウェアが命令通りにこなし、人の代わりに業務を代行してくれるツールのことです。
そのようなRPA、自動化するソフトウェアやルールエンジン等のことを「デジタルレイバー(Digital Labor)」や「デジタルワーカー(仮想知的労働者)」と擬人化して呼ぶこともあります。
このRPAは企業が抱えている重要な問題の「人手不足」や「業務効率化」等を改善する手段として、2016年から広まり、今急速拡大しています。
基本的なRPAは、人が効率よく仕事ができるように開発されたシステムのため、主に定型作業(入力やチェック作業)といった単純な業務を命令通りにこなすことが可能です。
つまりバックオフィス業務の効率化を図るのに、RPAは正に救世主であり、人的ミスの削減・業務時間の短縮化で、企業に貢献することができます。
バックオフィス業務の効率化はDX視点からも重要!
バックオフィス業務は、DX視点からもとても重要と言えます。
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語で、デジタル技術による、生活やビジネスの変革を指します。
では、詳しく説明いたします。
DXとは何の略?バックオフィス業務との関係は?
DXの略語はデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)と説明しましたが、広い意味ではデジタル技術の浸透が、ビジネスに留まらず社会全体(人々の生活)に影響を与えることを言います。
経済産業省が提唱しているビジネスにおけるDXとは、以下の通りです。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立させること”
上記でも説明しましたが、政府はレガシーシステム対策として、企業のデジタル化を推奨しています。
DX視点から見れば、バックオフィス業務部門は紙媒体やアナログ業務がほとんどのため、レガシーシステム対策として(老朽・複雑・ブラックボックス化してしまった既存のシステム)企業にとって最もデジタル化を進めたい部門という見方が出来るのです。
レガシーシステムをもっと詳しく見ていきます。
2025年の崖とは?企業の課題のレガシーシステムとは?
経済産業省は、2018年9月の時点でレガシーシステムの継続の危惧を「2025年の崖」と定義付けました。
簡単に言えばレガシーシステムを放置してしまうと、システムの運用・保守等に多くの人的コストがかかって、新たなデジタル技術への投資が難しくなってしまうことです。
政府は2025年には、レガシーシステムを21年以上運用している企業が6割に達するとされています。
レガシーシステムの刷新に乗り遅れた企業は、多くの事業機会を失うことも考えられており、それによる経済損失は「最大12兆円」と言われています。
よってこの古いシステムによって引き起こされるこの最悪なシナリオのことを「2025年の崖」と言われています。
企業は他人事と思うのではなく、将来の「2025年の崖」の対象になるような最悪なケースを想定して、時代と共に新たなデジタル技術を駆使しながら、備えなければなりません。
DXに取り組み、市場での競争に柔軟に対応出来る!
企業が最も恐れているのは、市場での競争に対し他社に「シェアを奪われること」です。
近年では、世界中の多種多様な市場において、DXをいち早く先行した企業により既存ビジネスモデルの破壊と再編成、つまりデジタル・ディスラプション(Digital Disruption)が活発化しています。
デジタル・ディスラプションとは、技術がもたらす破壊的イノベーションという意味です。
Amazonの台頭で小売業界が経営破綻に追い込まれたり、Netflix等のインターネット動画配信サービスにより、レンタル業界の市場が大幅に縮小しているのは、記憶に新しいと思います。
これまで市場シェアを独占していた企業であっても、先進的なデジタル技術を取り入れた新規参入企業に、シェアを奪われてしまうケースがこれから出てくるでしょう。
そのような急速に変化している市場に対して柔軟に対応していくために、既存のビジネスモデルに固執するような方法ではなく、時代と共に企業も変化に対応していく必要があります。
DX推進に取り組んでいき、市場での競争に対応していきましょう。
急激に変化するバックオフィス業務の多様性に対応する
まだまだ紙ベースの業務や、電話対応等の外部とのコミュニケーションが必要な企業も多く、バックオフィス部門では一定の出社が要されています。
厚生労働省は、働き方改革を推進するべく2019年に「働き方改革関連法」を制定し、柔軟な働き方を選択できる「フレックスタイム制」を導入しました。
コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えており、働き方はますます多様化してくるでしょう。
そんな時代なので、企業のあり方が変化していくのも必須と言えます。
企業は先手を切りバックオフィス業務の効率化を図ることが鍵
では、企業はこれからバックオフィス業務の効率化を目指し、何が選択肢としてあるのか説明いたします。
まずはバックオフィス業務の業務を洗いざらい見直す
まずはバックオフィス業務プロセスの見直しが必要でしょう。
プロセスを確認しないと、どの工程が最も手間が生じていて、効率化の妨げになっているかわかりません。
要因が判明したら、クラウドサービスを導入するのか、RPAを導入するのか、アウトソーシングを利用するのか、検討しましょう。
例えば、経理で毎日受け取る大量の納品書が紙媒体で届き、販売管理システムへ入力する作業に手間・時間が掛かっていました。
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その工程を効率化したいと考え、納品書をデータで受け取れるクラウドサービスを導入。
紙の納品書の管理が不要になり、保管コストを削減。ペーパーレス×コストダウンを実現できました!
このように紙媒体をデータへ変換することにより、電子化への対応やコスト削減へ繋げることができます。
企業はバックオフィス業務の効率化を目指すために、今の業務のやり方が本当に生産性が高いのか、費用対効果をきちんと見極めていかないといけません。
無駄も省くことも大事ですが、その分の高い効果を得られるかの確認も必要です。
バックオフィス業務効率化へその① クラウドサービスとは?
アウトソーシングやRPAではなく、自社で業務を行いつつも、効率化を図りたい場合はクラウドサービスがいいでしょう。
クラウドサービスの利点は、バックオフィス業務の中で、人事部や経理部、法務部等の「勤怠管理」や「人材管理」、「給与計算・経費精算」、「会計・経理」といった情報を管理しやすいメリットがあります。
クラウド経由で利用できるツールは、インターネット経由でサービスにアクセスし、どこからでも機能を活用できるため、場所やデバイスに関係なく業務を遂行できます。
つまり、テレワークの導入やスマホの活用等働き方改革を促進したい場合は、積極的に運用すべきサービスなのです。
またクラウドサービスは、月額課金制を採用していることがほとんどのため、初期費用を出来るだけ抑えて導入できるのも魅力の一つ。
導入するにあたり、ほとんどの企業が保守サービスの実施や、デモ体験を実施しているため、費用対効果を確認しながら進行することが可能です。
バックオフィス業務効率化へその② 業務効率化ツールとは?
会議の円滑化を図りたい場合は、チャットツールがおすすめです。
あらかじめ議題についてチャットツールで議論しておけば、会議の時間の短縮も可能です。
メールではなくチャットツールの導入により、その手軽さから社内コミュニケーションの活性化も期待できます。
ほかにもフォルダやファイルが複数存在している状態で、情報を一元管理したい場合は、データベースのツール導入等もあります。
欲しい情報への迅速なアクセスは、社内業務の工程で即座に対応できるようになります。そういった小さな業務工程の見直しを徹底して、効率化を図っていきましょう。
バックオフィス業務の効率化を検討するタイミングとは?
「バックオフィス業務を中心にDXを推進させたい」
「企業のデジタル化を進ませたい」
ではバックオフィス業務において、効率化を検討するタイミングをご紹介いたします。
経営による組織体制の再構築が必要な時
経営統合や、組織編成の刷新等、企業は常に変化しています。
新たに採用活動を実施して、人員を再配置したり、慌ただしく社内が動いていきます。
組織体制が変わった際に従来の管理体制に対して見直しが入ればいいのですが、非効率な業務のまま新しい組織に編成されてしまうと、データの損失やさまざまなリスクが生じます。
そのためには早い段階でバックオフィス業務の改善に取り組むことを視野に入れておきましょう。
企業に直接影響するような法律が改正がされた時
デジタル化が進み、電子化の法改正も施行されました。
ビジネスに関する政府からの発表は、企業にとって今後の経営に大きく関わる問題です。
代表的なものは、レガシーシステムによる「2025年の崖」です。
従来の旧型システムをそのまま使用していれば、事業展開が難しくなるデメリットをお伝えしましたが、これから更新の可能性がある、新しい法律にも触れてしまいペナルティになることも否定できません。
企業は時代に合った、最新の法令に対応したツールの導入が求められます。
既存のシステムを使い続けるよりも新しいサービスを導入し、業務の効率化を進めましょう。
バックオフィス業務の効率化を検討するなら株式会社Oneplat
今回の記事では、企業にとってのバックオフィス業務の効率化についてさまざまな視点から解説しました。
納品書・請求書のやり取りをクラウド化するメリットは、とても大きいと言えるでしょう。
なぜなら手間を省けると同時に、人件費やコスト削減も可能となるからです。
バックオフィス業務の効率化を考えている方は、サポートが充実しているoneplatにご相談ください。
AIコンシェルジュや資料請求等、様々な形で悩みを解決いたします。
バックオフィス業務の要である納品書・請求書・会計システムの業務フローを効率良くするためにも、バックオフィス業務の効率化を是非検討してみてくださいね。