ゴルフ会員権の会計処理をする際には、取得金額等を資産計上すべきケースや、交際費として費用扱いするケース等、複数の注意すべき点あるのをご存じでしょうか。
また、複数の会員方式が存在し、それぞれの方式によって使用する勘定科目等も異なってくるので、それぞれの違いについて正しく理解することが必要です。
今回は、ゴルフ会員権の会計処理について、背景知識や仕訳例を含めてご紹介します。
ゴルフ会員権とは? 意味や勘定科目・対象を解説
一般客よりゴルフ場利用の優先度が高くなる「ゴルフ会員権」
ゴルフ会員権とは、企業や個人が会員制のゴルフ場の会員となり、優先してプレーすることができる権利を言います。
企業においては、取引先の接待や従業員の福利厚生等の目的でゴルフをプレーすることがあるでしょう。
ゴルフ会員権を所有することで、一般客より優先して利用することができるほか、各種割引やレストランの家族利用ができる等優遇サービスを受けられるメリットを享受できます。
ゴルフ会員権は決算にて「資産」に位置づけられる
ゴルフ会員権の会計上の取り扱いについて説明します。
まず、財務諸表上は貸借対照表の「資産」(固定資産)に位置付けられるのがポイントです。
貸借対照表における固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分かれているのですが、ゴルフ会員権は「投資その他の資産」に分類されます。
その処理方法によって、ゴルフ会員権および出資金、投資有価証券等の勘定科目を用います。
ゴルフ会員権に含まれるものとは
ゴルフ会員権として計上する金額には以下のような項目が含まれます。
- 入会のために支出した入会金等(入会金、会員権代金、名義書換料、仲介手数料等も含む)
- 預託保証金等
上記の項目はすべて「ゴルフ会員権」として計上する項目に含まれますので、誤って一部を支払手数料等で計上してしまわないように注意が必要です。
ただしプレー費用については「交際費」を使用して計上します。
ゴルフ会員権には4種類の会員方式がある
①日本のゴルフ場の9割以上が採用「預託金方式」
4つの方式の中でも最もメジャーで日本のゴルフ場の9割以上が採用している方式が「預託金方式」です。
預託金方式の場合は、一定の金額を預託金としてゴルフ場経営会社に預けることが、施設を優先的に利用する権利を得るためのひとつの条件となります。
なお、預けた預託金は、退会する時に返還請求することが可能です。つまり、預託金方式によって会員となることで、ゴルフ場の優先利権を得ると同時に、預託金の返還請求権を獲得します。
②入会と同時に株主となる「株主会員方式」
株主会員方式は歴史のあるゴルフクラブに多い方式です。ゴルフクラブ入会時に、一定金額を出資する仕組みで、会員はゴルフ場を経営する企業の株主となり、施設の優先利用権を獲得します。
会員は株主として会社経営に関与することができるのはもちろん、クラブ解散時には持株比率に応じて、クラブの残余財産の分配を受けることができる権利を有します。
資産と権利に高い正当性があるため、各方式の中でも社会的評価の高い方式と言えるでしょう。
なお、資産計上する際の勘定科目としては、「ゴルフ会員権」のほか、「出資金・投資有価証券」としても計上されます。
③ゴルフ会員かつ社団法人の社員となる「社団法人方式」
社団法人方式は霞ヶ関CC、東京GC、相模CCといった名高いコースに多く見られる方式であり、その特徴はゴルフ場経営と会員組織が分かれていないことです。会員は、ゴルフクラブの会員であると共に、社団法人の社員でもあり、非常に強い権利を持ちます。
社団法人は利益追求を目的としない公益法人であるため、会員権は一代限りもしくは直系親族にのみ継承されることがほとんどです。
④企業でも法人でもなく、日本では数少ない「任意団体」
4つの方式の中でも最もその数が少ないのが任意団体方式です。株式会社および社団法人といった企業や法人でもなく、同好の者が集まって作られる方式で、歴史のある会員制ゴルフ場にのみ見られます。
日本でこの方式を採用しているゴルフクラブはごく僅かですが、中でも有名なのが軽井沢ゴルフ倶楽部でしょう。
日本で最もプレーするのが難しいゴルフ場と言われ、会員数は準会員を含めても600人以下と言われています。
法人におけるゴルフ会員権の会計処理|取得から売却までの流れ
取得時|資産のうち適切な勘定科目に計上する
ゴルフ会員権を取得した際には、それぞれの方式に応じて適切な勘定科目を使って資産計上します。預託金方式と株主会員方式で勘定科目が異なり、前者の場合は「(ゴルフ)会員権」として、後者の場合は「投資有価証券」および「出資金」として計上します。
取得金額を計算する上でのポイントは、会員権代金のほか、年会費および名義書換料や仲介手数料等も含めて計算をすることです。
年会費や各種手数料等は費用とならず、資産として貸借対照表に計上することとされています。
なお取得形態によって個人への給与となる場合もあるため、下記のとおりまとめておきます。
取得形態ごとの処理
取得名義 | 計上対象 | 例外 |
---|---|---|
法人 | 資産 | 業務に関係しない場合は「給与(賞与)」に計上 (特定の従業員のプレー代金を支払った場合等) |
個人 | 給与 | 法人名義がない場合および業務上必要な場合→資産 |
運用時|利用した際の費用は交際費に計上する
ゴルフ会員権取得後に、取引先の接待等で実際にゴルフ場を使用した時に発生した費用は「交際費」として扱い費用計上します。
なお、この交際費には、接待等でのゴルフをプレーする場合に発生する費用以外に、ゴルフ会員の年会費およびラウンド終了後のレストランでの食事費用等も含まれます。
取得時は資産計上、運用時は費用計上と計上先が異なることを覚えておきましょう。
これは、運用時に発生する金額については「企業が事業運営を継続させるために必要とする費用」という目的を持ち、取得時に発生する金額とは性格が異なるためです。
売却または預託金等返還時|利益あるいは損失計上する
ゴルフ会員権を手放す時の会計処理について考えてみましょう。
他社への売却、または預託金方式において預託金等の返還を受ける場合が考えられます。売却する場合は、売却によって生じた損益を「ゴルフ会員権売却益(損)」等の勘定科目を用いて利益あるいは損失計上します。
また一定の期間が経過し、預託金等の返還請求をした場合は、返還された金額を利益として計上しましょう。
なお、ゴルフ場経営会社が再生認可を受けて預託金の一部が削られてしまった場合は、該当金額を貸倒損失として計上します。
ゴルフ会員権の仕訳(預託金方式)によくあるケース
1. ゴルフ会員権を取得し現金で支払った
預託金方式の場合は、取得したゴルフ会員権は固定資産の「投資その他の資産」へ資産計上します。
取得額には預託保証金のほか、入会のために支出した名義書換手数料等も含めた金額で資産計上することを覚えておきましょう。
まずは名義書換によって、ゴルフ会員権を取得した場合についてご紹介します。
例)名義書換によってゴルフ会員権を取得し、会員権代金600万円、預託保証金500万円、名義書換料50万円、仲介手数料30万円を支払った。
借方 | 貸方 |
---|---|
ゴルフ会員権 11,800,000 | 現金 11,800,000 |
※上記のうち、預託保証金500万円については不課税となるため、税抜方式で仕訳すると以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
ゴルフ会員権 5,400,000(会員権代金) | 現金 11,800,000 |
ゴルフ会員権 5,000,000(預託補償金)※不課税 | |
ゴルフ会員権 450,000(名義書換料) | |
ゴルフ会員権 270,000(仲介手数料) | |
仮払消費税 680,000 |
2. ゴルフクラブに入会し現金で支払った
新規募集しているゴルフ場の会員権を購入した場合の仕訳についてご紹介します。
例)ゴルフクラブに入会し、募集金額600万円(預託保証金500万円、入会金100万円)を支払った。
借方 | 貸方 |
---|---|
ゴルフ会員権 6,000,000 | 現金 6,000,000 |
※上記のうち、預託保証金500万円については不課税となります。
3. ゴルフ会員権を利用してゴルフ場でプレーした
会員権取得後のプレー費用は「交際費」で計上します。
なお、ラウンド終了後のレストランでの食事費用等や年会費についても交際費で処理しますので覚えておきましょう。
例)取引先接待のためAゴルフ場でプレーし、プレー代金10万円と、プレー後の食事代5万円を支払った。なお、当社はAゴルフ場のゴルフ会員権を取得している。
借方 | 貸方 |
---|---|
交際費 150,000 | 現金 150,000 |
プレー代金と食事代を合わせて交際費として計上。
4. 企業が特定の従業員に対してプレー代を支払った
法人名義でゴルフ場会員権を取得している場合で、業務に関係のない特定の従業員のプレー代を支払った場合は、交際費ではなく「給与」で計上します。
例)当社の従業員が、Aゴルフ場でプレーした代金5万円と、プレー後の食事代2万5千円を支払った。なお、当社はAゴルフ場のゴルフ会員権を取得している。
借方 | 貸方 |
---|---|
給与 75,000 | 現金 75,000 |
5. ゴルフ会員権の名義変更に伴い書換料金を支払った
会員権取得時の名義書換料は資産計上すると説明しましたが、取得後の名義変更については交際費として費用計上することができます。
例)当社はAゴルフ場のゴルフ会員権を取得している。この度、役員の変更に伴いAゴルフ場の名義を変更し、名義書換料として10万円を支払った。
借方 | 貸方 |
---|---|
交際費 100,000 | 現金 100,000 |
6. ゴルフ会員権を売却し「売却損」が発生した
売却する場合は、売却によって生じた損益を「ゴルフ会員権売却益(損)」等の勘定科目を用いて利益あるいは損失計上します。
例)所有するゴルフ会員権(帳簿価格500万円)を、400万円で売却した。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 4,000,000 | ゴルフ会員権 5,000,000 |
ゴルフ会員権売却損 1,000,000 |
ゴルフ会員権売却損は、一般的に特別損失として損益計算書に計上します。
ゴルフ会員権と消費税の関係|課税になる基準とは
ゴルフ会員権の中で課税対象になるもの
ゴルフ会員権の会計処理において注意が必要なのが、消費税法において課税となるか否かという点です。
まず、課税対象になる項目は会員権購入時の会員権代金、入会金、そして名義書換料金や仲介手数料等の各種手数料が挙げられます。
いずれの項目も、役務の提供の対価として支払う金額ですので、下記で紹介する預託保証金や出資金とは分けて考える必要があります。
ゴルフ会員権の中で課税対象にならないもの
一方、課税対象とならないものは、預託金方式において支払った預託保証金が挙げられます。
預託金は預り金であり、対価を得て行う処理とは性格が異なるため不課税となります。
また、株主会員方式における出資金も通常の出資金と同様不課税として取り扱います。
課税対象 | 不課税対象 |
---|---|
会員権代金、入会金、名義書換料金、仲介手数料等 | 預託保証金、出資金 |
経理におけるゴルフ会員権の知識まとめ
以上、ゴルフ会員権についての知識と会計処理のポイントについて説明をしました。特に日本企業で多い形式である預託金方式における取り扱いについて理解しておくことをおすすめします。
発生した金額が資産計上の対象となるのか、交際費として計上すべきなのかきちんと把握した上で処理を行いましょう。