減価償却とは? しないとどうなるのか・計算や仕訳方法を簡単に紹介

機械・建物・設備といった資産を取得した場合は、その金額を一括で費用として計上するのではなく、数年にわたって費用計上しなければなりません。
減価償却の計算方法や計上方法には種類があるため、正しく理解して適切な会計処理を行う必要があります。

この記事では、減価償却の計算方法や注意点等、詳しく説明していますので、是非、参考にしてください。

減価償却とは? 読み方や対象になるものを簡単に紹介

減価償却とは「固定資産は年々価値が下がる」という考えで行う会計処理

固定資産は年々少しずつ価値が下がっていくという考え方を基に行う会計処理です。機械・設備・建物といった資産について、その金額を購入した年に一括で費用計上せずに何年かにわたって費用計上します。

例えば150万円の機械を一括購入し、その使用年数が5年だったとし、定額法で処理する場合を考えましょう。
この時、資金の流れとしては初年度に150万円払いますが、費用としては30万円ずつを5年にわたって計上します。

減価償却資産|対象になるもの・ならないもの

資産の中には、償却対象となるものと、ならないものの大きく2種類があります。
資産の種類や金額によって異なるため、事前に確認すると良いでしょう。

ここでは、償却が認められる資産と認められない資産をそれぞれ詳しくご説明します。

減価償却が認められる資産

減価償却が認められるのは、年数が経つとともに価値が減っていく資産です。
また、使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上の資産が対象となります。

具体的には次のような資産が挙げられます。

  • 建物…オフィス、倉庫、事務所
  • 建物付属設備…エアコン、電気設備、水道設備、音響機器
  • 機械や器具…工場の設備、パソコン、プリンター
  • 車両…営業車、運搬車、タンク車
  • 備品…事務机、椅子、家具

このほかにも、ソフトウェア・特許権・意匠権・商標権といった無形固定資産や家畜・樹木等も対象となります。

減価償却が認められない資産

次のような資産は償却が認められません。

  • 時間が経っても価値が減らない資産
    …例えば歴史的に価値がある美術品・絵画・骨董品は、時間が経っても価値が保たれるため減価償却を行いません。また、土地や借用権も認められない資産です。
  • 遊休資産
    …現在業務で使っていない資産については、認められません。例えば工場の製造ラインの機械で長く使っていない機械が該当します。
  • 棚卸資産
    …商品・原材料といった在庫は、販売したときに売上・売上原価として計上され、減価償却を行う資産としては認められません。

【例外】条件を満たした場合に活用できる特例

中小企業や個人事業主で、青色申告を行っているといった一定の条件を満たす際には、少額減価償却資産の特例が適用されます。
この特例では、取得価額が30万円未満の資産については、取得初年度に一括で費用計上できます。まとめて計上することで、取得初年度の税金の負担を軽くできるでしょう。

また、10万円未満の備品や資産については、消耗品費や備品費として計上できるため、間違えないように注意しましょう。

企業が減価償却によって得られる3つのメリット

①1年間の利益を正確に把握できる

減価償却は、該当の資産を使用年数にわたって費用計上するため、毎年の利益を正確に把握できるという特徴があります。

資産は購入した年だけでなく、その後も数年にわたって使用するため、減価償却の概念を使うことで、売上と費用計上のタイミングを対応させることができます。売上に対してかかっている費用を、償却額も含めて正確に把握することで、経営判断に活かせるでしょう。

また、費用だけでなく、資産の数字も正しく把握できます。

②当期にかかる費用負担が少なくなる

減価償却を行うことで、資産を使いはじめた初年度にかかる費用負担が小さくなり、財務状況がよく見えます。また、費用が分割して計上されるため、財務状況が安定して見えるでしょう。

財務状況が良くなることで、金融機関の融資を受けやすくなるというメリットがあります。
さらに、取引先や株主からも評価も得やすくなり、ビジネスの機会を拡大できるでしょう。

会計処理を適切に使い、財務状況を良い状態に保つよう心がけることが重要です。

③法人税の節税に繋がる

減価償却を行うと、資産を購入した初年度の費用は小さくなりますが、翌期以降の費用が大きくなります。翌年度以降の費用が大きくなると、利益の額が小さくなり、結果的に翌年度に支払うべき税金が小さくなります。

税金は利益が大きくなるほど税率も高くなるため、数年単位で見た時に、税率を抑えられるでしょう。年による税額の差が小さくなり、資金繰りを考えやすくなるというメリットもあります。

減価償却しないとどうなるの? 企業にもたらす影響とは

減価償却をするかどうかは法人の場合は任意ですが、行わない場合は次のような影響が考えられます。

  • 税額が増える
    償却額は費用として認められるため、数年にわたって計上することでその数年の税額を小さくできます。仮に赤字決算であったとしても、欠損金を繰り越せるため、費用として計上しておくと良いでしょう。
  • 損益が不明瞭
    償却額を正しく計上できていないと、損益が不明瞭になってしまいます。減価償却の金額を含めても利益がでているかを判断するのが重要です。
  • キャッシュフローの悪化
    キャッシュフローは、経常利益に減価償却を足し算することで求められるため、減価償却を計上しないとキャッシュフローが悪化してしまいます。

減価償却を行う上で把握しておきたい項目

減価償却を行う上で把握しておきたい項目には次のようなものがあります。

償却法償却額の計算方法は、主に定額法と定率法の2種類があり、場合によっては級数法や生産高比例法も使われます。
減価償却資産償却の対象となる資産です。
償却の対象となるのは、時間とともに価値が低下していく資産で、機械・建物・備品等が含まれます。
取得価額償却の対象となる資産を購入するために支払った金額を示し、次のものが含まれます。
・購入代価…資産自体の購入費用
・付随費用…運賃・関税・運送保険料・購入手数料等
・事業供用費用…据付費用、試運転費等
耐用年数法律で定められた資産の使用期間
減価償却累計額これまで償却した金額の累計額
未償却残高資産の取得価額から減価償却累計額を引き算したもの
償却資産税償却を行っている資産に対して課せられる税金です。
年に1回、税務局に申告書を提出し正しい金額を期限内に納める必要があります。

減価償却の方法|計算と仕訳をわかりやすく解説

減価償却費を求める2つの計算方法

計算方法は主に2種類あります。
同じ金額の資産でもどちらの方法を選ぶかによって、実務の手数や償却額が変わるため、都度どちらを選ぶか検討するのが重要です。

①定額法

資産を毎年同額ずつ償却する方法です。
例えば150万円の機械を5年にわたって償却する場合は、取得価額を5分割して毎年30万円ずつ計上します。

定額法では、取得価額に償却率を掛けることで計算でき、その率は年数に応じて変わります。
5年の場合の償却率は0.2で、150万円の機械に対する毎年の償却額は150万円×0.2=30万円と求められます。

②定率法

資産残高に一定の割合を掛け算して償却額を決める方法です。
例えば200万円の機械を5年(償却率:0.4)にわたって償却する場合を考えます

1年目:200万×0.4=80万円
2年目:(200万-80万)×0.4=48万円
3年目:(200万-80万-48万)×0.4=28.8万円

なお、償却保証額(減価償却を行うべき最低金額)が決められており、その金額を下回った場合は以後はその額で計上されます。

今回の場合は、保証額は21.6万円のため、4・5年目は21.6万円ずつ計上されます。

定額法・定率法ついてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>減価償却の償却方法「定額法・定率法」の計算例とメリット

減価償却費を計上する2つの仕訳方法

計上する仕訳の方法には、直接法と間接法という2種類の方法があります。
償却の金額はどちらでも変わらないですが、使う勘定科目が変わるため、どちらを使うか統一すると良いでしょう。

①直接法

償却額を直接固定資産から差し引くというという方法です。

例えば備品の取得価額が200万円で、耐用年数が5年(償却率が0.2)の場合は、毎年の償却額は200×0.2=40万円と計算され、仕訳は次の通りです。

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
減価償却費400,000備品400,000

直接法は、償却後に残っている資産の金額がわかりやすいというメリットがあります。

②間接法

固定資産を減らすのではなく、減価償却累計額を使います。

例えば備品の取得価額が200万円で、耐用年数が5年(償却率が0.2)の場合は、毎年の償却額は200×0.2=40万円と計算され、仕訳は次の通りです。

借方勘定借方金額貸方勘定貸方金額
減価償却費400,000減価償却累計額400,000

間接法は、過去に償却した金額の累計額と資産の取得額がわかりやすいというメリットがあります。

減価償却の際に気をつけるべきポイント

減価償却の開始時期

償却の開始時期は、資産を使いはじめた時とされています。
例えば製造ラインを購入した場合は、製造ラインの稼働準備が整い、実際に使用を開始した時が償却の開始時期です。

開始時期は購入したタイミングではないため、注意が必要です。
また、購入しても納品が遅れる等して稼働が開始しなかった場合は、減価償却費の計上ができないことにも気をつけましょう。

資産ごとに異なる耐用年数

耐用年数とはその資産がどれくらいの間に使用できるかを示す数字で、資産によって異なります。税法上で、固定資産の種類・構造・利用方法によって年数が規定されており、国税庁や主税局のホームページで確認できます。

例えば金属製の事務机は15年、コンクリート造りの事務所用建物は50年、等と素材や用途によって定められています。資産を取得した際には、その資産の耐用年数をすぐに確認すると良いでしょう。

耐用年数についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>耐用年数とは? 法定耐用年数や減価償却について解説

期中に取得した資産の扱い

年度の途中(期中)に該当の資産を取得した場合は、その年度は費用を月割りで計上します。

例えば3月決算の会社で、120万円で耐用年数10年(償却率0.1)の資産を1月に取得して使用しはじめた場合を考えてみましょう。この時、今期は1月から3月までの3か月分の減価償却費のみを計上するため、120万×0.1÷12か月×3か月=3万円の償却費となります。

初年度については、月数按分で金額を求めます。期中に取得した場合は、月数の計算に注意をしましょう。

中古資産の経費計算

新品か中古かでは、耐用年数が異なります。
中古の場合は、これまで既に使われてきた資産となるため、資産の価値が減っている状態にあり、残りの耐用年数も新品とくらべて短い状態です。

中古の場合は、耐用年数が短いため、新品と比べて1年あたりの償却率が大きくなる傾向にあります。

まとめ

建物・機械・備品等の資産を取得した際は、減価償却費を正しく計上することが大切です。どの償却方法を選ぶかにより、金額も勘定科目も異なり、利益の金額や税額も異なってくるため、適切な方法を選ぶことが必要です。また、計算も法律に従って正確に行うよう気を付けましょう。

是非、今回の記事を参考に、減価償却に対する理解を含め、企業にとって最適な方法を選んでください。

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oneplus編集部

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