経営管理において欠かせない数値のひとつに財務指標があります。
財務指標により企業の財務状況を知ることができ、会社をどう動かしていくかを検討する上での大変重要な材料です。
経営判断の材料となる財務指標とは?
財務指標は経営に携わる人は必ず知っておくべき指標です。
なぜなら、この財務指標で表される数値は、経営戦略の検討や経営判断において欠かせない材料だからです。
ここでは、経営判断の重要な材料となる「財務指標とは?」という基礎的な部分からご説明します。
会社の財務状況や業績を定量的・客観的に評価するために用いる指標
財務指標は、企業の財務状況を知るための数値で、%(パーセンテージ)で表されます。
そのため、企業規模や業種に関係なく、すべての企業の評価基準が平等なのが特徴です。
したがって、自社の状況把握だけでなく、取引先や競合他社の研究、そして比較にとても適しています。
財務指標は財務諸表等決算書の数値を用いて求められる
財務指標は、財務諸表(貸借対照表、損益計算書等、キャッシュフロー計算書)にある数値をもとに算出されます。
必要な項目の数値を決められた計算式に当てはめて、比率を算出するのです。
財務指標が有用とされ、重要視される理由
財務指標が経営管理において、重要とされるのには3つの理由があります。
ひとつめは、自社の状況を客観的なもので把握できるためです。
会社の経営状態は単に売上だけでなく、様々な要素、数値を加味することで表されます。
決められた数式に当てはめ、どの企業も平等に評価できる数値にすることで他社とも比較がしやすく、客観的な目線での状況把握が可能になるのです。
2つめは、他社と比較することで自社の強みや弱みの把握に利用できるからです。
先述の通り、財務指標はすべての業種を同じ評価基準でみることができます。
したがって、他社比較に最適であり、自社の長所・短所も一目でわかるということになります。
3つめは、中長期的な経営戦略の策定に役立てられるためです。
財務指標は、経営戦略の検討に、なくてはならないものです。
企業価値を高めていくには、中長期に渡って優れた経営・事業戦略を立て続けることが重要であり、実際にM&Aにおける企業価値の検討基準として、経営戦略の優劣があるとされています。
企業の将来を見据えた中長期的な経営戦略の検討および、企業価値を高めるため財務指標はなくてはならないものという点で、重要視されています。
財務指標には分析の方向性によって5つの分類がある
財務指標には「収益性」「安全性」「活動性」「生産性」「成長性」の5つの分析項目があります。
ここでは、それぞれの項目が一体どのようなものであり、どのようなポイントで企業を分析するのかを解説します。
1.財務指標の方向性1:収益性分析
ひとつめは「収益性分析」です。
収益性は、利益面でその会社を分析するもので、さらに言うと「利益を出す能力」がどれくらいあるのかを知るために算出するものです。
収益性分析とは企業が儲ける能力とその効率性を評価する分析
収益性分析には、前述した「利益を出す能力」ともうひとつ、「どれくらい効率良く利益を出せるか」という2つの視点があります。
より利益を出すには「効率性」も重要です。
効率が良ければ良くなるほど利益もあがるでしょう。
この2点を確認することで、より精密に企業の収益能力を知ることができます。
収益性分析で最低限おすすめしたい重要な財務指標
収益性分析においてまず押さえておくべき財務指標を2つご紹介します。
「売上高経常利益率」と「自己資本当期純利益率(ROE)」です。
まず、「売上高経常利益率」は、経常利益の割合も表すので、会社の収益性を表すための数値として、分かりやすくもあります。
また、実際に会社の収益を知る際によく使われる、収益面では最もスタンダードな財務指標といえるでしょう。
見方としては、比率が高ければ高いほど良いとされています。
そして「自己資本当期純利益率(ROE)」は、自己資本に対する当期純利益のパーセンテージを出すもので、経営効率の高さを示します。
会社の資本を効率よく運用できているかを知る材料となるものです。
「自己資本当期純利益率(ROE)」もパーセンテージが高ければ高いほど効率が良いと判断されます。
2.財務指標の方向性2:安全性分析
財務指標2つ目の分類は「安全性分析」です。
安全性分析は、借入金等の返済能力の度合いを示し、会社の金銭的な信用性ともいえるでしょう。
安全性分析とは企業が持つ借金等の支払い能力を評価する分析
会社を経営し、資金繰りを行うにあたっては、資金調達が重要であり、そのひとつの手段が借入です。
そして重要なのは、借りたお金を返済できるかどうかという点で、返済能力を数値で示すのが、安全性分析です。
安全性分析で最低限おすすめしたい重要な財務指標
企業の安全性を示す財務指標として知っておきたい指標は「流動比率」と「自己資本比率」です。
まず「流動比率」の要素には、買掛金、支払手形、短期借入金といった負債が含まれ、この短期で返済すべき負債の返済能力を示したものです。
見方は、計算の結果が200%を超えた場合は、返済能力に問題はないとみられます。
そしてもうひとつが「自己資本比率」です。
「自己資本比率」とは企業の安定性をみるためのもので、自己資本と他人資本(借入金、社債等)のバランスを検証します。
計算の結果が、30%以上で良いとされ、その企業は安定しているとみられます。
3.財務指標の方向性3:活動性分析
財務指標、3つ目の項目は「活動性」です。
資本や資産を有効に活用することで企業として売上をあげることができているかどうかを表すものです。資本・資産のほか、在庫数等も関係します。
活動性分析とは売上に対して資産活用しているかを評価する分析
企業が売上を上げるにあたって、資本をうまく活用しているかどうかを確認し、評価するための数値です。
資本をうまく活用させたり、在庫の入出庫の回転数があがるほど良いと判断されます。
活動性分析で最低限おすすめしたい重要な財務指標
活動性分析において知っておくべき財務指標は「総資本回転率」と「棚卸資産回転率」です。
まず、「総資本回転率」は、その名のとおり、企業が資本をどれくらい回転させているかを表すもので、算出される数値が大きければ大きいほど良いとされます。
2つ目は「棚卸資産回転率」です。
こちらは、社内に在庫として残っている商品を、きちんと回転させて出庫し、利用しているかを判断するために使用します。
古い在庫を持ち続ける事は良くありません。
こちらも数値が高いほど、回転がうまくいっていると判断され、良い評価となります。
4.財務指標の方向性4:生産性分析
財務指標の4つ目のポイントは「生産性分析」です。
生産性分析は、会社を成り立たせるため必要不可欠な「人、物、金」3つが売上に繋がっている割合を示すものです。
生産性分析とは経営資産(主に社員)の活用度合いを評価する分析
この生産性分析は、企業が売上とはまた別に付加価値を築くために、社員をどれだけ効率よく活用させることができているかを示します。
生産性分析で最低限おすすめしたい重要な財務指標
生産性分析でおすすめする財務指標は「労働生産性」と「労働分配性」です。
「労働生産性」とは、人手をどれだけ効率よく売上に繋げることができているかを表します。
つまり、より少ない人件費で売上を上げれば上げるほど生産性が高いと判断され、良い評価となります。
そして「労働分配性」は利益をどれだけ人件費に還元しているかを確認するための数値です。高すぎず低すぎない適切な分配率が良いとされ、パーセンテージとしては50%前後が良いとされています。
5.財務指標の方向性5:成長性分析
そして、5つ目の財務指標のポイントは「成長性分析」です。
こちらは分かりやすく、企業の成長性にポイントを置き、今後成長を続けていけるかどうかを検証するものです。
成長性分析とは企業の将来性・成長性を評価する分析
成長性を確認するポイントですので、企業の将来性といっても良いでしょう。
今後、成長の可能性があるのかどうか、確認したいときにはこの「成長性分析」で企業分析を行いましょう。
成長性分析で最低限おすすめしたい重要な財務指標
成長性分析のなかで、知っておきたい財務指標は「経常利益成長率」と「総資本成長率」です。
「経常利益成長率」は企業の利益に視点をおいたもので、利益を得るための能力の伸び率を分析するものです。
経常利益成長率比率は高ければ高いほど良いとされます。
「総資本成長率」は、1年間における資本の増加率を示しており、どれくらい会社の規模が大きくなったかをみるための指標です。
借入金も大事な資本の一種ですから、増えるとプラスの評価となります。
資本が大きくなっているということは、会社としても体力が付き、次の事業や、事業拡大に向けて大きなプラスとなり、結果として良い評価に繋がります。
もちろん総資本成長率も、パーセンテージが高いほど企業としてはプラスの評価です。
財務指標による評価を行う際のポイント
財務指標を使用するときには、できる限りたくさんの数値を算出し、より正確に分析を行うようにしましょう。
また、他社の数値も比較しながらも、参考程度という視点を忘れず、自社の目的意識をはっきりさせて、活用することが重要です。
そして、なによりも分析結果は課題解決や戦略の検討に繋げていきましょう。
結果から自社の強みと弱みを明確にし、強みはさらにのばし、弱みは改善するための材料として有効活用することが何より重要です。
「日次決算」により財務指標を常に観察することが重要
経営状況の変化に細かく柔軟に対応するためには「日次決算」が大切になります。
そして、その日次決算にこそ財務指標が活かせるのです。
日次決算とは1日単位で決算をすること
そもそも、日次決算とは日々決算業務を行うことで、迅速な経営判断のために行うものです。
日本の大企業でもユニクロやソフトバンクは日次決算を導入し、日々変化の激しい財務状況に迅速に対応できる体制をとっています。
それにより、曜日ごとの予算策定、在庫や仕入の調整を行い、曜日に適した予算計画を立てて実行しています。
財務指標の日次変化を追うことで現代の流動的な情勢に対応できる
日次決算で日々の財務状況を追い、その変化に対応していくことが重要ですが、その中でも買掛金や未払金の計上が一つの重要なポイントとなります。
流動的負債である買掛金・未払金計上を毎日行うことで、負債の状況、変動や予算の進捗を細かく把握し予算管理の精度を高めることが可能になるからです。
日々変化の激しい業種では、このような綿密な状況把握が結果として大きな収益、業績にも繋がっていくのです。
そのためには、日次決算を行い、日ごとの分析を積み重ね、日々の財務指標を追っていくことが重要となります。
まとめ
ここまで、財務指標と日次決算の重要性をご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
日々変わりゆく市場や財政状況に柔軟に対応するためには、まず財務指標の知識を身につけることが大変重要です。
自社に必要な指標をピックアップする等し、ポイントを抑えた形で財務指標の算出に取り組んでいくのも良いでしょう。