裏書手形とは? 決算書における勘定科目や書き方をわかりやすく解説

裏書手形を使うことで、受け取った手形を現金の代わりに支払いに使うことができます。
また、やりとりにかかる手間やコストが小さいのも特徴です。

今回、使い方の注意点や仕訳の入力の仕方について詳しくご説明しています。
今後、裏書手形の使用を検討している方や、取引先から受け取る可能性のある方は是非参考にしてください。

目次

【裏書手形とは】読み方や意味、決算書での勘定科目を解説

手形とは将来の支払いを約束した信用証券のことで、受取人はそれを銀行に持っていくことで現金化することができます。

ただし手形は現金化に時間がかかることから取引先に嫌がられる場合も多く、流通量は減ってきています。

裏書手形(うらがきてがた)とは裏書きをして第三者に譲渡した手形のこと

手形の裏書きとは、約束手形を第三者に渡して支払いの代わりに使う方法です。

手形は自由に譲渡が可能な債権です。
そのため現金化しなくても資産として活用でき、振出し元とは別の会社との取引で支払いに使うことができます。

手形を譲渡する際に、手形の裏面に署名・押印をすることから、”裏書”と呼ばれます。ただし手形に対して期日までに支払われなかった場合には、裏書きをした人にも支払いが求められる点に注意が必要です。

裏書手形の決算書における勘定科目は「受取手形」

裏書手形は、受取手形の控除科目として表示されます。

例えば受取手形が100万円あったとして、そのうち10万円分を裏書手形として譲渡した場合は、90万円が実質的な受取手形の金額となります。

裏書手形は、もし振出元が決済を行わなかった場合は、自社で支払う可能性のある偶発債務です。そのため、金額については「注記」という形で記載して偶発債務があることを表示します。ただし、重要性の低いものについては省略も可能です。

【裏書手形の書き方】記入項目と訂正の書き加え方

①住所・会社名(氏名)・日付等を記入

住所・会社名と氏名・日付を記入します。

正式な書類となるため、会社名については省略せずに書くよう心がけましょう。また、「株式会社」がつく場合にも、「カ」や「株)」等省略せずにすべて書くようにします。

日付については、手形の振出日か譲渡された日を記入します。日付の記入は義務ではありませんが、後から確認する際の手間を削減できるので書くように意識すると良いでしょう。

②氏名の右側に印鑑を押す

正式な書類となるため、氏名の右側に印鑑を押します。法人の場合は、法人名や代表者名を印鑑で押すこともあります。記入している法人名や氏名と一致する印鑑を使いましょう。

印鑑は、実印や銀行印でなく認印でも問題ありません。ただし取引先によって様式は異なるため、都度確認するようにするとより安心でしょう。

裏書きの記載を間違えてしまった場合の書き加え方

裏書きの記載を間違えてしまった場合は、訂正が必要となります。
修正の程度によって修正の仕方が異なりますが、所定の方法で訂正していないと訂正内容や手形自体が無効とみなされるケースもあるため注意が必要です。

小さな記載ミスの場合:二重線で訂正

小さな記載ミスの場合は、一般的な書類と同様に二重線で訂正します。二重線で訂正した上で、正しい内容を近くに記載しましょう。

また、二重線で訂正した箇所の近くに、裏書手形の作成時に使用したのと同じ印鑑を押します。印鑑を押すことで後から不正に修正したものでないことを示し、トラブル防止に繋がります。

大きな記載ミスの場合:新しい欄に記載し直す

大きく間違えてしまい訂正するスペースが残っていない場合は、間違えた手形用紙に何も裏書きがされていない別の手形用紙を貼り付けて、新しい用紙に内容を記載します。

間違えた方の手形には、スペースに大きくバツの印を書き、真ん中に印鑑を押します。
間違えて使われることがないように、失効していることをきちんと書き示すことが重要です。

印鑑の押印ミスの場合:空欄に押し直す

印鑑がしっかりと押せていないと無効とみなされてしまうことがあります。
例としては、インクが薄い場合や滲んでいる場合、ズレてしまっている場合等が考えられます。その場合は、もうひとつきちんと読み取れる印鑑を近くに押し直します。

印鑑を押し直す場合は、既存の印や文字に重ならないよう空欄に押しましょう。

【裏書手形の注意点】2つの点に注意しよう

譲渡した手形に対する責務

もし手形が不渡りとなった場合は、振出元に代わって支払いをする義務が発生することに注意が必要です。

つまり、手形の振出元が経営状況悪化で支払いを期日までに行えなかった場合は、債務が手形を譲渡した人にも発生します。

そのため、金額が大きい場合は注記にも偶発債務の存在を記載しておきます。また、振出元で決済が行われない場合に備えて、支払いの金額を用意しておくと安心でしょう。

記載ミスによる手形無効の可能性

記載ミスによって無効となる可能性があることにも注意が必要です。

手形に間違った譲渡元や日付を書くと無効となる可能性があるため注意します。また、必要事項以外の情報を記入した場合も無効となる可能性があります。

また、印鑑が薄かったり滲んでいる場合も無効となる可能性があるため、印鑑は鮮明に残すように気を付けましょう。

【裏書手形の仕訳例】譲渡・決済・不渡り

基本的な仕訳方法|譲渡・決済・不渡り

多くの企業で使われている仕訳方法をご説明します。

手形を70万円分裏書して譲渡し、無事振出元が決済できた場合は次の仕訳です。

(譲渡時)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
仕入700,000受取手形700,000

(振出元の決済時)
仕訳なし

一方で、手形が不渡りとなった場合は次の仕訳です。

(不渡りになり、普通預金からの振込みをした場合)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
不渡手形700,000普通預金700,000

このように、振出元で不渡りとなった場合は譲渡元で代わりに支払います。譲渡した手形についても受取手形の勘定が使われるため、それぞれの金額を別途把握しておくと良いでしょう。

評価勘定法を用いた仕訳方法|譲渡・決済・不渡り

企業によっては、裏書している手形とそうでないものの区別を行うために、「裏書手形勘定」を使っています。この方法が評価勘定法です。

手形を70万円分裏書して譲渡し、無事振出元が決済した場合は次の仕訳です。

(譲渡時)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
仕入700,000裏書手形700,000

(振出元の決済時)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
裏書手形700,000受取手形700,000

一方で、手形が不渡りとなった場合は次の仕訳です。

(不渡りになり、普通預金からの振込みで決済した場合)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
不渡手形700,000受取手形700,000
裏書手形700,000普通預金700,000

対照勘定法を用いた仕訳方法|譲渡・決済・不渡り

企業によっては、「手形裏書義務」と「手形裏書義務見返」の2つの勘定を使って管理します。この方法が対照勘定法です。

手形を70万円分裏書して譲渡し、無事振出元が決済した場合は次の仕訳です。

(譲渡時)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
仕入700,000受取手形700,000
手形裏書義務見返700,000手形裏書義務700,000

(振出元の決済時)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
手形裏書義務700,000手形裏書義務見返700,000

一方で、手形が不渡りとなった場合は次の仕訳です。

(不渡りになり、普通預金からの振込みで決済した場合)

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
不渡手形700,000普通預金700,000
手形裏書義務700,000手形裏書義務見返700,000

【裏書手形のメリット・デメリット】

裏書手形のメリット:資金繰りのために有効

手形の現金化は期日までできないため、手形を保有していると資金繰りの悪化に繋がりやすいです。手形を裏書することで、資金繰りを良くできるでしょう。費用や手間が少ないのも特徴です。

①早期に資金化が可能

手形は期日が来るまで現金化できないことが大きなデメリットです。一般的には手形の振出しから現金化できるまでに2か月程度かかります。(以前は3~4か月でしたが、2022年下請法により60日以内とする要請がでています。)

手形を裏書譲渡をすれば、その全額をすぐに現金の代わりに使うことができます。
このように、資金繰りを良くする方法として、手形の譲渡を使う企業が多いです。

②譲渡に費用が発生しない

譲渡に費用が発生しないのも大きな特徴です。

譲渡元と譲渡先のみで取引が完結し、必要事項を記入して印鑑を押すだけです。そのため、金融機関や仲介人に支払う手数料が発生しません。

また、額面の金額についても、割引きされずに全額を使えます。
期日よりも前に、全額を支払いに充てられるのは大きなメリットと言えるでしょう。

③手間がかからず簡単に譲渡できる

譲渡に必要な手間が小さいというメリットもあります。

手形の譲渡にあたっては、裏書して印鑑を押すだけです。譲渡する方も譲渡される方も手間が小さく、短期間で取引を終えられます。

仕訳やルールも比較的簡単で、最低限の仕訳やルールを理解しておけば、ミスなく取引できるでしょう。

裏書手形のデメリット:金額や取引先を選ぶ

デメリットもあります。

一度受け取った手形の金額の変更ができないため調整が難しく、取引先によっては裏書手形の受け取りを認めていない場合もあります。そのため、裏書手形を使うのが適切か都度判断すると良いでしょう。

①記載された金額の変更は一切できない

記載されている金額の変更ができません。

例えば100万円分の手形が手元にある場合は、100万円のまとめた形でしか譲渡できません。取引したい金額が90万円や110万円だった場合は、別途調整が必要です。

通常、受取手形の金額と取引したい金額は異なるため、過不足の調整に手間が発生します。特に取引先に調整の手間が発生する場合は、断られてしまうケースもあるでしょう。

②取引先に敬遠される可能性がある

取引先に敬遠される可能性があります。

手形を譲渡された場合は、その手形は期日が来るまで現金にできず、資金繰りの悪化に繋がります。特に、手形の振出元や譲渡元の信用リスクが低い場合は、取引先は本当に支払いがされるのか不安になるでしょう。

近年手形の使用が減っている背景もあり、手形の取引を想定していない企業もあります。取引先に提案する場合は、手形の取引を認めているのかも確認するようにしましょう。

【裏書手形と混同しやすい手形】意味や使い方の違いを紹介

裏書手形と回し手形の違い

裏書手形と回し手形の意味は同じです。

譲渡の際に、譲渡元や日付等の情報を裏面に書くことから「裏書手形」と呼ばれています。また、受取手形を、振出元→振出先(譲渡元)→譲渡先と回していく様子から「回し手形」とも呼ばれます。

どちらも同じことを意味するため、混乱しないよう呼び方を社内や取引先との間で統一しておくと良いでしょう。

裏書手形と割引手形の違い

裏書手形とは、譲渡する手形を示します。裏に情報を書くことで、取引に使用できます。

一方で、割引手形とは、手元にある約束手形を期日よりも前に現金化する場合に、銀行に持ち込み現金を受け取る手形を指します。期日よりも前に現金にするため、その分受け取れる金額は小さくなるのが特徴です。

まとめ

裏書手形を使うことで、期日よりも前に現金と同じように支払いにあてられます。
当事者同士で行うことができ、かかる手間やコストが低いのもメリットです。

裏書手形を使う上では、定められた方法に沿って署名・日付の記入・押印を行う必要があります。間違えると無効となるため、注意が必要です。

また、取引先によっては手形の使用を認めていない場合もあり、事前に確認しておくと良いでしょう。

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oneplus編集部

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