「宛名がない領収書は認められるの?」
「受け取った領収書に宛名がないとき、どうしたらいいの?」
「経費として落とせないケースはある?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
領収書は、金銭授受の証明になる大切な書類です。そして、「発行日付」「発行者」「宛名」「但し書き」「金額」といった記載すべき項目があります。これらの記載のない領収書は、認められないのでしょうか?
今回の記事では、領収書に記載すべき項目のなかでも宛名がないケースについて、考えられるリスクやその対応方法を詳しく解説します。宛名がない領収書の取り扱いに困っている方は、是非参考にしてみてください。
領収書の役割と宛名など記載すべき項目
まず、領収書がなぜ必要なのかを抑えておきましょう。
領収書とは、経費のための支出を証明する書類のことです。支払いが確実に完了していることを客観的に証明します。
領収書の役割は、二重請求を防ぐことです。「まだ料金が支払われていない」と再び請求されないようにします。領収書のやり取りを確実に行うことで、経費における不正を防ぐことにつながります。
領収書に記載すべきと定められている5つの項目は、以下の通りです。
発行日付 | 発行した日付を年月日で記載します。和暦・西暦どちらの場合でも、省略形はダメです。 |
発行者 | 発行者の企業名・店舗名と住所、連絡先を記載します。 |
宛名 | 会社名・個人名は略さずに正式名称で記載します。 |
但し書き | サービスや商品の内容を、一目でわかるように具体的に記載します。 |
金額(内訳・消費税) | 税抜額と消費税額を分けて、金額を記載します。改ざん防止のために、金額の先頭に「¥」末尾に「-」をつけます。 |
上記5つの項目の記載によって、「いつ、誰が、誰に対して、何の代金を、いくら支払ったのか」を明確にできます。
では、これらの記載がないと、領収書として認められないのでしょうか。結論としては、領収書の扱い方によって異なってきます。詳しくみていきましょう。
領収書は宛名なしでもいい?ケースごとのリスク
宛名がない領収書とは、「宛名に何も書かれてない領収書」や「上様と書かれている領収書」のことを指します。上様とは、昔の慣習として将軍と同じようにお客様にも尊敬の意味を込めて上様を使うようになった時の名残です。
宛名がない領収書の一番の問題は、誰が支払ったのかわからないという点です。相手に二重請求されるリスクや落とした場合に悪用されるリスクがあります。そのため、領収書には、基本的に宛名を記載しなければなりません。
以下では、4つのケースに対する宛名がない領収書の取り扱い方について解説します。また、領収書の扱い方次第では、宛名がなくても認められるケースもあります。
- 経理上の宛名がない領収書の取り扱い方
- 消費税法上の宛名がない領収書の取り扱い方
- 税務上の宛名がない領収書の取り扱い方
- 領収書が宛名なしでも認められるケース
ひとつずつ、解説します。
経理上の宛名がない領収書の取り扱い方
経理上は、領収書の宛名は必須ではないです。支払いの事実が明確であれば、高額なものでない限り、問題ありません。
しかし、法律上は問題がない場合でも、会社によっては経費として認められないことがあります。会社の規定はしっかり確認しておきましょう。
消費税法上の宛名がない領収書の取り扱い方
消費税法上は、宛名が記載された領収書が必要です。
「消費税の仕入税額控除」の適用を受けるためには、帳簿および請求書等の保存が要件とされています。消費税の仕入税額控除とは、事業者が仕入れの時に支払った消費税を差し引いて計算する制度のことです。
この請求書に、領収書が該当します。しかし、上述したように、領収書には発行日付や発行者、宛名、金額等記載すべき内容があります。そのため、領収書に宛名がない場合は、「消費税の仕入税額控除」を受けられません。
宛名がない領収書は、消費税法上は認められないので、この制度を利用できず、事業主は余計な税金を支払うことになります。
税務上の宛名がない領収書の取り扱い方
税務上は、宛名はどちらかと言えばあったほうがいいです。
税務調査のときに、金銭授受の事実関係が明確ではないと判断されて、受け入れられないことがあります。もし、領収書が経費として認められなかった場合は、余計な税金を払うことになります。
少しでも疑われる可能性のある書類は、なくしていきましょう。
領収書が宛名なしでも認められるケース
宛名なしでも例外的に認められる事業があります。該当する事業は、以下の通りです。
- 小売業(スーパー、百貨店等)
- 旅客運送業(バス、タクシー、電車、飛行機等)
- 旅行に関する事業(旅行会社等)
- 飲食業
- 駐車場業
ほかにも、3万円未満の領収書の場合は、宛名は必要ありません。また、事業との関連性が明らかな場合にも、宛名なしの領収書が認められることがあります。
ただし、金額が高額すぎたり、事業に関係がないと判断されたりしてしまうと、税務調査の対象となるので要注意です。
どちらにせよ、会社の規定によって領収書の取り扱いは異なるので、基本的に宛名等の情報は記載してもらうのが無難でしょう。
領収書が宛名なしだった場合の対応方法
宛名がない領収書を受け取ってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、宛名なしの領収書に対する対応方法を2つご紹介します。リスクに備えて、冷静に対応しましょう。
- 領収書の発行元に再発行、もしくは宛名を記載してもらう
- 支払い内容を明確にしておく
ひとつずつ、解説します。
領収書の発行元に再発行、もしくは宛名を記載してもらう
領収書の発行元に問い合わせて、領収書を再発行してもらいましょう。その際、領収書には、「再発行」と書いてもらいます。
しかしながら、発行者も不正使用等の共犯の疑惑をかけられるため、基本的に領収書の再発行は難しいことが多いです。再発行ができない場合は、元の領収書に宛名を記載してもらいましょう。
絶対にしてはいけないことは、自分で加筆修正をすることです。領収書の筆跡や追記の有無を調べる税務署もあり、不正行為は間違いなくバレます。文書偽造という刑法違反の罪になるので、気をつけてください。
支払い内容を明確にしておく
上記の対応が難しい場合は、空欄のまま証憑とします。本当に経費として認められるものであれば、否認されることは少ないです。
その際にやっておくべきなのは、出金伝票や帳簿、領収書の裏等に、取引の内容を記載しておくことです。領収書に記載すべき5つの項目、「発行日付」「発行者」「宛名」「但し書き」「金額」を覚えているうちにメモしておきましょう。
もし、税務署から追及されても、しっかりと詳細を説明できれば問題ありません。
領収書について抑えておくべきポイント
ここでは、領収書について抑えておくべきポイントを3つご紹介します。
領収書は、会社の経費に関わるものです。以下で紹介するポイントは、知っていて損はありません。是非、参考にしてみてください。
- 領収書を受け取る際にすべての項目の記載有無を確認する
- レシートは領収書の代わりになる
- 領収書の保管期間を知っておく
ひとつずつ、解説します。
領収書を受け取る際にすべての項目の記載有無を確認する
領収書を受け取る際には、必ずすべての項目の内容をチェックして、間違いや漏れがないかを確認するようにしましょう。「発行日付」「発行者」「宛名」「但し書き」「金額」の5つの項目が記載されているか、しっかりとチェックします。その都度、確認していればいざという時に慌てずに済みます。
とくに、但し書きは、「商品名」まで詳しく記載する必要があります。何にお金を使ったのかが曖昧になってしまうからです。但し書きに「お品代」の記載が多いと、税務署のチェックが厳しくなることもあります。
宛名がない領収書の取り扱い方や但し書きの書き方については、あらかじめ取引先と共有しておくことをおすすめします。認識を合わせておくと、取引が多くても安心です。
レシートは領収書の代わりになる
レシートには、領収書と違って宛名がありません。しかし、経費計上の際には、宛名がなくても経費として取り扱えます。そのため、取引年月日や店の名前、サービス・商品名、金額等、税法が要求する事項が明確に記載されていれば、レシートを領収書の代わりとして利用することができます。
また、以下の理由から、領収書よりもレシートの方が証拠書類として信憑性が高いと判断されることがあります。
- 領収書の但し書きには「お品代」としか記載されないが、レシートには商品の詳細が書かれている
- レシートは「人の手による改ざん」の可能性がない
領収書がない場合は、レシートを受け取るようにしましょう。
領収書の保管期間を知っておく
領収書の保管期間は、法人の場合は原則7年間と法律で定められています。これは、領収書を受け取った日からではなく、領収書を受け取った事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間であることに注意です。
税務調査で、領収書の保管ができていないことが発覚した場合は、余計な税金を払うことになります。この期間は、領収書を紛失しないように保管しておかなければなりません。
しかしながら、紙ベースでの保存は紛失等のリスクがあります。そこで、現在は電子帳簿保存法により、領収書をデータで保管する会社が増えています。
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や証憑のすべて、または一部をデータで保存することを定めた法律です。これにより、領収書原本での保存が不要になりました。
領収書には必ず宛名を書いてもらうようにしよう
今回の記事では、領収書に宛名がない場合のリスクやその対応方法ついて解説しました。
前提として、「宛名がない領収書」や「お品代領収書」は、極力もらわないようにしましょう。そのためには、領収書の取り扱い方や但し書きの書き方をあらかじめ取引先と共有しておくことが大切です。トラブルは事前に避けるようにしましょう。
それでも、もし宛名がない領収書を受け取ってしまった場合は、ケースごとに起こりうるリスクに備えて、対応すれば問題ありません。領収書の取り扱い方について、正しい知識を身につけましょう。
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