経理業務に携わったことがあれば、日々の業務で処理する書類の整理に頭を悩ませたことがあるのではないでしょうか。
取引先が多ければ多いほど、大量に出る紙の処理に追われてしまいます。
また、サイズやフォーマット・紙質が違うためにファイリングしにくいのも悩みの種です。
そこで注目していただきたいのが、納品書兼請求書。
この記事では、納品書兼請求書がどんなもので、利用すればなぜ管理を効率化できるのかを解説します。
また、メリットや書き方・発行時の注意点にも触れていますので参考にしてください。
経理にとって長年の課題である紙類の管理問題を解決するチャンスです。
納品書兼請求書とはどんなものか
納品書兼請求書とはどのようなものを指すのでしょう。
名前から、納品と請求の情報がひとつにまとまっているものだと推測できます。
確かに似たような項目が記載されている2つの伝票ですが、果たして用途を兼ねることができるのでしょうか。詳しく見ていきます。
そもそも納品書とは
納品書とは、商品を届けたときに一緒に渡す書類です。
いつ・何を・どのくらい(数量)・いくらで引き渡したのか、売り手と買い手で認識を統一するのに役立ちます。
実は法律では、納品書の発行を義務付けられていません。
しかし、発行すればお客様は品物が注文通りだったのかすぐに確認でき便利です。
納品書の発行で、お客様には安心感を与えられ、企業として信頼を得ることができます。
納品書について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
納品書を兼ねた請求書のこと
請求書は、資産の譲渡・貸し付けやサービスを提供した取引先から金銭を受領する目的で作成する伝票です。
経済取引が存在することを証明し、取引先の支払い漏れ等を防止する役割があります。
納品書兼請求書は先述した納品と請求の機能を1枚にまとめた伝票です。
別で請求書を送付する必要がなく、紙代や印刷代・送料等の経費削減に繋がります。
物ではなく形のないサービスの取引のケースでも便利です。
請求書について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
納品書兼請求書を発行できる場合
多くの場合は、納品書は商品を納めた都度発行し、請求書は月に1回等決められた期間に1回発行します。
発行頻度が違うので、1枚にまとめて発行するのは難しく感じられるでしょう。
ところが、ある特定の場合において発行が認められています。
それは、取引が一度きりの仕事の場合とデザインやイラスト制作等デジタルデータを扱う場合です。
一度きりの仕事のケース
商品やサービスの販売が一度きりの仕事の場合は、発行が可能です。
初めての取引で、次が決まっていない場合も使えることになります。
取引自体が複数回あっても、都度請求を行う場合も発行可能です。
納品と請求を同時に行えるため手間が省け、処理がスピーディーで簡潔だと経理担当者に人気です。
また、コストの削減が期待出来るため様々な業種で注目されています。
デザインやイラスト制作等のケース
物理的な納品物がない場合は、納品書を必要とされるケースが少ないです。
ところが、商品がなくても納品書の発行を希望される取引先もあります。
デジタルデータを納品するケースでは、納品書兼請求書が便利です。
デザインやイラスト制作等をデータで取引しているケースで使えます。
送付が一度で済むため処理が簡単になり、取引先の担当者にも喜ばれるでしょう。
納品書兼請求書の書き方・記載項目について
前述の通り、納品書には発行義務がないため、書き方や記載項目は自由です。
ですが、納品書兼請求書は法律で記載項目が決められています。
フォーマットは自由に決められますが、必須とされている5項目を網羅するよう注意しましょう。
書類を作成した者の氏名や名称
書類を作成した会社の社名・取引の担当者名を記載します。
部署名も書かれていると分かりやすいです。
また、住所や電話番号等の連絡先情報を記入します。
請求書に角印が押されているのを見かけることもありますが、必ずしも必要ではありません。
角印は企業が発行した正式な書類として信頼性を高め、契約上のトラブルを防ぐ効果がありますが、法律上必須ではないのです。
取引の年月日
取引年月日を記載します。
品物を直接手渡しする場合は、引渡日がそのまま取引年月日です。
一方、宅配便等を利用する場合は、出荷日と到着予定日が異なります。
交通上の問題で到着予定日に届かない可能性もあるので、出荷日を取引年月日に採用すると分かりやすいでしょう。
また、納品日に合わせて代金の支払日が決まる場合は、到着予定日を選択することが多いです。
どちらを記載しても構いませんが、常に統一しましょう。
取引の内容
取引内容を記載します。
取引した品物の品名や数量です。
品名は、自社・取引先共にわかりやすい名称を記載しましょう。
見積書に記載した名称と揃えると間違いを防げます。
製品番号や型番を記載すると、後から見返した時に便利です。
自社の管理番号を記載することもあります。
数量を具体的な数字で表すのが難しければ「一式」等と記載すれば良いでしょう。
取引の金額
単価や取引の合計金額を記載します。
単価×数量で計算された小計・消費税額・合計金額が基本です。
単価の記載が難しい場合は、省略しても構いません。
金額の頭に円記号「¥」を付けること・カンマを付けることで、改ざんを防げます。
忘れずに記入するようにしましょう。
また、軽減税率の対象品目には、その旨をわかりやすく記載します。
納品物が複数ある場合は、桁を揃えて羅列するとスッキリ見えるだけでなく、後から確認しやすく親切です。
書類を受け取る事業者の氏名や名称
いわゆる宛先です。
取引先の会社名や屋号、必要に応じて担当者の氏名を記載します。
書類を郵送する場合は、住所や電話番号を記載しておくと良いでしょう。
そのまま窓付き封筒に入れて送る企業も多いです。
必須ではないものの、書いておけば見直した時に便利な項目はほかにもあります。
- 納品番号
- 備考
- 捺印
等記載すると良いでしょう。
また、一言御礼メッセージを添えると丁寧な印象となり、次の取引に繋がりやすいです。
納品書兼請求書のメリット
納品書兼請求書の発行ケースは限られていますが、発行できれば大きなメリットがあります。
それは、経費の削減・業務の効率化・保管や管理のしやすさ等、経理担当者の悩みを解決できるメリットです。
メリットは、発行側だけでなく受領側にもあります。
発行者・受領者がどのようにメリットを感じられるか、確認していきましょう。
経費の削減につながる
代表的なメリットは経費の削減です。
発行側は、納品書と請求書をまとめることで、用紙代・印刷代の節約につながります。
また、郵送の場合は1通で発送できるので手間も郵送費も1回分です。
一方、受領側にも経費削減のメリットがあります。
受領した複数の伝票等をまとめて保管するファイルや箱が不要です。
その箱を事務所に保管しておけないために、倉庫を借りている場合もあるでしょう。
保管箱やスペースに掛かる経費の削減ができます。
業務の効率化ができる
2つの書類をひとつにまとめることにより、業務の効率化が期待できます。
発行側が自社で発行し送付している場合は、まとめれば発行の手間は1回です。
発行する数が多い大企業なら、作業がスムーズになり業務が大きく効率的になります。
受領者も減らせる作業があるでしょう。
例えば、請求書と納品書の内容をチェックしていた場合はその手間が大幅に削減されます。
項目が変わっていないか・数量は合っているか・金額に間違いがないか等の確認は時間がかかる作業です。
その手間がなくなると、経理担当者の負担を減らせるでしょう。
保管や管理がしやすくなる
納品書と請求書をひとつにまとめると、保管も管理も容易になります。
これは、受領側だけのメリットに感じられるかもしれません。
しかし、発行側も控えを自社で保管する企業も多く、紙類が減ることによる管理のしやすさは大きなメリットです。
どちらか一方の都合で、これまで別々に発行していた納品書と請求書をまとめるのはハードルが高く感じられますね。
ところが、発行側・受領側お互いに共通するメリットがあれば、導入のハードルはぐんと下がります。
納品書兼請求書を発行する時の注意点
一度きりの取引やデジタルデータの納品等、納品書兼請求書が発行できる場合でも、実際に発行する際にはいくつか注意するポイントがあります。
難しい内容ではありませんが、取引先によって異なる場合もあるので悩みやすく注意が必要です。
ここでは4つの注意点をご紹介します。
事前に取引先と確認しておけば、スムーズな発行ができるでしょう。
納品書兼請求書に記載する取引の年月日をいつにするのか
先述した通り、取引年月日は出荷日と到着予定日のどちらを記載しても構いません。
常に統一しておくことが大切です。
納品書兼請求書は法律で定められた大切な書類なので、取引先に確認して決めると間違いがありません。
手元に商品が届いた日によって支払日を決めることがあるため、到着予定日を取引年月日に選ぶ企業が多いです。
納品書兼請求書の送付先はどこにするのか
納品先と請求先が異なる場合は、送付先をどこにするか悩んでしまうこともあるでしょう。
一般的には、経理部門のある本社に送ることが多いです。
納品先に送る場合や、納品先・請求先とは異なる営業所に送るケースもあります。
あらかじめ、取引先に確認するようにしましょう。
商品と送付先が異なる場合は特に注意して発送してください。
納品書兼請求書を送付するタイミングはいつが良いのか
納品書兼請求書を送付するタイミングは、一般的に商品と同時です。
送り先が同じ場合は、商品に同封するようにしましょう。
納品書兼請求書だけが先に届き、品物が遅れるのは失礼に当たります。
商品と送付先が異なる場合は特に注意が必要です。
トラブル等があり商品とは異なるタイミングで届いてしまう場合は、必ず連絡をしてください。
納品書兼請求書に不必要な内容は記入しない
納品書兼請求書には、取引に関係のない不必要な内容は記入しないようにしましょう。
備考欄にお礼を書く程度なら構いません。
自社製品の広告を記載したりイラストを描いたりといった、納品物に関係のない情報を記載すれば信頼を失いかねません。
重要な連絡事項であっても商品と関係ない内容であれば、改めて別途送るようにしましょう。
【受領側】納品書兼請求書の保管方法
納品書兼請求書は請求書同様に保管が必要な書類です。
法人であれば、通常7年間または10年間保管します。
個人事業主の場合は7年間です。
ここでは、法人が納品書兼請求書を受領した場合の保管についてご紹介します。
納品書の保管は最低でも7年保管するのが無難
国税庁のサイトでは、7年間の保管が必要な帳簿書類等に納品書は明記されていません。
しかし、会社のルールとして最低でも3年間、長ければ10年間保管している会社もあります。
過去に遡って確認する可能性があるからです。
納品書は最低7年間の保管をおすすめします。
納品書兼請求書は保管期間が決まっている
納品書兼請求書は請求書として扱われるため、保管期間が10年間と決められています。
取引先から発行される様々な形・フォーマットの請求書を10年間もの間整理して保管しておくのは本当に大変です。
特に取引の多い会社であれば、10年間分の請求書の量は膨大になります。
社内で保管しきれないこともあるでしょう。
保管場所がなければ、倉庫等を利用して預けることになります。
そのため古い請求書で何か調査したい場合は、取り寄せることになり運送費がかかります。
【受領側】電子化は受領側の対応が重要
電子帳簿保存法に従い、受領した納品書兼請求書は要件を満たせば電子化が可能です。
電子帳簿保存法は2021年に改正され、税務署長の事前承認がなくなる等、抜本的な見直しが行われました。
電磁的記録による保存は、電子帳簿等保存・スキャナ保存と電子取引の3つに区分されます。
受領側の対応が重要となるスキャナ保存・電子取引について、電子帳簿保存制度で求められる要件を確認していきましょう。
スキャナ保存制度で求められる主な要件
受領した書類をスキャナで保存する場合に求められる主な要件は次の通りです。
- 受領から一定期間(2か月+7営業日)内に記録項目を入力しタイムスタンプを押す
- 解像度200bpi以上でカラーでの読み取り
- 大きさ情報の保存(縮小コピーのスキャンは認められません)
- 帳簿との相互関連性の確保
- 検索機能の確保
- ヴァージョン管理
なお、過去に遡って書類をスキャナ保存する場合は、適用届出書の提出が必要です。
スキャナで保存した後、紙の書類は廃棄できます。
ただし、間違いを防ぐためにも即時廃棄するのではなく、一定期間保管後に破棄すると安心です。
電子取引で求められる主な要件
電子取引は、取引情報を電磁的に授受する方式です。
例えば、請求書のPDFファイルを、電子メールに添付して受領した場合やインターネットからダウンロードした場合が該当します。
電子取引では、真実性や可視性を確保するために次の要件を満たす必要があります。
- 書類を受領したら遅滞なくタイムスタンプを押すこと
- 保存場所に操作マニュアルを備え付け書類を速やかに出力できる環境におくこと
電磁的記録の出力は、要件を満たしていれば画面印刷も可能です。
バックアップは要件には含まれていませんが、データを保存する場合はバックアップをしておくと良いでしょう。
【受領側】納品書兼請求書の管理を効率化する方法
納品書兼請求書は、経費削減・業務の効率化等メリットの多い文書です。
また、ペーパーレス化を進めることで、さらに管理がしやすくなります。
しかし、納品書兼請求書を導入するには、取引先との調整・担当者の業務変更等やるべきことが多くハードルが高いです。
oneplatなら納品・請求情報をデータで受け取れるため、一元管理が簡単に実現できます。
電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しているので、難しい知識が不要なのも嬉しいポイントです。
oneplatは、納品書や請求書のデータをひとつに取りまとめ、業務を効率化できるシステムです。
会計システムや販売管理システムとの連携も容易で、担当者の負担を減らせます。
初期導入費用が無料、サポートが受け放題なので無理なく始められると注目されています。
取引先への説明も代行してくれるので、自社スタッフへの負担がありません。
データで一元管理が行えるようになると、経理スタッフも在宅勤務ができるようになります。
【まとめ】納品兼請求書を一元管理して経理の効率化を目指そう
1円単位まで正確さが求められる経理にとって、業務の効率化は長年の課題です。
ダブルチェックを徹底しても、処理する書類が多ければミスの可能性はあります。
紙の書類が多く、担当者が不在だと業務が進まないことも。
納品書兼請求書をデータ化し一元管理すれば、経理業務の効率化が図れます。
リモートワークも簡単にできるようになり、優秀なスタッフが長く快適に働ける環境作りも可能です。
発行側も受領側も経費削減につながり、担当者の業務時間に余裕が出来れば、新しいビジネスチャンスが期待できるでしょう。