資本金とは? 平均額やいくらにするべきか決め方のポイントを解説

会社の設立時に必要な資本金ですが、経営を行っていく上で気にする機会は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、下記内容についてお伝えしていきます。

  • 資本金の3つの特徴
  • 資本金額を決めるのに役立つ4つのポイント
  • 資本金と税金の関係
  • 増資を行うメリット&デメリット
  • 経理担当であれば押さえておきたい資本金の仕訳方法

本記事を参考に資本金についての知識を深めましょう。

資本金とは簡単にいうと会社が事業を運営するための元手になる資金

資本金と聞くと「設立時に株主が出資したお金」として思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実は大きく下記の2つに分類されます。

  • 設立時に株主から出資された当面の運転資金
  • 会社として資金が必要になった時に、株主や投資家等から追加で調達した資金

ただし、多くの中小企業では「設立時の株主=経営者」になるケースがほとんどです。また、どちらであっても事業を行うための資金であることに相違ありません。

資本金が持つ特徴3つ

特徴①社外から見た信用度の目安になる

資本金は、社外の企業や投資家等から見た信用度の目安のひとつになります。資本金は会社経営の基盤でもあり、会計的にも信用度に繋がる指標であるからです。資本金額が大きいほど、優良な企業であるとみなされやすいでしょう。

実際、新しい取引先となり得る候補先が出た場合は、資本金がいくらかをチェックしている会社は多いのではないでしょうか。逆を言えば、あなたの会社が他社から評価される際のひとつの項目になっていることを意味します。

特徴②多いと資金調達のハードルが下がる

信用度という点で、資本金が大きい企業は金融機関からの信用も得やすくなります。お金を貸す側にとって重要なのは、約定通りに返済できる企業体力があるかどうかです。資本金の多寡は会社の資産が多いか少ないかに直結しやすいので、資本金が多いと金融機関等からの資金調達を受けやすくなるでしょう。

特徴③事業にそのまま使うことができる

創業したばかりの企業をイメージするとわかりやすいですが、資本金を事業に活用することで経営活動を行っていきます。必要なものを仕入れ、従業員への給料を支払い、そして次なるビジネスへの投資と様々なことに使うことが可能です。
資本金の金額が多いということは、それだけ事業に使用できる金額が多いことを意味するので、より企業としての成長を早めることができるようになるでしょう。

資本金はいくらにするべきか? 決め方のポイント4つ

ポイント①許認可ビジネスには最低資本金の設定がある

下記3業種をはじめとした許認可ビジネスには、資本金の最低金額が設定されています。それぞれ要件が定められているので、間違えることのないよう事前に確認しておきましょう。

  • 人材業
    • 職業紹介事業 500万円以上
    • 労働者派遣業 2,000万円以上
  • 旅行業
    • 地域限定 100万円以上
    • 第1種 3,000万円以上
    • 第2種 700万円以上
    • 第3種 300万円以上
  • 建設業
    • 一般 500万円以上
    • 特定 2,000万円以上

もし新規で会社を設立をする場合は、上記以上の資本金額にしておくことで、設立後すぐに許認可申請を行うことができます。

ポイント②目安は3か月分の運転資金を考慮した額

新規設立時のひとつの目安として、3か月分の運転資金を考慮した金額にしても良いでしょう。開業直後は、売上を上げることが難しいことも珍しくありません。もし売上がなくても事業を継続できる金額を確保しておくことが重要です。
事業スタート時に必要な仕入れ、最低限必要な設備資金、そして3か月分の運転資金を計算した上で資本金額を決めていきます。

ポイント③取引先への印象を考慮する

取引先からの印象を考慮するのも、ひとつの考え方です。もし大手企業との取引を狙いに行く予定があるならば、選ばれる際の基準となる可能性があることを覚えておきましょう。大手企業との取引がない場合や取引先数が少ない場合は、資本金額が少なくても問題になることはありません。

ポイント④税制の優遇をチェック

資本金の税制面での優遇としては、「消費税」「法人税」「地方税」「登録免許税」の4つについて覚えておけば問題ないでしょう。支払う金額に大きな差が生まれる可能性があるので注意が必要です。

これについては次の章で詳しく説明します。

資本金の額は税金に関係してくる

資本金と消費税の関係

資本金と消費税の関係で覚えておくべき金額は、1,000万円です。

  • 資本金1,000万円以上の場合
    消費税の課税事業者になるので、開業初年度から消費税を納めなければいけません。
  • 資本金1,000万円未満の場合
    開業初年度は、消費税の納税義務はありません。2期目については、前期首から半年間の「課税売上高が1,000万円以下」または「給与の支払額が1,000万円以下」の場合は消費税を納めなくて大丈夫です。

資本金と法人税の関係

資本金と法人税の関係で覚えておくべき金額は、1億円です。
1億円以下の場合は、中小企業とみなされて法人税率の優遇を受けることができます。年間の所得800万円までは、法人税率15%(資本金1億円以上の企業は23.2%)で計算されます。所得が増えるほど支払額に大きな差が生まれてくるので、その分をビジネスに回すこと等ができるかもしれません。

資本金と地方税の関係

地方税とは、企業が所在する都道府県と市町村に支払う税金を意味します。
資本金と地方税の関係で覚えておくべき金額は、1,000万円と1億円です。資本金が1,000万円以下の場合は、最低限の税金負担で済みます。

また、資本金が1,000万円以上1億円以下の場合でも、一定の軽減税率が適用されるので負担額は少なくなるでしょう。

資本金と登録免許税の関係

登録免許税とは、新しく設立する会社を登録する際に支払わなければいけない税金です。
資本金と登録免許税の関係で覚えておくべき金額は、株式会社の場合は約2,140万円(合同会社は約857万円)です。

  • 株式会社
    「資本金額×0.7%」と「15万円」を比較して高い方の金額を支払います。
    ですので、資本金が約2,140万円までは一律15万円となります。
  • 合同会社
    「資本金額×0.7%」と「6万円」を比較して高い方の金額を支払います。
    ですので、資本金が約857万円までは一律6万円となります。

平均的な資本金額と言われるのは約300万円

繰り返しになりますが、資本金は事業をスタートさせてから運転資金として使われます。そして仮に売上が立たなくても、3か月間は事業を継続していけるだけの金額が必要です。こうした考え方が根底にあるのかもしれませんが、平均的な資本金額は約300万円であると言われています。

取引先や知り合いの経営者の会社等、身近なところから資本金額をチェックしてみるのも良いかもしれません。

増資や減資とは

資本金は会社設立時に決め、金額そのままに経営を行っていけます。しかし、一定の手続きを踏むことで「資本金の金額を増やしたり(=増資)」逆に「減らしたり(=減資)」することが可能です。

  • 増資
    資本金額を増やすこと。会社の規模を拡大する際や、株主・投資家等から出資を受ける時に行います。
  • 減資
    資本金額を減らすこと。既存株主から株を買い取る際や、株式配当をするために行うケースが考えられます。

増資するメリット

増資をすることによるメリットは、下記の通りです。

  • 資金調達ができる
    増資で得られる最大のメリットではないでしょうか。出資を受けることによって、手元の資金を増やすことができるからです。また、増資で得た資金は、金融機関からの借入れとは異なり返済義務がありません。事業を発展させるため、必要な設備投資を行ったり、新規事業の立ち上げに使ったりできます。
  • 会社としての信用度が増す
    先述の通り、資本金は信用度の目安のひとつです。資本金額が大きいことは、資金を調達できる能力が高く、かつ資金的な余裕を持った会社として判断されるでしょう。
  • 財務状況が改善される
    増資を行うと、財務会計上の「資産の現預金」「資本」が増えることになります。これは流動比率や自己資本比率等の財務指標を改善する効果が期待できるでしょう。

増資のデメリット|簡単には増やさない理由

増資にはメリットだけではなく、デメリットも存在します。
主に下記2点について、押さえておきましょう。

  • 1株当たりの価値の減少
    増資を行い株式数が増えることで、既存株主の1株当たりの価値が減少してしまい、不利益を生じさせてしまう可能性があります。
  • 第三者による持株割合の増加
    よく知らない第三者が筆頭株主になってしまい、事実上の経営権を握られてしまう可能性も出てきます。各株主の持株割合について、必ず事前にチェックしておきましょう。

減資のメリット・デメリット

一方、減資によるメリットとデメリットは以下の通りです。

  • メリット
    • もし繰越欠損金がある場合は、減資を行うことで相殺が可能です。繰越欠損金は過去の赤字の累積なので、決算書上の見た目を良くすることに繋がります。
    • もし資本金が1億円を超えていた場合は、1億円以下にすることで先述の税金面の優遇を受けることができます。
  • デメリット
    繰り返しになりますが「資本金額=信用度」なので、信用性が低下する可能性はゼロではありません。

経理担当者が知っておきたい資本金の仕訳方法

次に資本金の仕訳方法について見ていきます。特に経理担当者は覚えておくと良いでしょう。

資本金が発生した時の仕訳例

会社設立時に、資本金が発生した時の仕訳は下記の通りです。
今回のケースでは、資本金として300万円を準備したと仮定します。

【借方】【貸方】
普通預金3,000,000円資本金3,000,000円

増資した場合の仕訳例

増資を行う方法として、お金の払い込みがある「有償増資」とお金の払い込みがない「無償増資」の2つがあります。それぞれのパターンで、どう仕訳されるか確認していきましょう。

有償増資
・200株を1株あたり2,000円で発行することになり、期日までに全額の払い込みが完了した。

【借方】【貸方】
別段預金400,000円新株式申込証拠金400,000円

・払込期日が到来し、資本金に振替えた。

【借方】【貸方】
普通預金400,000円資本金400,000円
新株式申込証拠金400,000円別段預金400,000円

無償増資
無償増資とはお金の払い込みではなく、資本準備金等を資本金に振替えて行われる増資です。資本準備金20万円を振替えたケースの仕訳は、下記になります。

【借方】【貸方】
資本準備金200,000円資本金200,000円

減資した場合の仕訳例

減資も増資と同様に、お金の払い戻しの有無で「有償減資」「無償減資」の2つの方法があります。

有償減資
有償減資とは、株主に資金を払い戻すことによって資本金額を減少させることです。今回のケースでは、資本金を50万円減らし、株主への配当にすると仮定します。

【借方】【貸方】
資本金500,000円普通預金500,000円

無償減資
無償減資は会社の財産を減らすことなく、資本金を減額する方法です。資本金を50万減らし、資本準備金に振替えるケースの仕訳は下記になります。

【借方】【貸方】
資本金500,000円資本準備金500,000円

まとめ

資本金の説明から仕訳のポイントまで、幅広い内容でお伝えしてきました。
最後に以下をおさらいしておきましょう。

  • 資本金には「信用度の目安」「資金調達のしやすさ」「事業に使える」という3つの特徴がある
  • 許認可ビジネスを行う際には、最低限必要な資本金額の設定があるため要注意
  • 資本金は「消費税」「法人税」「地方税」「登録免許税」の4つに関係がある
  • 増資と減資それぞれのメリット・デメリットを理解しておく

会社設立、運営するうえで資本金についての知識は必要不可欠です。しっかりと覚えておきましょう。

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oneplus編集部

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