「優秀な人材が見つからない」「募集をかけても良い人の応募が少ない」「従業員を雇ってもすぐやめてしまう」といった採用の悩みを持つ企業は多くあります。日本経済全体が慢性的な人手不足に陥っている中で、「どうすれば良いの?」と感じたことのある経営者や採用担当者の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の経済における人手不足の現状と、原因と解消方法、取り組みの成功例や注意点を紹介します。従来の考え方や仕組みにとらわれず、柔軟に対応策を考えることが解決のヒントとなるでしょう。
【2022年】企業における人手不足の動向
【現状と今後】企業の人手不足は深刻化
帝国データバンクは2006年より毎月「人手不足に対する企業の動向調査」を行っています。2022年4月の調査では、正社員の過不足状況について「不足」と感じている企業の割合は45.9%と、前年同月の37.2%から大幅に増加しています。また、非正規社員については27.3%となっており、前年同月の20.6%と比べるとやはり増加しています。
人手不足は従来よりある大きな経営課題のひとつです。もともと、人手不足感を持つ企業の割合は、2019年には正社員50.3%、非正規社員31.8%と高くなっていました。2020年には新型コロナウイルスが流行して経済活動が制限されたため、この割合は一旦下がります。しかし、「アフターコロナ」へ向けて経済活動が徐々に再開される中で、再び人手不足が問題となりはじめました。2019年以前も人手不足を感じる企業の割合は増えていたため、その流れを引き継ぐ形で今後も人手不足の深刻化は進むと考えられます。
業界によっても人手不足の状況は異なる
人手不足は日本の経済全体の問題ではあるものの、状況は業界によって差があります。厚生労働省の調査「人手不足の現状把握について」では、「人手不足産業」として以下の5業種が挙げられています。
(出典:人手不足の現状把握について)
- 運輸業、郵便業
- サービス業(他に分類されないもの)
- 医療、福祉
- 宿泊業、飲食サービス業
- 建設業
これらの多くの業種は、平日休日問わず必要とされるものです。さらに細かく見てみると、運輸業、郵便業や建設業は体力が必要であるにもかかわらず労働者の高齢化が進んでおり、若年層の労働者が不足しています。医療、福祉は高齢化に伴って需要が増えていますが、賃金水準や労働条件から十分な人材確保が難しい状況です。サービス業も、賃金水準の低さや労働条件の厳しさから、離職率の高い業種です。
人手不足が解消しない・慢性化する原因とは
社会的な原因|日本全体の人口減少に伴う
人手不足の原因の筆頭に挙げられるのが少子高齢化です。日本全体の人口が減少する中でさらに少子高齢化が進んでいるため、労働力となる15歳から64歳の生産年齢人口も減少し続けています。そのため、企業も優秀な人材を確保するために求人を出し、人材を各社が取り合う形となって有効求人倍率も上昇しています。
また、厚生労働省が2021年に発表した「『非正規雇用』の現状と課題」によると、非正規雇用労働者は全体の36.7%と高い割合です。非正規雇用の労働者には補助的な業務を割り当て、コア業務を任せない企業が多いです。労働者の数自体は多くても、コア業務を担当する人材が少なければ、人材不足に陥ってしまうでしょう。
少子高齢化をはじめとする社会の変化によって、働き方が変化していることも要因のひとつです。「終身雇用制度」は過去のものとなりつつあり、転職や早期退職も一般的となりました。そのため、新たな人材採用に苦戦している企業が多いのが現状です。
企業側の原因|人手不足が生じやすい会社の特徴
せっかく従業員を雇っても、労働時間の長さや賃金の水準、人間関係等、企業側の原因で辞めてしまうことは少なくありません。職場環境や労働条件を改善することで、長く働いてもらえる環境を作る必要があります。良い職場環境は、ブランドイメージや主力商品と並んで求職者にアピールできる会社の魅力にもなるため、採用力にも繋がります。
人数は多いのに業務が回っていない場合は、社内のモチベーションや生産性に問題があるかもしれません。業務フローを見直して無駄を削り、意欲的に働ける仕組みを整える必要があります。
人材採用には、求人サイトへの掲載や人材紹介等を使う場合が多く、コストがかかります。募集を行っても優秀な人材が集まるかはわからないため、採用コストが潤沢に確保できていない場合は慎重になりがちです。ハローワークから募集することもできますが、「思うような人材が集まらない」という声も多いです。
いずれにしても、一度入社した従業員が会社に定着し、長く働いてもらうことが理想と言えます。社員定着率については、以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
>>社員定着率とは? 計算方法や平均値、改善する方法を解説
人手不足を解消させる! 企業が行うべき取り組みを紹介
ロボット・IT・アウトソーシングを活用した業務効率化に着手
人手不足を解消する方法のひとつに、業務効率化があります。IT技術の進歩により、ビジネスに役立つ様々なツールや設備が開発されてきました。生産工程にロボットを導入する、AIを活用した情報収集・分析を行う、クラウドを利用したソフトを導入する等、自社に合ったものを取り入れて業務効率化を行いましょう。
アウトソーシングを利用することも方法のひとつです。経理や総務、電話応対といった業務の一部をアウトソーシングすることで、従業員に自社のコア業務等の重要な業務を割り当てることができます。
こうした業務効率化は、働きやすい職場環境にも繋がります。従業員や求職者にとっての魅力のひとつとなるでしょう。
採用経路を広げる(女性・シニア・障害者・外国人採用)
多様な人材を採用の対象に入れることもひとつの方法です。現代では女性の管理職や総合職も珍しくなく、共働きの家庭も増えています。自身のスキルを活かしてキャリアアップを続けたい女性は多いです。これまで男性中心で採用を行っていた企業も、採用対象を広げ男女問わず広く検討すべきです。
豊富な経験や知識を持ったシニア層も強力な戦力となります。長年培ったノウハウを活かして、企業の相談役となったり、若手社員や中堅社員への指導・教育に繋げたりできるでしょう。
障害者の中にも、専門的な高いスキルを持った人材は多いため、良い人材はいないか検討してみましょう。障害があっても働ける業務フローや職場環境を整備することで、従業員全体の働きやすさや業務の効率化に繋げることもできます。
外国人の採用についても、近年注目が集まっています。ただし、業務によって取得するべき在留資格が限定され、各種手続きも必要です。しかし、採用対象を外国人にまで広げれば、優秀な人材を確保できる可能性も広がるでしょう。
仕事環境の改善を推進する
仕事環境は、モチベーションや効率に直結します。居心地の悪い環境であれば、業務そのものに集中することができず、早く終わらせることだけに注力する人も出てくるでしょう。
オフィスの動線や配置のハード面に加えて、人事評価制度、研修・教育体制、人間関係等のソフト面も、仕事をする上で重要な環境です。また、テレワークの導入や有給休暇の取得のしやすさ等、多様な働き方への対応を推進することも大切です。時代の流れに対応し、従業員に長く働いてもらえるように、柔軟な対策を行っていきましょう。
福利厚生・待遇の見直し・改善を行う
福利厚生や待遇は、働き続ける上で最も重要なものと言えます。十分な給与が受け取れず、生活していく上で必要なサポートが受けられなければ、好きな仕事であっても辞めざるを得ないでしょう。求職者にとっても福利厚生や待遇は仕事選びの重要なポイントです。
企業のできる範囲で給与や手当の見直しを行い、安心して働き続けてもらうための福利厚生を整えましょう。育児や介護による休暇制度の拡充、家賃や昼食の補助等、企業が独自に決めることができ、ユニークで魅力的な福利厚生を持つ企業もあります。
【実際の事例】人手不足の解消・改善に成功した企業
企業事例1.シニアの積極採用
四国にある資材メーカーでは、幹部候補の募集に行き詰まっていました。そこで採用対象を60歳以上のシニア層にまで広げ、積極的に採用活動を行いました。シニア社員の働きやすさを考えて、勤務時間や休暇取得の推奨、産業医との連携といった環境を整備する取り組みを行っています。その結果、長く働ける社員の定着や人材育成へと繋がりました。この会社は子育てサポートにも力を入れており、従業員全体の働きやすさを考えた仕組みづくりを行っています。
企業事例2.業務形態の多様化
あるシステム・装置メーカーの会社では、人材不足や採用難に苦戦していました。そこで、正社員という枠を超えてフリーランスへの業務委託を活用することで、この問題を解消しました。大手クラウドソーシングサイトであるランサーズの「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」では、フリーランス人口は1,577万人に上るとされ、現在もフリーランスで働く人口は増加し続けています。こうした社会の流れも意識し、人材不足の対策にフリーランスを活用することも視野に入れてみましょう。
企業事例3.システム導入による自動化
関西地方のある金属加工会社は、ロボットの導入によって人手不足の解消に取り組みました。その結果、作業の効率化とともに、品質の向上にも成功しています。人の手による業務が削減されたことで従業員の働き方にも余裕ができ、新たな休暇の制度も創設されました。こうした取り組みは従業員の満足度に繋がっています。
人手不足解消に取り組む際の注意点
早く人員を補充しようとして、採用基準を下げることはおすすめできません。能力の低い人材や自社に合わない人材を採用してしまうと、業績やほかの社員のモチベーションの低下を招くことがあります。また、結果的に自社に合わず退職してしまえば、採用活動をやり直すことになります。長期的な視点で見ると、妥協せず本当に自社に合った人材を見極めることは、時間はかかっても将来のためになるでしょう。
また、外国人を採用する場合は、言語や文化の違いを十分考慮しましょう。日本語に不慣れな人材を雇うときは、日本語学習の機会を作ったり、業務上の誤解をなくすための工夫をしたりといったサポートが不可欠です。さらに、日本の常識が母国の常識と同じとは限らないことを念頭に置き、業務中のルールや心構えについても研修を行うと良いでしょう。外国から呼び寄せる場合は生活面の不安にも寄り添い、長く働いてもらえるような支援を行いましょう。
退職による補填的な採用にも注意が必要です。前任者の行っていた業務をそのまま引き継ぐことは、入社して間もない社員には負担が重すぎる場合があります。長年の慣れによって、業務が成り立っていたという場合もあるため、安易な補填としての採用は避けるべきです。周囲のサポートや業務の分散等によって適切に対応しましょう。
経理作業の軽減により人的コストを削減|業務効率化に最適な「oneplat」がおすすめ
人手不足を解消するためのツールのひとつに、経理業務を効率化する「oneplat」があります。経理は業務量が多く、扱う書類の種類も多岐にわたるため、新しく従業員を雇う場合は負担が大きく、ミスをする可能性のある業務です。
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データから取引先との書類のやり取りはプラットフォーム上で完結し、ペーパーレスにも繋がります。ひとつのプラットフォームで様々な業務効率化ができるため、人手不足でお悩みの際には是非ご検討ください。
まとめ
多くの企業が人手不足を感じている現状ですが、様々な対応策をとることができます。人手不足の解消のためには、従来の考え方や方法を変えなければならない場合もあるため、抵抗を持つ方もいるかもしれません。しかし、新しい方法を取り入れることは会社をより良くするチャンスでもあります。柔軟に様々な方法を検討し、業務効率化や働きやすい職場づくりによって魅力的な企業体質を整えていきましょう。