企業の運営において、経営指標や取引の結果を管理する経理業務は重要な業務です。
しかし、経理業務は金銭を扱うことによる厳格なルールや、証拠書類として保存すべき書類やデータの多さから煩雑とされており、敷居の高い業務となっている傾向があります。
そこでこの記事では、経理業務がなぜ煩雑であるのか、そしてその原因を探ることにより、効率化できる方法を具体的に解説していきます。
経理業務にかかる手間を少なくしたいとお考えの方は、是非ご一読ください。
効率化を考える上でふまえたい経理業務の課題
始めに、経理業務は手順や必要な知識が多く、難しいと言われていますが、具体的にどの点が効率化を必要としているのでしょうか。
現代の経理業務を取り巻く環境や、一般的な経理業務担当者の必要条件、部署の体制を踏まえ、状況を整理していきましょう。
取引先の事情等により細かい書類対応が必要
まず、経理業務では取り扱う書類が多岐に渡ります。社内の業務においても、預金や小口現金の管理、売掛金・買掛金の管理のための書類が必要となりますが、より大変なのは、取引先とのやり取りに用いる書類です。
ひとつの取引の中においても、「見積書」、「注文書・請書」、「納品書」等を始めとした、
多種の書類が必要となります。また、取引先の都合により発行タイミングや提出する書類も異なるため、細かな書類の対応に追われることとなります。
ミスに注意が必要で煩雑な作業が多い
書類の内容チェックも、経理業務の稼働を増加させる一因です。記載内容、特に金額については作成者のミスにより、数字のズレや桁数の誤り等が発生します。
たとえ自身が作成していない書類でも、会計証拠書類として残る以上、ミスのチェックは必要になります。
また、会計システムへの投入についても、月次会計の扱いや業務毎の科目管理により、投入ミスが起こりえます。
このようにチェック項目が多くなるため、必然的にチェックに割く時間が増加します。
少人数体制によって属人化が進み業務が滞ることも
また、経理業務を担当している組織が少人数の場合は、ひとつの業務を担当する人員が
1人から2人程度となってしまい、業務が属人化してしまう場合もあります。
ある業務を担当する方が何らかの事情で勤務できなくなってしまった場合は、ほかの担当者は
手順や必要な書類、あるいは「なぜこの業務を行うのか」といった理解がないままその業務を実施することとなってしまい、結果、通常の何倍もの稼働がかかってしまいます。
個別ルールによる業務のブラックボックス化
業務の効率化を行う際には、業務フローを整理した上で、省略が可能な部分や注意が必要な部分を整理し、担当者間で共有することが一般的です。
しかし、経理業務においては、その専門性の高さから、業務の種類毎に法律や会計規則等の
細かいルールが存在し、業務手順を作成する際にもそのルールを織り込む必要があります。
しかし担当者以外にはそのルールの必要性が理解できないため、「なぜ存在しているか分からない」ルールが存在すると、おかしな手順に見えてしまい、その結果業務がブラックボックスと化してしまいます。
業務にあたって簿記や税務等の知識を必要とする
経理業務は、習得すべき知識が多いことも特徴です。日本の会計ではまず、「貸方、借方の合計値が同一となる」ことが原則となる簿記の知識が必要となり、その後それぞれの業務によってさらに必要な知識が分かれていきます。
例えば税務関連業務であれば、簿記の知識に加え、法人税や消費税といった個別の税目における知識を必要とするため、習得すべき知識が非常に多くなってしまいます。
経理業務や作業を効率化できる4つの工夫
小口現金を廃止して振込みを利用する
支店や営業所に払い出す小口現金は、現金そのものを扱うことに加え、使用用途が厳密には限定されていないため、管理が厳重となっています。
使用した際の経理処理に加え、現金そのものの日々の管理も加わるため、二重の管理が必要となります。
そこで、これまで小口現金を使用して行っていた消耗品等の調達は、費用の支払いを振込みにしてみましょう。
小口現金の管理を省くことが可能であることに加え、振込みであれば、消耗品等の調達機能の集約等の業務効率化を図ることが可能です。
領収書等の台紙への貼り付けを止めて封筒にまとめる
従業員の立替払いや交通費の清算時には貼り付ける台紙を廃止することも一案です。
経理担当社員の処理としては、立替清算時の振込処理の際に、証拠書類として領収証等の書類が必要となりますが、1件1件ごとに台紙に貼り付け、照合する必要はありません。
1週間から1カ月程度の一定期間で締めを行い、その期間内の証拠書類を封筒にまとめる
といった処理の仕方であれば、台紙への貼り付け分の稼働や、証拠書類の確認数を減らすことが可能です。
振込みに行く用事をまとめて頻度を減らす
金融機関への支払い処理は日中の受付時間が限られている上、処理自体も短時間では終わらないため、経理業務においても負担となっています。
各種支払いを社内でとりまとめ、金融機関での振込依頼日をあらかじめ設定してしまうことにより、個別の支払等で金融機関へ赴く回数を減らすことができます。
また、ネットバンキングを採用している金融機関であれば、自社にいながら口座の残高照会や振込みが可能であるため、導入を検討してみるのも良いでしょう。
消耗品等は業者に注文してまとめて請求してもらう
消耗品調達の集約も経理業務の効率化には重要な要素のひとつです。
筆記用具や印刷用紙等、消耗品の範囲は広いといえども、発注する頻度の高いものは限られています。月次等の一定期間で社内の消耗品の過不足をとりまとめ、発注を一度に集約することで、取引の機会を減らすことができます。
また、その際に請求を一本化してもらうことにより、消耗品調達に関する経理書類の数を減らす効果も得ることができます。
経理業務自体を変えて効率化する方法2つ
アウトソーシングにより自社で行う経理業務自体を減らす
経理業務の効率化を検討するためには、これまでの業務の枠組みを超える考えが必要です。
例えば、経理業務の一部をアウトソーシングする、という方法があります。
アウトソーシングする業務は請求書等の書類発行や入金消込等、業務自体は必要であるものの、煩雑かつ省略が難しい業務、もしくは、税務業務、特に税算定の業務等、非常に専門的かつミスが多大な影響を及ぼす業務が適していると考えられます。
アウトソーシングを実施している企業は担当する業務についてノウハウが蓄積しているため、自社よりも正確かつ効率的な業務遂行が期待できます。
会計システムや経理周りのDXサービスの導入で経理業務を変更・軽減する
会計システムや経理業務の電子化(=DX化)も経理業務の効率化において重要な要素です。
まず、会計システムには経理・会計のチェック機能や、請求書を始めとした各種書類の発行機能も付加されていることが多いため、書類作成の稼働を低減できます。
また、DXサービスを導入し、各種書類を電子化することも有効です。書類の紙依存から脱却することが可能であり、さらに情報を会社全体で共有できるため、業務プロセスの共有化を図ることができます。
会社全体で経理業務に取り組んで効率化する方法2つ
規模に合ったシステムを導入して業務時間の短縮をする
会計システム導入の際には、自社の規模や業種を考慮する必要があります。
例えば、什器の販売のみを行っている企業と、什器の取付工事等をセットで取り扱っている企業では、請求書に記載すべき情報が異なっています。
また、経理業務に割り当てている人員数も、会計システムを選ぶ基準となります。
業務遂行に必要な機能を整理し、過不足のない機能を持った会計システムを選ぶことが業務効率化には肝要です。
経理書類の電子化を進めて効率化・ペーパーレス化する
経理書類の電子化も全社単位で取り組むべき事項です。
経理業務の煩雑さの大きな要因のひとつに、サインや印鑑等が付された紙面でしか有効性が認められない書類があることが挙げられます。書類の電子化が実現できれば、取引先との受け渡し、保存等、大きな効率化が期待できます。
また、近年は電子帳簿保存法等、国全体として書類の電子化を推し進めています。
これまで必要だったサイン・印鑑等も電子化が進み、電子書類導入ハードルは大きく下がっています。
自社に合った経理業務の効率化のすすめ方・流れを紹介
ここまで、経理業務の効率化について解説を行いましたが、企業毎に経理業務の範囲・手順は大きく異なっています。
そこで、自社ではどのような経理効率化が可能なのか、その手順について、整理する方法を解説します。
1.経理業務すべてを時系列順に書き出す
まずは、経理業務の全体像を把握するため、経理に関わるすべての業務を時系列順に書き出してみましょう。
ここで必要なのは、工程を省略せずに実施している業務を不足なく書き出すことです。
経理業務の煩雑さのひとつの要因には、実施方法や手順が属人化し、ほかの担当者から見て何をやっているのか分からなくなっている、という要素があります。
初めて経理業務を経験する人間が、まずは「何をやっているのか」といった部分の全体像を理解できるような書き方を心がけましょう。
2.書き出した業務の工程を可視化する
次に、書き出した経理業務の手順を整理します。ここでは、それぞれの業務の相関性と、
個々の業務を「なぜこの業務を行う必要があるのか」といった点を意識し、それぞれの手順を繋げ、工程を可視化します。
業務の工程を可視化することによって、業務全体の構成を社内全体で共有し、経理担当者全員が業務を理解、実施できる状態にします。
このような状態にすることにより、業務の属人化を脱却し、会社全体で業務の見直しが可能です。
3.業務の問題点を見つけ見直しをする
経理業務の可視化が実現されたら、最後に業務そのものの見直しを行います。
複数の担当者により、現在の経理業務の工程が最適であるか、省略できる部分は無いか、
といった検討を行います。
現在の業務から改善案を発見した場合は、改めて経理担当者間で検討を行い、効果が期待できるようであれば、整理した工程を修正、業務に反映させましょう。
一連の業務整理・改善を行った後であれば、改善のサイクルを効率的に回すことができる体制が整ったと見て良いでしょう。
経理業務の効率化・見直しに便利なツール・フレームワーク
経理業務の効率化・見直しについては、業務が専門性が高く複雑であるため、整理が難しいという問題があります。すべてを自社で行った場合は、それだけで大きな稼働がかかってしまいます。
そこで、経理業務見直しにおいて、有効なツールやフレームワークを紹介していきます。
業務の可視化に役立つBPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)
経理業務可視化の整理の際には、BPMNを用いると大変便利です。
BPMNとはビジネス・プロセス・モデリング表記を指し、業務のフローを図や矢印等を用いたフローで作成する表記となります。
このBPMNのメリットは、業務の流れを図を用いたイメージで理解することが可能な点であり、文字のみの手順書に比べ、読み手側の理解度が高いことにあります。
また、作成者としても、文書へ落とし込むことが難しい手順を直感的に図示できるため、作成しやすいという点がメリットです。
4つの観点から見直しをするECRS(イクルス)の原則
業務効率化の際の着眼点には、ECRS(イクルス)の原則が有効です。
この原則は業務において、以下の4点を満たすか、といった点を判定します。
- Eliminate : 無くせないか(排除)
- Combine : 一緒にまとめられないか(結合)
- Rearrange : 順序に検討の余地は無いか(交換)
- Simplify : より単純にならないか(簡素化)
業務の効率化は、いかに既存の業務から工程を省略できるかにかかっています。
その点で、この原則はそれぞれ別個の視点から、効率化検討の材料発見の一助となります。
経理業務の効率化におすすめのサービス「oneplat」
これまでは経理業務の効率化全般について解説を行いましたが、請求書等の書類の
受領を始めとした経理業務についておすすめのサービス、「oneplat」を紹介させていただきます。
納品書や請求書の管理が煩雑だと感じている企業におすすめ
経理業務において、取引先から送付される紙媒体の納品書や請求書等、経理書類の管理に苦労した経験はないでしょうか。
紙媒体で発行される書類は、保存のための手間がかかる上、取引毎に請求書等が発行される場合があり、経費計上や会計システム入力時にも多くの文書を手元に用意する必要があります。
また、万が一、これらの書類に誤りを発見した場合も、取引先に再発行をしてもらうこともひと手間です。
oneplatなら日々の納品書や請求書が一元管理できる
そこでおすすめのサービスが、「oneplat」です。
このサービスは取引先のすべての納品書・請求書のデータを電子化して受け取ることができるという内容であり、さらに、請求内容の会計システムへの仕訳入力や、総合振込データの作成も自動で入力されます。
紙媒体の保存に加え、仕訳投入や振込内容のミスを未然に防ぐことができ、チェックの業務を省略できるため、経理業務の効率化に大きく寄与できることが見込まれるでしょう。
現在利用しているシステム・フローを変えることなく連携可能
また、この「oneplat」の大きな利点は、導入が容易である、という点にあります。
通常、新規の会計システムを導入する際は、既存の会計システムと連動させるために、
どちらかのサービスをカスタマイズする必要があります。
しかし「oneplat」は、自身と既存のサービスをカスタマイズなしで連携させることが可能であるため、通常必要な導入のための手間を大きく軽減することが可能です。
【まとめ】自社に合ったサービスを導入して経理業務の効率化を図ろう
さて、経理業務の効率化について全体の解説と、請求書等に関するサービス「oneplat」を紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
経理業務の効率化のためには、まず、自社の経理業務がどのような状態にあるか、といった状況把握が第一となり、次に効率化が可能な業務を見つけ出すことにあります。
そして、効率化が可能な業務に効果的なサービスを見つけることができれば、経理業務は今よりもずっと楽なものになるでしょう。