税務調査が企業に来る時期は? 確率や調査対象・対応方法まで紹介

税務調査と聞くと、思わず身構えてしまう方もいるのではないでしょうか。何となく怖いイメージのある税務調査ですが、税金を正しく申告・納付していればそれほど恐れるものではありません。また、税務調査の概要を把握しておけば、怖がり過ぎることもなくなるでしょう。

本記事では、税務調査がどのようなものかや調査に入られやすい企業の特徴、調査の流れや留意しておきたい勘定科目について解説しています。

税務調査の対象は無作為に選ばれるため、いつ自社に税務調査が入っても不思議ではありません。いざというときに焦らずにすむように、是非本記事を通して税務調査について学んでいきましょう。

税務調査とはなにか? 来る時期・確率の傾向を紹介

税務調査とは「適切に税額を申告しているか」を確認する調査

税務調査とは、税務申告の内容に問題がないかどうかを確認するために実施される調査で、国税庁が管轄する税務署等が実施します。

法人税や所得税をはじめとする税金の多くは、納税者が税額を計算して申告・納付を行います(申告納税制度)。税務申告の中には、故意ではなくとも申告に漏れがあったり計算ミスをしていたりすることもあります。また、作為的に虚偽の申告をしていたり不正をしていたりする可能性があるものです。そのため、申告納税制度の公平性と正確性を維持することを目的として、申告内容に誤りがないか・妥当性があるかどうかを税務調査でチェックします。

申告内容に問題があった場合は、基本的に修正申告を行い不足していた税額や延滞税、過少申告加算税等を納付しなければなりません。なお、悪質な脱税だと見なされれば、重加算税が課されます。

では、税務調査はいつ行われるものなのでしょうか。

税務調査が来る時期に明確な決まりはない

調査の時期に決まりはありません。ただし、4月から5月頃と7月から11月頃に行われることが多い傾向です。
加えて、税務調査の担当部署が忙しくなる時期(決算が多い時期・人事異動の時期等)には、調査が行われることが少ないとされています。

では、実際に年間どのくらいの件数の調査が行われ、どのくらいの確率で調査に入られるのでしょうか。

税務調査が企業に来る確率は? 国税庁の調査実績から算出

調査が入る確率は、法人なら3%と言われています。申告書等の分析・検討を行い、企業規模の大きい法人であったり、悪質な不正計算等が行われていると考えられたりするような調査必要度の高い法人を中心として行われます。

国税庁の公表によれば、令和2年には2万5,000件の法人について実地調査が行われました。新型コロナウイルスの影響により、令和元年の7万6,000件に比べて調査件数は減少しています。しかし、調査1件当たりの追徴税額は、令和元年の約2.5倍である780万6,000円に増加しています。

詳しくは後述しますが、調査されやすい業種や特徴というものがありますので、調査に入られるかどうかはケースバイケースです。

調査というと「マルサの女」のような脱税の摘発をイメージされる方もいるかと思います。しかし、調査の大半は正しい申告がされているかどうかの確認です。次は、税務調査にどのような種類があるかについてご説明します。

税務調査の種類は2つ|「強制」と「任意」がある

事前連絡のない「強制調査」

「マルサ」として知られる国税局査察部が行うのが強制調査です。事前連絡はありません。脱税の疑いがある納税者に対して、裁判所の令状を取得した上で強制的に実施します。国税局査察部には納税に関連する資料を押収できる権限があるため、納税者は調査を拒否することができません。

何でもかんでも強制調査をするということはなく、「脱税額が1億円超」・「悪質な隠蔽工作がある」というような場合に限られているのが特徴です。

事前連絡がある「任意調査」

税務調査の8割ほどに該当するのが、任意調査です。事前に電話もしくは文書で連絡があります。この連絡は1週間以上前にあることが多いようです。提示される日程は、都合が悪ければ変更ができます。

調査を行うのは、税務調査官(税務署の職員)です。税務調査官には「質問検査権」があります。正当な理由なく書類の提示等の要求に従わなかったり質問を黙秘したり、虚偽の陳述をしたりしてはいけません。

基本的に事前に連絡がありますが、現金商売等に対して「ありのままの事業実態等」を確認する必要がある場合等は、抜き打ちで調査することがあります。

では、調査されやすい企業とはどのような特徴があるのでしょうか。

税務調査が入りやすい企業とは? 10年以上来ない場合も

創業して10年以上経つのに一度も調査が行われたことがない企業もあれば、数度調査があったという企業もあります。税務調査に入られやすい企業の特徴とは、どのようなものでしょうか。

税務調査は国税管理(KSK)というシステムを使って申告されたデータを入力し、異常値が検出された企業が候補となります。

また、以下のような調査必要度が高い企業を中心に実施されます。

  • 企業規模・売上が大きい
  • 数字の変動が激しい
  • 同規模の同業他社と比較して利益率が極端に低い
  • 狙われやすい業種(現金商売・申告漏れが高額な業種)
  • 過去に不正があった(特に重加算税が課された場合)

大企業であれば5年に1度の頻度で、過去に不正があり要調査法人に分類されると、3年に1度の頻度で定期的に調査が行われる傾向にあります。消費税の還付を受けた企業も調査の対象となりやすいです。また、建設業や経営コンサルタント業のような申告漏れが高額な業種であれば調査されやすいでしょう。

【補足】
現金商売:
商品・サービスの売上代金を即時に現金で回収する商売のこと。小売業・飲食店・美容院等が該当します。取引の証拠が残りにくく、売上を誤魔化しやすいです。そのため、調査されやすい傾向にあります。

では、具体的な税務調査の流れを見ていきましょう。

実際に税務調査が行われる流れと対応方法~任意調査の場合~

1. 税務署からの連絡を受け日程の調整を行う

事前に税務署から納税者・顧問税理士(※)に、原則として電話もしくは文書で連絡があります。提示された日程は、都合が悪ければ変更が可能です。企業側の都合に合わせてもらうことが可能で、繁忙期である等の事情があれば2、3週間先にすることもあります。

事前の連絡では、以下のことが通知されるのが一般的です。

  • 調査の開始日時
  • 調査の実施場所
  • 調査の目的
  • 調査の対象となる税目
  • 調査の対象期間 等

税理士に立ち会ってもらうなら、税理士とも日程を調整しましょう。顧問の税理士がおらず調査に心配があるのなら、税務調査に秀でた税理士を探しておくと安心です。

(※)申告書の提出の際に税務代理権限証書を添付している必要があります。

2. 税務調査に必要な書類を揃える

帳簿・領収書・請求書といった書類を用意します。事前連絡で指示があれば、それに該当するものは最低限準備しておきましょう。

税務調査は最低でも過去3年分の調査が行われるのが一般的です。悪質だと思われている場合は、過去7年間の書類を確認されます。よって、下記の書類について、過去の証拠資料がきちんと保存されているかどうか確認しておくことが大切です。

【税務調査に必要な書類の一例】

  • 会社経歴書
  • 企業の組織図
  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 仕訳日記帳
  • 領収書
  • 請求書
  • 納品書
  • 見積書
  • 取引先との契約書
  • 棚卸帳
  • 手形帳
  • 事業用の通帳類 等

顧問税理士と相談しながら、準備をしておくと良いでしょう。必要そうな書類や調査時に質問を受けそうな事項、税務署と意見の食い違いが起こりそうな項目等について確認しておくと余裕を持って調査に臨めるのではないでしょうか。

3. 実地調査(訪問・質問・指摘)が実施される

税務調査当日は、税務調査官が企業を訪問して実地で調査をします。ヒアリングや質問を交えつつ、書類をチェックするのが一般的です。

税務調査官には「質問検査権」がありますので、質問をされた場合は虚偽なく正直に回答し、提出・提示を求められた書類があれば要求に従います。違反すれば、罰則があるので注意してください。

その場で回答できないことは、後日きちんと調べてから回答しても問題はありません。曖昧な回答は、税務調査官に不信感を与えかねません。

状況により、税務調査官が預かり証を交付して書類を持ち帰ることがあります。調査が完了すれば書類は返却されますので、その際は預かり証の紛失に留意しましょう。

4. 調査結果の連絡を受ける(是認・修正・更正)

税務調査で何も問題がなければ「申告是認」となり、誤りを指摘された場合は「修正申告」か「更正の請求」を行います。

  • 申告是認:申告内容に問題がない
  • 修正申告:税務署の指摘事項を基に、過去に提出した申告書を正しい内容に修正
  • 更正の請求:税務署へ不服を申し立て、再調査を請求

基本的に申告内容に問題のある企業が調査対象となるので、税務調査官から問題点の指摘は免れません。その場合は修正申告を行い、追徴課税を受けます。場合によっては、過少申告加算税や重加算税といった加算税も課せられます。

税務調査ではどこまで調べるの? 特に押さえたい要点6つ

①売上

売上の計上漏れ(繰り延べ)・売上除外がないかどうか等を見られます。

適正な期間損益計算の観点から、当期の売上が翌期に計上されていないかといった点をチェックします。また、意図的に売上を隠していないかどうかも調査のポイントです。

②仕入

仕入の繰上計上・架空仕入がないかどうか等を見られます。

仕入に関しても適正な期間損益計算の観点から、翌期の仕入が当期に計上されていないかといった点をチェックします。また、意図的に存在していない仕入取引を帳簿に記載して仕入を水増ししていないかということも調査のポイントです。

③人件費

架空人件費が含まれていないかどうか等を見られます。事業に従事していない人に給与を支給してしないかどうかや過大な役員報酬・役員退職金の支給がないか等が調査のポイントです。

④交際費

交際費に該当する費用をほかの勘定科目で処理していないかどうか等を見られます。法人の交際費は損金算入に限度額や条件があるため、損金算入する金額を増やす為にほかの科目で計上していることが多い費用です。

⑤棚卸資産

棚卸資産の管理や妥当性等を見られます。棚卸資産は課税所得への影響が大きいものです。だからこそ、不正の温床となる可能性があります。

費用収益対応の原則では、在庫として抱えている商品の原価は売上原価として計上できないということになっています。そのため、実地棚卸がきちんと行われ、販売された商品の原価分だけが当期に費用計上されているかどうかが調査のポイントです。また、商品有高帳・棚卸帳等が正確な記録どうかや評価損の計上が妥当かどうか等も確認されます。

⑥修繕費

資産計上すべきものが修繕費になっていないか等を見られます。

修繕のための支出であっても、その内容が資産の使用可能期間・価値を向上させるような支出は「資本的支出」として扱わなければなりません。「資本的支出」は、修繕費として一括して費用計上するのではなく、資産計上して減価償却により複数年にわたって費用計上をしなければなりません。

修繕費と資本的支出の違いについても詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>修繕費とは? 資本的支出との違いや仕訳例を解説

まとめ

税務調査は、税務申告の内容に問題がないかどうかを確認するために実施されるものです。普段から適切な会計処理を行っていれば、それほど心配することはありません。

税務調査の連絡があれば、日程を調整できても避けることはできません。必要以上に恐れることなく、落ち着いて臨みましょう。事前連絡から調査日までは、2、3週間程度の時間があるのが一般的です。必要な書類を揃え、想定される質問に対して答えられるように準備をしておきましょう。

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oneplus編集部

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