雑費と消耗品費の違いとは? 費用例や限度額はいくらまでか解説

経理業務で仕訳を行う際、意外に悩むのが雑費と消耗品費の違いです。
どちらも言葉の響きからは対象の範囲が広そうなイメージがあり、どのように使用したら良いのか、どのように使い分けたら良いのかを明確に説明できない人も多いでしょう。

この記事では、雑費と消耗品費の違いを明らかにし、2つの科目で計上する費用の例や限度額を詳しく解説しています。
是非、最後まで読んでいただき、違いを理解して業務にお役立てください。

雑費と消耗品費|違いとは? いくらまで計上して良いのか

当てはまる項目がない時は「雑費」

雑費は、ほかに適当な科目がない場合の勘定科目です。
例えば頻繁には発生しないクリーニングの費用やゴミ処理代・市区町村に納める会費等に使います。

雑費には限度額はありません。
常識として少額と判断できる場合に使用します。

ただし、少額だからと言って何でも雑費に計上してしまうと、何の費用かをすぐに確認できず不便です。
目安としては雑費の年間合計額が、経費の5%~10%になるよう調整すると良いでしょう。
ほかの勘定科目よりも高額になっている場合は、見直してみてください。

消費を目的とした商品の購入時は「消耗品費」

消耗品費は、使用すると消耗していく文房具や工具等の経費に用いる勘定科目です。

消耗品費には、10万円未満・耐用年数1年未満という決まりがあります。
例外もありますが、基本的には金額・使用期間のいずれかの条件に当てはまる品物は、消耗品費に計上可能です。

パソコン・エアコン・デジカメ等、高額なイメージのある家電でも10万円に満たなければ消耗品になります。

パソコンは1セット当たりの価格で判断する点がポイントです。
8万円のノートパソコンは消耗品費にできますが、8万円のデスクトップパソコンと3万円のモニタをセットで購入した場合は、原則として消耗品費になりません。

勘定科目「雑費」と「消耗品費」|それぞれに当てはまる例

雑費の範囲

雑費に当てはまる費用の例を細かく確認していきましょう。

具体的には、次の費用が雑費に計上できます。
業種によって異なりますが、それぞれの費用を雑費としない場合は、どのような勘定科目に計上できるかを記載しますので参考にしてください。

雑費に計上できる費用例雑費としない場合の勘定科目の例
クレジットカードの年会費支払手数料・諸会費
銀行の振込手数料支払手数料
ゴミの処分費用支払手数料・清掃費・設備維持費
クリーニング費用福利厚生費・衛生費・クリーニング費
事務所の清掃費用修繕費・外注費・衛生費

同じような費用を頻繁に雑費として計上しているようなら、勘定科目を見直すのが良いでしょう。

消耗品費の範囲

消耗品費に当てはまる費用の内訳と具体例を確認していきましょう。
消耗品費に計上できるかどうかは、業種によっても異なります。

消耗品の内訳具体例
事務用品コピー用紙・文房具・伝票
作業用品掃除用具・工具・計器・手袋
包装材料リボン・包装用紙・ビニール袋
什器備品事務机・椅子・機械部品・掃除機・エアコン・パソコン
※使用期間1年未満あるいは10万円未満のものに限る

工具や机・パソコン等は、大事に使えば長く使用できますが、1個の値段が10万円に満たないものは購入時に費用として処理します。
会計上は費用として処理をしてしまっても、長く使用するものは管理台帳を作成して記録しておくのが良いでしょう。

雑費と消耗品費|2つの違いがわからない時の分類方法

両者をどのように使い分けるかについては、会社の判断に任されるところが大きいです。そのため、ルールを作成しておくと迷う心配がありません。

社内ルールがない場合や、これからルールを作成する場合は、次の点で区別して分類するとスムーズです。

  • 勘定科目を頻繁に使うかどうか
    頻繁に使用するものは消耗品費、一時的に発生するものは雑費に計上します。
  • 金額でルールを決めておく
    2万円までは雑費とし、2万円を超えたら消耗品費に計上する等、金額で線を引いてしまうと迷いません。
  • 重要度で分類する
    会社にとって重要度の高い費用を消耗品費とするのもひとつの方法です。

上記はあくまで参考です。
年度によって変わってしまうことがないよう、わかりやすい方法で分類することが大切です。

雑費・消耗品費を仕訳した例|数値を用いた例題から解説

雑費の仕訳|重要性の低い支払い時

雑費は年に1回しか発生しない等、重要性の低い支払いを記帳する時に使用します。
雑費を使用し過ぎると、税務調査で詳細を確認されることもあるので注意が必要です。

雑費の仕訳を具体的な例を挙げて確認していきましょう。

例1:事務所の清掃料金を支払った

事務所の掃除は毎日社員が行っていますが、1年に1回業者に清掃を依頼しています。
清掃料金10,000円を現金で支払った際の仕訳は次の通りです。

借方貸方摘要
雑費10,000現金10,000事務所清掃

月に1回等、定期的に清掃を依頼している場合は、修繕費・外注費・衛生費といった勘定科目を使用することもあります。

年に1回、1万円程度の支払いであれば、雑費に計上しても差し支えないでしょう。

例2:振込手数料を支払った

銀行の振込手数料330円を支払いました。
通常、買掛金を支払う際の振込手数料は取引先が負担する契約のため、この事例では発生していません。
会社にとっては、頻度も重要度も低い振込手数料を支払った時の仕訳は次の通りです。

借方貸方摘要
雑費330普通預金330振込手数料

普段から手数料を負担している場合や、振込手数料の重要度が高い場合は、支払手数料の勘定科目を使います。

例では、今回たまたま発生した振込手数料の支払いで金額も少額なので、雑費に計上して問題ないでしょう。

消耗品費の仕訳|取得時・決済時

消耗品費は、取得時と決済時の2回仕訳を行います。
仕訳方法は次の2種類があります。

  1. 取得時は消耗品費(費用)とし、決算時に未使用分を消耗品(資産)に振替える
  2. 取得時に消耗品(資産)として計上し、決算時に使用済み分を消耗品費(費用)に振替える

それぞれの仕訳例をご紹介しましょう。

例1:ボールペンを買った

1本100円のボールペンを100本購入し、10,000円を現金で支払った際の仕訳は次の通りです。摘要欄には、後から見返した時に何を購入したかがわかるようにしておきます。

①取得時は消耗品費(費用)

借方貸方摘要
消耗品費10,000現金10,000ボールペン100本

②取得時は消耗品(資産)

借方貸方摘要
貯蔵品10,000現金10,000ボールペン100本

例2:決算時に未使用分を振替えた

決算日の時点で、70本(7,000円分)を使用し、30本(3,000円分)は未使用だった場合の仕訳を考えてみましょう。

①決算時に消耗品(資産)に振替え

借方貸方摘要
貯蔵品3,000消耗品費3,000ボールペン
未使用30本

②決算時に消耗品費(費用)に振替え

借方貸方摘要
消耗品費7,000貯蔵品7,000ボールペン
使用70本

①②どちらの方法で仕訳をしても、決算時に使用したボールペンが70本あること、未使用分が30本残っていることがわかります。

雑費・消耗品費を用いる際に気をつけるべきポイント

計上する頻度の多いものは雑費にしない

雑費は、使い勝手が良いのですが、使用回数の多いものは消耗品費やほかの勘定科目を使うようにしましょう。

雑費を多用すると、次のようなデメリットがあります。

  • 経費の分析ができなくなる
  • 税務調査の際に指摘される可能性がある
  • 銀行融資を受けにくくなる

雑費は具体的に何に使用したのかがわかりにくいので、頻繁に使用していると目につきやすく内容を質問されることがあります。

雑費の上限金額は決まっていませんが、決算の時に雑費の合計が、ほかの勘定科目の合計金額を上回っている場合は見直した方が良いでしょう。

雑費を減らすには次のような方法があります。

  • 消耗品費として計上する
  • ほかの勘定科目を検討する
  • 新しい勘定科目を作成する

ただし、勘定科目が増えると手間も増えます。
新規に科目を作成するのは、この先も頻繁に使用する科目のみに留めておくことがポイントです。

1年以上使用する10万円以上の消耗品は仕訳に注意

購入したものが、長期にわたって保有する10万円以上の消耗品は、購入時に全額を経費にすることが原則できません。
資産勘定に計上し、耐用年数にわたり減価償却費として毎年少しずつ経費に計上します。

金額や会社の規模に応じて処理方法が3通りあります。

①通常の減価償却を行う
一般的に30万円を超えるものは固定資産として計上し、減価償却を行います。

例えば、期首に50万円の機械装置を購入し、決算で5万円(直接法で計算)を減価償却費として計上すると仕訳は次の通りです。

借方貸方摘要
期首機械装置500,000普通預金500,000機械購入
決算減価償却費50,000機械装置50,000当期償却費

②一括償却資産として処理する
取得金額が10万円以上20万円未満のものは一括償却資産として処理し、まとめて3年間で3分の1ずつ経費に計上します。

仮に15万円のパソコンを購入し、その年の一括償却資産がパソコンのみだった場合は、決算時に3分の1である5万円を償却します。

借方貸方摘要
期中一括償却資産150,000普通預金150,000パソコン購入
決算一括償却資産償却費50,000一括償却資産50,000当期償却費

③少額減価償却資産の特例を利用する
青色申告を行っている中小企業が30万円未満のものを購入した場合は、少額減価償却資産の特例を利用することができます。

例えば、25万円のパソコンを購入した場合の仕訳は次のようになります。

借方貸方摘要
消耗品費250,000普通預金250,000パソコン
少額資産特例

決算時に特別な処理はありません。

雑費と消耗品費の管理|補助科目と摘要欄の活用が便利

補助科目の具体的な活用例

雑費や消耗品費として計上できる商品は範囲が広く、領収書と突合せなければ何の費用かをすぐに思い出せない場合もあるでしょう。
その時に便利なのが補助科目の使用です。

補助科目にはルールがありません。
消耗品費として計上する商品を、いくつかに分類し名称をつけておくことで管理がしやすくなります。

例えば次のような補助科目を使用すると便利です。

  • 事務用消耗品
  • 日用消耗品
  • 作業用消耗品
  • 広告宣伝用印刷物
  • 包装材料

ただし、補助科目も増やし過ぎると管理が大変になるので、分類はしたいけど補助科目を作成するほどでもないという場合は、摘要欄を使用する方法もあります。

摘要欄の具体的な活用例

摘要欄には、仕訳の具体的な内容を記入します。
勘定科目だけではわからない金額や数量、使用部署等をメモしておくと便利です。

例えば、次のように記載すると管理がしやすくなります。

■使用する部署名を記載

  • 営業部用コピー用紙
  • 総務部用クリアファイル

部署ごとに消耗品費の使用量を把握したい時に便利です。

■購入したものの具体的な商品名や金額・数量を記載

  • 84円切手×10枚
  • ボールペン100本
  • お茶5本

具体的に書くことで、その費用が消耗品費で間違いないことの証明にもなります。
また、消費税率10%なのか、軽減税率が適用される商品なのかも区別しやすいです。

雑費と消耗品費で留意したい消費税区分

仕訳を行う時は、消費税の課税区分に気を付けてください。

雑費の多くは、課税仕入です。
しかし、様々な支払いが雑費として計上されているため、まとめて課税区分を設定することができません。
お守り代・市区町村の区費等、非課税取引もあります。
取引内容ごとに課税区分を確認し、非課税取引であれば摘要欄にその旨を記載しておくようにしましょう。

一方、消耗品費は、課税取引に該当します。
軽減税率の対象となっている品物を購入した際は、区別しておくと管理しやすいでしょう。

雑費・消耗品費と混同しやすいその他の勘定科目

雑費・消耗品費と似ていて間違いやすい勘定科目には次のようなものがあります。

勘定科目使い方
修繕費建物等の修理・修繕費用
業者に支払うメンテナンス費用等
荷造運賃商品を出荷する際の荷造り・梱包・運送費等
事務用品費文房具・コピー用紙等
工具器具備品耐用年数1年以上、取得金額10万円以上の消耗品に使用
テレビ・カメラ・工具等が該当

修繕費・荷造運賃・事務用品費は、消耗品に含めてしまっても差し支えありません。
消耗品費の補助科目として利用するのも良いでしょう。

会社として勘定科目を独立させて管理したい時に作成し、分析等に利用してください。

まとめ

雑費と消耗品費の違いについて解説しました。
雑費とは、ほかに適当な勘定科目がない時に使用し、金額に上限はないものの、多くなり過ぎないように調整することが大切です。

消耗品費には、10万円未満・耐用年数1年未満の、消費を目的とした商品を計上します。

雑費と消耗品費のどちらに計上するか判断に悩む場合は、頻度や金額・重要度で分類するとわかりやすいでしょう。
社内でルールを決めておくと、誰が対応しても同じ仕訳を行うことができます。

大切なのは、後から見た時に何のための費用かがわかるようにしておくことです。

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