経営を行っていく上で、従業員に会社に必要なものを代払いで購入してもらったり、取引先が本来支払うべき経費を立替える機会等が度々あるのではないでしょうか。
今回の記事では、
- 立替払いが発生した時の領収書の取り扱い方
- 取引先の支払いを立替えた際の領収書のポイント
- 立替金の相殺時の注意点
- 立替時の領収書の管理方法について
等について、紹介していきます。
立替金が発生するパターン2つ
立替金が発生するのは、主に「社内」「取引先」の2つのパターンが考えられます。どんな場合に発生するのか、それぞれのケースを確認していきましょう。
取引先やお客様が支払うべき金銭を負担した場合
立替金の発生するパターンのひとつ目として、取引先が支払うべき金銭を代払いする場合があります。
例えば、遠方の取引先に出張で訪問する際の交通費や宿泊費です。後日請求することを求められている場合は、まずは自社で支払わなければいけません。
その他、取引先が支払うことを約束していた商品の配送料を代払いする場合等も、立替金が発生するケースになるでしょう。
従業員の保険料等を一時的に負担する場合
立替金が発生するのは取引先だけではなく、従業員との間でも発生する場合があります。
例えば何らかの理由で従業員が休職している時、給与は支給されなくても社会保険料は発生するので、会社が代わりに立替えておくケースが該当するでしょう。
また社員旅行の費用を会社が一括で支払い、後日従業員から徴収していくケースも立替金として処理されることになります。
取引先から立替金の回収のときには領収書が必要
取引先の経費を立替える場合は支払先から領収書をもらう
取引先の経費を立替えて支払うことになった場合は、代金の支払先から領収書をもらうようにしましょう。その際、宛名は自社ではなく、本来支払うべき取引先にします。事前にどのように記載してもらうのがいいか、確認しておくと良いかもしれません。
領収書なしだと取引先に立替金を請求できなくなる
もし領収書を受け取ることを失念した場合や紛失してしまった場合は、原則取引先に請求できません。取引先は証憑のない経理処理をすることができないからです。
しかし、その立替えたことを客観的に証明できるものを添付し取引先に請求書を発行することで代用できないか取引先に相談することで支払いを受けることができることもあります。
立替金の領収書は必ず用意しましょう。
立替金を回収してから領収書を渡す
もし取引先の立替えをした場合は、その分が入金されてから領収書を先方に渡すようにしましょう。
先に領収書を渡してしまうと、回収できなくなってしまう可能性が出てくるかもしれないからです。また渡してしまった後は原本が手元になくなるため、自社の立替金の経理処理はコピーを証憑として保管しましょう。
従業員が備品等を立替えて購入した場合の領収書
従業員が会社のものを立替えて購入した時は「立替金」ではない
従業員が、例えば会社の備品等を購入する際に立替えておくケースが出てくるのではないでしょうか。その場合は、経理処理する際の科目は「立替金」ではなく「未払金」になります。
立替金を使うのは、会社が取引先や従業員の代わりに支払いを行った場合のみなので、注意しましょう。
購入者は会社宛の領収書をもらう
従業員が会社の経費を立替えて支払った場合は、宛名は従業員自身の名前にはせず、会社宛として領収書を作成してもらうようにします。誤って個人名で領収書をもらうことがないように、社内でしっかり共有しておくようにしましょう。
会社から立替え分を受け取る際は領収書を提出する
従業員が会社の経費を立替えた場合は、経費精算書等の提出を求めることが多いのではないでしょうか。その際、領収書も一緒に提出してもらうようにしましょう。
立替え時に支払ったのが従業員だとしても、実際の支払主は会社です。また税務調査が入った場合は、会社宛の領収書ではなく個人宛になっていると指摘される可能性が高まってしまいます。
取引先の経費を立替えた場合にもらう領収書についてポイント6つ
取引先の経費を立替えた場合は、通常時よりも領収書を受け取る時に注意しなければならないことがあります。立替分の回収をした後の領収書の取り扱いも含めて、知っておくべきポイントを6つ紹介していきます。
①領収書の発行者は通常通り金銭を受け取ったお店や会社
取引先に代わって支払いを行った場合でも、領収書の発行者は「金銭を受け取ったお店や会社」です。これは通常時と変わることはありません。
また取引先から立替えた分の金銭を受け取る際に、こちらからあらためて領収書を発行する必要もないことを覚えておきましょう。
②領収書の宛名は本来負担すべき人や会社
次に立替え時に領収書の宛名を誰にするべきかですが、これは「本来経費を負担するべき人や会社」を記載します。なぜなら、領収書は最終的に「本来経費を負担するべき人や会社」に渡すからです。
お金を立替えたあなたの会社にするわけではないので、その点は注意しましょう。また宛名は「上様」や「株式会社の省略」もNGです。
③領収書の明細や金額は支払った内容通りに
領収書の明細や金額について、支払った内容通りに記載してもらいましょう。自社で何かを購入した場合にもらう領収書と、変わることはありません。
もし領収書以外に明細等の何か資料を受け取った場合は、廃棄することなく一緒に先方に渡すようにしましょう。
④領収書を最初に受け取るのは立替えた人
領収書を受け取ることができるのは、実際に代金の支払いを行った立替えた人です。「本来支払いを行うべき人や会社」は受け取れないので、忘れることのないように注意しましょう。
⑤領収書を最終的に受け取るのは本来支払うべき人
領収書を最終的に受け取り、保管しておくのは「本来支払うべき人や会社」です。立替えていた金銭を回収することができたら、領収書を渡しましょう。
ただし、回収前に渡さないことをおすすめします。それによって、支払いがされなくなってしまうことを避けるためです。
また経理を行う上での証拠書類として残しておきたい場合は、渡す前にコピーを取っておくようにしましょう。
⑥収入印紙も通常通り必要
立替えとして支払いを行った場合でも、50,000円以上であれば通常通り収入印紙を貼る必要があります。不要であると判断しないように注意しましょう。
立替金の領収書の書き方は宛名と最終的に受け取る人に注意して
立替え時に領収書を受け取る際に注意するべきポイントは、下記になります。
- 領収書の発行者は「金銭を受け取ったお店や会社」であり、こちらで別途領収書を作成する必要はない。
- 領収書の宛名は支払った人でなく、「本来経費を負担するべき人や会社」を記載する。
- 領収書の明細や金額は、支払った内容通りに記載する。
- 領収書を受け取らないと取引先から立替えた金額の支払いを受けられないので、忘れないように注意する。
- 領収書を最終的に受け取るべきなのは「本来経費を負担するべき人や会社」なので、立替えた費用が回収できたら先方に渡す。
- 必要があれば収入印紙を貼ることも忘れないように注意する。
特に宛名を先方にすること、費用の回収ができたら領収書は先方に渡すことを忘れないようにしましょう。
立替金の相殺の領収書のポイント2つ
取引先との間に立替金が発生した場合は、売掛金や買掛金との相殺を行う場面が出てくるのではないでしょうか。この章では相殺が必要になった時の領収書の取り扱いについて、押さえておくべきポイントを紹介します。
①相殺の場合は但し書きが必須である
取引先が本来支払うべき経費の立替えを行った場合は、その分を回収するのではなく、既存の取引と相殺することがあるかもしれません。このようなケースで領収書を発行する場合は、但し書きに「相殺金」と記載するようにしましょう。
なお、売掛金等の債権や買掛金等の債務で相殺を行う場合は、両社ともに領収書を発行して交換する必要があります。
②但し書きを明記することで収入印紙は不要になる
但し書きに「相殺金」と明記することで、収入印紙が不要になります。しかも金額は一切関係ないので、仮に数千万円の領収書であっても必要ないのです。
なお先述の債権債務の相殺の場合だけではなく、両社ともに保有している立替金の相殺等でも、同様に但し書きに「相殺金」と明記すれば収入印紙は不要になります。
立替金領収書の管理方法とポイント
取引先の経費を立替えた場合は、回収するまで領収書を社内でどう管理していくかが重要になってきます。管理方法と回収後の領収書の取り扱いについて、お伝えしていきます。
経費精算書で管理をする
例えば取引先の経費を立替えた場合は、金銭を回収する際に領収書が必要になるので、どう管理していくかが大切になってきます。一般的には、経費精算書で管理するケースが多いでしょう。
経費精算書に記載しておくと便利な項目は、下記の通りです。
- 支払いを立替えた年月日
- 支払った内容(商品やサービス名等、詳細に)
- 代金の支払先(店名や企業名等)
- 支払った金額
なお処理を行うのは「支払いを立替えた日」ではなく、立替えた金額を「支払ったもしくは回収した日付」で行う場合が多いことも覚えておきましょう。
領収書の原本は取引先へ/立替えた会社はコピーの保管でもOK
社内では経費精算書を作成して管理していく領収書ですが、こちら側が先方の支払いを立替えたケースで、その後の流れを確認していきます。
立替えていた金銭の回収が完了したら、領収書の原本は取引先に渡しましょう。繰り返しになりますが、回収前に渡すことがないように注意が必要です。また領収書の原本を保有してくことはできないので、立替えた側としてはコピーの保管をしておけば問題ありません。必要に応じて対応していきましょう。
立替金の多用は避けるべき
立替金の経理処理は工数がかかる
ここまで立替金についてお伝えしてきましたが、多用は避けるべきでしょう。
まず従業員が会社の経費を立替えるケースについては、領収書の受け取り忘れや宛名の間違い等が起こってしまうかもしれません。経費として計上することはできるかもしれませんが、税務調査時に指摘される可能性が高いでしょう。
また取引先の支払いを立替える場合は、社内で行わなければならない処理はもちろんですが、回収までに気を使わなくてはいけなくなります。
このように立替金の経理処理は工数がかかってしまうので、なるべく多用しないように注意していきましょう。
健全な経営のためにも立替金は最小限に
先述の通り、立替金の処理には工数がかかります。そして工数が増えることにより、ミスを犯してしまう可能性も高まってしまうでしょう。経理について正確に業務を行っていくことが、健全な経営を進めていくためには欠かせません。
また取引先の立替えを行う場合は、金額が大きくなると、もし回収ができなくなってしまった時のリスクを抱えることになってしまいます。
立替金の領収書についてまとめ
今回の記事では「立替金の領収書が必要なケース」「立替金領収書の取り扱い時のポイントや管理方法」等について、お伝えしてきました。
社内だけでも取引先との間でも、立替金が発生することで通常よりも手間がかかりますし、その分ミスが起きる可能性が高まるでしょう。取引先との間に発生した場合は、さらに回収という負担まで出てきます。
ここまで紹介した立替金の処理に関するポイントは押さえた上で、なるべく立替金を発生させない経営を行っていくように対応していきましょう。