取引先と契約する際に、電子契約を行う機会が増えてきていることを実感している方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、下記について紹介していきます。
- 電子契約の信憑性を高める技術にはどんなものがあるのか?
- 電子契約を導入するメリット&デメリット
- 電子契約を導入するための2つの方法とは?
電子契約は今後増加していくことが予想されますし、取引先から求められるケースも出てくるはずです。
最後まで読んで、電子契約の基礎を理解していきましょう。
電子契約とは?意味や英語表記・証拠力をわかりやすく解説
電子契約とは|書面契約との違い
電子契約(英語表記:Electronic Contract)とは、契約条項について電子的に作成してからインターネット等を介して取引先に送付を行い、電子署名等を駆使して締結する契約のことを意味します。
今まで行っていた紙ベースでの書面契約との大きな違いは主に2つあります。ひとつ目は単純に「紙」を利用しているかどうかです。書面契約では読んで字のごとく、契約内容が記載された紙を印刷し、押印して作成します。
一方、電子契約は紙を利用せず、データでの作成・電子署名で契約を締結していくことが特徴です。
2つ目の違いは、電子契約はオンライン上で契約の締結ができることです。書面契約では作成後に印刷して製本、取引先への郵送や返送等、付随する作業に手間がかかってしまいます。
一方、電子契約ではオンラインで全てが完結するため、書面契約と比較してスムーズに手続きを進めることができるでしょう。
なお、電子契約では紙ベースでの保管義務がなくなるので、経費削減や業務効率化に繋がることが期待されています。
電子契約が企業に普及した背景と、普及状況の変化
電子契約が企業に普及してきた背景には、下記が挙げられるでしょう。
- インターネットの進歩
インターネットの発展により、商品・サービスの広告、製品の受発注から出荷、販売・購入、請求から決済に至るまで、幅広い分野でオンライン上で完結することができるようになりました。今までは紙でのやり取りだった「見積書」「納品書」「領収書」等もデータでの作成や送付が一般的となり、こうした文書だけではなく契約についても電子契約が広まってきています。 - テレワークの推進や環境保護の流れ
ペーパーレス化推進のために「電子帳簿保存法」等の法整備は進んでいましたが、企業によるテレワークの導入や推進、環境保護の世界的な流れも要因のひとつでしょう。2022年にJIPDECが行った調査では、約7割の企業が電子契約を利用しているというデータが公表されています。この割合は、今後も増加し続けていくのではないでしょうか。
電子契約が持つ信憑性の度合い(証拠力)
確実に広まりを見せている電子契約ですが、証拠力を心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
電子契約の場合も本人の意志によって文書が作成されていることが証明されれば、文書は証拠として認められます。そして、本人の署名または押印があることは、本人の意志によって行われたことであると推定されるのです。
電子契約においては電子署名がされることで、押印のされている契約書と全く同じ効力が認められています。そのため安心して実務において活用することができるでしょう。
電子契約の「誰が」「何を」「いつ」を証明する技術
①電子署名|誰が・何を
電子署名をすることで、電子文書について「誰が」「何を」作成したのかを証明することが可能です。書面契約で言う「捺印」に該当することをイメージすると、わかりやすいでしょう。
下記のようにいくつか種類があります。
- メール
- 指紋認証
- 指や電子ペンによる手書きによる署名
3つ目の手書きによる署名が一般的で、タブレットやスマホ端末にサインを求められたことがある方も多いのではないでしょうか。
電子署名には、第三者機関である認証局が発行している本人確認のデータ(電子証明書)が付与されているので、信頼性が高いことが特徴です。
②タイムスタンプ|何を・いつ
タイムスタンプは、電子文書について「何を」「いつ」作成したのかを証明する技術です。書面契約で言う「消印」に該当することをイメージすると、わかりやすいのではないでしょうか。
タイムスタンプによって「いつ作成されたのか」がわかるため、以下を証明することができます。
- スタンプ時点で文書が存在していたこと
- スタンプ以降に文書が改ざんされていないこと
なお、タイムスタンプは自社で発行するものではなく、第三者機関である時刻認証局によって証明されている技術です。よって、改ざんの難易度がとても高い仕組みであることから、文書の信頼性を高めることができます。
電子契約の導入によって企業が得られるメリット
契約にまつわる業務の大幅な効率化ができる
電子契約を導入することで、契約に関する業務の効率化を大幅に進めることができます。
紙ベースの契約書では、作成後に「印刷・製本」「押印や署名を行うための郵送・返送」等と言った作業を行わなければいけません。手間だけでなく、郵送・返送の時間もかかります。
一方、電子契約であればオンライン上でスピーディーに全てを完結させることができます。
サービスの種類によっては、契約締結状況を簡単にチェックできるのでとても便利です。また郵送や返送の時間を取られないので、早ければ契約書を作成したその日のうちに締結できます。
費用・印紙税削減ができる
書面契約では必要だった、下記コストの削減が期待できるでしょう。
- 紙代
- 印刷に必要なインク代
- 契約書を郵送・返送する際の送料
- 契約書作成や郵送時に必要としていた人員コスト
- 契約書を保管するために必要な社内スペース
また、電子契約では印紙税が不要になります。
書面契約の場合は、契約金額が大きくなるほど印紙税額も高くなってしまっていたので、契約内容によっては大幅な経費削減が期待できるでしょう。
高いセキュリティを保てる
書面での契約書は、単なる紛失だけではなく、最近は珍しくなくなった自然災害や火災等によっても消失や破損してしまうリスクがあります。
一方、電子契約ではデータをクラウド上や社内サーバーに保管しておくことが可能です。紙の請求書のように破損してしまうことはありませんし、バックアップさえ取っておけばデータ自体が消失してしまう可能性も低いでしょう。セキュリティソフトの導入やデータへのアクセス制限をかけることで、高いセキュリティを保つことが可能です。
場所を問わずやり取りが可能
電子契約では、契約までに必要な全ての作業をパソコンによってオンライン上で行うことができます。今までは出社しないとできなかった作業もなくなり、場所を問わずに社内または社外の方々とやり取りすることが可能です。
これまではできなかった働き方を選択できるようになったこと、そしてライフワークバランスを実現しやすい環境にできることも、メリットになるでしょう。
導入前に把握しておきたい電子契約のデメリット
社内の業務フローの見直し・変更が必要となる
電子契約を行うには、今までの書面契約と業務フローが全く異なってきます。変更点は何なのか、今まで通りに行うことはあるのか等、業務フローの見直しや変更が必要になるでしょう。
特に今まで中々IT化に取り組めなかった企業では、社内への浸透を徹底しなければいけませんし、知識を得るための研修等が必要になるかもしれません。従業員からの理解を得た上で、導入を進めていくことが大切です。
取引先の理解・協力が必要となる
今まで書面での契約を結んでいた取引先の場合は、電子契約に移行する旨を理解して頂く必要が出てくるでしょう。取引先に電子契約を認めてもらえなければ、契約締結に至ることができないからです。
「社内フローを変更するのが手間」「信頼性やセキュリティが心配」等、相手がデメリットに感じていることを取り除いていかなくてはいけません。
また、全て電子契約にしようとするのではなく書面契約も可能にしておく必要はありますが、二重で管理しなければいけないので手間がかかります。
電子契約不可の契約書がある
法律によって、電子契約が認められていない契約書が存在するので注意が必要です。
下記に、いくつか例を挙げます。
- 定期借地契約
- 定期建物賃貸借契約
- マンション管理業務委託契約 等
ただし、以前は認められていなかったものが法改正によって、可能になるケースも出てきています。まずは電子契約の可否を調べるようにしましょう。
情報流出のリスクがある
サイバー攻撃を受けることによって、契約データの情報流出や内容の改ざん等がされてしまうリスクがあります。セキュリティ面がしっかりしているサービスを選択することが重要になりますが、書面契約と同様に、情報漏洩等のリスクをゼロにするのは極めて難しいでしょう。
電子契約に関するルール・制度を定める法律
電子契約に関する法律として、下記5つを頭の中に入れておきましょう。
- 改正電子帳簿保存法
2021年1月に改正が行われ、データの電子保存が義務化されています。電子契約に関係する内容としては、下記4つを押さえておきましょう。- タイムスタンプが押されていること
- マニュアルが準備されていること
- 「パソコンの画面上」「プリントアウトした紙」の両方で内容確認ができること
- 主要な記載項目について、範囲指定および組み合わせで検索可能なこと
- 電子署名法
電子署名がある文書について、署名や押印のある紙文書と同じ証拠力を認めている法律です。 - e-文書法
元来は紙媒体での保存を義務化されていた書類について、スキャンしたデータでの保存を認めることにした法律です。 - 印紙税法
課税対象となる契約を締結する際には、印紙を貼って税金を収めることが定められた法律です。 - 会社法369条3項
取締役会の議事録作成が義務付けられていますが、電子署名を行えばデータでの保管も認めています。
電子契約を導入する2つの方法
1. 電子契約書をWordやExcelで作成する方法
WordやExcelで電子契約書を作成することのメリット、デメリットは下記になります。
- メリット
WordやExcelが使えればすぐに作成でき、メール添付で簡単に送付することができる。また、新たな費用や操作を覚える手間ひまが発生しない。 - デメリット
改ざんを防ぐための機能が未熟であるため、税務上や機密保持契約等には向いてない。
2. 電子契約システムを利用する方法
電子契約システムを契約することのメリット、デメリットは下記になります。
- メリット
契約書の送受信、アップロードや検索等、契約に関する作業を全てWeb上で完結させることができる。また、取引先はゲストユーザーとして無料で使えるため、導入費用が発生しない。電子署名等の高度な改ざん防止機能が備わっているので、改ざんはもちろん、なりすましを防ぐことも可能。 - デメリット
システム導入の費用負担が生じること。また、システムに慣れるまでに時間を要すること。
まとめ
今回の記事では、電子契約全般についてお伝えしてきました。
- 電子契約はインターネットの進歩やテレワークの普及等、時代の流れに合わせて増加傾向にある。
- 電子署名やタイムスタンプにより、電子契約の信頼性や証拠力が保全されている。
- 業務効率化や経費削減、高いセキュリティを保てるメリットがある。
- 社内の業務フロー変更、取引先の協力を得る必要があること等、デメリットも存在する。
- 電子契約を導入するのであれば、システムを契約するのがおすすめ。
もし自社での導入を考えていなくても、取引先から今後求められるかもしれません。電子契約について、理解を深めておきましょう。