短期借入金と長期借入金の違いを解説|借入金の種類と仕訳 例

短期借入金、長期借入金とは何なのかご存じでしょうか?
また、短期借入金、長期借入金についての仕訳例や会計上の扱いについて、わからない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、短期借入金と長期借入金について以下の内容を解説していますので、是非参考にしてください。

  • 短期借入金と長期借入金とは?
  • 会計表記上の注意
  • 借入の種類
  • 仕訳例
  • メリット、デメリット
  • 使用用途について
目次

短期借入金と長期借入金の違いとは? それぞれの定義や特徴を比較しよう

前提として、借入金とは融資を受けて得た資金のこと

借入金とは、会社運営のための資金が足りないときに、主に金融機関から融資を受け得られた資金のことです。

一般的に借金と呼ばれるもので、会計上は負債に分類されます。

借入金は利子が発生し、将来的に返済しなければなりません。

借入金は以下の用途として使われることが多いです。

  • 運転資金:事業の運転のため
  • 設備資金:設備投資のため
  • 創業資金:事業開始のため

借入金には1年基準が適用されており、決算日起算で返済期限が1年以内か、1年を超えるのかによって分類されます。

1年以内の場合は短期借入金、1年を超過する場合は長期借入金に分かれます。

短期借入金の定義|決算日から見て1年以内に返済を迎える借入金のこと

決算日起算で1年以内に返済日が来る借入金を短期借入金と呼びます。
例えば、6か月後に返さなければならない借入金は短期借入金です。

1年以内に返すことが求められる借入金である場合は、金融機関からだけではなく、法人や会社の従業員からの借入れも含まれます。

また、当座借越の額や、約束手形を使用して手に入れた資金も含まれますので注意しておきましょう。

短期借入金の特徴|運転資金に充てることが多く、金利が低い

短期借入金は、運転資金として借入れることが一般的です。

商品が売れ、その代金の回収までに時間がかかる場合は、その間に新たに仕入れをするために利用することが多いです。

売掛金を回収することで、運転資金として借入れた額を返済可能となるため、売掛金の額を限度として短期借入金を得ることができる場合もあります。

また、長期借入金と比較して金利が抑制されていることが多く見られます。

短期借入金は短い期間で返済されるため、金融機関にとってリスクが低いと見なされるためです。

長期借入金の定義|返済日が決算日から1年を超える借入金のこと

決算日起算で返済日が1年を超過する借入金を長期借入金と呼びます。
例として、決算日起算で返済日が2年である場合は、1年を超過するため長期借入金となるのです。

融資される額も大きくなることが多く、返済期間が長いことから、銀行等から借り入れる際には担保の提供や事業計画の提出を要求されることがあります。

長期借入金の特徴|設備投資に充てることが多く、金利が高い

設備投資の資金として借入れを行うことが、長期借入金の一般的な用途として挙げられます。
例として、工場の機械購入等に充てられることがあります。

長期借入金は、短期借入金よりも金利が高くなることが多いです。

短期借入金に比べ、額が大きく返済期間が長くなることから、金融機関にとってリスクが高いと考えられるためです。

よって、金融機関は担保の要求や、詳細な事業計画の提出を求めることで返済能力の有無を判断しています。

短期借入金と長期借入金の会計表記の違いも押さえよう

決算日起算で1年以内に返済日を迎える借入金は、勘定科目「短期借入金」として処理します。
貸借対照表における短期借入金の表示は「流動負債」です。

融資期間返済期日勘定科目貸借対照表における表示
1年以内1年以内短期借入金流動負債

決算日起算で、1年を超過して返済する日が訪れる借入金は、勘定科目「長期借入金」として処理します。貸借対照表においては「固定負債」として表示されます。

融資期間返済期日勘定科目貸借対照表における表示
1年を超過する1年を超過する長期借入金固定負債

また、長期借入金のうち、1年以内に返済する部分は「1年以内返済長期借入金」として処理し、「流動負債」として表示される点がポイントです。

「1年以内返済長期借入金」とは何か?

融資を受けた当初に決算日から1年を超過する返済日を設定したものの、1年以内に返すこととなった部分は「1年以内返済長期借入金」と言います。

融資期間返済期日勘定科目貸借対照表における表示
1年を超過する1年以内1年以内返済長期借入金流動負債
1年を超過する1年を超過する長期借入金固定負債

貸借対照表では1年以内に返す借入金は「流動負債」とする決まりがあるため、1年を超過する融資期間の中に含まれる1年以内に返済する借入金は別に分類する必要があるのです。

あくまでも返済期日が1年以内なのか、超えるのかが基準となっており、融資期間をもとに判断するわけではないことが、理解する上で重要なポイントです。

短期借入金・長期借入金に当てはまる借入れの仕方|主な種類4つを紹介

1.証書貸付|最もメジャーな借入れ方法

証書貸付とは、借用証書を用いた借入れ方法のことです。借入れの方法としては最も一般的なものです。

会社が金融機関と金銭消費貸借契約書を締結し、その契約書を元に借用証書を発行することで借入れが可能となります。

金銭消費貸借契約書とは、借入契約を両者で確認したこと、返済を約束すること等を証明するために、貸主と借主が署名、押印して作成された証明書のことです。

金融機関に、設備投資を用途とした長期借入金を借入れる際に使用されることが多い形態です。

2.手形貸付|証書の代わりに手形を交わす方法

手形貸付とは、金額や返済しなければならない日にち等が記載された約束手形を使用した借入れ方法のことです。

借用証書を作成する代わりに、企業が振出人、金融機関が受取人となった約束手形を発行することで借入れを行います。

手形に記載された金額から利息を差し引いた分が、会社に貸付けられることになります。

その後、手形が決算日を迎えた時に、借入金を返済する必要があります。

金融機関に、運転資金の調達を目的とした短期借入金を借入れる際に使用されることが多い形態です。

3.ファクタリング|売掛金を譲渡して資金調達する方法

ファクタリングとは、回収される予定の売掛債権をファクタリング会社に売り、現金を得る借入れ方法のことです。

ファクタリング会社は現金を支払う代わりに、売掛金を回収する権利を得ます。

現金をすぐに手に入れられる反面、手数料を支払う必要があります。

注意しなければならないのは、売掛金は手形に比べ担保力が劣っているため、手数料が非常に高く設定されていることが多い点です。

資金繰りに苦労している会社にとって、現金をすぐ手に入れられるのは魅力的ですが、ファクタリングを利用した後に残る利益を考慮した上で利用すべきです。

4.当座貸越|当座残額以上の借入れを行える方法

当座貸越とは、金融機関と当座貸越契約を結ぶことにより、当座預金の残額以上の小切手を振出すことを可能とする借入れ方法のことです。

当座貸越契約の期間中は、ひとたび借入限度額を設定すれば、借入れの手続きをすることなく限度額の範囲内で借入れが可能となります。

主に不測の事態に備えるためにあらかじめ契約しておくもので、急場の運転資金として使用することができます。

当座貸越の返済期間は2年から5年に設定されることが多く、決算日から1年を越えて返済される長期借入金と見なされます。

短期借入金や長期借入金の仕訳例を見てみよう

長期借入金を計上し、後に返済する仕訳例

金融機関から長期借入金を2,000,000円借入れし、普通預金に入金があった場合の仕訳は、借方に「普通預金」2,000,000円、貸方に「長期借入金」2,000,000円を記載することになります。

借方貸方
普通預金2,000,000長期借入金2,000,000

長期借入金の返済の際には利息の支払いが発生します。利息の支払いを10,000円とすると、借方に「長期借入金」2,000,000円と「支払利息」10,000円、貸方に「普通預金」2,010,000円を記載するという仕訳になります。

借方貸方
長期借入金2,000,000普通預金2,010,000
支払利息10,000

残期間が1年を切った長期借入金を短期借入金に振替する仕訳例

長期借入金を減少させて短期借入金を増加させます。
振替額を100,000円とすると、仕訳は借方に「長期借入金」100,000円、貸方に「短期借入金」100,000円を記載することになります。

借方貸方
長期借入金100,000短期借入金100,000

注意しなければならないのが、短期借入金が「1年内返済予定長期借入金」として表示されることがある場合です。

負債および純資産の合計額に対し100分の1を超える場合は、1年内返済予定長期借入金として表示されます。

短期借入金の期間延長(継続)をする際の仕訳例

期限を迎えた短期借入金を利息とともに返済し、新たに短期借入金を借入れたと考えるのが理解しやすいでしょう。

短期借入金を2,000,000円とすると、仕訳は借方に「短期借入金」2,000,000円、貸方に「短期借入金」2,000,000円を記載します。

利息を10,000円と仮定すると、仕訳は借方に「支払利息」10,000円、貸方に「当座預金」10,000円を記載することになります。

借方貸方
短期借入金2,000,000短期借入金2,000,000
支払利息10,000当座預金10,000

短期借入金・長期借入金|それぞれのメリットとデメリット

短期借入金|押さえておきたいメリットとデメリット 

短期借入金は、長期借入金に比べ金利が低く設定されており、審査に通りやすいことが会社にとってはメリットになります。

金融機関にとってはすぐに回収できるため、リスクが少ないと見なされるためです。

借換えを行うことで期限を先延ばしすることもできるため、うまく活用することで安定した運転資金とすることができます。

一方、金融機関側の積極的な融資回収が行われた場合は、小さな会社は返済困難になりがちである点はデメリットと言えるでしょう。

また、どうしても一度に多額の返済をしなければならない場合が多く、売掛金の回収がスムーズにいかなかった場合は返済が困難になってしまうリスクを孕んでいます。

借換えを行った時の事務手続きや、返済期日の管理も煩雑になりがちである点にも注意すべきです。

長期借入金|おさえておきたいメリットとデメリット 

長期借入金は、毎年返済する金額は少額となるため、財務体質が安定することがメリットです。

返済期間が長く、急いで返済する必要もないためキャッシュフローが安定する傾向があり、調達した資金をじっくり活用できるのです。

一方、長期借入金は短期借入金に比べ金利が高く設定されており、審査が厳しくなることがデメリットとなります。

金融機関は多額の融資が焦げ付くことを恐れ、審査に担保を要求したり、事業計画を要求するからです。

仮に担保に入れることを要求されると、その資産は価値が下がり、売りづらくなります。

また、変動金利による金利上昇の影響で支払利息が予期せず上がり、やりくりが難しくなるリスクがあります。

短期借入金・長期借入金|利用する際のポイント

借入金は、よけいな出費をしないために、会社の資金に余裕があるときに返済してしまうのが大事です。借入れをすれば利息がかかります。

特に短期借入金は、安易に借換えて継続してしまいがちなので注意しましょう。

また、短期借入金と長期借入金の使用用途を間違わないことが重要です。

短期借入金は会社の運転資金、長期借入金は設備投資に使うのが一般的です。一度に多額の借入れができる長期借入金を会社の運転資金として使用してしまうと、高い金利に苦しめられます。

会社の財務体質を改善できなければ、本来の用途である設備投資が難しくなります。

また、設備投資を想定し、多額の短期借入金を借入れた場合は、1年以内にすべて返済しなければならないため資金繰りに行き詰まってしまいます。

用途に合わせて適切に短期借入金と長期借入金を選択するのがポイントです。

短期借入金と長期借入金の違いまとめ

短期借入金は、決算日から1年以内に返済しなければならない借入金です。金融機関から見て貸付リスクが少ないため、金利は安く、借りやすいのがメリットです。

一方、貸し剥がしに弱く、売掛金の回収漏れ等、想定外の事態に対応しづらいデメリットがあります。

長期借入金は、決算日から返済日までの期間が1年を超えている借入金です。大きな金額を借りることができ、返済も少しづつでよいため、キャッシュフローが安定しやすいのがメリットです。

一方、借りるには担保や詳細な事業計画の提出を求められ、融資のハードルが高まります。金利も高く、変動金利の影響を受けやすい点がデメリットとなります。

短期借入金は運転資金、長期借入金は設備投資に使い、先を見据えて計画的に借入れることが最も大事です。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

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