「領収書ってどうして必要なの?」
「領収書はいつまで保管しておくのが正解?」
「領収書を効率よく保管する方法は?」
こういった疑問をお持ちではありませんか?
領収書とは、商品やサービスのやり取りで、金銭の受け渡しがなされたとき、それが確実に行われたことを証明するため、「金銭の受け取り側」が発行するものです。
領収書により、【お金を払う側】は【お金を支払ったこと】を証明でき、【お金を受け取る側】は【お金を受け取ったこと】を証明できます。
領収書が確定申告に必要であることは、知識としてあるけれど、いつまでどのように保管しておけば良いのかはよくわかりませんよね。
この記事では、法律で定められた領収書の保管期間と、領収書を効率よく管理する方法についてご紹介します。
領収書の保管が必要な理由
領収書の保管が必要な理由は、以下の通りです。
- 領収書は確定申告の時に必要
- 領収書の保管は法律で定められている
ひとつずつ、解説します。
領収書は確定申告の時に必要
領収書の提出は不要ですが、正確に確定申告するためには欠かせない書類となります。経費として認められる領収書があれば、計上することができ、節税につながります。
領収書に必要な項目は以下の通りです。
領収書を受け取る際には、忘れずにチェックしましょう。
- 支払先の氏名または名称
- 領収金額
- 取引内容
- 領収日
- 書類作成者の氏名または名称
領収書の保管は法律で定められている
領収書の保管は、法律で定められています。
国税庁のホームページによると、帳簿に取引を記録することと、取引等に関して作成または受領した書類を7年間保存しなければならないという記載があります。
受領した書類の中に領収書が含まれます。つまり、領収書は、7年間の保存が義務付けられているのです。
参考:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm)
個人事業主(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm)
領収書をなくしてしまったら、経費計上できない?
大切な領収書をなくしてしまったら、焦りますよね。本来、なくさないよう管理しておくべきものですが、うっかり紛失することもあるかもしれません。領収書をなくしてしまった時の対策を簡単にまとめておきます。
- レシートで代用
- 再発行
- 出金伝票
ひとつずつみていきましょう。
レシートで代用
領収書はレシートで代用可能です。「それなら、すべてレシートでいいのでは?」となるかもしれませんが、レシートの欠点は本人が取引したという証明にはならない点です。宛名のある領収書があるに越したことはありません。
再発行
再発行についてですが、こちらはあまり期待しないほうがよいでしょう。再発行した領収書が、架空計上や不正使用されてしまうと、発行者も罪に問われるリスクがあるため、再発行のハードルは高いと言えます。
出金伝票
出金伝票を使用する方法は、奥の手と言えます。出金伝票とは、自販機での購入や交通機関の利用、葬儀や結婚式等、領収書が発行されない費用を経費として計上する手段です。本来、レシートや領収書がもらえる取引において、出金伝票を使用するのは適切でないため、やはり紛失しないことが1番ですね。
領収書の保管期間
領収書の保管期間は法律で定められています。法人と個人事業主では保管期間が異なるため、それぞれ解説していきます。
法人の場合は、基本は7年間
法人税法により、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。法人税の申告期限は、原則として決算日の2か月後となります。領収書の保管期間例は以下の通りです。
【領収書の保管期間例】
- 領収書の受け取り:2022年5月
- 決算日:2023年3月末
- 確定申告の提出期限:2023年5月末
- 領収書の保管期限:2030年5月末
領収書の保管期間は、基本は7年ですが、決算が赤字の時には10年になります。赤字を翌年度以降に繰り越すことで、節税できる仕組み(繰越欠損金の制度)があり、こちらを利用すると、領収書の保管期間が10年となるため知っておきましょう。
さらに会社法において、帳簿書類等の保存期間は10年間とされていることから、10年間保存で統一しておけば間違いないですね。
参考:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm)
会社法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086)
青色申告の事業主は7年、白色申告の事業主は5年
つづいて、個人事業主の場合は、どうなのか詳しくみていきましょう。
国税庁の「記帳や帳簿等保存・青色申告」によると、書類の保管期間に関しては以下の表の通りです。
【青色申告の場合】
【白色申告の場合】
上記の表からわかるように、領収書の保管期間は、所得税法により青色申告では7年・白色申告では5年と定められています。保管期間の起算は、確定申告の提出期限から7年間(5年間)となります。
【領収書の保管期間例】~7年間保管する場合~
- 領収書の受け取り:2022年5月
- 確定申告の提出期限:2023年3月15日ため
- 領収書の保管期限:2030年3月14日
青色申告でも白色申告でも、法廷帳簿の保存は7年と定められているため、経理に関する書類は7年間保存で統一しておけば管理しやすいですね。
仕入れ税額控除を行う場合は7年
仕入れ税額控除とは、消費税を重複して課されないための仕組みです。消費税納税義務のある事業者は、仕入れ税額控除を行うため、領収書を7年保管する必要があります。
領収書を効率よく管理する方法
領収書の管理方法は、以下の2つが挙げられます。
- 紙媒体で管理
- 電子化して管理
これまで、紙による保存が原則でしたが、2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、電子化して管理することが進みつつあります。紙媒体での管理方法と、電子化しての管理方法についてそれぞれ解説します。
紙媒体で管理する方法3つ
紙媒体で管理する方法は以下の通りです。
- ノートに貼り付ける
- ファイリングする
- 封筒に入れる
ひとつずつ、解説します。
ノートに貼り付ける
領収書保管用のノートを作り、日付順に貼り付ける方法です。紛失しないためにしっかりと糊付けし、きちんと順番に並べておけば、あとから見てもわかりやすいですね。
また、ページごとのルールを決めておけば、見やすい状態で管理できます。
さらに、ノートを使うメリットとしては、領収書と共にメモを残せることです。日にちが経つと使途を忘れてしまうので、記録しておくことでチェック時間の短縮につながります。
ファイリングする
ファイリングは、使いやすいファイルを選び、ノート同様に領収書を貼り付けた用紙を挟んでいきます。リング式かつクリアポケット式のファイルを使用すれば、用紙の紛失を防ぐとともに、並び替えが容易にでき、管理しやすいというメリットがあります。
領収書の管理に特化した、領収書ファイルも販売されているので、専用ファイルを準備するのもよいでしょう。
封筒に入れる
領収書の枚数が年間を通してそれほど多くない場合は、月別や種類別等のルールを決めて、封筒に入れて整理する方法もあります。経費計上する際に洩れなく計算でき、必要な時にサッと取り出せるように保管できていれば良いのです。
封筒に入れて管理する上での注意点は、領収書を出し入れする際に紛失しないようにすることです。のり、ホッチキス、クリップ等で固定しておくとよいでしょう。
電子化して保管
「領収書の保管が面倒くさい」「領収書を電子化したい」という場合は、【電子帳簿保存法】について知っておく必要性があります。
電子帳簿保存法とは、紙での保存が義務付けられていた税務関係の書類を、データ保存でもいいと認めた法律です。1998年に制定後、時代に合わせて改正されてきました。2022年1月にペーパーレス化を目的とした改正法があり、データ保存がより行いやすくなりました。
2022年の改正前には、電子帳簿保存の運用にあたっては、開始3か月前までに税務署に届け出をする必要がありましたが、改正後は申請なしで運用可能となりました。
電子帳簿保存法では、「真実性」と「可視性」の2つが確保されている必要があり、要件の見落としがないよう注意しなければなりません。真実性とは、その記録が本物という確認ができるかどうか、可視性とは、誰もが視認・確認できる状態なのかどうかです。
企業において、領収書の電子化をすすめていくには、まず経費精算や債務支払のシステム化が必須です。システム構築にはお金も労力もかかりますが、電子化することで、リモートワークの促進や業務工程を減らせるといったメリットがあります。
詳しい改正内容については、以下をご参照ください。
参考:国税庁 電子帳簿等保存制度の見直しについて(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf?_fsi=DZssHqhu)
国税庁 電子帳簿保存法の概要(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm)
領収書電子化のメリット
領収書電子化のメリットについては、以下の通りです。
- コスト削減
- 管理性向上
- 業務フローが効率化
- テレワークの促進
ひとつずつ、解説します。
コスト削減
紙媒体で保管する必要がなくなれば、紙代やインク代、保管するためのノート・ファイル・キャビネット等の用品が不要になります。
管理性向上
紙媒体での管理では、ノートやファイル等を7年以上保管しておかなければならず、保管場所が必要です。また、紙は劣化により文字が見えにくくなるリスクがありますが、データであれば劣化することはありません。
さらに、データであれば、ファイルの名付け等のルールを徹底しておけば、容易に検索することができ、必要な情報をすぐに見つけることが可能です。
業務フローが効率化
領収書の電子化は、経理担当者の負担が軽減するだけではありません。例えば、営業担当者が営業先で受け取った領収書をスマホで撮影しアップロードすることで、会社に戻らなくても経費の精算が行えるのです。効率よく経理処理できることで、マンパワーに余裕が生まれ、会社全体の業務改善にも繋がる可能性があります。
テレワークの促進
紙媒体の管理で出社を余儀なくされていた業務が、電子化により自宅で行えることが増えると、社員の働き方改革にもつながっていきます。
領収書電子化のデメリット
領収書電子化のデメリットについては、以下の通りです。
- すべてを電子化できるとはかぎらない
- 初期費用がかかる
- 新たな社内ルールやシステム導入に時間がかかる
ひとつずつ、解説します。
すべてを電子化できるとはかぎらない
前述したように、電子化するにはいくつか要件があり、それをクリアできなければ紙で管理することになります。データと紙が混在していると、管理が面倒ですよね。しかしこれは、作業工程をマニュアル化し、社内で徹底することで、要件を満たさない領収書の発生を最小限にできるはずです。
初期費用がかかる
新しいことをはじめる時には、必ず初期費用がかかります。領収書を電子化するにあたっては、専用のアプリケーションやソフト、パソコンや複合機等が適宜必要になります。しかし、電子化が軌道に乗れば、経理作業の時短により、コストや手間の削減を図ることができ、結果的にはメリットが大きいと言えます。
新たな社内ルールやシステム導入に時間がかかる
領収書をデータで保存する際に、分類等のルールがなければ、検索しても必要なデータを見つけられないといった自体になってしまいます。
システムを導入し、会社全体に周知するとなると、どうしても物理的に時間がかかります。電子化の利点を最大限活用するためには、システム作りに時間を割く必要があるでしょう。