財務分析のひとつ「活動性分析」とは?主な8つの指標を解説

財務分析とは、企業の収益性や安全性等を、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表から分析することです。

経営者はもちろん、経理や財務の担当者でも財務分析の知識があることで、より深い視点で業務に取り組むことができますし、将来のキャリアチェンジにも役立つことでしょう。

今回は、財務分析の中でも「活動性分析」に関して、詳しく解説していきます。

財務分析の5つの分析のひとつ|活動性分析とは?

活動性分析とは資産や資本を生かした活動をしているか評価する財務分析のひとつ

財務分析には、収益性分析や安全性分析等、色々な分析の手法が存在します。

その中のひとつが「活動性分析」ですが、どのような分析手法かイメージはできるでしょうか?「収益」や「安全」という言葉に比べるとなんだかとっつきにくく感じる方もいるでしょう。

活動性分析とは企業経営が活発に行われているかを見るための手法で、資産や資本を活かした活動をしているかを評価するためのものです。

活動性分析は「回転率」とその逆数である「回転期間」で表す

活動性分析には、複数の指標が存在するのですが、共通して「回転率」と「回転期間」を使用して分析を行うのが特徴です。

回転率とは、ある期間(一般的には1年間)に、資産や資本が何回出入りしたかを示す指標です。一方、回転期間とは、資産や資本が1回転するのに要した期間を示します。

回転率が高くなるほど、より資産や資本を効率的に活かした活動をしていると評価することができます。回転率も回転期間も同様の性質を持った指標であり、お互いが逆数関係になるのが特徴です。

例)期間1年、回転率6回転の場合
  回転率=6 / 1回転
  回転期間=1 / 6年=2か月

活動性分析に用いられる主な指標8つ

1.総資本回転率|概要・計算式・目安

総資本回転率(回)=売上高 / 総資本

売上高に対しての総資本の割合、すなわち売上に対してどの程度資本が回転しているかを表す指標です。これによって、企業の資本がどれほど効率的に売上に結びついているかを確認することができます。

この値が高い企業ほど、総資本を効率的に使用して事業運営をしていることがわかります。投資した資本から効率的に売上を得て、さらに短いスパンで資本を再投資することによって、売上高を拡大できている状態です。

逆にこの値が低い企業には、多くの不良債権が含まれているリスクがあります。

総資本回転率を評価する目安

総資本回転率のひとつの目安としては、1回転を目標にすると良いでしょう。

ただし、業種や業界によって目安となる数にはばらつきがあり、全業種を平均すると0.8程度になっています。小売業や飲食店では平均的に高い値となり、エネルギー業等では低い値となります。

指標分析をする時には、同業の企業と比較すると良いでしょう。

2.経営資本回転率|概要・計算式・目安

経営資本回転率(回)=売上高 / 経営資本

企業が本業のために直接投資した経営資本が、いかに効率的に売上を生み出したかを示す指標です。ご覧のとおり、総資本回転率の計算式の分母が「総資本」から「経営資本」に変わっただけです。

総資本(総資産)の中には、経営資本以外にも有形・無形固定資産以外の投資その他の資産や建設仮勘定等、直接的に本業に関わらない資産も含まれます。

そのような資産を除いて計算される経営資本回転率を用いることで、より厳密な経営の効率性評価が可能となります。

経営資本回転率を評価する目安

総資本回転率に比べると、分母の値が小さくなりますので、当然目安となる値は経営資本回転率の方が大きくなります。

全業種の平均値を見ても、1.0程度となっています。目標としては1.2程度を目安にすると良いと考えられますが、こちらについても業界ごとにばらつきがあります。

特に建設仮勘定の割合が大きい業界(有形固定資産の割合が大きい企業)においては、事業の効率性評価に役立ってくれる指標だと言えるでしょう。

3.自己資本回転率|概要・計算式・目安

自己資本回転率(回)=売上高 / 自己資本

自己資本が、いかに効率的に売上を生み出したかを示す指標です。自己資本とは、総資本の中でも「返済の必要がない資本」を表し、具体的には、株主資本とその他の包括利益累計額を合わせた値となります。

基本的には、貸借対照表の資産から負債を除いた金額(純資産)と考えましょう(負債のことは自己資本の反対で「他人資本」とも言います)。

この指標が大きいほど、企業が所有する資源を有効活用して経営が行われていると言えます。

自己資本回転率を評価する目安

自己資本回転率の全業種平均は3.0前後となります。

ただし、自己資本回転率の値から経営状態の良し悪しを判断するのは少々困難です。というのも、業種はもちろん、企業の状態を含めてその数字がまったく異なってくるためです。

ひとつの目安として、自己資本の割合が大きい(自己資本回転率が小さい場合)は安全性が高いと言えます。

なお、積極的に投資をしているスタートアップ企業の場合等はその値は大きくなります。各企業の状態に応じて判断しましょう。

4.棚卸資産回転率(在庫回転率)|概要・計算式・目安

棚卸資産回転率(在庫回転率)(回)=売上高 / 棚卸資産

棚卸資産の残高が適正かどうかを表す指標であり、棚卸資産が効率よく活用され、効果的に売上に繋がっているかをチェックできます。

棚卸資産とは、販売される前の商品や製品、および製造途中の未完成品(仕掛品)を表します。倉庫に眠っている商品や工場で製造途中の製品等がその一例です。

この値が高いほど、在庫が効率よく回転していることがわかり、逆に値が低い場合は、在庫の回転が悪く、未販売のまま多くの商品が眠っている可能性があります。

棚卸資産回転率を評価する目安

基本的には、数値が高いほど良いです。数値が高いほど、仕入れた商品が滞留することなく、すぐに売上へと繋がっていると言えるためです。

ただし、棚卸資産回転率の値は業種によって値は大きく異なります。例えば、メーカーは製造した製品を長期間在庫保有する傾向があるのに対し、小売業は仕入れた商品をすぐに売りに出すため、両者を同じ基準では考えられません。

あくまでひとつの目安として、10回以下だと回転率が悪い、10〜20回だと平均的、20回以上だと効率的な在庫運用ができていると考えておけば良いでしょう。

5.固定資産回転率|概要・計算式・目安

固定資産回転率(回)=売上高  /  固定資産

固定資産への投資が、効果的に売上に結びついているかを確認するための指標です。設備投資が無駄なく適正に行われているかを確認可能です。

売上として回収されるまでのスパンが長い固定資産の場合は、ほかの資産に比べて経営上の無駄が発生しやすくなります。

過剰な設備投資は、経営悪化を招き、キャッシュ不足による黒字倒産を引き起こすリスクもあります。

有形固定資産や無形固定資産等、種類を絞って分析してみる等、企業ごとの状況に合わせて、定期的にチェックをしておくことをおすすめします。

固定資産回転率を評価する目安

固定資産の保有割合は、業種によってまったく異なるので、一概に目安となる数字は算出できませんが、一般的には以下の数字が目安とされています。

  • 流通業:5回転以上
  • 製造業:2.5回転以上

規模の大きな工場等を所有する製造業と、パソコン等の備品を中心とした構成の流通業では、固定資産が売上となるまでの期間が大きく異なってくるのは想像に容易いでしょう。

企業ごとの状況を比較検討する時には、同業種の企業と比べることをおすすめします。

6.売上債権回転率(回転期間)|概要・計算式・目安

売上債権回転率(回)=売上高 / 売上債権
売上債権回転期間 = 365 / 売上債権回転率

売上債権とは、売掛金や受取手形等を総称した名称です。取引先から売上を上げた後、まだ現金として回収されていないもののことを指します。

売上債権回転率は、この売上債権の金額が適正であり、滞留が発生していないかを確認することができる指標で、1年間に売上債権が何回転するかを表します。

一方、売上債権回転期間は売上債権が1回転するのに要する日数を表した指標です。

この値が大きいほど、売上債権が効率的に現金として回収されていることを表すので、企業の資金繰りを考察する時に有効な指標と言えるでしょう。

売上債権回転率(回転期間)を評価する目安

こちらについても、業種によって目安が異なりますが、年6回転以上が理想です。年3回転以下の場合は、危険な状態と言えます。

取引先の資金繰り悪化や、倒産等による不良債権等、売上債権回転率が悪化した際には、何かしらの原因があり、大きな経営悪化を招くリスクも含みます。

定期的にチェックし、滞留している売上債権があれば原因を追求する等して、万が一の黒字倒産リスクに備えておきましょう。

7.買入債務回転率(回転期間)|概要・計算式・目安

買入債務回転率(回)=売上高 / 買入債務
買入債務回転期間 = 365 / 買入債務回転率

買入債権とは、買掛金や支払手形等を総称した名称です。取引先から仕入をした際、まだ現金支払をしていないもので、先ほどの売上債権の反対です。

企業が債務支払いを適正に行っているかを示す指標で、買入債務の1年間での回転数を表します。また、買入債務回転期間は、買入債権が1回転するのに要する日数を表した指標でもあります。

買入債務回転率を評価する目安

買入債務回転率は低ければ低いほど、手元に資金が残っていると言えるため、資金繰りとしては良くなります。

しかし、支払いが滞留しているとも考えられるため、低ければ低いほど良いとも言えません。むしろ、回転率が高い、すなわち支払いがコンスタントに行えている状態の方が、企業経営は健全と言えるでしょう。

目安は12回転以上が理想とされています。企業ごとの状況に応じて、もっと回転率を高めるべきか、低くするべきか検討してみてください。

なお、買入債務回転期間は買掛債務回転期間とも言います。

詳しくはこちらをご覧ください。

8.商品回転率(回転期間)|概要・計算式

商品回転率(回)=売上高 / 商品
商品回転期間 = 365 / 商品回転率

商品の量が適正で、効率的に売上へと繋がっているかを確認することができる指標です。また、商品回転期間は、商品が1回転するのに要する日数を示す指標です。

この指標が、悪化する原因としては、過剰発注による不良在庫の存在等があります。定期的なチェックを心がけ、指標が悪化していた場合は、発注量を調整する等、対策を検討しましょう。

【まとめ】活動性分析の概要と8つの指標を押さえよう

以上、活動性分析の概要と8つの指標についてご紹介しました。活動性分析は、財務分析の手法のひとつです。企業経営が活発に行われているかを様々な角度から分析することができます。

有効に利用することで、経営状態が悪化した際の原因や、問題を打開するためのヒントを得られることでしょう。

複数の指標があるため、ひとつずつ財務諸表の数字と照らし合わせながら計算することをおすすめします。

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oneplus編集部

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