総資本回転率とは? 計算公式や低い場合の原因をわかりやすく解説!

管理会計で会社の様々な数値を確認する際に、「総資本回転率ってなんだろう?」と手が止まった経験のある方は多いのではないでしょうか。

今回の記事では、下記内容をお伝えしていきます。

  • 総資本回転率の意味と計算方法
  • 業種別の目安と改善策
  • 会社の収益性を図る5つの回転率

最後まで読んで理解を深め、経営にうまく活かしていただけると幸いです。

目次

【総資本回転率とは】意味や単位・総資本回転期間との違いを紹介

総資本回転率とは|総資本の効率活用度が分かる指標

総資本回転率とは、企業が保有しているすべての資本(総資本=総資産)で、どれほどの売上を生み出すことができているかを表しています。言い換えれば、「会社が保有している総資本をどれだけ有効に活用できているのか」を示しているとも言えるでしょう。

例えば、X社は200万円の総資本で売上高1,000万円、Z社は1,000万円の総資本で売上高2,000万円と仮定します。売上高だけで比較すると「Z社>X社」です。しかし、X社はZ社の20%しかない総資産で、Z社の50%の売上を上げていることがわかります。このことから、総資本を有効に活用しているのは「X社>Z社」と言えるでしょう。

「総資本回転率」と「総資産回転率」は同じ指標

まず、貸借対照表の基本形を確認しましょう。図に表すと、下記になります。

「総資本」とは、貸借対照表でいう貸方の「負債+純資産」のことです。そしてこの合計値は、借方である資産(総資産)と同じであることが上図からもわかるのではないでしょうか。

「総資本=総資産」なので、総資本回転率と総資産回転率は全く同じ指標であると言うことができるのです。

「回転」の意味|事業活動におけるサイクルの単位          

例えば小売業を営んでいる企業であれば、「仕入(投資)→販促→販売(回収)」という事業活動におけるサイクルを日々回していることになります。

「仕入や販促で資本であるお金を使い、売上として入ってきたお金を再度仕入や販促に使って販売していく」という流れを繰り返して、事業活動を行っているのです。

「回転」とは、この一連のサイクルを意味しています。そしてサイクルがひと回りすることが「一回転」であり、総資本回転率の単位は「回転」で表します。

総資本回転期間とは|資産を回収するまでの日数を表す 

「回転率」以外に、「回転期間」という指標も存在します。総資本回転期間とは、会社が保有している総資本を回収するまでの期間のことです。

例えば、総資本が100万円で、年間の売上高が200万円の企業のケースで考えてみましょう。すると、この会社は半年間で総資本を回収できているので、総資本回転期間は0.5年(約180日)であることがわかります。回収期間が短いほど、先ほどの一連のサイクルを効率的に回すことができていると判断できるのです。

【総資本回転率の公式】例題を用いて計算方法を解説

総資本回転率の計算式|期中平均値の活用も解説          

総資本回転率の計算式は、「売上高÷総資本(回転)」となります。
また、より厳密に計算したい場合は、資本の「期中平均値」を用いることも可能です。総資本の期中平均値は、「(期首の総資本+期末の総資本)÷2」で求められます。

例えば、期首の総資本が80万円、期末の総資本が100万円の会社があると仮定しましょう。前者では総資本を100万円として計算しますが、後者では90万円(=180万円÷2)として計算されます。期中平均値を用いることで、より実情に近い数値が出てくるでしょう。

総資本回転率の求め方を例題から解説     

それでは「総資本が100万円、売上高が500万円のα社」「総資本が200万円、売上高が800万円のβ社」のケースを用いて、実際に総資本回転率を計算してみましょう。

α社の総資本回転率は、5回転(=売上高500万円÷総資本100万円)です。また、β社は4回転(=売上高800万円÷総資本200万円)と計算されます。
売上高はβ社の方が上ですが、回転数の多いα社の方が保有する資本を効率的に活用した経営ができていると言えるでしょう。

なお、先述の期中平均値(90万円)を用いてα社の総資本回転率を計算すると、5.5回転(売上高500万円÷総資本90万円)です。厳密に計算したい場合は、活用してみることをオススメします。

【総資本回転率の評価】業種別から分かる目安

総資本回転率の目安|「1.0」を上回っているか  

総資本回転率を計算して出てきた回転数の良し悪しを判断する目安として、一般的には「1.0」を上回っていれば良いと言えます。「1.0」を上回る数字であるほど、会社の資本を効率的に運用できている証拠なので望ましい状況です。

ただし、業種によって数値は大きく変わるので、この後紹介する業界平均値と自社の数値をまずは比較してみましょう。

総資本回転率の目安|業種別平均値を上回っているか     

下記に、業種別の平均値を示します。

【業種】【総資産回転率の平均値】
製造業1.03
建設業1.32
小売業1.71
サービス業1.23
情報通信業1.00
飲食・宿泊業1.03
卸売業1.70
不動産業0.31
運輸業1.18

参照元:中小企業実態基本調査

自社の回転率を計算したら、まずは同業種の平均値と比較してみましょう。もし下回っているようであれば、後述する原因と改善策を検討してみるのも良いかもしれません。

なお、不動産業のみ1.0を大きく下回っていますが、これは建物や土地等の高額な資産を保有していることが要因です。売上のほとんどは賃貸によるものなので、1年間という限られた期間では、総資本と比較してどうしても小さくなってしまいます。

【総資本回転率の分析】複数年で比較することが重要   

ここまで総資本回転率の計算方法と業種別の平均値をお伝えしてきましたが、分析をする際のポイントがあります。重要なのは、単年ではなく複数年で比較することです。

もし回転率が業種平均を下回っているのであれば、過去数年の流れをチェックすることで、その原因を特定しやすくなるでしょう。また、単年だけで見てしまうと、果たしてその数値が自社にとって良いのか悪いのか判断できません。なぜなら、その年だけ良かったり、悪かったりしている可能性が否定できないからです。過去と比較することで、より多くのことが見えてきます。

【総資本回転率が低い場合】2つの原因と改善策              

1.売上高の低下|原因追求・現状の見直しを行う 

総資本回転率が低い原因として、まず考えられるのは「売上高が少ない」もしくは「売上高の低下」です。計算式が「売上高÷総資本」なので、仮に総資本が同じであれば、売上高の減少は回転率の低下を招きます。

売上高の回復・増加を狙うため、現状の見直しを行い原因が何であるのかを突き止めましょう。出てきた要因に対して解決策を考え、実際に実行しながら売上UPを図ることが重要です。企業内部だけではなく、経営環境等の外部要因についても調べます。

例を挙げると、小売業であれば市場調査を行って需要の高い商品の仕入を行ってみることや、建設業であれば工程を短縮できないか検討してみることです。

2.活用のない資産がある|早期に売却を行う       

原因の2つ目として考えられるのは、活用していない「ムダな資産がある」ことです。
「ムダな資産」とは、当初の目的から外れてしまい、売上を生み出すことのできていない資産を意味します。

「これから売上を生み出すはず」と考えてしまいがちですが、特に経年と共に価値が減少してしまうような資産については、早期に売却することを検討しましょう。

また、小売業等で在庫を過剰に抱えてしまっている場合は、値下げしてでも販売したほうが良いかもしれません。

なお、業種に関係なく行えるのが「売掛金」の回収です。売掛金の減少は資産の減少を意味しますし、約定を超えて回収できていないものがないか、まずは確認してみましょう。

【総資本回転率の活用】利益率を求める計算式を分解して理解を深めよう

総資産利益率(ROA)を分解する

総資産利益率とは、企業が保有しているすべての資産を活用することで、どれだけの利益を生み出せたかを示しています。数値が高いほど、効率よく利益を出せていると判断可能です。計算式は、下記の通りです。

総資産利益率=利益/総資産

売上を含めることにより、さらに下記のように分解できます。

総資産利益率=利益/総資産
      =(利益/売上)×(売上/総資産)
      =売上利益率×総資産回転率

この式より、総資産回転率(=総資本回転率)を高めることは、総資産利益率の向上にも繋がることが見えてくるでしょう。

自己資本利益率(ROE)を分解する

自己資本利益率とは、自己資本を活用することで、どれだけの利益を生み出せたかを示しています。数値が高いほど、その期の業績が良かったと判断可能です。計算式は、下記の通りです。

自己資本利益率=利益/自己資本

売上を含めることにより、さらに下記のように分解できます。

自己資本利益率=利益/自己資本
      =(利益/売上)×(売上/自己資本)
      =(利益/売上)×{(売上/総資産)×(総資産/自己資本)}
      =売上利益率×総資産回転率×自己資本比率

この式より、総資産回転率(=総資本回転率)を高めることは、自己資本利益率の向上にも繋がることが見えてくるでしょう。

【総資産回転率の類似指標】会社の収益性を測る5つの回転率                

①流動資産回転率  

流動資産回転率は「売上高÷流動資産」で求めることができ、流動資産の効率性を示している指標です。流動資産は総資本の一部なので、流動資産回転率を高めることは総資本回転率の改善に繋がります。

なお、流動資産とは「一年以内に現金化ができる資産」であり、現金・預金、売掛金等のことです。

②固定資産回転率  

固定資産回転率は「売上高÷固定資産」で求めることができ、固定資産の効率性を示している指標です。固定資産は総資本の一部なので、固定資産回転率を高めることは総資本回転率の改善に繋がります。

なお、固定資産とは「一年以上保有したり使用する資産」のことで、機械設備や土地・建物、貸付金等です。

③経営資本回転率  

経営資本回転率は「売上高÷経営資本」で求めることができ、経営資本の効率性を示している指標です。総資本から、遊休資産のように経営活動に運用されていない(売上や利益を生み出すことに一切使われていない)資産を除外したものを経営資本と言います。

本来の企業活動で用いられている資産のみで計算されているので、より実情に沿った効率性を測れる指標と言えるでしょう。

④棚卸回転率         

棚卸回転率は「売上高÷棚卸資産額」で求めることができ、棚卸資産の効率性を示している指標です。「在庫回転率」と呼ばれることもあります。販売目的の商品在庫を多く抱える小売業や卸売業で、特に重要な指標になるでしょう。

なお、棚卸資産額は期首と期末の在庫額の平均値(期中平均値)で計算することが多いです。

⑤売上債権回転率  

売上債権回転率とは「売上高÷売上債権」で求めることができ、売上高に対する売上債権(売掛金、受取手形等)の比率を表しています。売上債権は回収までに一定期間を要するので、現金商売のように掛取引の少ない企業は数値が高くなるでしょう。

まとめ                  

総資本回転率について、あらゆる観点から紹介してきました。

  • 総資本(=総資産)をどれだけ効率的に活用しているかを示す指標である。
  • 期末時点ではなく、期首と期末の平均値を用いることで、より実情に合った数値を求めることができる。
  • 目安は、業種別平均を上回っていること。
  • 数値を上げるには「売上UP」「不要な資産の売却」が有効。
  • 自社に合った、会社の収益性を測る指標を押さえることが大切である。

上記のポイントについてしっかり覚えておきましょう。

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oneplus編集部

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