経理にとって重要な棚卸とは?棚卸を行う目的や手順を分かりやすく解説

企業が決算を迎えるにあたって、必要な業務に「棚卸」があります。
棚卸は商品の在庫数をカウントしていく作業ですが、経理担当者の場合はただ数えるだけでなく、意味合いまで把握して業務に携わることが大切です。

本記事では、経理担当者が知っておきたい棚卸の方法や手順について解説します。

棚卸は決算業務の1つ

まず、棚卸の基本的な内容を確認しておきます。
棚卸は、特定の期間において各企業が持つ商品や材料の数をカウントし、期末棚卸資産を決める業務を指します。
この期間は通常、決算前の3月31日や6月30日までの商品在庫を数えます。また、中には半期ごとに棚卸を実施する企業もありますが、基本的に「決められた期間内の在庫数」を確認する業務には変わりありません。

棚卸にはどんな目的がある?

先述した通り、棚卸には「期末棚卸資産を決める」という目的があります。
この期末棚卸資産とは、文字通り「決算日までに在庫として持っていた商品や材料」を指します。また、在庫数×価格で算出したものを「期末棚卸高」と言います。

いずれにせよ、棚卸は「どのくらい在庫を持っているか」を判断するために役立ちます。

また、企業によっては「商品を扱っていない」というケースもあります。その場合の棚卸は、ソフトウェアや事務用品等の在庫が棚卸の対象になります。

「決算日にどれくらいの資産があるか」を正確に把握するために、棚卸は欠かせない業務と言えます。

棚卸の方法と手順

企業の決算に欠かせない棚卸について、ここからは方法を確認していきましょう。
一口に棚卸と言っても、方法や手順が細かく定められており、基本に則って進めていきます。

棚卸は2つの方法で行う

まずは棚卸における2つの方法を確認します。棚卸には「実地棚卸」「帳簿棚卸」の2パターンがあります。

①実地棚卸

ひとつ目の実地棚卸は、現地で在庫数をカウントしていく方法です。
例えば、スーパーの場合は商品一覧リストを準備します。具体的には野菜や果物を扱う「青果」や、牛乳等を扱う「日配」等、各部門ごとに分かれて商品の数を数えていきます。

また、カウント対象は、売り場に並んでいる商品だけでなく、バックヤードに置いてある在庫も含めます。
実際に目で見てカウントするため、数の把握がしやすいですが、人員を多く割く点や営業時間に棚卸しを実施すると数が変化してしまう問題も考えられます。

②帳簿棚卸

2つ目の帳簿棚卸は、現地ではなくあくまで「帳簿上」のみでカウントする方法です。近年は仕入れや出庫をシステム活用する企業が多くなっています。

システムを活用すれば、「いつどれだけ入荷したか」「いつ何個売れたか」を把握できます。その機能を活用して棚卸を行います。

売り場に行かずとも数を把握できるため便利ですが、データ入力漏れがあると正確な数量を把握できない問題も考えられます。

棚卸の手順

次に、棚卸の手順を確認します。
実地棚卸の場合は以下の順に進めていくと、効率的に作業できます。

①スケジュールを関係者に周知
②商品の整理整頓
③カウント
④数量の入力および記帳

なお、帳簿棚卸の場合は2ステップで完了します。
①在庫を入出庫する際に在庫管理表に記載
②決算棚卸時に、在庫管理表のデータを元に資産を計算

実地棚卸の場合は、事前にカウントしやすい環境づくりがポイントです。また、帳簿棚卸の場合は入出庫の都度、確実に記帳することでミスを防げます。

棚卸の評価方法

次に、棚卸の表方法を確認します。現場の担当者であればここまで把握する必要性は低いですが、経理担当の場合は確実に理解しておきましょう。

方法としては「原価法」「低価法」の2つが挙げられます。

原価法

原価法は、該当する商品を購入した際の金額を採用する方法です。しかし、一口に原価法と言っても6つに分類されます。

①個別法
②先入先出法
③総平均法
④移動平均法
⑤売価還元法
⑥最終仕入原価法

各企業はこの中から自社に適した方法を採用します。しかし、一点注意事項があります。
企業が税務署に「棚卸資産の評価方法の届出」を提出していない場合は、最終仕入原価法での評価が求められます。経理担当者は事前に届け出を済ませてあるか確認しておきましょう。

低価法

低価法は、棚卸資産における「期末の時価」「帳簿価額」を比較して低い価格を採用する方法です。自社で取り扱っている商品の価格は、ニーズや品質により変化が起こります。そのため、期末に棚卸をして算出した価格が低ければ、その価格を反映させます。反対に、ニーズとともに価値が高まった場合は、帳簿価額の方が低くなるため、帳簿価額で確定します。

棚卸の仕訳とは

棚卸後は帳簿への記載を行います。しかし「どの科目を使うのか」と疑問を持ちますよね。
決算時の棚卸の仕訳は「期首商品棚卸高」「期末商品棚卸高」を用います。

具体的には、下記の通りです。

借方
貸方
期首商品棚卸高
商品

借方
貸方
商品
期末商品棚卸高

また、期首商品棚卸高と期末商品棚卸高は消費税の対象外となるため、注意が必要です。

棚卸で起きるトラブル

最後に、棚卸で起こりうるトラブルを3つ紹介します。また、改善方法まで紹介しますので、自社の棚卸業務に活用しましょう。

不良在庫が見つかった

棚卸をしていくと、かなりの確立で不良在庫を発見します。
「パッケージが破損していた」「パソコンのインクだけど、適合しないものだった」等、様々な不良在庫が想定されます。

この場合は、資産として計上できないため「棚卸資産評価損」として計上します。
しかし、できる限り不良在庫は減らしたいですよね。そのため、商品を入荷したり管理する時は、保管状態を適切にすること。また、消耗品に関しては、必要以上に購入しないことや購入前に商品の確認を徹底することで、防止可能です。

実地棚卸と帳簿棚卸の数が合わない

実地と帳簿の数量が一致しないケースは頻発します。特に実地の場合は人的ミスが発生しやすいため、なかなかゼロにはできません。さらに開店中に作業をする場合は、「お客さんが購入した」という問題もあります。

そのため、現場と帳簿上のデータを合わせるためには「閉店後の実施」「複数人で担当」等、事前対策を講じましょう。

時間がかかりすぎる

特に実地棚卸は作業が長時間にわたるケースが頻発します。スーパーやドラッグストアの場合は大型店にて「3時間かかった」「半日費やした」となることもあります。
また、時間を短縮しようと人員を増やしたところ、人件費が嵩むこともあります。

少しでも効率的に作業を進めるために、部門ごとに担当者を決めたり、数える段取りを事前に周知しておく必要があります。

まとめ:経理担当者は棚卸を理解して効率的に行おう

今回は棚卸業務について解説しました。
小売業等で行う棚卸の場合は、現場では数を数えるだけで済みます。しかし、経理担当の場合は、金額を確認した後に帳簿への記載まで行うこととなります。
そのため、現場の従業員よりも棚卸の意味合いや目的について把握しておくと良いでしょう。今回の記事を参考に、棚卸への理解を深め、正確な業務遂行に努めましょう。

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oneplus編集部

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