ここ数年でテレワークが増え、請求書や領収書等の紙で扱う帳票の管理方法が見直される場面も多いのではないでしょうか?
郵送・FAX等で届いたこれらの帳票を受け取り・取りまとめ・管理までとなると、膨大な時間と費用がかかる上、経理担当はいつまで経っても出社の必要が出てきます。
業務の効率化を考えると、電子化というのはもはや欠かせないものとなるでしょう。
今回は領収書の概要・電子化させる上でのメリット・デメリットや、電子化においての経理生産システムの選び方を紹介します。
領収書の電子化を考えている方は、是非参考にしてみてください。
領収書とは
領収書は、代金を受け取る側が、支払う者に対してサービスや品物の対価として金銭を受け取ったことを証明するために発行されます。
金銭授受があったことを証明でき、二重請求や過払いの防止の役割もあります。
また、代金を支払う側にとって、経理精算や確定申告等にも使用する重要な書類です。
領収書の記載にはルールがあり、不備があると支払いの証明ができなくなります。顧客にも迷惑がかかり信用問題に関わるので、注意が必要です。
経費の支払いの不正を防ぐ役割もあり、社員に領収書の提出を義務付ければ、出張費をごまかす等の内部不正を防ぐことができるのです。
領収書に記載する項目
領収書に必要な項目は6つあり、ここではその項目をそれぞれ解説します。
(1)日付
代金を受け取った日付を、年月日で記入します。
和暦・西暦どちらであっても、省略は不可。
「2022/4/1」や「令和4年4月1日」のように、必ずすべての桁までを正確に記入します。
後日に改めて領収書を発行する場合でも、金銭授受が発生した日の日付を記載しましょう。
(2)宛名
支払者の氏名や企業名を、省略せずに正式名称で記載しましょう。
株式会社や一般社団法人の名称は「(株)」「(一社)」等と略さずに記入します。
社名の漢字や綴りがわからない場合は、支払者に紙に書いてもらい、それを見て記入すると良いでしょう。
宛名が「上様」だと税務調査でチェックが行われた時に、第三者が客観的に事実関係を把握することが難しくなります。
書類の信頼性を高めるために、正式名称で記載したほうが間違いないということでしょう。
「上様」で宛名を記載する場面もありますが、領収書の金額が少額の場合は、支払者の同意があれば問題ありません。
小売業や飲食店等では、買い手の氏名や宛名に関しては省略可能とされているので、顧客から「上様」でと頼まれた場合は、その通りに記載してもOKです。
(3)但し書き
提供したサービスや、商品の内容を記載します。
「飲食代として」等、何を購入したのか一目でわかるよう具体的に記載しましょう。
使用用途が複数ある場合は、もっとも高額なものを代表として書きます。
また、レシートも添付しておけばより安心です。
(4)金額
受け取った代金を税込みで記載します。
金額の記載の際は、3桁ごとに桁区切りの「,(カンマ)」を、数字の頭には「¥や「金」」、末尾には「-」や「也」といった記号を記載しましょう。
これによって金額の改ざんができなくなり、不正防止に繋がります。
金額に間違いがないか、確認するのも忘れないようにしてください。
(5)収入印紙
領収書の金額が5万円以上の場合は課税の対象となり、金額に合わせた収入印紙を貼り付ける必要があります。
5万円以上100万円以下は200円、100万円超200万円以下は400円と定められていますので、必要額の印紙を貼り付け消印を押します。
収入印紙を貼り忘れると、過怠税(かたいぜい)という税金の対象となります。
納付しなければならなかった印紙税の額の、3倍の金額が徴収されます。
救済措置として、自主的に貼り忘れを申し出ると、1.1倍まで軽減されます。
※クレジットカード払いの場合は、領収書にその旨が記載されていれば、印紙の貼り付けは不要です。
(6)発行者の住所・氏名
サービスを提供した側の、店舗名や企業名、住所、電話番号等を記載します。
手書きではなく、社判の利用も問題ありません。
発行者の記載部分に少しかかるように屋号印や社印を押すのが一般的ですが、法律上必須ではありません。ただし、偽造防止の観点という面で、印鑑は押したほうが良いでしょう。
領収書へ但し書きをする際の注意点
領収書を作成する際に一番迷う場面は、但し書きの記載ではないでしょうか。
「お品代」と書く場面がよく見られますが、それでは具体的にどのようなものに対しての金銭の授受が行われたかがわからず、経費として認めてもらえない可能性があります。
領収書の正当性が証明できないと、脱税行為とみなされるケースも。
但し書きの記入例
但し書きは、第三者が見てもわかるように一般名称で、具体的に記載しましょう。
複数ある場合は、「金額が大きいもの+ほか」と記入しても構いません。
- 書籍代として
- 文房具代として
- お食事代として
- セミナー参加代として
- 広告ポスター代100枚等 として
- プリンターインク20本ほか として
このように、誰が見てもわかるように記載するのが良いでしょう。
領収書の扱い方
領収書の扱い方にも、ルールが存在します。
レシートで受け取っていたり、クレジットカード払いにしていたりといくつかパターンがあるでしょう。
ここでは、領収書の扱い方について触れていきます。
(1)レシートも領収書扱いが可能
以前のレシートはシンプルに数字の印字のみでしたが、最近ではほとんどのレシートに店名や日時、商品の内容や金額等がきちんと印字されるようになりました。
「店名・発行日・商品内容・金額」が記載されていれば、代用が可能です。
税法上は、領収書と同じものとして扱われますが、社内ルールで「レシートの経費精算は認めない」と定められている場合は、この限りではありません。
(2)領収書の保管期間は7年間
法人・個人事業主が税金の申告に使用した領収書は、一定期間保存することが義務付けられています。
法人の場合は7年間、個人事業主の場合は、白色申告車の場合は5年間、青色申告者の場合は7年間です。
(3)クレジットカード払いの場合
前述していますが、クレジットカード払いでの取引は、5万円以上であっても収入印紙の貼付の必要はありません。
クレジットカードでの支払いによる領収書は、現金での支払いとは違い、印紙税の課税対象である「金銭または有価証券の受取書」にはあたらないのです。
ただし、領収書にクレジットカードを利用した旨の記載をしてください。
また、お店からもらえる利用明細を、領収書として利用できます。
ただし、以下の項目が記載されている場合に限ります。
- 店名
- 取引した日付
- 商品やサービスの内容
- 購入金額
- 購入者の氏名、もしくは会社名
クレジットカードの利用明細を領収書にしたい場合は、これらの項目が記載されているかの確認が重要です。
(4)領収書を紛失した場合
誤って領収書の控えを捨ててしまったり、無くしてしまったりした場合は、再発行してもらいましょう。
領収書の再発行は、発行元に依頼するしかありません。
ただし、領収書の発行義務はあっても再発行の義務はないので、拒否されてしまう可能性もあります。
もし、レシートが残っていれば代用がきくことがあります。
少額の場合は問題にならないことが多いですが、高額な支払いになると領収書がないと厳しいでしょう。
また、購入が現金ではなくてクレジットカードや銀行振込によるものであれば、利用明細や通帳記録の「改ざんすることが不可能な書類」を領収書の代わりにできます。
支払側によっては、購入や支払いの証明書を、領収書の代わりとして有料で再発行してくれる場合も。
(5)領収書が不要なケース
経費の請求には基本的に領収書が必要になりますが、中には不要になるケースもあります。
公共交通機関の運賃
仕事上、移動手段として電車やバスを利用するシーンは多くありますが、公共交通機関を利用しても、こちらから申請しない限り基本的に領収書は発行されません。
電車やバスの運賃は、法律上必ずしも領収書の提出を求められていないのです。
ただし、会社によっては提出が必要な場合もありますので、その会社のルールに従う形になります。
キャッシュレス決済
法人カードやプリペイドカードを導入している場合は、経費のキャッシュレス決済が可能です。
さらに、経費精算システムを導入している法人カードやプリペイドカードであれば、カード利用明細データを取得できるため、自動入力され効率化が図れます。
領収書の控えの役割
領収書は金銭授受の証拠となり、販売者が購入者に、代金の支払いの証明として発行します。
発行された領収書は購入者が受け取るため、販売者側には取引の記録が残りません。
販売者側が取引の記録を残しておくためにも、領収書の控えが必要になります。
取引先から金額の間違い等の申し出があった場合は、領収書の控えで事実確認をします。
また、売上記録をその都度記録しなくても、控えをまとめておけばスムーズに確認ができるため、販売者側が控えを保管しておくことが多いです。税務署による税務調査の際にも必要になります。
(1)顧客には正本と控えのどちらを渡すのか
発行された領収書には「正本」と「控え」があり、顧客には正本を渡します。
複写式の領収書の場合は、転記された2枚目の用紙が正本となり、単票式の領収書は正本のみとなっているので、そのまま渡します。控えがない単票式の場合は、領収書の内容を帳簿等につけ、控えとして保管します。
(2)収入印紙はどちらに貼付するのか
収入印紙は、顧客に渡す側(正本)にのみ添付し、領収書に貼付する際に割印を押します。
発行者側の保管する控えは領収書として使用する目的ではないため、印紙の貼付は不要です。
正本に印紙を添付したことを後から確認できるよう、控えに「印紙貼付済」と記載しておくのが良いでしょう。
(3)領収書の控えを紛失したらどうなるのか
発行者側が領収書の控えを紛失や破損してしまった場合は、再発行の依頼が来ても対応できなくなります。
購入者側が領収書を紛失・破損した場合は、発行者に再発行の依頼をしますが、もともとの取引記録がなければ応じられません。
顧客に迷惑がかかってしまわないように、領収書の控えは厳重な保管が必要です。
領収書の控えの保管方法
領収書は発行の頻度が高く、一年分の控えの保管となると膨大な量になり、管理が大変です。
前述した通り、領収書は一定期間の保管が義務化されており、最長は10年にも渡ります。
領収書を整理せずに溜め込んでしまうと、いざ必要になった時にどこへしまったかわからなくなるということになりかねません。
日頃から、定期的に整理をしておくことをおすすめします。
ここからは、領収書控えの保管方法について解説します。
(1)基本的には紙での保管
領収書・レシートともに、重要な保存書類である管理方法としては、一般的には紙媒体での保管が行われます。
月別・取引先別に振り分ける等しての保管となるでしょう。
取引先が多い場合は月別の振り分けでは、特定の領収書を探し出す際に時間がかかってしまう場合も少なくありません。
しかし一方で、月ごとに発行された分の領収書をまとめておくだけなので、業務負担が少なく手間はさほどかからないでしょう。
対して取引先別の管理は、取引先が多い場合に適しています。
こまめな振り分けが必要になりますが、取引先との状況の把握がしやすい特徴があります。
(2)感熱紙レシートの保管は文字消えに注意
領収書は5年から7年間の保管が必要ですが、現在はレシートと同様、感熱紙での領収書の発行も多く、時間が経つと印字が消えてしまう問題があります。
感熱紙は陽の光にあたったり、空気に触れ続けると文字が薄くなります。
空気に触れないように保管するか、コピーしておく等の対策をして、原本と一緒に保管しましょう。
原本のレシートには、余白に日付や金額を記載しておきます。
二重に対策することで、原本の印字が消えてしまっても慌てることなく済みます。
2015年の税制改正によって、3万円未満でしかできなかった領収書やレシート等の電子化が可能となり、さらに2016年の改正で、デジカメやスキャナーで3万円以上のものでも保存ができるようになりました。
感熱紙対策、そして紙で保存する際の手間やコストを考えると、今後は電子化を検討するのが良いかもしれません。
(3)電子帳簿保存法によって電子化が可能
以前は電子化するにあたって、税務署への申請が必要でした。
しかし電子帳簿保存法の改正により、2022年1月から税務署の承認が不要になったのです。
これにより、導入へのハードルが少し下がりました。
しかし、電子化に関してのルールの取り決めや分類方法のマニュアル化等、時間と手間がかかります。
また専用のソフト等、新たにツールが必要となるため、初期費用もかかります。それでも電子化されれば膨大な時間とコストの削減に繋がり、結果的にはメリットが大きいと言えるでしょう。
電子領収書とは(領収書の電子化)
電子領収書とは、紙の領収書をスキャンし電子化したり、領収書そのものをデータとして発行・管理することを指します。
1998年に施行された「電子帳簿保存法」ですが、電子化をより導入しやすくするよう、これまでに数回の法改正が行われています。
特に2022年1月の法改正が、事前承認制度の廃止や、スキャナ保存後の原本を廃棄可能等、経理の電子化をより促進できるような内容となっています。
一方で、不正防止に関しては厳しい措置をとるようになり、気をつけなければならない点もあります。
領収書を電子化させるメリット
領収書電子化のメリットは次になります。
- 保管スペース・コストの削減
- 業務の効率化
- 印紙税の節税
まず、紙で保管していた領収書を電子化するということは、劣化することがなく長期保存が可能となります。誤って領収書を紛失してしまうリスクもなくなります。
今まで保管に使っていたスペースもいらなくなり、コストの大幅削減が望めるでしょう。
そして、大量の紙の中から領収書を探す必要はなく、検索をすればすぐにデータを取り出せます。
出先でもスマートフォンで撮影し、その場で経理に提出も可能。いちいち帰社してから提出する必要もありません。経費精算の効率化に繋がります。
領収書を電子発行すれば、メールで送付できるので郵送費の削減にもなり、大幅にコスト削減や業務の効率化が可能になるでしょう。
さらに、データでの管理になるため、バックアップを取っておけば、万が一データが消えてしまっても復元できます。
紙の領収書では、額面5万円以上から収入印紙の貼付が必要でしたが、電子領収書では不要になります。
電子化することにより、印紙税の節税が可能になります。
領収書を電子化させるデメリット
領収書電子化のデメリットは次になります。
- 初期費用・導入まで時間がかかる
- システムやルールを周知しないと電子化できない書類が出てくる
- 取引先が電子領収書を利用できるか確認が必要となる
電子化するにあたって、新たにシステムやアプリケーションの導入等が必要になるため、初期費用がかかります。
加えて、導入までのルール作りや現存している領収書の管理等、電子化への移行には時間がかかるでしょう。
また、紙媒体の書類をスキャナ等で取り込んで保存する場合は、保存後にタイムスタンプの付与が必要です。
タイムスタンプとは、電子領収書が原本であり、改ざんされていないことを証明する仕組みのことです。
第三者機関の時刻認証業務認定事業者(TSA)が発行するので、発行後の変更や書類の有無を隠すことはできなくなります。
このシステムを取り入れるにも、数十万円の初期費用が発生する場合もあります。
タイムスタンプの発行ごとにかかる費用もありますので、そちらも合わせて導入を検討しましょう。
そして、領収書の電子化をするにあたって、取引先には前もって電子領収書を使用する旨を知らせておかなければなりません。取引先では電子領収書を受付ていない可能性もありますが、事前に確認を取れば、取引がスムーズになります。
もし、電子化において原本の廃棄の時期・保存方法等分からないことがあれば、税理士や税務署に確認するのがおすすめです。
領収書電子化サービスの選び方
経理業務の効率化、コスト削減等会社が抱えている課題は様々です。
コロナ禍においてテレワークの需要が増えてきましたが、それ以前から帳票管理を紙媒体で管理することへの非効率さが問題とされてきました。
きちんとファイリングしていても、特定の領収書を確認するのにはまずそのファイルを探すところからはじめなければなりません。
探し出すのに時間がかかってしまえば、顧客の問い合わせにも遅れてしまい、迷惑をかけてしまう結果になりかねません。
また、書類整理を定期的に行わなければならないので、経理担当は倉庫まで出向き作業をします。
その間、社内の経理処理が滞ってしまうことになるのです。
これから電子化を導入するにあたっては、目的を明確にし、それに対応したサービスを選択するのが重要です。
また、日々改正が行われる電子帳簿保存法や、これから行われるインボイス制度等、刻々と変わっていく制度に対するサポートが手厚いサービスが重宝されることでしょう。
手続きの簡略化によって人件費の削減が可能となりますが、システムの導入や担当者が慣れるまではそれなりに時間がかかります。自社に合った電子化サービスを充分に吟味し、取り入れて行くのがベストなのではないでしょうか。