人手不足対策や業務効率化の手段として、近年アウトソーシングの活用への注目が集まっています。実際に、導入を検討していらっしゃる企業様も多いのではないでしょうか。
アウトソーシングは、バックオフィス業務と相性がよい手段です。中でも、経理のノンコア業務である請求書業務と親和性が高いです。
この記事では、請求書業務のアウトソーシングに焦点を当て、その種類とメリットについて解説します。
紙媒体の煩雑な請求書業務に苦しんでいる企業様にとって、必見の内容になっています。是非、最後までお付き合いください。
請求書業務のアウトソーシングとはどんなものか?
請求書にまつわる業務の一部または全部を外部に委託すること
請求書業務のアウトソーシングとは、下記の業務のうち一部またはすべてを外部に委託することを言います。
【請求書業務(発行側)】
- 請求の確定
- 請求書作成・発行
- 請求書の送付
- 入金確認
- 代金未回収の取引先への督促
【請求書業務(受領側)】
- 請求書の受領
- 請求内容の確認
- 会計処理(受け取り請求書の入力を含む)
- 送金手続き
- 請求書の保管(紙媒体もしくはスキャン電子化)
請求書が紙媒体であっても電子媒体であっても、非常に多くの業務があるのがわかります。これらの業務をアウトソーシングすることに注目が集まっているのは、なぜなのでしょうか。
近年、請求書業務でアウトソーシングが利用されている背景
請求書業務でアウトソーシングが利用されているのは、人手不足の中、限られた経営資源をコア業務に集中させたいという企業の思惑があるからです。
経理のコア業務は、「資金繰り・業績管理・予算管理・決算業務」等です。請求書業務は会社の維持には必要な業務ですが、利益に繋がらないノンコア業務と言えます。
ノンコア業務を一切なくすことはできない以上、企業はノンコア業務を極力効率化することが求められます。その経理業務効率化の手段として、アウトソーシングが利用されています。
請求書業務のアウトソーシングには主にどんな種類があるのか?
では、アウトソーシングにはどのような種類があるのでしょうか。代表的なものは、下記の3つです。
- 発送作業のみ(請求書発行側)
- 請求書作成から発送作業(請求書発行側)
- 受領請求書の入力・電子化(請求書受領側)
以下で詳しくみていきましょう。
1.できあがった請求書の発送作業を代行する形態
請求書業務のアウトソーシングとして思い浮かべやすいのが、できあがった請求書を発送する業務のみを委託することでしょう。
請求書発行は近年急速に電子化が進んでいますが、紙媒体での発行も根強く残っています。紙媒体での請求書発行は、請求書の送付等の作業が必要です。
請求書を代行業者に渡し、代行業者が請求書の封入・封緘・差出の業務を請け負います。
電子媒体での請求書発行であれば、発行した請求書を取引先にメールやシステム上で送付する作業がこの作業に当たります。
2.請求書の作成から発送作業までを代行する形態
請求書の発行に必要なデータを委託先に納入し、請求書の作成・発送までを代行してもらう形態もあります。
この形態の場合、請求書の作成・送付を電子媒体で行うサービスと紙媒体で行うサービス、ハイブリッドのサービスがあります。
3.受け取り請求書の入力、スキャンによる電子化
請求書受領側向けのアウトソーシングもあります。それは、紙媒体の請求書を電子化するサービスです。これには、2通りあります。
- 請求書をテキストデータ化
- 請求書をスキャンして画像データ化
委託できる内容はアウトソーシング先によって異なる
ここまでご紹介したように、一口に請求業務のアウトソーシングと言っても代行業者によって委託できる内容は異なります。また、得意とする業務にも差があります。
ですから、アウトソーシングを利用したいと考えるならば、下記3点を考慮して委託先を決定しましょう。
- 請求書業務のどのプロセスでどの程度経営資源を消耗しているか
- 請求書業務のどの範囲を委託するのか
- 取引先が紙媒体と電子媒体のどちらの請求書を望むのか
請求書業務をアウトソーシングして得られるメリット
業務の煩雑さが解消され効率化につながる
アウトソーシングを活用すれば、請求書業務の担当者が煩雑な業務から開放され、負担が軽減されるのは言うまでもありません。特に紙媒体の請求書を扱っているなら、なおさら効果が大きいでしょう。ノンコア業務を減らし、コア業務に集中できるので、業務が効率化されます。
また、代行業者には、独自のノウハウと業務に特化したシステムがあります。自社でこなすよりも効率的に、請求書業務を完了できる場合が多いです。
社員がより本質的に重要な業務に集中できる
請求書業務をアウトソーシングすれば、請求業務に割かれていた時間・労力を節約できます。そればかりか、節約できた経営資源を、本来のコア業務に集約化することが可能です。
経理が注力すべきは、「資金繰り・業績管理・予算管理・決算業務」等のコア業務です。注力すべきでない分野は、専門性のある業者に委託し、本質的に重要な業務に集中しましょう。
人的コストの削減と人材不足の解消が可能になる
請求書業務をアウトソーシングすれば、コスト削減・人材不足解消が実現できます。その理由は3つあります。
- 請求書業務を担当する人材の確保・育成が不要
- 自社で人材を抱えるより低コスト
- ノンコア業務に割かれる人材と時間が減る
人件費という固定費を変動費化し、コストを最適化できるのも魅力です。また、請求書業務用のシステムを持つ必要がなければ、システム関連費を抑えられます。
人為的ミスが大幅に減少する
人が作業する限り人為的ミスは発生し、作業が多いほどミスが増えます。工程数が多くなりがちな紙媒体の請求書を扱うと、ますますミスをする可能性が高くなります。
しかし、アウトソーシングを引き受ける代行業者の多くは、プロセスの多くをシステム化・自動化しているため、人為的ミスが起こる可能性が低いと言えます。
請求書発行をアウトソーシングする場合、代行業者に渡す請求データが正確でありさえすれば、正しい請求書が発行できるでしょう。
アウトソーシング先によってはデータの確認も即可能
アウトソーシング先のデータの管理方法によっては、データを即座に確認できます。それは、委託先が請求書データをクラウド上で管理している場合です。
取引先に、指定のウェブサイトにアクセスしてもらい、請求書をダウンロードしてもらうようなサービスの代行業者がそれにあたります。
請求書データを確認したい場合は、クラウドにアクセスすれば、時間と場所を選ばず請求書を確認することが可能です。
請求書業務のアウトソーシングで生じるデメリット
アウトソーシング自体のコストが生じる
サービスを利用する以上、コストが生じます。すべてをアウトソーシングすれば、一部を利用するよりも利用料金が上がるのは自明です。
コストが気になるのであれば、自社の状況に応じてアウトソーシングで委託する業務の幅を決めましょう。そのためには、自社の請求書業務において、どこでどの程度経営資源を消耗しているのかを把握することが必要です。
単に利用料金だけで判断せず、導入することで生まれるメリットやコスト削減効果を加味して判断しましょう。
社内に業務のノウハウ蓄積や熟練が進まなくなる
自社で請求書業務のすべてを担っていれば、社員が知識やノウハウを蓄積できます。しかし、業務をすべてアウトソーシングすると、業務を経験する機会が失われ、社内で熟練した人材が育たなくなる恐れがあります。
社内で知識やノウハウを持っていない状況は、アウトソーシングが利用できなくなった時に問題になります。自社で対応しようにも、一から手探りの状態になり業務品質が保てないでしょう。
また、他の業者を利用しようにも、知識やノウハウに乏しければ引継ぎも困難です。
イレギュラーな作業の発生に対応が遅れる場合も
アウトソーシングは、どうしてもイレギュラー対応に時間がかかります。契約上取り決めがないことや委託先では判断が難しいことは、どうしても自社での作業と確認が必要になるからです。また、代行業者は良くも悪くも自動化・システム化がされているので、融通が利きにくい傾向があります。
アウトソーシングしているからといって委託先任せにせず、自社でイレギュラー対応の担当者を設定したり、あらかじめ予見できるトラブルについて委託先と打ち合わせしたりしておくことが必要です。
情報漏洩のリスクが生じる
アウトソーシングするということは、当然ながら社内情報を委託先に預ける状態になります。社内情報を使用して外部との業務を行うので、少なからず情報漏洩のリスクがあることを承知しておきましょう。
委託先がどのようなセキュリティシステムを導入しているか、利用規約や契約書で個人情報の取り扱いに対してどのような扱いをしているか確認しておくことが重要です。
請求書アウトソーシングをおすすめしたいのはこんな企
請求書業務が煩雑で人的コストがかかっている
請求書業務は、特に紙媒体の場合、多くの手間と時間がかかります。発行だけでも、請求の確定や請求書作成・発行、請求書の送付、入金確認等の業務があります。
その上、金額や送付先に相違があればトラブルになりますので、ダブルチェック・トリプルチェックをする企業も多いでしょう。
請求金額の確定は社内でしかできなくとも、それ以外の業務の一部またはすべてを外注することを検討しましょう。代行会社はその専門性と独自のシステムによって効率的に作業を遂行してくれるはずです。
請求書関連のミスが増大している
ミスを減らしたいのであれば、手作業を減らし、自動化・システム化することが必要です。
手作業で請求業務をしている限り、どうしてもヒューマンエラーは起こります。特に請求書に記載する数量間違いや計算間違い、送付先相違はありがちなミスでしょう。
請求書業務の代行会社は、システムを用いて自動的に請求書業務をこなします。ですので、人為的ミスが発生しづらいです。このことから、請求書関連のミスが増えている企業にとって、アウトソーシングは有用な手段と言えます。
業務効率化やDX化に取り組み始めた
業務効率化やDX化をしたいのであれば、請求書業務をアウトソーシングしましょう。
請求書業務はノンコア業務です。経営資源を消耗していると企業が判断するなら、業務効率化のために導入を検討すべきです。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。経済産業省の定義を要約すると「企業がデータ・デジタル技術を活用して、製品やサービス等を変革させること」です。自社で電子化のノウハウ等がないのであれば、アウトソーシングによって専門性が高い企業に業務を任せた方が効率的です。
請求書の電子化を進めようとしている
請求書業務が非効率になってしまう最大の原因は、請求書が紙媒体だからと言えます。そのため、電子請求書を検討されている方も多いのではないでしょうか。
とは言え、紙媒体の請求書を扱ってきた経理には、電子化のノウハウがないことでしょう。一からノウハウや人材を育て、システムを整えるのは時間もお金もかかります。専門性が高い企業に、アウトソーシングという形で業務を任せた方が効率的です。
また、請求書の発行側だけではなく、受領側にもアウトソーシングがおすすめです。
アウトソーシング活用時に押さえたいポイント
アウトソーシングを活用したいと思った時、押えておきたいポイントは以下の通りです。
- 委託内容を明確にして事前に委託先との取り決めをすること
- 導入するサービスの対応可能範囲を事前に確認しておく
- セキュリティ対策の状況も確認する
- イレギュラーな作業への対応についても確認しておく
上記について、ひとつずつ確認していきましょう。
委託内容を明確にして事前に委託先との取り決めをすること
業務についてどの範囲まで委託するのかを明確にした上で、下記点について委託先と取り決めをしておきましょう。発送代行を例に、考えてみましょう。
【事前の取り決め】
- 業務の委託範囲
- 書類の受け渡し日
- 差出の予定日
- 利用料金
- 再発行手続きは自社か委託先か
- 返送された請求書があった場合はどうするか
- 封入する書類の点数・折り方
- イレギュラーな業務の発生時に窓口となる社員
トラブルの回避のため、事前の打ち合わせ・取り決めは重要です。
導入するサービスの対応可能範囲を事前に確認しておく
代行サービスの対応可能な業務範囲についても、事前に確認しておきましょう。利用業者のニーズに対して、柔軟に対応してくれる委託先であれば安心です。
- 自社の請求書フォーマットをそのまま使えるか
- 送付状等の請求書以外の書類を添付できるか
- 請求データを差し替えられるか
- 差出人返送分の対応
- 取り戻し請求ができるか(紙媒体)
- 一部を速達にできるか(紙媒体)
問題が発生してから困ってしまわないように、上記のようなことを事前に確認しておくことが重要です。
セキュリティ対策の状況も確認する
業務を外部に委託するということは、社内情報が外部にある状態です。当然、情報漏洩のリスクが高まります。ですので、委託先のセキュリティ対策の状況について確認することが必要です。
委託先がどのようなセキュリティシステムを導入しているか、利用規約や契約書で個人情報の取り扱いに対してどのような扱いをしているかも確認しておくことが必要です。セキュリティポリシーやプライバシーマーク導入企業かどうかもチェックしましょう。
イレギュラーな作業への対応についても確認しておく
様々な原因でイレギュラーは発生します。イレギュラーな作業は起こるという前提で、対応について委託先と打ち合わせしておきましょう。
アウトソーシングは企業同士の契約関係の上に成り立ちます。したがって、契約で取り決めた内容以外のイレギュラーな業務が発生した場合、委託先に対応してもらえない可能性があります。
その対策として、窓口となる人間を決めたり、イレギュラー作業発生時の手順について確認したりしておくことが必要です。
【まとめ】請求書のアウトソーシングを活用して業務効率化を目指そう
経理のコア業務は、資金繰り(キャッシュフロー管理)や業績管理、予算管理、決算業務等です。しかし、企業としては経理にコア業務に注力してもらいたくても、請求書業務のようなノンコア業務に時間と労力が割かれているのが現状でしょう。
そこで、おすすめしたいのがアウトソーシングです。ノンコア業務をアウトソーシングすることでコスト削減やミスの抑制、何より経理業務の効率化が可能です。
もし自社の経理社員が請求書業務に忙殺されているなら、アウトソーシングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。